AIエージェントが日本のSaaSを操作するのに必要なMCP(Model Context Protocol)やAPIの対応状況を、100社・18カテゴリにわたって調査した。
- 公式MCPサーバーあり: 18社(freee、kintone、Slack、Backlog等)
- サードパーティMCPあり: 17社(Stripe、Salesforce、Zendesk等)
- APIのみ(MCP未対応): 65社
調査結果はMCPサーバーとしてパッケージ化した。エージェントが npx @kansei-link/mcp-server で起動すれば、この100社の中から最適なサービスをインテントで検索できる。
なぜ調べたか
2026年に入り、日本のSaaSベンダーがMCPサーバーを公式提供するケースが急増した。freee、マネーフォワード、kintone、Backlog、SmartHR — 主要どころは軒並み対応している。
しかしAIエージェントの立場から見ると、困ることがある:
- どのサービスがMCP対応しているか分からない — 公式サイトを1社ずつ確認するしかない
- APIはあるがMCPがないサービスが大半 — エージェントが直接APIを叩く必要がある
- 認証方式がバラバラ — OAuth2、APIキー、どちらもありうる
- 組み合わせパターンが見えない — freeeとkintoneを連携させたいとき、どう繋ぐのが定番なのか
これを解決するために100社分を一括調査して、エージェントが参照できる構造化データにした。
調査方法
- 対象: 日本の企業で日常的に使われるSaaS・業務ツール
- 調査項目: MCP対応状況(official / third_party / api_only)、認証方式、APIドキュメントURL
- カテゴリ: 18分類(会計、HR、コミュニケーション、CRM、EC、法務、プロジェクト管理、マーケティング、グループウェア、生産性、ストレージ、カスタマーサポート、決済、物流、予約、データ連携、BI/分析、セキュリティ)
全体サマリー
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 調査対象 | 100社 |
| カテゴリ | 18 |
| 公式MCPサーバーあり | 18社 (18%) |
| サードパーティMCPあり | 17社 (17%) |
| APIのみ(MCP未対応) | 65社 (65%) |
| OAuth2認証 | 45社 |
| APIキー認証 | 53社 |
MCPサーバーがある = エージェントがすぐ使える。APIのみ = エージェントが自力でHTTPリクエストを組む必要がある。
この差は大きい。MCP対応率は全体の35%。残り65%は「APIはあるが、エージェントフレンドリーではない」状態だ。
カテゴリ別の詳細
会計 (9社)
| サービス | MCP状況 | 認証 |
|---|---|---|
| freee | 公式MCP | OAuth2 |
| マネーフォワード クラウド | 公式MCP | OAuth2 |
| freee人事労務 | 公式MCP | OAuth2 |
| Stripe Japan | サードパーティMCP | APIキー |
| 弥生会計 | APIのみ | OAuth2 |
| MakeLeaps | APIのみ | OAuth2 |
| board | APIのみ | APIキー |
| Misoca | APIのみ | OAuth2 |
| バクラク請求書 | APIのみ | APIキー |
| invox受取請求書 | APIのみ | APIキー |
freeeとマネーフォワードが公式MCPを提供しており、エージェントから直接仕訳・請求書操作ができる。バクラク(LayerX)やinvoxはAI-OCRで請求書を読み取るサービスだが、MCP対応はまだ。
HR (9社)
| サービス | MCP状況 | 認証 |
|---|---|---|
| freee人事労務 | 公式MCP | OAuth2 |
| SmartHR | APIのみ | OAuth2 |
| KING OF TIME | APIのみ | APIキー |
| ジョブカン | APIのみ | APIキー |
| カオナビ | APIのみ | APIキー |
| HRMOS勤怠 | APIのみ | APIキー |
| TeamSpirit | APIのみ | OAuth2 |
| Talentio | APIのみ | APIキー |
| オフィスステーション | APIのみ | APIキー |
HR分野は意外にMCP対応が遅い。SmartHRはAPIが充実しているにもかかわらず、まだMCPサーバーを提供していない。エージェントがSmartHRの従業員データを操作するには、直接REST APIを叩く必要がある。
コミュニケーション (9社)
| サービス | MCP状況 | 認証 |
|---|---|---|
