📚 関連書籍
『ゼロから触ってわかった! Snowflake × Databricksでつくる次世代データ基盤 - 比較・共存・連携 非公式ガイド』
SnowflakeとDatabricks――二つのクラウドデータ基盤は、これまで「どちらを選ぶか」で語られることが多くありました。
しかし、実際の現場では「どう共存させるか」「どう連携させるか」が、より重要なテーマになりつつあります。
本書は、両プラットフォームをゼロから触り、構築・運用してきた実体験をもとに、比較・共存・連携のリアルを丁寧に解説する“非公式ガイド”です。
ステージング戦略(Raw/Bronze/Silver/Goldの思想の差)
🏔 Snowflakeのステージング戦略:Database/Schemaで“役割”を分ける発想
Snowflake側でのステージング戦略は、Raw/Bronze といった名前よりも、Database・Schema・テーブル名で役割を分ける という設計が中心になります。
よくあるパターンは、次のようなイメージです。
- Database:業務ドメイン(SALES・MARKETING など)
- Schema:レイヤー(RAW/STG/MART など)
- Table:ソースシステム+エンティティ名
たとえば、受注データなら
SALES.RAW.orders_raw → SALES.STG.orders_stg → SALES.MART.orders_daily_summary
のように階層が進むイメージです。
Snowflakeの思想は「SQL中心・DWH中心」。
・取込は Snowpipe や COPY INTO
・変換は SQL・ビュー・Tasks
・権限は Role ベース
という世界観なので、ステージングも “SQLで追いやすいシンプルな分割” に寄っていきます。
レイクのように巨大なファイル群を色で分ける、というより、
「使う人が迷わないように Database/Schema/テーブル命名をそろえる」
ことが大事になります。
結果として、アナリストやBIチームが “行き先を迷わない” データ構造が作りやすくなります。
🔥 Databricksのステージング戦略:Bronze/Silver/Goldで“レイク全体の状態”を共有
Databricksでは、レイクハウスの文脈で Bronze/Silver/Gold という分割が広く使われます。
これは単なる名前ではなく、「データがどこまで整っているか」をチーム全体で共有するための 設計言語 です。
典型的な定義は次のようになります。
- Bronze:
- 取込直後の生データ
- 欠損・重複・ノイズあり
- ソースシステムの癖もそのまま
- Silver:
- クレンジング済み
- マスタジョイン実施済み
- 型・項目がそろっていて“業務で使える”レベル
- Gold:
- 部門別・目的別に最適化されたマート
- BI/レポート/ダッシュボードが直接見る層
この「色」の考え方が便利なのは、
・どこまで整っているかを一言で説明できる
・障害調査で“どの層で詰まっているか”を即共有できる
・SLA/権限/監視をレイヤーごとに設計しやすい
という点です。
Databricksでは Auto Loader/Streaming/Lakeflow/Delta Live Tables など、多彩なパイプライン構築手段がありますが、どれを使っても最終的には
「Bronze → Silver → Gold にどう流すか?」
という設計に落ちていくのが大きな特徴です。
⚡ Raw/Bronze/Silver/Goldの“思想の差”とマッピングの仕方
Snowflakeの Raw/Staging と Databricks の Bronze/Silver/Gold は、名前も世界観も少し違いますが、やっていることはかなり近いです。
シンプルにマッピングすると、だいたい次のような対応になります。
- Snowflake RAW(取込直後) ≒ Bronze
- Snowflake STG(クレンジング・ジョイン済み) ≒ Silver
- Snowflake MART/Data Marts ≒ Gold
Snowflake側は
- Database/Schema/テーブル命名で分ける
- SQL中心で流れを表現する
のに対して、Databricks側は - パス/カタログ/テーブル名を Bronze/Silver/Gold で揃える
- パイプラインは Spark/Delta/Lakeflow で柔軟に表現する
という違いがあります。
つまり、“構造と名前で整理する” Snowflake と、
“レイヤーと状態のメタファで整理する” Databricks
という思想差です。
両者を併用する現場では、
- 取込〜加工:Databricks(Bronze/Silver)
- 集計マート〜BI:Snowflake(MART)
という分担もよくあります。
🧭 まとめる
ステージング戦略は、
- Snowflake:Database/Schema/テーブル名で役割を分けるシンプル志向
- Databricks:Bronze/Silver/Gold で状態と用途を共有するレイク志向
という違いがありますが、目指しているゴールは同じです。
「カオスな生データを、誰でも安心して使える形に育ててから渡す」
そのための分割ルールが Raw/Bronze/Silver/Gold です。
ツールの違いにこだわるより、
自社のチーム構成・スキル・運用体制に合わせて
“どこまでをどの層と呼ぶか” を早めに言語化しておくことが、
クラウドデータ基盤の成功を大きく左右します。
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