第3章 Apache Ant を構成する要素
コマンド
コマンドラインからのAntの利用は、全てant
コマンドで行います。
書式は以下の通りで、オプションとターゲットを指定して実行します。
※ターゲットについては後ほど紹介します。
ant [オプション] [ターゲット1 ターゲット2...]
オプション
Antで使用できるオプション一覧は、ant -help
で確認できますが、
簡単な利用だけなら以下を押さえていれば問題ありません。
- -buildfile <ファイル>
参照するビルドファイルをパスで指定します。
指定しない場合、カレントディレクトリのbuild.xmlというファイルが指定されます。 - -find <ディレクトリ>
指定したディレクトリのサブディレクトリを検索し、ビルドファイルを探す。 - -verbose
ビルドに関する詳細な情報を出力しながらビルドを実行します。
ビルドファイル
ビルドファイルは、慣例的にbuild.xmlという名前で作成されます。
他の名前を使用することも可能ですが、実行時にファイルを指定する必要があります。
1. プロジェクト(Project)
project要素は、1ビルドファイルに1つと決まっています。
ビルドファイル内に記載される全ての要素はこの要素内に定義する必要があります。
project要素には、以下の3つの属性が設定できます。
name:プロジェクト名
任意のプロジェクト名を設定します。
default:デフォルトターゲット名
ターゲットを指定しない場合に実行されるターゲットを指定します。
Ant1.4以前では必須でしたが、Ant1.5からはdefault属性を省略した場合はmainターゲットが
実行されるように変更されたので省略が可能になりました。
basedir:ベースディレクトリ
ベースディレクトリを指定します。./foo
ディレクトリをベースディレクトリに指定し、
mkdir要素のdir属性に"sample"と指定すると、./foo/sample
が作成されます。
つまり、ビルド作業を行う際の起点が./foo
になるというわけです。
2. ターゲット(Target)
ターゲットとは、目的を達成するための複数のタスクの集まりです。
「EARファイルの作成」を例にとると、目的はEARファイルを作成することであり、
複数のタスクはソースコードのコンパイル、コンパイルしたクラスファイル・リソースの配置
etc...といった、EARファイルの作成に必要な一連の処理です。
target要素は複数定義可能で、以下の属性が設定できます。
name:ターゲット名
target要素の中で、唯一必須の属性です。ant
コマンドで指定するターゲット名を定義します。
depends:依存関係
このターゲットを実行する前に実行を完了させるターゲットを指定します。
カンマ区切りで複数指定が可能です。
if:必須プロパティ
プロパティ名を指定することができ、実行時に
指定したプロパティが設定されていない場合、このタスクの実行をスキップします。
unless:不要プロパティ
ifとは反対の設定を行う。プロパティ名を指定することができ、実行時に
指定したプロパティが設定されている場合、このタスクの実行をスキップします。
description:処理概要
projecthelp
オプションをつけてAntを実行した時に表示される、
ターゲットの処理概要を設定します。
3. タスク(Task)
ターゲットの節でも説明した通り、タスクとは目的(ターゲット)を達成するための処理で、
1つのターゲットは複数のタスクを組み合わせることで達成されます。
1タスクはコンパイル、ファイルのコピーといった個別の処理を1つだけ担当します。
組み込みタスク
Antには、事前に定義されている組み込みタスクというものが用意されています。
組み込みタスクは大まかに、コアタスクとオプショナルタスクに分類されます。
コアタスクはコンパイル、タブからスペースへの変換など、ビルドにおいて頻繁に行われる作業
を定義したタスクで、Antさえインストールしていればすぐに利用できるタスクです。
オプショナルタスクは、あまり汎用的ではないタスクです。jarファイルの追加など、
そのタスク用のモジュールをAntに追加しないと利用できない場合もあります。
組み込みタスクにはPropertyタスクやMkdirタスクなどがあり、
それぞれ<property ~ >
、<mkdir ~ >
といった要素を記載して利用します。
他にどんなタスクがあるのかを知りたい場合は、
