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はじめに

この記事は「NTTテクノクロス Advent Calendar 2025(シリーズ1)」の2日目の記事です。

NTT テクノクロスの板垣です。社内ではGIS関連技術のプロジェクトに携わることが多く、これまで様々なGISサービスの開発に従事してきました。

2025年、生成AIと地理空間情報(GIS)の融合が急速に進んでいます。特に注目されているのが、Model Context Protocol(MCP) という新しい標準プロトコルの登場です。MCPは「AIのためのUSB規格」とも呼ばれ、AIエージェントが外部のツールやデータソースと簡単に連携できるようにする画期的な技術です。

本記事では、GISの基礎からAIエージェント、MCPの概要、そして2025年における最新動向まで、包括的に解説します。

GIS(地理情報システム)とは

GISの基本概念

GIS(Geographic Information System)とは、デジタル地図上にさまざまな情報を重ね合わせて管理・分析・可視化するためのシステムです。地理空間データ(位置情報付きのデータ)を座標系に基づいてデータベース管理し、地図上で直感的に表示・解析できるのが特徴です。

GISの活用事例

GISと言われるとピンと来ない方もいるかもしれませんが、一般的には以下のようなことに活用されており私たちの生活に直結した重要なシステムとなっています。

  • 行政: 道路管理、ハザードマップ作成、防災計画立案
  • 物流: 配送ルートの最適化、商圏分析
  • インフラ: 設備点検管理、停電範囲の即時可視化
  • 都市計画: 人口密度分析、施設配置の最適化

AIエージェントとは

AIエージェントの定義と仕組み

AIエージェントとは、人間が細かな指示を出さなくても、与えられた目標を理解して自律的に計画を立て、必要なタスクを遂行する高度なソフトウェアです。内部には機械学習モデル(特に大規模言語モデル=LLM)が搭載され、推論・計画・記憶といった能力を備えている点が特徴です。

基本的な仕組みとして、AIエージェントは目標達成のために外部のツール群(ウェブ検索、ファイル入出力、データベースAPI、他システムへのコマンド実行など)を組み合わせて利用します。各ツールの実行結果やエラーをモニタし、それに応じて次の行動を調整・自己修正しながら一連のタスクを完了させます。

生成AIとの違い

一般的な生成AI(例: ChatGPT)との違いは、タスク達成への主体性にあります:

  • 生成AI: ユーザからの質問に対し単一の回答コンテンツを返す
  • AIエージェント: ユーザの意図するゴールを理解し、必要な一連の作業を自発的かつ連続的に行う

例えば、生成AIが「大阪出張の経路」を尋ねられると新幹線や飛行機での移動手段を回答しますが、AIエージェントであれば「出張の日程と予定から最適な経路を検索し、交通機関の予約まで自動で行う」ことも可能です。

Model Context Protocol(MCP)とは

MCPの概要

Model Context Protocol(MCP)は、生成AI(大規模言語モデルを用いたAIシステム)と外部のデータソース・ツールを接続するために設計されたオープン標準のプロトコルです。2024年11月にAnthropic社によって提唱され、「AIのためのUSB規格」 とも称されています。

MCPの仕組み

MCPは技術的にはJSON-RPC 2.0に基づくクライアント-サーバモデルの通信プロトコルで、言語サーバープロトコル(LSP)から着想を得ています。

具体的には:

  1. サーバ側は提供可能なツール(機能)一覧とそのインタフェース定義を公開
  2. クライアント側のAIエージェントはユーザーからの要求内容に応じて「どのMCPツールをどの引数で呼ぶか」を判断してサーバにリクエストを送信
  3. サーバはリクエストを受けると実システム上で該当アクションを実行し、その結果をAIに返す
  4. AIは受け取った結果を基にユーザーへの応答を生成したり、次の行動を決定

なぜMCPが重要なのか

従来、AIと外部システムを繋ぐには個別のAPI統合ごとに専用コネクタを実装する必要がありました。MCPでは統一された手順・形式で接続できるため:

  • データ保持側: 一度MCP対応すれば複数のAIプラットフォームから利用可能
  • AI開発者側: 各システムごとのカスタム統合を省ける

これにより、生成AIが道具を使えるようになったと表現できます。ローカルフォルダやインターネットを検索したり、MCP対応アプリケーションを利用して作業自体を作ってもらうことができるようになりました。

GIS×MCP:地理空間情報とAIエージェントの融合

GISとMCPの親和性

GISやAIの連携という観点でMCPを見ると、これは 「AIに地理空間の知識と操作能力を与える」 ための理想的な手段となります。

従来のLLMは文章生成は得意でも地理計算は苦手でした。しかしMCP経由でGISの持つ座標変換・ルート検索・地図描画などの機能を呼び出せれば、AIが地理を理解しているかのように振る舞えます。

例えば、ユーザーが「洪水が起きたらこのエリアの影響範囲は?」と質問した場合、AIエージェントはMCP対応の空間解析ツールを選択し、対象エリアの座標やポリゴンを引数として渡します。
ツール側では、あらかじめ用意された洪水浸水想定データを用いて影響範囲を解析し、AIエージェントはその結果をもとにユーザーへ分かりやすい回答を生成できます。

