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【2026年8月調査】「APIあります」の実態を調べてみた|日本の業務システム56件を2軸(公開度 × 契約条件)で分類した

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公式サイトに「API連携に対応」と書いてあった。だから大丈夫だと思って稟議を通したら、実際には上位プランの契約が必要だった——という話を、何度か聞きました。

「API連携できます」という一文は、実は何通りにも読めます。日本の業務システム56件を、公開度(誰に開かれているのか)と契約条件(いまの契約のままで使えるのか)の2軸で分類してみました。

結論から書きます。

「第三者に公開されている」のは56件中27件。半分以下です。
さらにその27件のうち5件は、特定の契約プランでないと使えません。
そして28件は、契約条件が公開資料から読めません。

最後の28件が、この記事で一番言いたいことです。これは調査不足ではなく、公開情報の側の状態です。


1. なぜ2つの軸なのか

「APIあります」を、誰に開かれているかと契約の壁があるかの2軸で掛け合わせたマス目の図

「APIがあるか」を ○ × で聞くと、答えが噛み合いません。ベンダーは嘘をついていないのに、こちらの期待と違うことが起きます。

原因は、「ある/ない」の中に別々の話が2つ混ざっているからです。

聞いていること
① 公開度(誰に開かれているか) 第三者(あなた、あなたが頼む開発会社)が使えるのか
② 契約条件(契約の壁があるか) いまの契約プランのままで使えるのか

①が「公開」でも、②に壁があれば今すぐは使えません。この2つを分けないと、「APIあります」の意味が確定しないのです。


2. 軸①:公開度 — 誰に開かれているか

業務システム56件を、第三者に公開27件・申込審査12件・確認できない8件など6つに分けた横棒グラフ

56件を、公式資料の記述に基づいて6つに分けました。

誰に開かれているか 件数 意味
第三者に公開されている 27 仕様が誰でも読め、自分で開発できる
申込・審査・NDA が必要 12 手続きを経れば使える
シリーズ内・パートナー等に限定 7 外部の開発者向けではない
明示的に不可 1 提供しないと書かれている
公開情報の範囲で確認できない 8 無いとは限らない
その他の理由で確認できず 1 調査の手が届かなかった 1 件

2-1. 「確認できない」8件について

ここは慎重に書きます。「APIが無い」とは書けません。

編集部が確認したのは、公式サイトの製品ページ・ヘルプ・開発者向けページ・サイトマップです。そこに公開APIの案内が見つからなかった、というだけです。問い合わせれば個別対応があるかもしれませんし、パートナー向けに提供しているかもしれません。

「無いことの証明」はしていない、という区別を、この記事全体で守っています。

2-2. 「明示的に不可」は1件だけ

逆に言うと、はっきり「提供しません」と書いてあるのは1件だけです。残りは、程度の差はあれ何らかの道がある可能性が残っています。


3. 軸②:契約条件 — 契約の壁があるか

契約の壁について、読めない28件・壁は無い18件・壁がある10件の内訳を示した積み上げ棒グラフ

次に、契約条件で制限されるかを見ます。

契約の壁 件数
壁がある(上位プラン限定・オプション契約など) 10
壁は無い 18
公開資料から読めない 28

28件が「読めない」。これが半分です。

ここが、この記事で一番重要な数字です。編集部が調べ足りないのではありません。 公式サイトの料金ページ・プラン比較表・利用規約を確認したうえで、APIが使える条件がどこにも書かれていないという状態です。

3-1. なぜ書かれていないのか

理由は推測になるので断定しません。ただ、構造としてはこう見えます。

  • 料金ページは機能の比較表であって、APIは機能一覧に載らないことが多い
  • 開発者向けページは技術の説明であって、契約条件は書かない
  • その2つの間が空いている

つまり、悪意ではなくページの分担の隙間に落ちている、という見方ができます。


4. 2つの軸を掛けると、こうなります

公開API27件から契約の壁つき5件を引くと、そのまま使えるのは22件になることを示した図

ここが記事の中心です。

「公開APIあり」の27件のうち、5件は契約の壁つきです。

つまりそのまま使えるのは22件。56件の4割です。

代表的な例がSalesforce Sales Cloudです。API自体は公開されていて仕様も読めますが、利用できるエディションが決まっています。下位プランの契約では、仕様書を読めても呼び出せません。

kintone も、コース(プラン)によって使える範囲が変わります。freee会計freee人事労務 も、公開APIがある一方でプランの条件が付く部分があります。