Antの公式ドキュメント、使用頻度の高いタスクをまとめた記事などを調べてみてください。
独自タスク
Antでは、ユーザが独自タスクを作成することができます。
作成方法は少し煩雑であり、大体のビルド作業は組み込みタスクで対応可能なため、
Antの学習を掘り下げたい場合に調べるくらいでいいと思います。
データ構造
ビルド作業では、リソースの配置、コンパイル対象の指定など、
複数のファイル(集合)に対して処理を行うことがよくあります。
Antでは、これら複数のファイル等の集合をデータ構造として表すことで、
集合に対しての処理を手軽にします。
データ構造はプロジェクト、ターゲット、タスクの子要素として定義できます。
定義する場所によってスコープがあるので、
複数のターゲット、タスクで使用したい、1つのタスク内でしか使用しないなど、
状況に合わせて定義する場所を選びます。
1. パターン
パターンは、Antにおいてフォルダ、ファイル名などを指定する際のワイルドカードです。
パターンでは以下の3種類のワイルドカードが利用できます。
ワイルドカード | 説明 |
---|---|
? | 任意の1文字にマッチします。 |
* | 0文字以上の任意の文字列にマッチします。 |
** | 任意の深さ、ディレクトリ、ファイル名にマッチします。 |
2. パターンセット
パターンセットは、複数のパターンを組み合わせてより複雑なパターンの指定を可能にします。
指定は、xxxを含む(include)とxxxを除く(exclude)を組み合わせて表現します。
パターンセットは<patternset ~ >
要素で定義します。
パターンの指定には、以下の属性が利用できます。
属性 | 説明 |
---|---|
includes | 集合に含めたいパターン。コンマ・スペース区切りで複数のパターンを記述できます。 |
includesfile | 集合に含めたいパターンを記述したファイルを指定できます。 |
excludes | 集合から除外したいパターン。コンマ・スペース区切りで複数のパターンを記述できます。 |
excludesfile | 集合から除外したいパターンを記述したファイルを指定できます。 |
refid | 別のパターンセットのid属性に定義された値を指定し、利用できます。 |
パターンセットの定義には、
属性を属性値として定義する方法と、要素として定義する方法があります。
<!-- 属性値として定義する方法 -->
<patternset includes="Foo*,Bar*" excludes="*.java,*.class" />
<!-- 要素として定義する方法 -->
<patternset>
<include name="Foo*,Bar*" />
<exclude name="*.java,*.class" />
</patternset>
<!-- 別のパターンセットを利用する方法 -->
<patternset refid="common-set">
<include name="Foo*,Bar*" />
</patternset>
<patternset id="common-set">
<exclude name="*.java,*.class" />
</patternset>
パターンの要素に使用できる属性
パターンセットに設定する属性を要素として定義する場合、以下の属性が使用可能です。
属性 | 説明 |
---|---|
refid | 参照する要素のidを指定します。 |
if | 指定したプロパティに値が設定されている場合のみ、パターンを適用します。 |
unless | 指定したプロパティに値が設定されていない場合のみ、パターンを適用します。 |
3. ファイルセット
パターンセットにベースディレクトリを設定したデータ構造です。
ベースディレクトリを指定することで、
そこを基点にした相対パスでパターンを指定することが可能になります。
上記の特性上、ベースディレクトリの設定は必須です。
ファイルセットは主に、ファイル群を集合として扱うために使用しますが、
ディレクトリ群を指定するためのディレクトリセット(Dirset)という要素も存在します。
指定できる属性、定義できる要素などはファイルセットと同じです。
デフォルト除外集合
Antでは、デフォルト除外集合というものが設定されており、この集合に定義されているものは
除外パターンの指定などを行わなくても除外されます。
例) **/.svn、**/.git etc...
