土曜日の昼下がり、玄関先でごそっと物音をたてて、金属のラックが少し揺れた。
置き配用の金属ラックの3段目、飾り気のない段ボールをひとつ。その中には見覚えがあるソリッドの立った白い箱があり、それを右隅からビニールを心地剥がすと前回の記憶が蘇る。
──正直そこまで期待していなかった
世間的には「奇跡的だ」「魔法の絨毯だ」とブログ、YouTube界隈で過剰に騒ぎ立てて、疑心暗鬼になっていたが、旧MacBookから移行アシスタントが終了し、10分後にはその考えが覆った。
──感想は「テスラ・モーターズ」
起動速度、静音性、バッテリー性能、発熱性、どれをとっても新しく感じ、触った感想は「テスラ」(乗ったことないけど)。昨日まで使用していたMacはリッター15kmのワゴンだと感じた。もちろん、Rosetta2を還してのアプリケーションも多く、ユニバーサルバージョンにまだ移行していないアプリでこの速度だと半年後がさらに楽しみになってくる。
──Apple M1チップ
このプロダクトはAppleが独自で開発した「M1チップ」に集約されていると言っても過言ではない。(というか、他はほとんど変わっていない)プロセッサ、I/O、セキュリティ、メモリなどを1枚のシステムオンチップ(SoC)に集めたのがM1チップで効率が上がり、驚異的な性能を発揮している。またiPhoneやiPadに搭載されているプロセッサーが同じということもあり、iPhoneやiPadのアプリケーションも動かせるのも大きい。
──飛ぶように早い
驚くのが2019年に販売された、ほとんどのMacのよりも早いということ。まず初速度が違う。これはユニファイドメモリアーキテクチャ(UMA)から来たもので、専用パッケージの中にある1つのプールに入れて、SoCにあるデータにアクセスでき、複数のメモリプールの間でデータをコピーする必要がなくなったためだと思われる。
──静寂そのものの
筆者がこのMacBookAirに「テスラ」のメタファを用いるのはファンそのものがない静寂性を上げている。どれだけ負荷をかけた作業をしていても一切の音がしないのだ。想像して欲しい。今持っているiphoneにyoutubeなどで負荷をかけると高周波でファンのが鳴り出したら気が狂う。そう考えるとファンがある元のMacには戻れない。
──デザイナーはメイン機として使用できるか
正直、世の中の90%ぐらいのデザイナーは一番安いモデル(12月3日時点で104,800円(税別))で満足できると思う。SSDの容量はクラウドで補完すれば良い。メモリは8GBと心許ない感じがするが、SoCにメモリが統合された「ユニファイドメモリ」が効率的に作用する。たとえスワップしたとしても、SSDの性能が向上でカバーできている。
──購入すべきデザイナー(2つ以上該当する場合)
・所有Macのマルチコアベンチマークが3,500以下(https://browser.geekbench.com/mac-benchmarks )
・Macのメモリが8GB以下
・macOS Big Surにアップデートをしている(予定がある)
・20インチ以上のディスプレイを所有している(予定がある)
・すごくお金がある人
──プロとアマチュアの境界が消えていく
今まで、Macで「Pro」を所有するというのは、デザイナーの自己顕示欲のようなものだったのは間違いない。30年ほど前、MacintoshはDTPの道を切り開き、デザイナーの道具の境界線を消してきた。それ以前は1mmの線の上に10本の線を烏口で引くことや、写植、活版など知識、技術がなければ、印刷物などに辿り着かなかったから。しかし、今現在では20万円ほどでプロと並ぶほどの道具は揃えられるし、ある程度PCを触れる主婦なら、3日ほどでラクスルへ入稿できる。そういった意味で確実にハードルが下がってきている。そういった中で、デザイナーはこれからどのようなバリューを提供していかなければいけないか、考え直す必要があると思う。