| Chatwork | 公式MCP | APIキー |
| LINE Messaging | 公式MCP | APIキー |
| Slack | 公式MCP | OAuth2 |
| Microsoft Teams | 公式MCP | OAuth2 |
| Twilio | サードパーティMCP | APIキー |
| Zoom | サードパーティMCP | OAuth2 |
| LINE WORKS | APIのみ | OAuth2 |
| Talknote | APIのみ | APIキー |
| Amazon SES | APIのみ | APIキー |
コミュニケーション分野はMCP対応が最も進んでいる。Chatwork、LINE、Slack、Teamsの4大チャットツールが全て公式MCPを持つ。
プロジェクト管理 (7社)
| サービス | MCP状況 | 認証 |
|---|---|---|
| Backlog | 公式MCP | OAuth2 |
| kintone | 公式MCP | APIキー |
| Asana | 公式MCP | OAuth2 |
| Trello | サードパーティMCP | APIキー |
| Redmine | サードパーティMCP | APIキー |
| Wrike | サードパーティMCP | OAuth2 |
| Jooto | APIのみ | APIキー |
kintoneとBacklogが公式MCP対応。kintoneは特にMCPサーバー界隈で「ハブ」的存在で、kintone経由で他サービスと連携するレシピパターンが多い。
EC (7社)
| サービス | MCP状況 | 認証 |
|---|---|---|
| Shopify Japan | 公式MCP | OAuth2 |
| 楽天市場 | サードパーティMCP | APIキー |
| Amazon Japan (SP-API) | サードパーティMCP | OAuth2 |
| BASE | APIのみ | OAuth2 |
| STORES | APIのみ | OAuth2 |
| EC-CUBE | APIのみ | OAuth2 |
| カラーミーショップ | APIのみ | OAuth2 |
Shopifyが圧倒的に先行。楽天・AmazonもサードパーティMCPがある。一方、BASE・STORES・EC-CUBEなど国内プラットフォームはAPIのみ。
CRM (6社)
| サービス | MCP状況 | 認証 |
|---|---|---|
| Sansan | 公式MCP | APIキー |
| HubSpot Japan | 公式MCP | OAuth2 |
| SALES GO | 公式MCP | APIキー |
| Salesforce Japan | サードパーティMCP | OAuth2 |
| Eight | APIのみ | OAuth2 |
| Zoho CRM | APIのみ | OAuth2 |
CRM分野はMCP対応率が高い(6社中4社)。名刺管理のSansanが公式MCP対応しているのは注目。
決済 (5社)
| サービス | MCP状況 | 認証 |
|---|---|---|
| PAY.JP | APIのみ | APIキー |
| GMOペイメントゲートウェイ | APIのみ | APIキー |
| Square | APIのみ | OAuth2 |
| LINE Pay | APIのみ | APIキー |
| Paidy | APIのみ | APIキー |
決済分野はMCP対応ゼロ。Stripeは会計カテゴリに分類(サードパーティMCPあり)。決済はセキュリティ要件が厳しく、エージェントに操作させることへの慎重さが見える。
その他のカテゴリ(抜粋)
| カテゴリ | 社数 | MCP対応率 | 注目点 |
|---|---|---|---|
| マーケティング | 6 | 17% | Treasure Data公式MCP。SATORI、b→dashはAPI止まり |
| 法務 | 5 | 20% | CloudSign、DocuSign、GMOサインなど電子契約。MCPは少ない |
| カスタマーサポート | 5 | 20% | ZendeskのサードパーティMCPのみ |
| 予約 | 5 | 0% | 全社APIのみ。TableCheck、RESERVA等 |
| 物流 | 4 | 0% | ヤマト、佐川、日本郵便 — 全てAPIのみ |
| BI/分析 | 3 | 0% | Tableau、Looker、Metabase — APIは充実 |
| セキュリティ | 3 | 33% | 1Password Businessが公式MCP |
| ストレージ | 3 | 33% | Google DriveのサードパーティMCPのみ |
| データ連携 | 3 | 33% | Zapierサードパーティ、Yoom・MakeはAPIのみ |
見えてきたパターン
