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【特許出願】システムエンジニアが個人で特許出願してみました

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個人的に趣味で作成したシステムが
「おもしろいものができた。もしかしたら新規性あるかも?特許とれるかも?」
と思い立ってしまったので、
妄想から特許出願まで、個人で実施した備忘録をこの記事に残します。
同じような志しを持つ人にとって、少しでも参考にして頂けると幸いです。

特許調査と特許願の文章作成には、ChatGPTをフル活用しました。

あくまでも素人が専門家に聞いたり手引きを読んだり調べながら特許出願した方法になります。もしかしたら有識者からみたら、誤ったやり方や非効率なやり方で行っているかもしれません。その際は、ご指摘・ご指導頂けますと幸いです。

1. 前提条件

  • 本職で知り得た情報、本職に関連する技術は用いていません。もし関連する技術の場合は、出願前に素直に勤め先の知財管理部門へ相談しましょう
  • 特許出願や特許調査など、特許に関しては"見たことがある"レベルで全くの素人です
  • 特許検索ができる公式Webサイトで、Google先生に質問するように検索して、「もしかしたら、同じものはないかも?」と感じたところからスタートです

参考までに、特許情報プラットフォームURL

2. 都道府県の知財支援窓口へ連絡

「そもそも特許の専門家と言えば…弁理士さん…だよね?」というレベルでしたが、
私の住む都道府県で「特許出願 無料 相談」で検索したところ、県が主導する知財の支援窓口があり、定期的に無料相談会を実施していることを知りました。

どの都道府県にもあるようです。
相談対象者は、県内の中小企業や個人とのことなので、勇気を振り絞ってまずは電話。
弁理士が同席している無料相談会を予約しました。

3. 無料相談会当日

いま思えば何を勘違いしたのか、
「どんなものをつくったのか、アピールしなくちゃ!」と思ってしまい、
プレゼン資料やデモアプリを準備し、新サービスのプレゼンの如く、初っ端から語りまくりました。

弁理士さん「なるほど。内容は理解しました。まず新しいサービスの構想は、特許出願前に語るのはやめておきましょうか。新規性がなくなってしまう可能性がありますので。この資料もお返ししますね(笑)」とのこと。

そりゃそうだ。おっしゃる通り。
はい、お恥ずかしい失敗。

特許出願前に、親しい友人等に話すのも控えた方がいいそうです。
注意しましょう。

ここで、無料相談でできる範囲を整理しておきます。

  • あくまでも相談や質問だけ
  • 出願内容についての細かい助言はしていただけない。読みやすさの助言はしてくれる
  • 既存の特許の調査は有料。調査方法についての助言はしてくれる
  • 特許願の代筆も有料。書き方についての助言はしてくれる

ですので、なるべく安く済ませたい場合は、
すべて単独で行わなければなりません。

了解。理解しました。
特許調査の方法や、出願のアドバイスを頂き、自分で行うことを決意しました。
特許出願までの手順は確認できたので、
相談してよかったと思っています。

4. 特許調査

さて、まずは既存の特許の調査を行ないましょう。
これは、出願しようとしている技術が、既存特許の権利を侵害していないか確認する意図に加え、
特許出願で提出する特許願に【先行技術文献】を書く欄があり、
「その先行技術と比べて、自分の特許はこんな新規性があるよ」と、記載する必要があるための調査です。

ちなみに、既存の特許があったからといって、すぐに諦める必要はありません。既存特許の権利侵害を行わないような製品やプロセスの見直しを行えばいいのです。これを回避設計と言います。

個人でできる範囲の特許調査は、
やはり特許情報プラットフォームを使います。

4.1. フリーワード検索

Google先生に聞く感じですね。
下記の手順で行います。

  1. 特許情報プラットフォームの簡易検索を開く
    https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
  2. キーワードを数件入力する
  3. 「検索」ボタンを押下する
  4. 出願したい技術と同じ技術がないかを確認する
  5. 特許分類(FI)を確認する(4.2.で使います)
    以上

