5年前、私はこんな記事を書きました。
アニメ制作の現場で使う絵コンテを、紙ではなくデジタルで扱うためのエディタです。当時はプレビュー版でした。「ペイント機能は敢えて作らず Photoshop や CLIP STUDIO PAINT に任せる」「PSD と JSON でファイルを持つ」といった設計の話を書きました。大した記事ではなかったのですが、29 LGTM・1万 view まで伸びて、転職のスカウトにも繋がりました。思い出深い大切な記事です。
で、そのアプリはどうなったかというと、ずっと放置していました。
コミットグラフが語る5年間の沈黙
リポジトリの最初のコミットは 2021-05-30。その夏は元気でした。
2021-07 32 commits
2021-08 28 commits
2021-09 5 commits
(以降、ほぼ無音)
プレビュー版を公開して、記事を書いて、少なくない方々から評価もいただいて、転職にも繋がりました。でもその後いろいろと紆余曲折があり、ずっと開発は止まったままでした。
そして2026年6月。私生活も落ち着いてきたので、私はこのリポジトリを git clone し直しました。
7日間で254コミット
結論から書くと、こうなりました。
2026-06-13 21 ← Claude Fable 5 最初にして最後の輝き
2026-06-14 36
2026-06-15 82 ← ピーク
2026-06-16 73
2026-06-17 16
2026-06-18 20
2026-06-19 6
6月13日から19日までの1週間で 254コミット。5年間眠っていたグラフが、いきなり燃え上がりました。Claude Code と共に。
この1週間で、放置していた「編集機能」をぜんぶ片付けて、v0.9.0 として公開するところまで持っていきました。やったことを並べると、こんな感じです。
- PDF(絵コンテ印刷)と動画(MP4 / H.264)の書き出し
- クロスフェードを含むトランジション編集
- ストップウォッチで時間を計って TIME に入れる入力
- CUT / SCENE のドラッグ&ドロップ並べ替え、ローカル git 連携
- Undo / Redo
- 脚本(Markdown)からプロジェクトを起こすインポート
- 多言語(日本語 / 한국어 / English)、ライト・ダークテーマ
- Web版(File System Access API でブラウザだけで動き、PWA としてインストールも可能)
丸投げでもマイクロマネジメントでもなく
再開発初期に Fable 5 を使えたことは非常に大きかったです。CRA → Vite への移行や、FHD16:9以外の解像度・アスペクト比への対応、レガシーコードのアンチパターンの洗い出し、外部ペイントアプリ連携、プロジェクトの自動保存など、今回の変更で核になる事項を最初に一気に片付けることができました。
Fable 5 とお別れしたあとは、Opus 4.8 を /ultracode で使いました。設計をブレストで詰めて仕様に落とし、テストを先に書いて(TDD)、実装はサブエージェントに振る。書いたコードは別の視点で敵対的にレビューさせて、テストやビルドが緑になるのを確認してから「完了」にします。この一連を Claude Code の中で回せるので、私はずっと上流の判断に集中していられました。
ドキュメントやREADMEの文面などはClaudeに下書きを作らせた後、ほぼ全面的に書き換えました。この記事もClaudeの下書きを元に、半分ぐらいは書き換えています。多言語対応は専門用語の訳語を一つ一つClaudeと議論しながら定義し、一貫性を保つように心がけました。
5年で、足回りはぜんぶ変わっていた
旧記事「支える技術」の続編らしく、技術の話も少しだけ。
5年放置している間に、フロントエンドの足回りは丸ごと入れ替わっていました。Create React App は実質終わっていて、ビルドは Vite(electron-vite)に移行しました。データモデルも作り直して、JSON のスキーマも後方互換性を維持しつつ変更しました。
動画書き出しは、最初 ffmpeg を考えていたのですが、 WebCodecs が枯れてきていて、ネイティブのハードウェアアクセラレーターを叩くことで十分な速度を出すことができました。
@adobe/react-spectrum は当時のまま 3.11.2 に固定しています(最新版はスタイルが大きく変わるので)。ag-psd で PSD を読む方針も健在です。reactn はいずれ依存解消させたいなと思っています。
触ってみてください
ベータ版(v0.9.0)として公開しています。
- ブラウザ版(インストール不要)
- ドキュメント(使い方・ショートカット)
- デスクトップ版ダウンロード(Mac / Windows / Linux)
配布バイナリは未署名で、実機での動作確認は Mac だけです。Windows / Linux ビルドは未検証のまま同梱しています(ベータなので、動かなかったら Issue をください。すぐ飛びつきます)。まずはブラウザ版を触ってもらうのが手っ取り早いと思います。サンプルの絵コンテを入れて再生すると、カメラワークが付いたまま動くのが見られます。
おわりに
ずっと「自分が欲しい」と思っていたアプリが完成しました。5年前にはなかった競合アプリもリリースされていたりしますが、正直に、「私にとって一番使いやすい絵コンテアプリはこれだ」と自信を持って言うことができます。 AI時代に一番必要なスキルは Need を言語化することだと巷では言われてます。今回はそれができたのかなと少しの自信を取り戻しつつ、またどこかで。今回はきっと、アニメ完成させます。
おまけ
Claudeが作ったドキュメントサイトの初期案です。こっちの方がいいって?私はかなりAI臭いなーと思ってリジェクトしました。
追記
本番環境で出てきたバグをhotfixしたv0.9.1を公開しました。
クリエイター向けにはnote記事も作ってます。よかったら見てください

