前はInDesignで組んだのだが、今回はLaTeXを使ってみることにした。TeX Liveの登場と知名度の上昇により、LaTeX環境の導入と使用方法は大層簡単になったと言える。何がすごいって、何もしなくてもUTF-8で日本語が通る。これにはおじさんたまげたよ。たかが同人誌の作製にGitが使えてしまう。
documentclass
\documentclass[9pt,b5paper,tombo,openany]{jsbook}
定番のjsbook
で基本的には十分だった。今回はlstlisting
を使ってCのソースコードを載せたため、そのままでは幅がちょっとせまかった。プリアンブルに以下を追記すると広げることができる。
\setlength{\textwidth}{\fullwidth}
\setlength{\evensidemargin}{\oddsidemargin}
トンボ
jsbook
のtombo
オプションを使う。トンボの分を考慮すると、documentclass
でB5を指定しても、DVIやPDFを出力する際には一回り大きい判型(A4など)で出力する必要がある。
が、単にtombo
を指定するだけだと、トンボ分だけ版面全体が右下にずれてしまう。そこでのTipsは、
dvipdfmx -p a4 -x 40 -y 58
でPDFを出力すること。つまり、DVIをPDFにする際のオフセットを使って、版面全体をずらす。これがシンプルでよいと思う。出力されたPDFはトンボを含めた版面がA4の中央に表示される。DVIはずれたままだけど。
latexmk
LaTeX用のMakefileみたいなもの。
#!/usr/bin/perl
$latex = 'platex %O %S';
$dvipdf = 'dvipdfmx -p a4 -x 40 -y 58 %O %S';
$pdf_mode = 3;
と書かれた.latexmkrc
を作ってあとはlatexmk
って打つだけ。簡単。
章
jsbook
のopenany
オプションを指定した。これがないと章が必ず右ページからはじまってしまう。左側が空ページになることがあり、ページの無駄である。特にページ数で値段が決まる同人誌にはたまらない。
組版
表紙
トンボまで表紙画像を引き込む。
\enlargethispage{\paperwidth}
\thispagestyle{empty}
\vspace*{-1truein}
\vspace*{-\topmargin}
\vspace*{-1.15\headheight}
\vspace*{-\headsep}
\vspace*{-\topskip}
\noindent\hspace*{-1.16in}\hspace*{-\oddsidemargin}
\includegraphics[width=1.042\paperwidth]{./img/hyoushi.pdf}
\includegraphics
でトンボまで広がるように画像を拡大する。位置は
\vspace*{-1.15\headheight}
\hspace*{-1.16in}
で微調整する。
ところで画像は今時PDFにするのがオツなんだそうですよ。JPEGなんてなかったんや。PNGとか聞いたことないですし。Postscript?恐竜と一緒に滅びたと聞きましたが……。
奥付
\thispagestyle{empty}
\vspace*{\stretch{1}}
\begin{flushright}
\begin{minipage}{0.5\hsize}
\begin{description}
\item{著者:}私以外
\item{挿絵:}私じゃないの
\item{発行:}2015年8月14日
\item{印刷:}POPLS (\verb|http://www.inv.co.jp/~popls/|)
\end{description}
\end{minipage}
\end{flushright}
こんなかんじで右下に出すとカッコいいかと思う。POPLSはいい印刷屋なので、この場を借りて勝手に広告を打っておく。
また、これは冒頭に謝辞や引用を入れたい時にも便利。
\thispagestyle{empty}
\vspace*{\stretch{1}}
\begin{center}
\begin{minipage}{0.3\hsize}
\begin{tiny}
「全てが中佐の言った通りになっています。タイプゼロの発動、セブンスウェルの再来。
おそらくこのままですと、やつらが出現するのは間違いありません。まもなくです、デ
ューイ中佐。今日の賢人会議で、必ずや中佐の復権が認められ、そうなれば我等が」
「私は礼節を無視するつもりはない。今のこの世界の王はその自らの罪から逃れ続け、
生き永らえ、それが支持されている。だが、いづれその罪を償うために王は死を迎えざ
るを得ない。例えどれだけ逃げ回ってもだ。しかし、その王自らが首を差し出している
のなら、その首を刎ねてやるのが礼節だとは思わないか?」
\begin{flushright}
『エウレカセブン』
\end{flushright}
\end{tiny}
\end{minipage}
\end{center}
\vspace*{\stretch{1}}
これで中央に引用文が出る。ちょっとかっこいい。
入稿
Acrobat買ってしまうのが一番安全
なんだよな。実は。小塚フォントも使えるし……。やっぱりPhotoshopとかAdobe製品を持っていた方が、本は楽に作れるかな……。
Acrobatを持っている場合は、dvipdfmxで出力されたPDFをもう一度PDFとして印刷すると規格に合ったPDFを出力できる。「プレス品質」を選ぶとよい。
フォントの埋め込み
フォントの埋め込みならdvipdfmxでもできる。
Acrobatを持っていると小塚フォントを埋め込める。持ってないならIPAとかしか使えない。自分でmapファイル書けば別。自分で書くならどんなフォントでも使える。でもライセンスは遵守しよう。
status
で選択できるフォントマッピングがわかる。実際にはtexmf-dist/fonts/map/dvipdfmx/
以下にあるotf-*.map
をリストにしているだけらしい。
$ kanji-config-updmap status
CURRENT family : noEmbed
Standby family : ipa
Standby family : ipaex
Standby family : kozuka
Standby family : kozuka-pr6n
Standby family : ms
Standby family : yu-win
デフォルトはnoEmbed
なので、埋め込みをしない。小塚フォントを埋め込むようにするには以下のようにする。
$ kanji-configp-updmap kozuka
これは個人ユーザーだけで有効になっている。ユーザーフォルダの中に設定が保存される。システムワイドに設定するには代わりにkanji-config-updmap-sys
を使う。
ここで作られたマップファイルを少し改造するとマッピングを書くのが楽かもしれない。
本が印刷されてから気付いたけど、同人誌はゴシック体の方がいいと思う。明朝体だとなんかつまんなそうな本に見えるし、かわいくない。
ところで次はScribusを使ってみようと思っているんだよね!というオチ。