ファイルセットに使用できる属性
属性名 | 説明 | 初期値 |
---|---|---|
dir | ベースディレクトリを指定します。指定は必須です。 | |
defaultexcludes | デフォルト除外集合をファイル集合から除外するかどうかを指定します。 | yes |
includes | FileSetに含めたいファイルのパターンを指定します。 | |
includesfile | FileSetに含めたいファイルのパターンを記述したファイルを指定します。 | |
excludes | FileSetから除外したいファイルのパターンを指定します。 | |
excludesfile | FileSetから除外したいファイルのパターンを記述したファイルを指定します。 | |
casesensitive | 英文字の大文字と小文字を区別するかどうかを指定します。 | true |
followsymlinks | シンボリックリンクをたどるかどうかを指定します。 | true |
ファイルセット要素には、パターンセットで紹介したinclude要素などの要素以外に、
セレクタ要素を定義することが可能です。
セレクタとは、パス以外の条件で対象を指定できる機能で、詳細は後ほど、説明します。
4. パス類似構造
パス類似構造を定義する要素にはpath
要素とclasspath
要素があり、
違いとしてはclasspath
要素はタスクの子要素として使われるのに対し、
path
要素はタスクから独立したところに定義され、refid
属性によって複数タスクから
共通して使われます。
以下、指定できる属性や子要素として定義できる属性は
path
要素とclasspath
要素で共通です。
パス類似構造に使用できる属性
属性 | 説明 |
---|---|
path | :(コロン)や;(セミコロン)区切りで複数ファイル・ディレクトリのリストを指定します。 |
location | 単一のファイル・ディレクトリを指定します。 |
refid | 事前に定義したパス類似構造を参照します。 |
パス類似構造に使用できる要素
- Filelist
- Fileset
- Dirset
- Pathelement
- リソースコレクション:Ant1.8以降は使用可能
Pathelement要素
Pathelementはパスを表し、パス類似構造の子要素としてのみ用いられます。
パス類似構造と異なり、子要素をもつことはできません。
属性 | 説明 |
---|---|
path | パスのリストを「:」や「;」で区切って記述します。 |
location | 単一のファイルまたはディレクトリを記述します。 |
refid | 事前定義したパス類似構造を参照します |
パスの指定にはpath
属性とlocation
属性が使えますが、
複数パスを指定する場合はpath
属性を、
単一のパスを指定する場合はlocation
属性を使用します。
location
属性を使用し、それぞれのパスを独立させて定義する方が視認性が良くなります。
<!-- path属性で複数パスを一箇所に定義した場合 -->
<classpath path="/usr/local/java/junit-3.7/junit.jar:/usr/local/java/log4j-1.2.4/dist/lib/log4j-1.2.4.jar:/usr/local/tomcat-4.0.4/common/lib/mail.jar:/usr/local/tomcat-4.0.4/common/lib/activation.jar"/>
<!-- location属性でパスを個別に定義した場合 -->
<classpath>
<pathelement location="/usr/local/java/junit-3.7/jnit.jar" />
<pathelement location="/usr/local/java/log4j-1.2.4/dist/lib/log4j-1.2.4.jar" />
<pathelement location="/usr/local/tomcat-4.0.4/common/lib/mail.jar" />
<pathelement location="/usr/local/tomcat-4.0.4/common/lib/activation.jar" />
</classpath>
5. マッパー
マッパーはファイル名の変換規則を定義します。
Copyタスクを例にとると、以下のような使用方法があります。
<!-- Copyタスク:コピー先の定義 -->
<copy todir="/target" includeEmptyDirs="no">
<!-- コピー元の定義 -->
<fileset dir="/src" defaultexcludes="no" />
<!-- コピー元 → コピー先にコピーする際、
どのようにパス、ファイル名を変換するかを定義 -->
<mapper type="glob" from="*" to="*.bk" />
</copy>
上記のCopyタスクは、以下を実現します。
「
/src
ディレクトリ配下のファイル全て」(コピー元)を
「全てのファイルの末尾に.bk
をつけて」(変換のルール)
「/target
ディレクトリ配下」(コピー先)に配置する
マッパーは、変換する対象のマッチング方法、マッチングした内容の変換ルールを
組み合わせて変換処理を定義しています。
また、マッパーには組み込み(type属性で指定)と、独自定義(classname属性で指定)があります。
マッパーに設定できる属性
属性 | 説明 |
---|---|
type | 組込みのマッパーを指定します。 |
classname | 独自定義のマッパー(Javaクラス)を指定します。 |
classpath | classnameで指定したクラスを実行するのに必要なクラスパスを指定します。 |
classpathref | classnameで指定したクラスを実行するのに必要なクラスパスを定義したパス類似構造を指定します。 |