実例:QGISMCPを使ってみる

セットアップ手順

  1. uvのインストール
powershell -ExecutionPolicy ByPass -c "irm https://astral.sh/uv/install.ps1 | iex"
  1. ソースコードのクローン
git clone git@github.com:jjsantos01/qgis_mcp.git
  1. AIエージェントにMCPの設定を追加
    • ツールによって設定方法は異なりますが利用するMCPについての情報を記載します。Visual Studio CodeのGitHub Copilotの場合はmcp.jsonというファイルに以下のような設定を記載します。
"qgis": {
	"command": "uv",
	"args": [
		"--directory",
		"C:\\Users\\<user>\\Documents\\qgis_mcp\\src\\qgis_mcp",
		"run",
		"qgis_mcp_server.py"
	],
	"type": "stdio"
}
  1. QGISのプラグインフォルダに配置
    • 2.でクローンしたプラグインのソースコード(\qgis_mcp_plugin)をQGISのプラグインフォルダに配置します。
`C:\Users\<user>\AppData\Roaming\QGIS\QGIS3\profiles\default\python\plugins\qgis_mcp_plugin`
  1. QGISでプラグインをインストール・起動
    • プラグイン> プラグインの管理とインストール に移動し、Allタブを選択して「QGIS MCP」を検索し、QGIS MCPをインストールします。
    • インストール後、プラグイン> QGIS MCP> QGIS MCPでダイアログを表示させてQGIS MCPのサーバを開始してください。

img1.png

実際の使用例

例題1:地図を操作させてみる

まずは基礎的な地図操作をさせてみましょう。

プロンプト: 「QGISで東京駅を中心とした地図表示をおこなってください。縮尺は1:10000でお願いします。」

→ AIエージェントが自動的に東京駅の座標を取得し、指定された縮尺で地図を表示

img2.png

例題2:地図上にオブジェクトを表示

少しステップアップして、オブジェクトを表示させてみましょう。

プロンプト: 「東京駅から半径500mの円を描いてください。円は半透明でお願いします。」

→ AIエージェントがバッファ解析を実行し、半透明の円を地図上に描画

img3.png

例題3:データレイヤーの操作

実際の利用を想定してデータレイヤーに対する作業をさせてみましょう。
以下の例では東京都オープンデータカタログサイトから「防火・準防火地域」のシェープファイルを取得して表示しております。
このうち、東京駅周辺のデータ(TUP6F1が10のデータ)に絞って表示をさせてみましょう。

プロンプト: 「『防火準防火_R070331』レイヤでTUP6F1が10のデータだけを表示させてください。」

→ AIエージェントが属性フィルタリングを実行し、防火地域のデータのみを表示
※今回はユーザ自身がデータ仕様を確認して「TUP6F1が10のデータ」のような指定を行いましたが、データ仕様をAIエージェントに渡せていれば自律的に表示を行うことも可能です。

img5.png

主なGIS向けMCPサーバプロジェクト

今回はQGISを例にしましたが、QGIS以外にも様々なMCPの取り組みがありますのでご紹介します。

1. ArcGIS Location Services MCP

2. Mapbox MCP Server

3. 国土交通データプラットフォーム MCP Server

  • サイト: https://www.mlit-data.jp/#/Page?id=apps_mcp
  • 国土交通省が公式に提供するMCPサーバ
  • 国土交通省が保有する国土数値情報、ハザードマップ、道路・河川・施設などの基盤データへのアクセスを提供

注意点とセキュリティ

MCP利用時の注意事項

  1. 実行結果の確認: MCP利用したアプリケーション側の実行結果は生成AIには伝わっていないケースがあるため、必ず内容の確認を行いましょう

  2. トークン消費: 生成AIでは一度のリクエストのトークン上限が存在しますが、MCPのトークン消費は大きいため、利用しない時は停止しておきましょう

  3. セキュリティ: 特に怪しいMCPサーバは利用しないようにしましょう。最近はMCP利用したセキュリティ攻撃も出てきており注意が必要です

  4. データガバナンス: 企業内部のデータを扱う場合は、データ移動や複製が発生しないよう設計されたMCPサーバを選択しましょう

まとめ

2025年、GISとAIエージェント、MCPの融合により、地理空間情報の活用が大きく変わりつつあります。製品自体に生成AIを組み込んだものも登場しています。

AIエージェントとMCPを活用することで、従来は専門家しか扱えなかった高度な地理空間分析を、一般のユーザーでも対話形式で実行できるようになることが期待されます。これは地理空間情報の民主化における大きな転換点と言えるでしょう。

今後、ますます多様なMCPツールが登場し、AIエージェント同士が連携して複雑な地理課題を解決する世界も現実味を帯びてきています。GISに不慣れなITエンジニアであっても、MCP時代の到来によって「AIを通じてGISを使いこなす」ことが当たり前になる日も近いかもしれません。

ぜひ、これらの最新動向を押さえ、地理空間情報活用の新たな可能性を探ってみてください。

明日は @horietakehiroさんの「マルチテナントSaaS × Amplify × React × クリーンアーキテクチャ」です。
引き続き、NTTテクノクロスアドベントカレンダーをお楽しみください。

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