キーワードが少ないと、既存特許がたくさん出てくると思います。
私は3ワード程度で検索し、既存特許が5件程度まで絞込みました。
絞込んだ既存特許の中で、出願したい技術と同じ技術がないことを確認。
その後、既存特許の【国際特許分類】を全てピックアップします。次の4.2.で使うためです。

4.2. 関連品目検索

同じ技術分野で絞込み検索を行う感じですね。
同じ技術がないかの確認に加えて、
【先行技術文献】を抽出するために行ないます。同じ技術分野の文献の方が、差異説明しやすいためです。
下記の手順で行います。

  1. 特許・実用新案分類照会(PMGS)を開く
    https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p1101
  2. 上記4.1.でピックアップした「特許分類(FI)」で検索する
  3. 出願したい技術と同じ技術がないかを確認する
  4. 【先行技術文献】に記載する特許を数点ピックアップする
    以上

【先行技術文献】に記載する特許のピックアップについて、ChatGPTからは下記の通りアドバイスされました。

  • 特許文献を主軸に、必要に応じて非特許文献で補強
  • 自発的評価は控えめに、「何が記載されているか」を中立的に要約
  • 自発明との差異は明細書本文(課題・効果・実施形態)側で明確化
  • 直近技術(5年内) を1~3件、中期(10~15年) を数件、古典的に近いものがあれば1件、のバランスが扱いやすい

私は特許文献の検索方法は分かりますが、非特許文献の効率的な調べ方が分からないため(学術論文検索でいいのか?)、特許文献から、説明しやすい3つほどピックアップしました。

:coffee:Coffee Break
上記4.1.と4.2.が弁理士さんから教わった特許調査の方法ですが、正直、全く同じ技術は無いことはわかるが、個々の【請求項】のどの部分を侵害している可能性があるか、どの文献をピックアップして、【先行技術文献】とするのか、何となくしか分かりません。ここを論理立てて説明できるかが、特許のプロと素人の差、腕の見せどころなんだと思います。

5. 特許願を書く

特許願の書き方・フォーマットはキッッチリと決まっています。
書き方が少しでも違うと受理されないそうです。

書き方は下記資料を参照しました。

【特許出願書類の書き方ガイド】

また下記ひな型をベースに書き出しました。

【特許願のサンプル】

書き方は上記手引きに書いてあるので、ここでは細かく記載しません。
私はChatGPTをフル活用し、下記の手順で進めました。

  1. ChatGPTに事前情報として、出願する技術内容の詳細を伝える
  2. 「【請求項】を記載して下さい」のように、項目ごと指示して記載してもらう
  3. 内容をチェック、校正し、再度文章チェックをChatGPTへ依頼する
  4. 書き方を忠実に守って、Word文書へ転記する
    以上

基本的に上記手順を繰り返せば、それっぽく書くことはできます。
【図面】についても、それっぽい図の案をChatGPTに描いてもらい、
それを手直ししたり、PowerPointで描き直したりして作成しました。
ChatGPT様様ですね。

5.1. 再度、無料相談会へ

いったん書き上げた後に、無料の範囲内での校正チェックと、今後の流れの確認のため、再度、無料相談会へ行きました。

指摘を何点か受けたので、汎用的な指摘を下記にまとめます。

  • 半角はすべて全角にする(例え公式ひな形が半角だとしても)
  • 請求項は「方法」なのか、「システム」や「装置」なのか、明確に統一すること
  • 同じ用語は統一すること
    例:「身体動作状態」と「動作状態」、「フーリエ変換」と「FFT」の違い
  • 数式の前には【数1】、表の前には【表1】のように、図表番号をつけること