from | 変換前のファイル名を正規表現で指定します。 |
to | 変換後のファイル名を正規表現で指定します。 |
refid | 外部に定義したmapper要素を参照します。 |
組み込みのマッパー
type属性に指定できる値には以下のものがあります。
【identity】
ファイル名、ディレクトリ構造を変換しません。from属性とto属性は設定しても無視されます。
<!-- 例1 -->
<copy todir="/target" includeEmptyDirs="no">
<fileset dir="/src" defaultexcludes="no" />
<!-- from、toの設定が不要 -->
<mapper type="identity" />
</copy>
<!-- 例2 -->
<copy todir="/target" includeEmptyDirs="no">
<fileset dir="/src" defaultexcludes="no" />
<!-- from、toを指定しても全てのファイルが対象となり、.bkも付与されない -->
<mapper type="identity" from="*.java" to="*.bk" />
</copy>
【flatten】
ファイル名は変わらず、ディレクトリ構造が除外されます。from属性とto属性は無視されます。
<copy todir="/root/copy" includeEmptyDirs="no">
<fileset dir="/root/original" defaultexcludes="no" />
<mapper type="flatten" />
</copy>
上記の通りマッパーを定義すると、originalディレクトリ配下の全てのファイル(コピー元)が
copyディレクトリ直下の同じ階層(コピー先)に配置されます。
【merge】
from属性は無視され、ディレクトリ構成、ファイル名に関係なく
全てのファイルをto属性で指定した固定のファイル名に変換します。
file1.txt → convert.txt
/foo/bar/file2.txt → convert.txt
【glob】
ワイルドカード「*」を一つ用いることができます。
from属性に記述した「*」にマッチした文字列は、to属性で「*」を使い参照できます。
<!-- /src/Sample.java があった場合 -->
<copy todir="/target" includeEmptyDirs="no">
<fileset dir="/src" defaultexcludes="no" />
<mapper type="glob" from="*.java" to="*.class" />
</copy>
<!-- /target/Sample.class がコピーされる -->
【package】
Globと同じようにワイルドカード「」を一つ用いることができます。Globとの違いは、「」にマッチした文字列内にディレクトリ区切り文字(Unixなら「/」、Windowsなら「\」)があったとき、そのディレクトリ区切り文字が「.」に置換されます。例えば、from=".java" to=""としたとき、ソースファイル「a/b/c/d.java」に対するターゲットファイルは「a.b.c.d」となります。
【regexp】
from属性で正規表現が使え、( )で囲まれた部分が1つの正規表現となって9個指定できます。
to属性ではfrom属性でマッチした文字列を「\1」〜「\9」という表記で参照できます。
from="(.*)/(.*).java"
to="\1\2.java"
と定義すると、
One/Test.java → OneTest.java
に変換される。
6. セレクタ
データ構造は基本、ファイル名を基準にファイルの集合を指定しますが、
セレクタはファイルの更新日時、サイズ、指定ディレクトリからの深さなど様々な要素から
ファイルの集合を指定することが可能です。
セレクタには、以下の種類があります。
-
コアセレクタ
Antにあらかじめ組み込まれているセレクタで、単体として機能します。 -
セレクタコンテナ
コアセレクタのように、単体で機能するセレクタを複数内包するコンテナです。 -
カスタムセレクタ
ユーザが独自に定義するセレクタです。
コアセレクタ
名称 | 条件の指定に使用する要素 |
---|---|
filename | ファイル名 |
size | ファイルのサイズ |
date | ファイルの更新時間 |
contains | ファイル内に含まれている文字列 |
depth | ベースディレクトリからの階層の深さ |
depend | 比較対象より更新時間が新しいこと |
present | 別の場所に同名のファイルが存在すること |
● Filename
属性 | 設定内容 | 初期値 | 必須 |
---|---|---|---|
name | 選択するファイル名のパターン | ● | |
casesensitive | 大文字小文字を区別するか | true | |
negate | パターンにマッチしないファイルを選択するか | false | |
refid | 事前定義したFilenameセレクタのID |
● size
属性 | 設定内容 | 初期値 | 必須 |
---|---|---|---|
value | 比較基準となるサイズ(unitsを設定しない場合はbyte単位) | ● | |
units | value属性に記したファイルサイズの単位を指定します。 | ||
when | 比較の方法(less, more, equal) | equal | |
refid | 事前定義したSizeセレクタのID |
〜unitsに設定できる値〜
単位 | 説明 |
---|---|
K, k, kilo, KILO | 1,000 ( = 10の3乗) バイト |
Ki, KI, ki, kibi, KIBI | 1,024 ( = 2の10乗) バイト |
