はじめに
ACL 2026(Long Papers)から以下の論文
[1] Di Wu, et. al. On-Policy Reinforcement Fine-tuning with Offline Reward for Multi-Step Embodied Planning
のまとめ
- 論文:https://aclanthology.org/2026.acl-long.1822.pdf
- コード:https://github.com/mail-taii/Reinforced-Reasoning-for-Embodied-Planning
- ベースモデル:Qwen2.5-VL-7B
1. 概要
- 本手法 ORBITは、VLM によるロボットの高レベルな Task Planning を、強化学習で改善するしくみ
- モデルが生成した行動列と保存済みのExpert Trajectoryを比較して報酬を計算する点が特徴
上図右のようにTask Planingを教師ありで学習させると overfitting してしまう。
一方で、Online RL だと overfitting の恐れが少ないが、上図左のように一般的には VLM が選択した行動を環境やシミュレータで実行し、状態遷移と報酬を得ることになる。そのため、ロボットのタスクが長くなると、環境との相互作用に時間がかかり、成功・失敗などの終端報酬も疎になる。
ORBITは学習中の環境実行を省きながら、現在のVLMが生成した回答を用いるOn-policy Reinforcement Fine-Tuning(RFT)を行う。具体的には最初にSFTを実施し、その後、Offline RewardとGRPOによってモデルを更新する。
2. この研究でのTask Planningとは
本研究のPlannerは、関節角度・トルク・軌道のような低レベル制御値を直接出力しない。ロボットに実行させる高レベルな離散行動列(Action Sequence / Executable Plan)を生成する。
- 入力:自然言語のタスク指示、ロボットの視点画像、これまでの行動履歴
- 出力:場面に関する説明や推論、自然言語の計画、および実行可能なAction Sequence
例として「リンゴを取り、あらかじめ決めておいたソファに置く」というタスクを考える。
このように、画像とinstructionが与えられる。これを入力とし、以下の Task Planing を出力する。
{
"language_plan": "リンゴを見つけ、把持し、ソファーまで移動して配置する",
"executable_plan": [
{"action": "Find", "target": "apple"},
{"action": "PickUp", "target": "apple"},
{"action": "Navigate", "target": "sofa"},
{"action": "PutDown", "target": "apple"}
]
}
状況としては以下(ただし画像は出力しない)。
3. 全体フロー
まず state を以下のように表す。
s_n = (g, o_n, a_{0:n-1})
- $g$:タスク目標
- $o_n$:時点
nの視覚観測 - $a_{0:n-1}$:過去の行動履歴
VLMはこの条件の下で、残りの行動列をまとめて予測する。
\hat{a}_{n:} \sim \pi_\theta(\cdot \mid s_n, L, P)
$\pi_\theta$:学習対象のVLM
L:言語指示
P:固定プロンプト
学習は
- SFT:Expert風の推論文と行動列を模倣し、出力形式や基礎的な計画能力を獲得する。
- RFT:Offline rewardを用いた On policy 強化学習で汎化性能を獲得する。
とした2段階。
さらにRFT部分は以下のステップで
- Offline Reward:VLMが同じ入力について複数の回答を生成し、各回答の行動列をExpertと比較し、数値報酬を計算する
- GRPO:グループ内の相対的な報酬によりVLMのパラメータを更新する
- データフィルタリング:正解率が極端な候補群を除外し、学習信号を確保する
学習する。
4. SFT:正解トークンを模倣する段階
最初のSFTでは、Rewardは使用しない。正解応答に含まれる推論文と行動列の各トークンについて、尤度を最大化する。通常の自己回帰モデルとして書けば、Loss は以下である。
\mathcal{L}_{\mathrm{SFT}}(\theta)
= -\mathbb{E}_{(x,y^*)\sim \mathcal{D}}
\left[\sum_{t=1}^{T} \log \pi_\theta(y_t^*\mid x,y_{<t}^*)\right]
$x$:入力
$y^*$:正解応答
$t$:出力トークンの位置
SFTは、記録された正解の模倣には適しているものの、別解を明示的に評価しない。よって汎化性能が低い。
5. RFTのstep1:Offline Reward:正解行動列との先頭一致を評価
まず同じ入力 x に対して、temperatureなどを利用して現在の方策から複数の回答を生成する。
y_1,\ldots,y_G \sim \pi_{\theta_{\mathrm{old}}}(\cdot\mid x)
このそれぞれの回答に対して以下で報酬を決定する。
R_{\mathrm{accuracy}} = \frac{n(n+1)}{k(k+1)}
- $k$:Expertの正解行動列の長さ
- $n$:VLMの出力が先頭から連続して一致する行動数
例えばExpertが A → B → C → D の4行動であれば、以下のようになる。
