AIは、情報が足りなくてもそれらしい答えを返してきます。「分かりません」とはなかなか言いません。AIに慣れていない人ほど、この自信のある回答をそのまま信じてしまいます。
この記事では、AIにあえて「分からない」と言わせるプロンプトを紹介します。
なぜAIは「分からない」と言わないのか
AIは基本的に「質問に答える」ように振る舞います。前提が足りないときも、聞き返すより一般論や推測で穴を埋めがちです。
つまり、AIが黙って仮定を置いているのに、人間はそれに気づけません。対策はシンプルで、「聞き返していい」「判断できないと言っていい」と明示的に許可を出すことです。
例:CSVを取り込むスクリプト
違いが分かりやすい例を見てみましょう。
普通に頼んだ場合
CSVファイルをデータベースに取り込むスクリプトを書いてください。
AIはすぐにコードを書いてくれます。ただしその裏で、たくさんの仮定を黙って置いています。文字コードはUTF-8、1行目は見出し、データベースはPostgreSQL、同じデータがあったら上書き、といった具合です。
どれか1つでも実際と違えば、動かないか、もっと悪いことに「動くけれど間違ったデータが入る」スクリプトになります。
先に質問させた場合
CSVファイルをデータベースに取り込むスクリプトを書いてください。判断に必要な情報で足りないものがあれば、書き始める前に質問してください。推測で埋めないでください。
すると、AIは先にこう聞いてきます。
- CSVの文字コードは何ですか?(UTF-8、Shift_JISなど)
- 1行目は見出し行ですか?
- 取り込み先のデータベースとテーブル定義を教えてください
- すでに同じデータがある場合、上書き・スキップ・エラーのどれにしますか?
- 1回に何件くらいのデータを取り込みますか?
どれも、作る前に決めておくべきことばかりです。特にShift_JISは、Excelから書き出したCSVでよくある落とし穴です。
プロンプト例
1. 先に質問させる
回答する前に、判断に必要な情報で足りないものがあれば先に質問してください。推測で埋めないでください。
2. 置いた仮定を書き出させる
回答の中で置いた仮定をすべて列挙してください。
すでに回答をもらった後でも使えます。仮定の一覧を見て、違うものだけ訂正すれば済みます。
3. 確信度を付けさせる
各ポイントに確信度(高・中・低)とその理由を添えてください。
4. 判断を保留していいと伝える
情報が足りず判断できない場合は「判断できない」と答えて構いません。その場合、何があれば判断できるかを書いてください。
どれも、チャットでもエージェントでもそのまま使えます。
どこに仕込むか
毎回打つのは面倒なので、使う頻度に合わせて仕込む場所を変えます。
- その場で一度だけ使う → 依頼文の最後に一文足す
- 自分のチャットでいつも使う → カスタム指示(個人設定)に入れる
- チームのリポジトリで使う → 指示ファイル(CLAUDE.mdなど)に書く
指示ファイルに書くなら、たとえばこんな形です。
## 作業の進め方
- 要件にあいまいな点があれば、実装を始める前に質問すること。
- 推測で仕様を決めた場合は、その仮定を作業の最後に一覧で報告すること。
「AならB、BならA」のループに入ったら
レビューと修正を繰り返していると、Aに直せばB、Bに直せばAと指摘が往復することがあります。これは判断に必要な前提が足りていないサインです。
そのときはこう聞きます。
直前の2回の指摘が矛盾しています。どちらが正しいか決めるために、不足している前提条件を挙げてください。
それでも決めにくければ、比べさせます。
AとBのそれぞれが有利になる条件を、判断軸ごとに表にしてください。
出てきた前提条件こそ、自分が調べたり、チームに確認したりすべき項目です。
よくある失敗
質問が多すぎて、作業が進まない
「足りない情報を聞いて」と頼むと、AIが細かいことまで10個も20個も聞いてくることがあります。そんなときは「重要な質問を3つまでに絞ってください。それ以外は一般的な前提で進めて、仮定として報告してください」と足しましょう。
確信度をそのまま信じる
確信度も、あくまでAIの自己申告です。「高」と書かれていても間違っていることはあります。重要な箇所は、公式ドキュメントや実際の動作で確かめましょう。
簡単な質問にまで使う
「この英単語の意味は?」のような質問にまで「仮定を列挙して」と付けると、返事が長くなるだけです。仕様や設計など、前提によって答えが変わる場面で使いましょう。
まとめ
AIに「分からない」と言わせると、自分が何を知るべきかが見えてきます。AIの限界を探るためではなく、足りないinputを可視化するための聞き方です。
プロンプトは難しいテクニックではありません。「推測しないで」「聞き返して」と一言足すだけで、AIとのやりとりはぐっと安全になります。
この記事は Zenn にも投稿しています。