上記はChatGPTの校正チェックでも指摘されませんでした。
ChatGPTは特許の専門家ではありませんもんね。

6. 特許出願

特許出願には、
書面で出願する方法と、インターネットで出願する方法があります。
書面で出願する場合は、電子化手数料(ページ単位で発生)が別途かかるのと、受理されるまで期間を要するとのことで、最近は、インターネットで出願する方法の方がオススメのようです。

マイナンバーカードとICカードリーダーがあれば、自宅でもできます。
ただし、インターネット出願もいろいろな手順が必要なため、
最初は苦戦すると思います。私は苦戦しました。
基本的には特許庁の公式ホームページに記載の手順の通りです。

下記に各手順の補足説明や私が苦戦したところを記載します。

STEP-0 カード&機材準備

マイナンバーカード取得

普通にマイナンバーカードを取得してOKです。特許出願に用いるからと、特別な手続きは必要ありません。ただし署名用電子証明書パスワード(英数字6〜16文字)と、利用者証明用パスワード(数字4桁)は後ほど使うので忘れないように。

ICカードリーダー入手

マイナンバーカード対応モデルとかあるようです。私はAmazonで検索し、1,400円程度のUSB接続可能な安い機器を購入しました。

■ STEP-1 パソコンの準備

手順に記載のとおりです。私は「Microsoft Windows 11 Pro」で実行しました。

■ STEP-2 電子証明書の準備

当然「手続者が個人の場合」の手順です。

  • 手続者が個人の場合
    ・ ◆ICカードタイプ
     ・ マイナンバーカード入手後の手順

「公的個人認証サービス 利用者クライアントソフト(JPKI利用者ソフト)」をインストールします。

インストール&設定完了後、
6.<任意の作業>の後に、認証局一覧や[購入費用が発生します]との記載がありますが、通常の手順で市区町村でマイナンバーカードを発行した人の場合は、「地方公共団体情報システム機構」が担っているため、無視してOKと思われます。

特許出願_任意の作業.png

■ STEP-3 出願ソフトの入手

手順に記載のとおりです。「ソフトのダウンロード請求(Windows版)」は請求を行えばすぐにダウンロードできます。

■ STEP-4 インストール

手順に記載のとおりです。
ここから、分厚い操作マニュアルが登場し、最初は戸惑うかもしれませんが、自身の手順以外は参照する必要はありません。

「接続テスト」が完了したらOKです。
ここまでで、インターネット出願の環境は整いました。

■ STEP-5 申請者利用登録

初めて特許出願する場合は、「識別番号」を発行する必要があります。

「ICカード形式:識別番号を持っていない場合」のとおり、ICカード形式の電子証明書を使って、識別番号を新規取得すると同時に「識別番号」と「電子証明書」の組み合わせを特許庁に登録します

・特許手数料の納付方法について

この「STEP-5」で、特許手数料の納付方法を選択し、支払いを行います。
6種類の納付方法があります。
私は最も簡単な(と思われる)「電子現金納付」で納付しました。
銀行のインターネットバンクで払い込みます。

納付が完了すると、納付番号が発行されます。
後ほど、特許願(出願書類)に記載します。

また、申請者利用登録時、下記手順の注意事項のとおり、設定を忘れずに行いましょう。
「電子現金納付専用パスワード登録状況」
「電子現金納付者カナ氏名登録状況」

特許出願_サービスメニュー内容確認.png

■ STEP-6 申請書類の作成

・出願様式へ変更(Word形式 → HTML形式)

ここで初めて知ったのですが、
インターネット出願の場合、せっかくつくったWord形式ではなく、HTML形式に変換する必要があります。
数式も画像ファイルとしてリンクを貼り付けます。