「APIはありますか」だけを聞くと、この5件は「はい」と返ってきます。 そして稟議を通したあとで、プラン変更の費用が出てきます。


5. 8つの型 — 「できます」の中身

もう少し細かく見ると、「API連携できます」の意味は8通りに分かれました。

中身 系統数
T1 第三者に開かれた公開API 仕様が誰でも読め、自分で開発できる 25
T2 上位プラン/有料オプション限定 公開APIだが、契約の条件がつく 8
T3 申請制・審査制・NDA 仕様書は一般公開されない 6
T4 自社シリーズ内だけ 外部の開発者向けではない 2
T5 パートナー/個別対応 「API連携実績」はあるが、仕様の配布はない 5
T6 API提供側ではない その製品はAPIを使う側。出す側ではない 3
T7 公開APIの案内を確認できず 無いとは限らない 9
T8 iPaaS/コネクタ経由でのみ 単体で叩けるAPIは公開していない 1

合計が56を超えます。 1系統が2つの型に当てはまることがあるためです(freee会計freee人事労務ジョブカン会計の3件)。

たとえば freee会計 は、公開APIがある(T1)と同時に、一部の機能はプランの条件が付く(T2)型は排他的なラベルではありません。

★このことは、聞き方に効きます。★ 「御社のAPIはどの型ですか」と聞いても答えは出ません。「この機能を、このプランで、第三者が作った仕組みから使えますか」 — 機能とプランと主体を全部入れて聞くと、答えが1つに決まります。

5-1. T6「API提供側ではない」に注意

これは知っておくと得をします。

製品ページに「API連携対応」と書かれていても、「うちの製品が、他社のAPIを呼びに行きます」という意味のことがあります。「銀行のAPIに接続して明細を取り込みます」がこれです。

その製品は あなたが欲しいのは
T6の記述 APIを使う側(利用者) ✗ 役に立たない
あなたの用途 APIを出す側(提供者) ○ こちらが要る

つまりあなたがその製品のデータを外に出したいとき、この記述は何の役にも立ちません。

判別は簡単です。「そのAPIを叩くのは、御社ですか、こちらですか」と聞いてください。答えが「弊社が」なら、あなたの用途とは向きが逆です。

5-2. T8「iPaaS 経由でのみ」

単体で叩けるAPIは公開していないが、特定のiPaaSのコネクタとしてなら繋がる、という形です。この場合、そのiPaaSの契約が前提になります。費用の話が1つ増えます。

5-3. 型ごとの実例

型は抽象的なので、実際の記述を並べます。どれも公式サイトに書かれていることです。

T1(第三者に公開)— SmartHR

「APIの利用には別途お金がかかりますか? → SmartHRをご利用いただいていれば、無料で利用できます。」

しかも開発者向けのサンドボックス環境があり、SmartHR未利用者でも無料でAPIを試せます。Webhookも提供されています。開発者向けサイトを見れば、契約前に何ができるか分かります。

T3(申請制・NDA)— ジョブカン勤怠管理

API連携は有料プラン契約者のみで、事前申請制です。「APIお申し込みフォーム」から申請し、土日祝を除く3営業日以内に利用可能になります。開発者向けAPIの仕様書は「有料プランでご契約かつNDA締結の場合に限り」公開されます。

3営業日という数字が書かれているのは親切です。 スケジュールが引けます。

T4(シリーズ内だけ)— ジョブカン労務HR

「『ジョブカン給与計算』をご利用の場合は事業所・従業員情報をAPIで連携することができます。」

そして他社ソフトとの連携については、こう明記されています。

「他社ソフトとの連携に関しましては、ジョブカン労務HRでは直接連携する機能はありません。」

はっきり書いてあるのは、むしろ良いことです。調べる時間が減ります。

T5(実績はあるが仕様の配布はない)— ダンドリワーク

「API連携実績一覧」ページがあり、CRM・SFA・電子契約・販売管理・基幹システムとの連携実績が公開されています。ただし自社開発者向けの公開API仕様の配布はなく、連携は個別相談です。