M, m mega MEGA | 1,000,000 ( = 10の6乗) バイト |
Mi, MI, mi, mebi, MEBI | 1,048,576 ( = 2の20乗) バイト |
G, g, giga, GIGA | 1,000,000,000 ( = 10の9乗) バイト |
Gi, GI, gi, gibi, gibi | 1,073,741,824 ( = 2の30乗) バイト |
T, t,tera, TERA | 1,000,000,000,000 ( = 10の12乗) バイト |
Ti, TI, ti, tebi, TEBI | 1,099,511,627,776 ( = 2の40乗) バイト |
● date
日時の指定は必須で、「MM/DD/YYYY HH:MM AM[or PM]」というフォーマットか
1970年1月1日からのミリ秒で指定できる。
属性 | 設定内容 | 初期値 |
---|---|---|
datetime | 比較基準となる日時 | |
millis | 比較基準となる時間(1970年からのミリ秒) | |
guranularity | 許容する誤差(単位:ミリ秒) | 0 |
when | 比較の方法(before, after, equal) | equal |
refid | 事前定義したDateセレクタのID |
● contains
属性 | 設定内容 | 初期値 | 必須 |
---|---|---|---|
text | ファイルの内容に含まれる文字列 | ● | |
casesensitive | 大文字小文字を区別するか | true | |
refid | 事前定義したContainsセレクタのID |
● depth
ベースディレクトリの深さを0として、検索対象をファイルの深さで指定する。
属性 | 設定内容 |
---|---|
min | ファイルの最小の深さ |
max | ファイルの最大の深さ |
refid | 事前定義したDepthセレクタのID |
以下の例では、{$src}/a/b/c/d/e
というフォルダ構成があった場合、
b、c、dディレクトリにあるファイルは対象になりますが、a、eディレクトリにあるファイルは
対象外となります。
<fileset dir="{$src}">
<depth min="2" />
<depth max="4" />
</fileset>
● depend
比較対象ディレクトリ(targetdir)を検証し、
比較対象より更新時間が新しい、比較対象にファイルが存在しないのいずれかに該当する
ファイルが処理対象として指定される。
デフォルトでは比較を同名のファイルで行うが、独自の比較パターンを使用したい場合は
mapper子要素を定義します。(Foo.javaとFooDevelop.javaを比較したいなど)
属性 | 設定内容 | 初期値 | 必須 |
---|---|---|---|
targetdir | 比較対象のベースディレクトリ | ● | |
guranularity | 更新時間の粒度※ | 0(Windows:2000) | |
refid | 事前定義したDependセレクタのID | ||
※全てのファイルシステムが更新日時をミリ秒で管理しているわけではないため |
● present
更新日時の比較は行わず、ファイルの存在チェックのみ行うDependセレクタと言えます。
デフォルトでは比較を同名のファイルで行うが、独自の比較パターンを使用したい場合は
mapper子要素を定義します。(Foo.javaとFooDevelop.javaを比較したいなど)
属性 | 設定内容 | 初期値 | 必須 |
---|---|---|---|
targetdir | 比較対象のベースディレクトリ | ● | |
refid | 事前定義したPresentセレクタのID |
セレクタコンテナ
セレクタコンテナは、複数のセレクタを組み合わせ、複雑な条件指定を可能にします。
使用例は以下のようになり、以下のソースコードでは
「更新日時が2002年8月20日午前6時より後」もしくは「ファイルサイズが100KB以上」の
ファイルが選択されます。
<fileset dir="{$log}" includes="**/*.log">
<or>
<date datetime="08/20/2002 6:00 AM" when="after" />
<size value="100" units="Ki" when="more" />
</or>
</fileset>
上記の例では<or>
がセレクタコンテナにあたり、
セレクタコンテナに設定できる共通の属性には以下のものがあります。
属性 | 説明 |
---|---|
id | refidで指定するID |
refid | 事前定義した同種のセレクタコンテナのID |
description | このセレクタに関する説明 |
セレクタコンテナには以下のものがあります。
セレクタ | 説明 |
---|---|
And | 複数セレクタを内包。すべてのセレクタに当てはまるファイルを選択する。 |
Or | 複数セレクタを内包。少なくとも一つのセレクタに当てはまるファイルを選択する。 |
None | 複数セレクタを内包。全てのセレクタに当てはまらないファイルを選択する。 |
Not | 一つだけセレクタを内包。そのセレクタに当てはまらないファイルを選択する。 |
Majority | 複数セレクタを内包。過半数のセレクタに当てはまるファイルを選択する。 |
Selector | 事前定義した他のセレクタを再利用する場合に用います。 |
● Selector
Selectorはセレクターを内包する箱(他のSelectorからrefidで参照するセレクタを保持する箱)、
もしくは、事前適宜されたSelectorを参照するためのタグとして使用できます。
<project default="all" basedir="./root">
<!-- セレクタを保持する箱 -->
<selector id="completed">
