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【2026年8月調査】OpenAPIって何ができる?日本の業務システム56件の「設計図」公開率を調べてみた

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Last updated at Posted at 2026-08-22

「APIはあります」と言われて安心したあと、開発会社から「仕様書をもらってください」と言われて詰まったことはないでしょうか。

APIがあることと、その設計図が読める形で配られていることは別の話です。そして設計図が無いと、作る前に見積もりが立ちません。

その設計図の書き方の標準が OpenAPI です。日本の業務システム56件について、設計図をどう配っているかを1件ずつ調べました。

結論から書きます。

機械が読める設計図(OpenAPI / Swagger のファイル)を配っているのは、56件中10件。約6分の1です。

この記事では、①OpenAPIとは何かを規格の一文で示し、②56件の内訳を出し、③検討時に何が変わるのかを書きます。


1. OpenAPI とは何か

人が読む説明書と、機械が読む設計図(OpenAPI)を上下に並べて比べた図

OpenAPI Specification は、HTTP APIのインターフェースを記述するための標準です。仕様書の冒頭にはこう書かれています。

The OpenAPI Specification (OAS) defines a standard, programming language-agnostic interface description for HTTP APIs.

言い換えると、「このAPIには、どんな窓口があって、何を渡すと何が返るのか」を、決められた書式で書いたファイルです。拡張子は .json.yaml です。

以前は Swagger という名前でした。いまも Swagger 2.0 形式のファイルが現役で使われています。

1-1. 何が「機械可読」なのか

APIを受付窓口にたとえた図。呼ぶ側から受付窓口へリクエストが下り、レスポンスが返る。窓口の下に相手のシステムがある

ここが一番大事なところです。人が読むHTMLのドキュメントと、OpenAPIのファイルは、書いてある内容が同じでも扱いが違います。

人が読むHTML OpenAPIファイル
人が読む できる できる(読みにくいが)
プログラムが読む できない できる
一覧を機械的に数える 人が数える 自動で数えられる
クライアントを自動生成する できない できる
変更点を差分で見る 目視 ファイル比較で分かる

つまりOpenAPIファイルがあると、「このAPIで何ができるのか」を、人が読む前に把握できます。

実際、この記事の数字も同じ方法で作りました。たとえばkintoneの公式OpenAPIは128パス(Apache-2.0ライセンスでGitHub公開)、freee会計は96パス・151オペレーション(MITライセンス)と、ファイルを機械的に数えた値です。HTMLしか無ければ、この数字は出せません。


2. 56件の内訳

設計図の出し方の内訳。OpenAPIファイルの配布は10件(17.9%)であることを示す横棒グラフ

編集部が56件の「API仕様」欄を1件ずつ読み、設計図の出し方を5つに分類しました。

設計図の出し方 件数 割合
OpenAPI / Swagger のファイルを配布(機械可読) 10 17.9%
機械可読だが OpenAPI ではない(JSON Schema 等) 1 1.8%
人が読むドキュメントのみ(HTML・PDF・Word 等) 22 39.3%
申込・NDA・規約同意を経て開示(一般公開ではない) 5 8.9%
仕様書そのものが無い/公開を確認できない 18 32.1%
合計 56 100%

2-1. OpenAPI ファイルを配っている10件

システム 確認できた内容
kintone OpenAPI 3.1.0・128パス(公式GitHub、Apache-2.0)
freee会計 OpenAPI 3.0.1・96パス / 151オペレーション(公式GitHub、MIT)
freee人事労務 OpenAPI 3.0.1・68パス / 109オペレーション / 177スキーマ
ジンジャー OpenAPI 3.1.0・177パス / 155タグ
SmartHR Swagger 2.0・60パス / 120オペレーション(無認証で取得可)
マネーフォワード クラウド経費 Swagger 2.0・88パス / 117オペレーション / 106定義
board OpenAPI 3.1.0・53パス / 89オペレーション / 139スキーマ
ジョブカン会計 OpenAPI 3.0準拠・8パス、いずれもGETのみ
invox OpenAPI 仕様がダウンロード可(ドキュメント 1.35.0)
jGrants OpenAPI 3.1.0(jgrants-api.yaml・39.0KB・2024年10月7日公開)

行政システムである jGrants が入っているのは注目に値します。項目ごとに説明と取りうる値が書かれ、業種・地域・利用目的は選択肢まで明記されています。

もう1件、マネーフォワード クラウド給与は OpenAPI ではありませんが、リソース定義を JSON Schema(JSON Hyper-Schema) で提供しています。機械可読という意味では同じ効果があるため、別分類にしました。

2-2. 「人が読むドキュメントのみ」が22件

一番多い層です。ドキュメントはあります。ただしファイルは配られていません。

  • マネーフォワード クラウド会計:OpenAPIの配布なし、HTMLドキュメントのみ
  • Garoon:開発者サイトのHTMLドキュメント(エンドポイントごとのページ)。同じサイボウズでも kintone はGitHubでOpenAPIを公開しているのに、Garoon には見当たりません
  • KING OF TIME:HTML形式の公開仕様書(API Blueprint系)。メソッド+パスの組を41件確認
  • Zoho CRM:HTMLドキュメント(6系統)。英語のみ
  • Yahoo!ショッピング ストアクリエイターPro:11系統のAPIがHTMLとPDFで公開、サンプルコードはPHP
  • Jotform:ドキュメントはあるがエンドポイントの一覧が無い

