Red Hat OpenShift Lightspeedとは?
Red Hat OpenShift Lightspeedは、OpenShift Webコンソールに統合された生成AIベースの仮想アシスタントであり、ユーザー
が自然言語で操作や質問を行うことで、OpenShiftの利用を支援する機能です。大規模言語モデル(LLM)と連携し、公式ドキュメントやクラスターの状態情報を基に、具体的な手順提示やトラブルシュートのガイダンスを提供できる点に特徴があります。
従来は専門知識やドキュメント調査が必要で時間がかかっていた領域について、チャット形式で迅速に回答を得られるため、経験の浅いエンジニアの学習促進やスキル習得と上級者の運用効率化の双方に寄与できます。また、OpenAIやAzure OpenAI、IBM watsonxなど複数のLLMプロバイダーに対応し、オンプレミスのOpenShift AI環境とも連携可能です。
OpenShift Lightspeedのユースケース
主なユースケースは、OpenShift環境の運用・保守・学習支援にまとめられます。
まず、自然言語によるQ&A機能として、OpenShiftやK8Sの仕様・設定方法に関する問い合わせへ即時回答が可能であり、ドキュメント検索の手間を省力化する。
次に、トラブルシューティング支援として、Pod・アラート・ログ・YAMLなどのクラスタ情報をコンテキストとして渡し、障害原因の分析や対処方法の提示を受けられる。
さらに、クラスタ観測・分析用途として、現在のリソース状態や異常の要約を対話的に取得できるため、運用監視の効率化にも寄与できる。さらに、GitOpsやパイプラインなどアプリの稼働を支える周辺コンポーネントも対象とし、開発・運用の横断的な支援が可能です。
Red Hat OpenShift on IBM Cloud (RHOIC/ROKS)でLightspeedを使う
Red Hat OpenShift on IBM Cloud(ROKS/RHOIC)においてOpenShift Lightspeedを活用したい場合、回答生成の中核となるLLM基盤として、IBM Cloud上のwatsonx.aiサービス(マネージドLLMサービス)を利用することができました。
2026年5月にOpenAI互換のマネージドLLMサービスであるRed Hat AI Inference Service on IBM Cloudサービスの提供が開始されたので、この記事ではこのサービスを使ってLightspeedを構成してみたいと思います。
Red Hat OpenShift on IBM Cloud (RHOIC/ROKS)クラスターにLightspeedを構成する
Red Hat OpenShift on IBM Cloud (RHOIC/ROKS) クラスターに対しLightspeedを構成するには、まずRed Hat AI Inference Serviceのインスタンスを作成し、推論用LLM環境を準備します。次にOperatorHubからOpenShift Lightspeed Operatorを導入し、推論サービス接続用の認証情報(Secret)およびモデル設定(OLSConfig)を作成します。最後にWebコンソール上で動作確認を行い、対話機能が有効かされていることを確認します。
Red Hat AI Inference ServiceのプロビジョニングとLightspeedで利用するための情報の抽出
サービスインスタンスの作成
- 「名前」に任意のプロジェクト名を「リソース・グループ」はインスタンスを作成するリソースグループを選択し、「作成」をクリックします。
- プロジェクトの作成が行われたのち、プロジェクトのページが表示されるので、
Base URLを控えておきます。ここでは以下のような文字列です。
https://us-east.rhai.ibm.com/v1/projects/27cba369-2a92-4425-bfe1-6cef1632929a/inference
サービスIDとAPIキーの作成
作成したインスタンスにアクセスできるサービスIDとAPIキーを作成していきます。
- サービスIDの ページ にアクセスします
- 「サービスIDの作成」をクリックします
- 「名前」にサービスIDを識別できる任意の名称を入力し、「作成」をクリックします
- 作成されたサービスIDのアクセスのページが表示されます。このあとアクセスポリシーを設定します。画面下部にある「アクセス・ポリシー」の「アクセス権限の割り当て」をクリックします
- 割り当てるアクセス権限は「アクセス・ポリシー」とします
- 対象とするサービスは「Red Hat AI Inference」にチェックを入れ、「次へ」をクリックします
- リソースは「特定のリソース」を選択し、「Project ID」、「string equals」、< Project ID > の値を選択し、「次へ」をクリックします。< Project ID > は先ほど控えた
Base URLのうちprojectsとinferenceの間の文字列が該当します。先ほどの例だとhttps://us-east.rhai.ibm.com/v1/projects/27cba369-2a92-4425-bfe1-6cef1632929a/inferenceのうち27cba369-2a92-4425-bfe1-6cef1632929aがProject IDの値となります。適宜実際の環境のIDと置き換えてください。
- 役割とアクションでは「サービス・アクセス」の「ライター」にチェックを入れ、「次へ」をクリックします
- 画面下部の「追加」をクリックします
- 画面右下の「割り当て」をクリックします
- 続いてAPIキーを作成します。画面上の「APIキー」タブを選択し、「作成」をクリックします