1. MCP対応は「開発者向けSaaS」から始まっている
kintone、Backlog、Slack、Notion — 開発者やエンジニアが使うサービスが先行してMCP対応している。逆に、経理(バクラク)、HR(SmartHR)、物流(ヤマト運輸)など「バックオフィス系」は遅れている。
2. 認証方式の二極化: OAuth2 vs APIキー
- OAuth2: 45社 — ユーザー認可フローが必要。エージェントにとってはセットアップの手間
- APIキー: 53社 — シンプルだがセキュリティリスク
エージェントにとっては、APIキー認証の方が圧倒的に扱いやすい。OAuth2はブラウザリダイレクトが必要で、完全自動化のハードルになる。
3. 決済・物流・予約はMCPの空白地帯
決済(0%)、物流(0%)、予約(0%)— お金と物の移動に関わるカテゴリはMCP対応が進んでいない。セキュリティ上の理由もあるが、ここがMCP対応されればエージェントの自動化範囲が飛躍的に広がる。
4. 「kintoneハブパターン」が日本独特
kintoneを中心にして、freee(会計)、SmartHR(HR)、KING OF TIME(勤怠)、HubSpot(CRM)を接続するパターンが定番化している。kintone自身がMCPに対応しているため、kintone経由の連携がエージェントにとっても最もスムーズ。
この調査データをエージェントが使えるようにした
調査結果をスプレッドシートに放置しても誰も見ない。エージェントが実行時に参照できる形にした。
npx @kansei-link/mcp-server
7つのツールを提供する:
| ツール | 説明 |
|---|---|
search_services |
「請求書を送りたい」→ 最適なサービスを検索 |
get_service_detail |
サービスのAPI接続ガイド(認証、エンドポイント、レート制限、クイックスタート) |
get_recipe |
複数サービスの組み合わせパターン(25レシピ) |
find_combinations |
「freeeと組み合わせ可能なサービスは?」 |
check_updates |
サービスの最近の変更・破壊的変更チェック |
report_outcome |
使用結果の匿名記録(PII自動マスキング) |
get_insights |
コミュニティの使用実績・信頼スコア |
検索の仕組み
日本語でも英語でも意図ベースで検索できる。
「従業員の勤怠管理」→ HR カテゴリ → KING OF TIME, ジョブカン, SmartHR...
「ダッシュボードで売上可視化」→ BI/Analytics → Tableau, Looker, Metabase
「SSO認証セキュリティ」→ Security → 1Password, Auth0, HENNGE One
内部では3層の検索エンジンが動いている:
- FTS5 (unicode61 / trigram) — 全文検索。日本語はトライグラムトークナイザーで対応
- LIKE fallback — FTS5でヒットしない短い日本語は、バイグラム分割でLIKE検索
- カテゴリ直接検索 — 意図からカテゴリを推定して、該当カテゴリのサービスも返す
セットアップ
Claude Desktop / Claude Code に追加:
{
"mcpServers": {
"kansei-link": {
"command": "npx",
"args": ["@kansei-link/mcp-server"]
}
}
}
まとめ
| 事実 | 数字 |
|---|---|
| 日本のSaaS MCP対応率 | 35%(100社中35社) |
| 公式MCPサーバー | 18社 |
| APIはあるがMCP未対応 | 65社 |
| エージェントにとっての空白地帯 | 決済・物流・予約 |
MCP対応は急速に進んでいるが、まだ3分の2はAPIのみの状態。エージェント経済が本格化するには、この65社がMCP対応することが必要だ。
特に「kintoneハブパターン」のような日本独自の連携パターンは、エージェントにとって非常に有用。こういった知識がエージェントの中に蓄積されていくことで、日本企業の業務自動化が一気に進むはず。
KanseiLinkはその第一歩として、100社の調査データをエージェントが直接参照できる形で提供している。
リンク
- npm: @kansei-link/mcp-server
- GitHub: kansei-link/kansei-mcp-server
-
MCP Registry:
io.github.kansei-link/kansei-mcp-server
「このSaaSも追加してほしい」「MCP対応状況が違う」等のフィードバックは、GitHubのIssueでお待ちしています。
MIT License / Synapse Arrows PTE. LTD.