**この層は「調べられるが、手間がかかる」**という位置づけです。人がページを開いて数える必要があります。

2-3. 「申込・NDA を経て開示」が5件

eLTAX / PCdeskジョブカン勤怠管理formrunMOVO Berth楽楽精算 の5件です。

見積もりを取る前に仕様が読めない、という状態です。手戻りのリスクがここにあります。


3. なぜこの分類を手でやったのか

数え方について、正直に書いておきます。

最初、編集部はキーワード照合でこれを数えようとしました。台帳の記述に「OpenAPI」という語が入っていれば配布あり、という判定です。

これは間違いです。 実際に32.1%という値が出て、正しい17.9%のほぼ倍になりました。

原因は単純で、台帳の記述には**「OpenAPIファイルの配布は確認できていない」**という文が入っているからです。語だけを見ると、無いと言っているのに有ると数えてしまいます。

実際に取り違えたのは GaroonMisocaマネーフォワード クラウド会計 でした。いずれも「OpenAPIの配布は確認できていない」と書かれている系統です。

そこで56件すべてを人が読んで分類し直しました。 判断の元にした記述と出典URLは全件公開しています。読者が検算できる形にしてあります。


4. 設計図があると、検討で何が変わるか

設計図が配られていると、見積もりの前提・確認用の画面・雛形の自動生成・変更の追いやすさが変わることを示した図

「機械可読だと便利」では業務の判断になりません。検討のどの段階で、何が変わるのかを書きます。

段階 OpenAPIファイルあり HTMLのみ 申込制
できることの把握 ファイルを開けば一覧できる ページを人が読む 読めない
見積もり 対象と操作が確定した状態で出せる 概算になる 前提が置けない
開発 クライアントを自動生成できる 手で書く
仕様変更の検知 新旧ファイルの差分で分かる お知らせを読む

一番効くのは見積もりの段階です。

「顧客情報を連携したい」という要件に対して、OpenAPIファイルがあれば「顧客オブジェクトはこの項目を持っていて、登録と更新ができる」とその場で確定します。HTMLしかなければ、開発会社が読む工数がかかります。申込制なら、申込が通るまで見積もりが出せません。

4-1. APIが扱う「もの」の件数

APIでできる操作を取る・入れる・直す・消すの4つのカードに整理した図。4つ全部が開いているとは限らないと注記

設計図があると、APIが扱う対象(オブジェクト)を機械的に数えられます。編集部は公開済み28系統について、合計747件のオブジェクト定義を採取しました。

ただし件数の多い順に優劣を付けることはできません。 粒度が製品ごとに違うからです。ある製品が「請求書」を1オブジェクトとして持ち、別の製品が「請求書ヘッダ」「請求書明細」に分けていれば、後者のほうが件数は多くなります。多いほうが優れているわけではありません。


4-2. ★パスの数を、優劣として読まないでください★

上の表に「128パス」「96パス / 151オペレーション」といった数字が並んでいます。この数字の意味を書いておきます。

  • パス = 窓口の住所の数(/companies /deals のような単位)
  • オペレーション = その住所に対してできる操作の数(同じ住所に「取得」と「登録」があれば2)
  • スキーマ/定義 = やり取りするデータの形の定義数

つまりオペレーションがパスより多いのは自然です。1つの窓口で複数の操作ができるからです。

そして数が多い=機能が豊富、とは限りません。 設計の粒度の問題です。1つの窓口に操作をまとめる設計と、窓口を細かく分ける設計では、同じ機能でも数が変わります。

実務で効くのは、数ではなく次の2つです。

  1. 自分が動かしたい対象が、そのパスの一覧にあるか
  2. その対象に対して、POST(登録)や PUT(更新)があるか

ジョブカン会計の「8パス、いずれもGETのみ」が、この2つを一度に示す例です。パス数が少ないことより、GETしかないことのほうが効きます。

boardの「139スキーマ・日本語ラベル付きフィールド455件」も見ておく価値があります。フィールドに日本語のラベルが付いているということは、仕様書を読む人が項目の意味を推測しなくて済む、ということです。これは変換の作業量を直接減らします。

4-3. 設計図が無くても、作れないわけではありません

念のため書いておきます。人が読むドキュメントしかない22件でも、連携は作れます。

違うのは作る前に確定できることの量です。

設計図あり 人が読むドキュメントのみ
作れるか
窓口の数を数えられるか 人が数える
契約前に試せるか ツールで試せることがある ドキュメントを読んで想像する
見積もりの前提 置ける 置いて、外れたら追加費用