- 「名前」にAPIキーを識別できる任意の名称を入力し、「作成」をクリックします
-
APIキーは一定時間しか表示できません。ダウンロードしてファイルの中身を確認するか、コピーをクリックして控えておきます。APIキーを控えられなかった場合には別のAPIキーを作成して、その値を控えます。APIキーは以下のような32桁の文字列です。(この文字列は有効なキーではないので、ご安心ください)
F8uzC5Zz99pAj2S5-wrAymIX1PC4tMobWCn81MDB5U8l
以降の手順で利用するのは BASE URL と APIキー の2つです。
Lightspeed Operatorのインストールと構成
OpenShiftクラスターの前提
- バージョン: 4.15以降
- インターネットへのアクセス: 必須 (Outbound Traffic Protectionを無効にする、VPCにPublic Gatewayを設定する、Security Groupの許可設定を行うなどクラスターの環境に合わせた構成を行います)
Lightspeedが動かないことの確認
- OpenShift Consoleを開き、右下の「Red Hat OpenShift Lightspeed」の右にあるアイコンをクリックします
- 以下のようなダイアログが表示され、この時点では対話形式で質問することはできません
Lightspeed Operatorのインストール
- OpenShift Webコンソールで「エコシステム」-「ソフトウェアカタログ」で「OpenShift Lightspeed Operator」をクリックします
- 「インストール」をクリックします
- 以下のようなデフォルトの設定のまま「インストール」をクリックします
- インストール中は以下のような画面が表示されます。数分待ちます
- インストールが終わると以下のような表示に変わります
推論サービス接続用のSecretの作成
- OpenShift Webコンソールで「Workloads」-「シークレット」を選択し、プロジェクトは「openshift-lightspeed」とします。「作成」をクリックし、「ソース: YAML」を選択します
- yaml形式でシークレットの情報を設定して、「作成」をクリックします。
apiVersion: v1
kind: Secret
metadata:
name: credentials
namespace: openshift-lightspeed
type: Opaque
stringData:
apitoken: F8uzC5Zz99pAj2S5-wrAymIX1PC4tMobWCn81MDB5U8l
Lightspeed Operatorのカスタムリソースの作成
- OpenShift Webコンソールで「エコシステム」-「インストール済みのOperator」を選択し、「OpenShift Lightspeed Operator」をクリックします。
- 「提供されるAPI」の「OLSconfig」の「インスタンスの作成」をクリックします
- 順番にフィールドへ値を設定していきます。「名前」にそれと識別できる名称を指定します
- 「LLM Settings」のうち「Name」は任意のプロバイダー名称(ここでは「Red Hat AI Inference」を指定)、「Credential Secret」には前のシークレットを指定する手続きで指定した名称(metadata.nameの値、例に示したyamlだと
credentials)を指定します。「Name」の値は後続のOLSSettingの設定(「Default Provider」)で利用します。
- 「Models」の「Name」は
granite-4-0-h-small、「Parameters」の「Tool Budget Ratio」は0.5とします。「Name」の値は後続のOLSSettingの設定(「Default Model」)でも利用します。
- 「URL」は前の手順で控えた
BASE URLの値を記入します
- 「Provider Type」は「rhoai_vllm」を選択し、URLは前の手順と同じく
BASE URLの値を記入します
- すこし飛ばして、「OLS Settings」の「Default Model」には「LLM Settings」の前半で使用した値を指定します。「Default Model」には「LLM Settings」-「Models」-「Name」の値を、「Default Provider」には「LLM Settings」-「Providers」-「Name」
- 最後に画面の最下部の「作成」をクリックします
- OLSConfigsの画面に戻ります。カスタムリソース構成中で「ステータス」の列が「Conditions:ConsolePluginReady, CacheReady, ApiReady」となるまで待ちます。(以下のスクリーンショットはまだ途中の状態のものです。)
Trouble Shooting (その1) うまく起動しない
設定はコレだけでいいはずなのですが・・・私が始めて構築した際にはLightspeedのアイコンが表示されず、Lightsoeedを起動できなくなってしまいました。
ログにはReadiness/Livenessに関するエラーが出力されていたのと、Lightspeedのコンソール・プラグインがうまく起動していませんでした。
コンソール・プラグインが起動起動していない (statusが存在せず、起動していない)
oc get consoleplugin lightspeed-console-plugin -o yaml
apiVersion: console.openshift.io/v1