「Wordでの書類作成(HTML形式)について」に変換手引きや注意事項が記載されていますが、
正直、ポイントがたくさんあり、私にはよく分かりませんでした。

そこで「さくっと文書作成」というツールを使い、特許出願書類のベースを作った後、必要に応じて手直しする方法をとりました。

◆STEP-6.1「さくっと文書作成」でベース作成

ブラウザ上で動かすツールになります。
下記手順を繰り返せば、簡単に(?)ベースは作成できると思います。

  1. 文章の部分は、該当項目をWordからブラウザへ、コピー&ペーストする
    ※サポート外の文字が含まれていれば、ペーストした時に指摘してくれます。
  2. 図面もしくは式の部分は、画像ファイルにして、貼り付けます
    ※下記【画像ファイルの作成】の通り注意すること
  3. 「チェック」ボタンで見た目を確認
  4. 問題なければ「保存」と「出力」する
    ※Zipファイルで出力されます。このまま出願できます。

以上

【画像ファイルの作成】
この画像ファイルのフォーマット変換が1番ややこしく、時間がかかりました。

JPEGファイルの場合、8bitのグレースケール、その他(BitmapやPNG等)の場合はモノクロにする必要があります。
Bitmapのモノクロファイルは、Windows標準アプリの「ペイント」で「名前をつけて保存」で変換できますが、何故か「さくっと文書作成」ツールにBitmapファイルを添付しようとすると、「サポートされていない形式です」とエラーが出力され、添付できません。

JPEGファイルは「さくっと文書作成」ツールには添付できますが、こちらも作り方が悪いのか、
後の「STEP-7 電子出願」したとき、インターネット出願アプリの形式チェックで、エラー・警告が出力されてしまいました。

そこで、下記手順を取りました。これによって、エラー・警告を回避しました。

  1. 「さくっと文書作成」ツールには、JPEGファイルを添付し、ZIPファイルを作成する
  2. ZIPファイル内のJPEGファイルを、Bitmapファイルに置き換える
  3. ZIPファイル内のHTMLファイル開き、画像ファイルのリンクをJPEG→Bitmapへ書き換える

以上

【Bitmapモノクロファイルの生成】
Windows標準アプリの「ペイント」で「名前をつけて保存」で変換できますが、2値化の閾値が自動で変換されるため、薄い線や点線など、消えてしまうことがあります。

そこで私の場合、GIMPという無料アプリを使い、しきい値を変更し、薄い線や点線をくっきりさせた後、モノクロファイルへ変換する手順をとりました。

GIMP.png

◆STEP-6.2 HTMLファイルを編集

「さくっと文書作成」ツールで作成すると、必須項目は記載されていますが、
下記のような任意項目は記載されていません。
HTMLファイルをWord等で開き、追記しましょう。
この際、スペースや改行コードなど、規定を変更しないように気を付けましょう。

  • 国際特許分類
  • 実施例が複数ある場合の【実施例1】等の番号

国際特許分類.png

■ STEP-7 電子出願

さて、最後の手順になります。
作成した申請書類を、インターネット出願アプリを用いて提出します。

私の場合、下記ユーザガイドの「19 電子現金納付を使った場合の、国内提出書類の提出方法」の通り実施しました。

ここで申請書類に不備がある場合は、提出前に自動チェックを行って指摘してくれます。

出願後、受理されると書類状況が「接受」になります。
出願番号と受付番号も発行されています。

特許画面.png

以上です。
特許出願が完了しました。お疲れさまでした。

7. 今後の流れ

これも私は知らなかったのですが(無知で恥ずかしい)
特許出願と特許審査は別なんです。

特許出願しただけでは審査は開始されず、3年後には自動消滅してしまいます。

後日、「出願審査請求」を行いましょう。
場合によっては、「早期審査請求」も行いましょう。
ただしこれを行うと、十数万円の費用が必要になりますので、
本当に特許取得が必要か、よく検討した上で審査請求を行いましょう。

私の場合は、とりあえず特許出願は行ったので、
これからこの特許技術を用いた試作品を完成させ、
モニター調査を行った上で、利益を確保できるサービスモデルを確定させた後、
出願審査請求を行う予定です。

その際は、改めて、手順を記載した記事を投稿しようと思います。

以上です。最後まで読んで下さりありがとうございました。

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