<none>
<depend targetdir="build/classes">
<mapper type="glob" from="*.java" to="*.class"/>
</depend>
<depend targetdir="docs/manual/api">
<mapper type="glob" from="*.java" to="*.html"/>
</depend>
</none>
</selector>
<target>
<zip>
<fileset dir="src/main" includes="**/*.java">
<!-- 上記で作成したSelectorを参照するタグ -->
<selector refid="completed"/>
</fileset>
</zip>
</target>
</project>
Selectorにはif属性とunless属性を設定することができ、if="プロパティ値"
の形で使用する。
ifで指定したプロパティが設定されている場合は有効に、
unlessで指定したプロパティが設定されていない場合はそのSelectorが有効になります。
<fileset dir="${working.copy}">
<or>
<selector if="include.tests">
<filename name="**/*Test.class">
</selector>
<selector if="include.source">
<and>
<filename name="**/*.java">
<not>
<selector unless="include.tests">
<filename name="**/*Test.java">
</selector>
</not>
</and>
</selector>
</or>
</fileset>
7. フィルター
フィルターはcopyやmoveタスクを実行するときにファイルの内容を置換するための機能です。
Antではデフォルトの場合、@で囲まれた文字列をトークンとして認識し、置換対象とします。
フィルター
タグは以下の属性を設定可能です。
属性 | 説明 | 必須 |
---|---|---|
token | 置換の対象となるトークン | ● |
value | 置換後の文字列 | ● |
以下の例では、テキストファイル中の@srcFolder@
という文字列を
/project/main/src
に変換します。
<filter token="srcFolder" value="/project/main/src" />
フィルタセット
通常、フィルタは単体ではなく、複数のフィルタをフィルタセットにまとめて使用します。
フィルタセットはフィルタとフィルタセットを子要素として持つことができ、
以下の属性を設定することができます。
属性 | 説明 | 初期値 |
---|---|---|
begintoken | トークンの開始区切り文字 | @ |
endtoken | トークンの終了区切り文字 | @ |
refid | 事前定義されたフィルタセットのID |
フィルタチェーンとフィルタリーダー
フィルタリーダはフィルタよりも高度な置換を行う機能で、
Javaクラスにより定義し、クラスを指定するととで処理を呼び出します。
フィルタチェーンは複数のフィルタリーダを子要素に持ち、その実行順序を制御します。
フィルタチェーンは以下の形で利用します。フィルタリーダーは上から順に実行されます。
<filterchain>
<filterreader classname="org.apache.tools.ant.filters.HeadFilter">
<param name="lines" value="30"/>
</filterreader>
<filterreader>
...
</filterreader>
</filterchain>
フィルタリーダーには以下の属性を使用することができます。
属性値 | 説明 | 必須 |
---|---|---|
classname | フィルタリーダーの実装クラス | ● |
classpath | 実装クラスの実行に必要なクラスパス | |
classpathref | classpathの値を参照で指定する |
フィルタリーダーには<param>
要素を子要素として定義することで実行クラスに
パラメータを渡すことが可能で、以下の属性が指定できる。
説明 | 初期値 |
---|---|
name | パラメータの名前 |
type | パラメータのタイプ |
value | パラメータの値 |
● 事前定義されたフィルタリーダー
Antには事前定義されたフィルタリーダーが存在し、
事前定義されたフィルタリーダーは略記することができる。
<filterreader classname="org.apache.tools.ant.filters.HeadFilter">
<param name="lines" value="30"/>
</filterreader>
<!-- 略記の場合 -->
<headfilter lines="30" />
使用頻度の高いフィルタリーダーについては、別途記事を作成していますので、
「Antの代表的なフィルタリーダー」を参照してください。
以下、各種のデータ構造について再度まとめます。
データ構造 | 説明 |
---|---|
Filelist | ファイル名を列挙してファイルの集合を表します。 |
Fileset | パターンやセレクタ等でファイルの集合を表します。 |
Patternset | パターンの集合を表します。 |
パス類似構造 | PATHやCLASSPATHを表します。 |
リソース | ファイルまたはファイルに似たものを抽象化します。 |
リソースコレクション | リソースの集合です。Ant1.8以降、FileListなど従来のデータ構造はリソースコレクションの一種という扱いになりました |
セレクタ | Filesetにおいて、ファイル名以外の基準でファイルの集合を表します。 |