「実績あり」は「あなたが作れる」ではありません。ここを読み違えると、開発会社に見積もりを頼んだ段階で止まります。

T7(案内を確認できず)— サイボウズ Office

クラウド版では、顧客が連携APIを利用してプログラムを作成することを許可していない、と公式の開発者コミュニティで運営事務局が回答しています。公式の拡張経路はkintoneとの併用連携です。

T8(コネクタ経由でのみ)— Microsoft Forms

単体の公開REST APIではなく、Power Automate・Logic Apps・Copilot Studio用のコネクタとして提供されています。新しい回答をきっかけに動かす仕組みと、フォーム定義・回答内容の取得ができます。ただしPower Appsでは使えません。


6. ★型ごとの全リストを出します★

「APIあります」の中身を8つの型に分け、それぞれの系統数を並べた横棒グラフ

抽象的な話が続いたので、56件を型ごとに並べます。 自分が使っているシステムを探してください。

件数 該当する系統
T1 第三者に開かれた公開API 23 GaroonGoogle ClassroomGoogle WorkspaceGoogle スプレッドシートHubSpotJotformKING OF TIMEMOVO BerthMisocaSalesforce PlatformShopifySlackSmartHRZoho CRMboarde-Gov電子申請invoxjGrantsジンジャーマネーフォワード クラウド会計マネーフォワード クラウド経費マネーフォワード クラウド給与マネーフォワード クラウド請求書
T1かつT2 公開APIだが、一部にプランの条件がつく 2 freee会計freee人事労務
T2 上位プラン・有料オプション限定 5 Salesforce Sales Cloudkintoneformrun楽楽精算どっと原価
T3 申請制・審査制・NDA 5+1 e-TaxeLTAX / PCdeskYahoo!ショッピング ストアクリエイターProジョブカン勤怠管理ケア樹ジョブカン会計(T2でもある)
T4 自社シリーズ内だけ 2 ジョブカン労務HRジョブカン給与計算
T5 パートナー/個別対応 5 ANDPADCLIUSComirue-TUMOダンドリワーク
T6 API提供側ではない 3 GビズIDマネーフォワード クラウド社会保険弥生
T7 公開APIの案内を確認できず 9 Airワーク 採用管理Google フォームGrafferスマート申請LoGoForme内容証明freee申告いえらぶBBいえらぶCLOUDサイボウズ Office
T8 iPaaS/コネクタ経由でのみ 1 Microsoft Forms
  • T1 — ここに載っていれば、仕様書を読んで見積もりを取るところから始められます。
  • T2 — ★この5件が、稟議の後で費用が出てくる層です。★ 先にプランの条件を確認してください。
  • T3申請から利用開始までの日数を聞いてください。 仕様が読めるのは申請が通った後なので、それまで見積もりの前提が置けません。
  • T7 — ★もう一度書きます。**この9件は「無い」ではありません。**★ 公開情報を確認した範囲で見つからなかった、というだけです。問い合わせれば個別対応があるかもしれません。

7. 稟議の前に確認する4点

誰が使えるか・いまの契約で使えるか・何ができるか・続けられるかの4点を並べたチェックリストの図

以上を、確認事項に落とします。ベンダーに聞くのは4つだけです。

1. いまの契約プランのままで使えますか

これが5件を救います。「上位プランが必要ですか」「オプション契約が要りますか」と聞いてください。

2. 申請や審査は必要ですか

12件が該当します。申請から利用開始までの期間も聞いておくと、スケジュールが立ちます。

3. 仕様書は公開されていますか。それとも申込後ですか

見積もりを取る前に読めるかどうかが変わります。読めない場合、開発会社は前提を置いて見積もるしかなく、その前提が外れると追加費用になります。

4. 取得だけですか。登録・更新もできますか

APIがあっても読み取り専用のことがあります。たとえばジョブカン会計の公開APIは8本すべてGET(取得)のみで、書き込み系の操作はありません。

「データを自動で入れたい」という要件なら、この4番目が満たされないと成立しません。


8. 聞き方の例

同じ「APIはありません」の中身が6通りあることと、それぞれ次にやることを並べた図

以上をまとめると、質問文はこうなります。

「販売管理システムの顧客情報を、会計システムへ1日1回連携したいと考えています。
対象は顧客コード、会社名、住所、電話番号です。
① いまの契約プランのままAPIを使えますか
② 利用に申請や審査は必要ですか
③ API仕様書は契約前に読めますか
④ 顧客情報の取得だけでなく、登録・更新もできますか」