この記事は「設計図が無いベンダーは劣っている」と言っているのではありません。 稟議を通す前に、どちらなのかを知っておくと見積もりの幅が読める、という話です。


5. 国際比較は成り立ちません

「日本はOpenAPIの普及が遅れている」と書きたくなるところですが、書けません。

比べようとすると、こうなります。

出どころ 何を数えた値か 分母
この記事 日本の業務システム56件のうち、OpenAPIファイルを配布 56(編集部が選んだ)
開発者アンケート 「OpenAPIを使っている」と回答した開発者の割合 回答者数
公開APIディレクトリ 登録されているAPI仕様の数 登録されたものだけ

3つとも分母が違います。 17.9%と、他所の何%かを並べても、意味のある比較になりません。だから**「日本は遅れている」とも「進んでいる」とも書きません。**


6. 読者の行動:3つ見るだけ

設計図はあるか・誰でも読めるか・何が扱えるかの3つを確認するチェックリストの図

検討中のシステムについて、開発者向けページを開いて、次の3つを順に見てください。

1. OpenAPI / Swagger のファイルへのリンクがあるか

.json.yaml のダウンロードリンク、あるいはGitHubへのリンクを探します。あれば最良です。

2. HTMLのドキュメントだけか

エンドポイントの一覧ページがあるかを見ます。一覧が無いドキュメントは、全体像が掴めません(Jotform がこの例です)。

3. 申込やNDAが要るか

「APIのご利用には申込が必要です」と書かれていたら、見積もりの前に申込を出す必要があります。ここを見落とすと手戻りになります。


7. まとめ

  • 機械が読める設計図を配っているのは、56件中10件(17.9%)
  • 人が読むドキュメントのみが22件(39.3%)、仕様書そのものが確認できないのが18件(32.1%)
  • 申込・NDA が要るのが5件。見積もり前に読めません
  • 設計図の有無が一番効くのは見積もりの段階
  • 分母が違うので国際比較はできません

「APIはありますか」の次に聞くべきなのは、こうなります。

「API仕様書は公開されていますか。OpenAPI などのファイルで配布されていますか。
それとも申込が必要ですか。」


この記事の調査範囲について

  • 対象は、編集部が一次調査を終えて公開している56システムです。日本の業務システム全体ではありません。「17.9%」は56件に対する割合であって、日本全体の値ではありません。
  • 「17.9%しかAPIが無い」ではありません。 APIの有無と、設計図の配り方は別の話です。APIの公開状況は別の回で扱っています。
  • 確認時期は2026年7月28日〜8月19日です。
  • 分類は編集部が手で割り当てました。 キーワード照合では逆に読むためです(§3)。
  • OpenAPI は ISO や JIS の規格ではありません。「業界標準」という書き方は避けています。

規格の出典は OpenAPI SpecificationOpenAPI Initiative です。各システムの「API仕様」欄は RenkeiMap で1件ずつ、出典URLと調査日つきで公開しています。

調査対象の56システム(全件・公式ページ)
  1. Airワーク 採用管理
  2. ANDPAD
  3. board
  4. ケア樹
  5. CLIUS
  6. いえらぶCLOUD
  7. Comiru
  8. サイボウズ Office
  9. ダンドリワーク
  10. どっと原価
  11. e-Gov電子申請
  12. e内容証明
  13. e-Tax
  14. e-TUMO
  15. eLTAX / PCdesk
  16. formrun
  17. freee人事労務
  18. freee会計
  19. freee申告
  20. GビズID
  21. Garoon
  22. Google Classroom
  23. Google フォーム
  24. Google スプレッドシート
  25. Google Workspace
  26. Grafferスマート申請
  27. HubSpot
  28. いえらぶBB
  29. invox
  30. jGrants
  31. ジンジャー
  32. ジョブカン会計
  33. ジョブカン勤怠管理
  34. ジョブカン給与計算
  35. ジョブカン労務HR
  36. Jotform
  37. KING OF TIME
  38. kintone
  39. LoGoForm
  40. Microsoft Forms
  41. Misoca
  42. マネーフォワード クラウド会計
  43. マネーフォワード クラウド経費
  44. マネーフォワード クラウド給与
  45. マネーフォワード クラウド請求書
  46. マネーフォワード クラウド社会保険
  47. MOVO Berth
  48. 楽楽精算
  49. Salesforce Platform
  50. Salesforce Sales Cloud
  51. Shopify
  52. Slack
  53. SmartHR
  54. Yahoo!ショッピング ストアクリエイターPro
  55. 弥生(会計/青色申告 オンライン/Next)
  56. Zoho CRM

※ 一次調査を終えて公開している 56 件です。判断の元にした記述・出典URL・調査日は RenkeiMap に1件ずつ載せています。

7-1. あわせて読む

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※ 筆者は日立系ITベンダー・介護ソフトベンダー・大学病院IT部門を経て独立し、現在は中小企業のIT・DX支援をしながら、業務システムの「つながり」を一次資料で調べています。 文中の「編集部」は、筆者が所属する IT連携マップ編集部 のことです。誤りを見つけられましたら 訂正窓口(無料・アカウント不要)へお願いします。訂正履歴も公開しています。

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