| 生成した行動列 | 先頭一致数 n | Accuracy Reward |
|---|---|---|
| A → B → C → D | 4 | 1.0 |
| A → B → X → D | 2 | 0.3 |
| A → X → C → D | 1 | 0.1 |
| X → B → C → D | 0 | 0.0 |
途中で誤った場合、その後に同じ行動が現れても先頭一致数は増えない。ロボットの作業手順では、前段の失敗が後続行動の意味を失わせるため、順序を重視した評価となる。
6. RFTのstep2:GRPO:RewardからVLMを更新する
先に求めたORBIT RewardはLossではない。 Rewardを使って相対的なAdvantageを算出し、GRPO(Group Relative Policy Optimization)によってVLMの生成確率を更新する。
各回答 $y_i$ についてReward $R_i$を計算し、グループ内で標準化したAdvantageを求める。
A_i = \frac{R_i-\bar R}{\sigma_R+\epsilon},
\qquad
\bar R=\frac{1}{G}\sum_{i=1}^{G}R_i
$A_i$ が正なら同じグループ内で比較的良い回答、負なら比較的悪い回答である。ORBITの設定では、1入力あたり8候補を生成する。
方策勾配は一般的に以下
\nabla_\theta J(\theta)
\approx \frac{1}{G}\sum_{i=1}^{G}
A_i\nabla_\theta \log\pi_\theta(y_i\mid x)
なので、Offline RewardによるRFTの目的関数を以下で表す。
J_{\mathrm{RFT}}^{\mathrm{off}}(\pi)
= \mathbb{E}_{y\sim\pi(\cdot\mid x)}
\left[A_{\mathrm{off}}(x,y^a;y_E)\log\pi(y\mid x)\right]
-\beta D_{\mathrm{KL}}(\pi\|\pi_{\mathrm{ref}})
- $y$:推論文と行動列を含むVLMの回答全体
- $y^a$:そのうち行動列に該当する部分
- $y_E$:Expert Trajectory
- $A_{off}$:Offline Rewardから求めたAdvantage
- $π_{ref}$:学習の基準となる参照方策
- $β$:元の方策からの逸脱を抑えるKL正則化の重み
実際にはGRPOの最適化には確率比とClippingなどが用いられる。確率比は、
\rho_{i,t}(\theta)=
\frac{\pi_\theta(y_{i,t}\mid x,y_{i,<t})}
{\pi_{\theta_{\mathrm{old}}}(y_{i,t}\mid x,y_{i,<t})}
と定義する。Clippingは1回の更新で生成確率が急変しすぎるのを防ぐ役割を持つ。
7. 実験結果
7.1 ベンチマーク
評価にはEmbodiedBenchを用いる。
- EB-ALFRED:AI2-THOR/ALFREDを基にした家庭内の高レベルタスク。SFTでは同系列の複数サブセットに触れ、RFTはBaseサブセットのみを使用する。
- EB-Habitat:Habitat 2.0を基にした再配置タスク。SFT・RFTの両方に対して未知環境であり、より厳しい転移評価である。
7.2 タスク成功率
- EB-ALFREDではSFTに対して15.1ポイント改善し、最高の72.4%
- EB-Habitatでは22.4%であり、Claude 3.5 Sonnetの70.4%を下回る
7.3 学習効率
学習全体では約4倍の高速化を達成。
7.4 ablation study
SFTを追加で継続してもEB-ALFREDの成功率は改善するが、EB-Habitatでは悪化する。一方、RFTを追加すると両環境で改善する。したがって、単に学習を長くしただけでなく、Rewardによる最適化が有効であったことが示唆される。
8. 制約と課題
- Expertの別解を正しく評価しにくい。 成功可能な別経路でも、Expertと異なれば低い報酬になる
- 物理的な実行可能性を直接学習しない。 衝突、把持可否、アーム到達可能性などは、Action Sequenceの文字列一致だけでは判定できない
- 未知環境への転移には限界がある。 EB-HabitatではRFTによる改善は見られるものの、より大型の汎用VLMとの差が残る
- 実機検証は本論文の主要な評価対象ではない。 EmbodiedBenchを通したシミュレーション上の高レベルタスク評価である
- 学習コストがゼロになるわけではない。 環境ロールアウトを省ける一方、VLMから複数候補を生成し、GRPOで学習する計算資源は必要となる
9. まとめ
- ORBITは、高レベルのロボットTask Planningにおいて、SFTで基礎的な行動計画を学習し、Expertとの先頭一致を用いたOffline RewardでGRPOによる追加学習を行う手法である
- 特徴は、実行環境との相互作用を学習時に必要としない一方、現在のモデルが生成した回答を評価するOn-policy最適化を保持する点にある。EB-ALFREDでは72.4%の成功率を達成し、比較したOnline RLより短時間で学習できた
- ただし、Rewardは物理的な成功を直接表すわけではなく、異なる正解手順や未知環境には限界が残る。今後、Task Planning用のVLMを独自に再学習する際には、Expert一致Rewardに、論理制約・物理制約・目的達成判定をどう加えるかが、重要な研究課題になる