「APIありますか」と聞くより、返ってくる情報の量がまったく違います。

そしてもし答えが「APIはありません」だったとしても、まだ終わりではありません。CSVや純正連携という道が残っています(別の回で扱います)。


9. ベンダーを責める話ではありません

最後に立場を書いておきます。

28件が契約条件を書いていないこと、8件で案内が見つからないこと——これらを不親切だと批判するつもりはありません。

APIを公開して維持するというのは、ベンダーにとって恒久的な保守責任を負うことです。一度公開すれば、勝手に止められません。仕様を変えるときは利用者に告知が要ります。その負担を引き受けたうえで公開している27件は、むしろ評価されるべきだと考えています。

この記事の目的は、発注する側が構造を理解して、正しく聞けるようになることです。


10. まとめ

  • 「第三者に公開」は27件 / 56件。半分以下
  • そのうち5件は契約の壁つき。そのまま使えるのは22件
  • 契約条件が公開資料から読めないのが28件(調査不足ではなく公開情報の状態)
  • 「明示的に不可」は1件だけ。残りには何らかの道がある可能性
  • 「API連携できます」は8通りに読める。特にT6「API提供側ではない」(その製品はAPIを使う側)に注意
  • 稟議の前に聞くのは4点:プラン/申請/仕様書/読み書きの別

「APIはありますか」ではなく、「いまの契約で、登録・更新まで、申請なしに使えますか」。


この記事の調査範囲について

  • 対象は、編集部が一次調査を終えて公開している56システムです。台帳にはまだ一次調査を終えていない行が134あります。「日本の業務システム190個を全部調べた」ではありません。
  • 確認時期は2026年7月28日〜8月19日です。プランも仕様も変わります。
  • 「公開情報を確認した範囲では見つからなかった」と「提供していない」は区別しています。 8件は前者です。
  • 分類は編集部が手で割り当てました。 台帳の記述は「公開APIの記載なし」のように無いことを言うために語が出るため、キーワード照合では逆に読みます。判断の元にした記述と出典URLは全件公開しています。

各システムの「API」「契約」の欄は RenkeiMap で1件ずつ公開しています。主な参照先はkintonefreee会計freee人事労務Salesforce Sales CloudHubSpotSmartHRboardジョブカン会計マネーフォワード クラウド会計e-Gov電子申請jGrants です。

調査対象の56システム(全件・公式ページ)
  1. Airワーク 採用管理
  2. ANDPAD
  3. board
  4. ケア樹
  5. CLIUS
  6. いえらぶCLOUD
  7. Comiru
  8. サイボウズ Office
  9. ダンドリワーク
  10. どっと原価
  11. e-Gov電子申請
  12. e内容証明
  13. e-Tax
  14. e-TUMO
  15. eLTAX / PCdesk
  16. formrun
  17. freee人事労務
  18. freee会計
  19. freee申告
  20. GビズID
  21. Garoon
  22. Google Classroom
  23. Google フォーム
  24. Google スプレッドシート
  25. Google Workspace
  26. Grafferスマート申請
  27. HubSpot
  28. いえらぶBB
  29. invox
  30. jGrants
  31. ジンジャー
  32. ジョブカン会計
  33. ジョブカン勤怠管理
  34. ジョブカン給与計算
  35. ジョブカン労務HR
  36. Jotform
  37. KING OF TIME
  38. kintone
  39. LoGoForm
  40. Microsoft Forms
  41. Misoca
  42. マネーフォワード クラウド会計
  43. マネーフォワード クラウド経費
  44. マネーフォワード クラウド給与
  45. マネーフォワード クラウド請求書
  46. マネーフォワード クラウド社会保険
  47. MOVO Berth
  48. 楽楽精算
  49. Salesforce Platform
  50. Salesforce Sales Cloud
  51. Shopify
  52. Slack
  53. SmartHR
  54. Yahoo!ショッピング ストアクリエイターPro
  55. 弥生(会計/青色申告 オンライン/Next)
  56. Zoho CRM

※ 一次調査を終えて公開している 56 件です。判断の元にした記述・出典URL・調査日は RenkeiMap に1件ずつ載せています。

※ 筆者は日立系ITベンダー・介護ソフトベンダー・大学病院IT部門を経て独立し、現在は中小企業のIT・DX支援をしながら、業務システムの「つながり」を一次資料で調べています。

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