kind: ConsolePlugin
metadata:
creationTimestamp: "2026-06-23T02:26:59Z"
generation: 1
labels:
app.kubernetes.io/component: console-plugin
app.kubernetes.io/managed-by: lightspeed-operator
app.kubernetes.io/name: lightspeed-console-plugin
app.kubernetes.io/part-of: openshift-lightspeed
name: lightspeed-console-plugin
ownerReferences:
- apiVersion: ols.openshift.io/v1alpha1
blockOwnerDeletion: true
controller: true
kind: OLSConfig
name: cluster
uid: dadea23e-e1e8-4ec0-bff0-ccf954ec4b8d
resourceVersion: "11796568"
uid: 2bb61367-89f0-46e6-a511-461cf8df5d2c
spec:
backend:
service:
basePath: /
name: lightspeed-console-plugin
namespace: openshift-lightspeed
port: 9443
type: Service
displayName: Lightspeed Console Plugin
i18n:
loadType: Preload
proxy:
- alias: ols
authorization: UserToken
endpoint:
service:
name: lightspeed-app-server
namespace: openshift-lightspeed
port: 8443
type: Service
また、Readiness/Livenessに関するエラーはOperatorから導入されているため、特に利用者側で対応することが難しそうなので他の問題を当たりました。
コンソールからプラグインが認識されておらず、SSL証明書を信頼できないケースがあるようなので、その部分の手当てをしてみることにしました。Lightspeedのコンソールプラグイン用サービスに証明書設定を追加し、証明書が作成されたことを確認したうえで、関連するプラグインおよびコンソールのPodを再起動してみました。
oc annotate svc lightspeed-console-plugin \
-n openshift-lightspeed \
service.beta.openshift.io/serving-cert-secret-name=lightspeed-console-plugin-cert
oc get secret -n openshift-lightspeed
oc delete pod -n openshift-lightspeed -l app.kubernetes.io/name=lightspeed-console-plugin
oc delete pod -n openshift-console -l app=console
その結果、Lightspeedがメニューでも表示できるようになり、利用できるようになりました。
Trouble Shooting (その2) 日本語の質問をうまく処理できないケースがある
また、始めて質問を投げたときには、以下のスクリーンショットに示すようなエラーが発生しました。

初回接続時やしばらく使っていなかったあとの接続時には日本語の質問を投げるとエラーになってしまうようで、その場合には以下のように英語の質問を投げた後に日本語の質問を投げると良いようです。

これはOpenShiftやLightspeedではなく、今回使ったRed Hat AI Inference Service on IBM Cloudの問題です。
Lightspeedを使ってみる
たとえば、Lightspeedの導入時にインストールされたワークロードについて聞いてみると、4つのpodが稼働していることや再起動が少なく、正常に動作しているように見えていることを教えてもらえます。コマンドを叩くより直感的に理解しやすいのではないかと思います。
まとめ
OpenShiftの操作体験を大きく変える生成AI機能「Red Hat OpenShift Lightspeed」について、その概要からユースケース、そしてRed Hat OpenShift on IBM Cloud環境における具体的な構成手順までを紹介しました。Lightspeedは、従来であればドキュメント調査やコマンド実行に頼っていた作業を、自然言語での対話を通じて効率化できる点に大きな価値があります。Red Hat AI Inference Service on IBM CloudのようなマネージドLLMサービスと組み合わせることで、環境構築のハードルを抑えつつ、実運用環境でも活用可能なアーキテクチャを実現できます。一方で、今回取り上げたようにプラグインの起動や言語処理に関する注意点もあるため、導入時にはいくつかのポイントを押さえることが重要です。今回直面した導入の際の問題にはLightspeedを使えないのは不自由だなと思わずにいられませんでした。
Lightspeedは単なる便利機能にとどまらず、OpenShift運用の在り方や障害時の対応速度を劇的に変化させられる可能性があると思います。今後、LLMの進化とともにその活用領域はさらに広がることが期待されるため、ぜひ実環境で触れてみて、その価値を体感してみてください。
