コラムをご覧いただきありがとうございます。
ニッセイ情報テクノロジー株式会社 プロダクト・サービス事業推進室の川崎と申します。普段は、当社におけるプロダクト・サービス事業の開発およびプロジェクトマネジメントを中心に担当し、今年度は自社製品の販売活動(製品説明やデモンストレーションなど)にも力を入れております。
1.はじめに
生成AI市場が急速に拡大する中、多くの企業が独自のプロダクトを市場に投入しています。しかし、似たようなコンセプトのツールが溢れる今、製品を顧客に届けるための「セールスエンジニアリング」という役割が、これまで以上に重要になってきています。今回は生成AIプロダクトにおけるセールスエンジニアリングの実践と、その魅力について少しだけお話しします。
2.セールスエンジニアリングとは?
セールスエンジニアリングは、自社プロダクトの販売活動を行うという点で営業と同じゴールを目指します。しかし、そのアプローチには明確な違いがあります。単に製品を売るのではなく、顧客が抱える課題に深く寄り添い、その解決策として製品を提案することがセールスエンジニアリングの本質です。
営業が売上・契約を主軸に商流をつくることを主な指標とするのに対し、セールスエンジニアリングは 「導入」そのものをメインミッション とします。つまり、顧客にとって本当に価値のある形で製品を活用してもらうことが最優先となるのです。顧客のビジネス課題を技術的な視点から理解し、製品の機能や特徴を最適な形でマッチングさせることで、真の意味での「顧客にフィットした提案」が実現します。
「何を売るか」ではなく「どうすれば顧客が課題を解決できるか」 。この視点こそが、従来の営業活動との大きな違いだと考えています。
3.生成AIプロダクト市場の現実
正直に言えば、現在の生成AIプロダクト市場はレッドオーシャンそのものです。
どの会社も同じようなツールコンセプトを掲げており、機能やスペックだけではお客様が比較検討しにくい状況です。製品そのものの優位性を見出すことが難しい今、お客様に選ばれるために決定的に重要になるのが、 提案プロセスにおける「付加価値」 です。
技術的な優位性だけでなく、導入後のサポート体制や、顧客のビジネスへの深い理解といった要素が、選ばれる理由となるのです。そして、この付加価値こそが、セールスエンジニアリングの新しい役割、すなわち「伴走支援」に繋がります。
4.セールスエンジニアリングにおける伴奏支援の重要性
では、その付加価値である「伴走支援」とは具体的に何でしょうか。
私が考える付加価値の本質は、「 相手を知りたいという行動と思考 」です。
コンサルティングからのアプローチも重要ですが、顧客が最初にコンタクトするのはセールスエンジニアです。つまり、ファーストコンタクトの段階から付加価値を提供できるかどうかが、その後の関係性を大きく左右します。
ファーストコンタクトに対する事前準備の核心は、お客様の業界、組織構造、そして想定される課題について複数の仮説を設定し、それに基づいたデモの準備をしておくことです。
もちろん準備したデモが100%フィットしないのは当たり前。
むしろ当日の会話で見えてくる “生の課題” が本当のヒントです。
その場で得られた「 生の課題 」に対し、製品の特徴を紐づけながら説明を調整し、簡易的なデモを即座に試すことで、 お客様の「知りたい」という熱量を逃さず 、課題とプロダクトの特性をリアルタイムでつなげていく
――この臨場感こそサービスエンジニアリングの真骨頂と言えます。
重要なのは、この臨場感こそが、セールスエンジニアリングならではの強みであり、お客様との信頼関係を築く第一歩となるのです。
5.セールスエンジニアリングの面白さ
最後に、セールスエンジニアリングという仕事の面白さについてお話しします。
まず、様々な業界・業種の方々と会話できることで、それぞれが抱える課題やバックボーンを知ることができます。これは 単なる知識の蓄積ではなく、ビジネスの最前線で何が起きているかを肌で感じられる貴重な機会 です。また、多様な方々との対話を通じて、自分自身の知識やスキルも自然と磨かれていきます。
さらに、営業の方々と協働する中で、彼らが日々直面している苦労や工夫を理解できるようになります。これにより、 チーム全体でより良い提案を生み出すための視点が広がります 。
しかし、何よりも大きな喜びは、 自分たちのプロダクトが実際に導入され、お客様のビジネスに貢献できたと実感できる瞬間 です。技術的な知識と顧客理解、そしてコミュニケーション力を総動員して成し遂げた成果は、何物にも代えがたい達成感をもたらしてくれます。
6.おわりに
生成AI市場が成熟していく中で、セールスエンジニアリングの役割はますます重要になっていくでしょう。製品を売るのではなく、顧客の課題解決のパートナーとして伴走する。この姿勢こそが、これからの時代に求められるセールスエンジニアリングの在り方だと私は考えています。
セールスエンジニアリングを始めてまだ1年にも満たない私ですが、これからも日々奮闘していきます。