この記事は「プチ仕様駆動開発」というフレームワークを、コーディング以外のあらゆる業務に応用する手順をまとめたものです。エンジニアはもちろん、非エンジニアの方でも今日から使えます。
はじめに ─ 「とりあえず話しかける」だけじゃもったいない
Claude Codeを使い始めると、最初はこんな使い方をしがちです。
$ claude "このメール返信して"
$ claude "このスライド作って"
$ claude "月次レポートまとめて"
確かに動く。でも、なんかイマイチ。自分が思ってたのと違うアウトプットが出てくる。
その原因はシンプルです。情報が少なすぎるんです。
優秀な後輩に仕事を頼むとき、「メール返信して」だけで投げますか?しないですよね。背景、相手との関係、今月の状況、返信のトーン…全部伝えるはずです。Claude Codeも同じです。
この記事では、**どんな業務にも使える「プチ仕様駆動開発」**という4ステップのフレームワークを紹介します。これを使うと「AIっぽいアウトプット」から「自分の思考の延長線上にあるアウトプット」に変わります。
全体像:4つのドキュメントだけ
まず結論から。用意するのはたった4つのMarkdownファイルです。
| ファイル | 役割 | 一言で言うと |
|---|---|---|
PLAN.md |
頭の中を全部吐き出す | 脳内ダンプ |
SPEC.md |
Claudeと仕様を壁打ちする | 認識合わせ |
TODO.md |
タスクを細かく分解する | 進捗管理 |
KNOWLEDGE.md |
学びを残す | 知識の資産化 |
ポイントはこれだけです:いきなりClaudeに作業させない。まずこの4ファイルを用意する。
フローはこうなります。
PLAN.md(音声入力でダンプ)
↓
SPEC.md(Claudeと壁打ち)
↓
TODO.md(タスク分解)
↓
実作業(Claudeと並走)
↓
KNOWLEDGE.md(学びを記録)
↓
次回のタスクに活かす ←─── ここが大事
一度作ったKNOWLEDGE.mdが、次回以降のスタートラインを引き上げていきます。
Step 0:作業ディレクトリを作る
新しいタスクを始めるとき、まずディレクトリを1つ作ります。
mkdir my-task && cd my-task
繰り返し作業の場合は、全部1つのリポジトリ(モノレポ)にまとめると便利です。
work-repo/
├── tasks/
│ ├── 2025-06-稼働報告/
│ │ └── README.md
│ └── 毎月-経費精算/
│ ├── README.md ← 恒久手順書
│ └── 2025-06.md ← 当月メモ
├── snippets/ ← 再利用スクリプト
└── docs/ ← 調査メモ
Claude Codeはリポジトリ単位でコンテキストを持ちます。このモノレポを開けば、過去の全作業のナレッジにアクセスできます。
Step 1:PLAN.md ─ 頭の中を全部吐き出す
テンプレート
# PLAN.md
## 何をやりたいか
(例:毎月の稼働報告を手作業でやっていて30分かかる)
## 背景・文脈
(なぜやるのか、誰のためか、どんな制約があるか)
## 現状のやり方
(今どうやっているか、どこが一番つらいか)
## 期待するゴール
(完成形のイメージ。完璧でなくてOK)
## 制約・注意事項
(使えないツール、セキュリティ制限、締め切りなど)
## その他メモ
(思いつきや懸念事項を雑に)
ここが最重要:音声入力を使う
キーボードで書こうとしないでください。音声入力で10分間、しゃべりまくるのが正解です。
理由は情報量です。タイピングで5分かけて書けるのはせいぜい500文字。でも音声なら10分で3000〜5000文字のコンテキストが手に入ります。
「えーっと〜」「やっぱり違って〜」などのフィラーはそのままでOKです。むしろ、友達と雑談するようにしゃべるほど、頭の中の言語化がスムーズになります。Claudeがいい感じに汲み取ってくれます。
使えるツール
- macOS:
Fnキー2回押し(システム標準) - iPhone:キーボードのマイクアイコン
- Aqua Voice(おすすめ。ノイズキャンセルが優秀)
CLAUDE.mdに一言添える
音声入力で書いたPLAN.mdをClaudeに渡す前に、CLAUDE.mdに一言書いておくと精度が上がります。
# CLAUDE.md
このリポジトリのPLAN.mdは音声入力で書かれているため、
フィラーや口語表現が含まれています。
文意を正確に汲み取って作業してください。
Step 2:SPEC.md ─ Claudeと仕様を壁打ちする
PLAN.mdができたら、Claudeに渡して仕様を固めます。
Claudeへのプロンプト例
PLAN.mdを読んで、以下の内容をSPEC.mdにまとめてください。
- このタスクのゴールを1行で
- 完了条件(何ができたら終わりか)
- 必要なインプット・アウトプット
- 自動化できる部分・できない部分の切り分け
- 想定リスク・曖昧な点(→ 私に質問してください)
SPEC.mdのフォーマット
# SPEC.md
## ゴール(1行)
〇〇を半自動化して、作業時間を30分→10分以内にする
## 完了条件
- [ ] 〇〇ができる
- [ ] 〇〇が出力される
## インプット
- 〇〇.csv(毎月DLするやつ)
- 〇〇.pdf(Gmailに届く領収書)
## アウトプット
- 〇〇.md(コピペ用シート)
## 自動化スコープ
- ✅ できること:CSVの解析、マッピング、Markdown出力
- ❌ できないこと:外部システムへの書き込み(手動コピペ)
## 曖昧な点・要確認
- [ ] 〇〇の仕様が不明 → 確認する
Claudeが質問してきたらちゃんと答えましょう。
ここで認識のズレを潰しておくことが、最終アウトプットの品質を左右します。
「完全自動化は難しいですが、ここまでは自動化できます」という提案が返ってくることも多いです。
Step 3:TODO.md ─ タスクを細かく分解する
SPEC.mdをもとに、Claudeにタスクを分解させます。
Claudeへのプロンプト例
SPEC.mdをもとに、作業をTODO.mdに分解してください。
各タスクは「1ステップで完了できる粒度」にしてください。
TODO.mdのフォーマット
# TODO.md
## ステータス凡例
- [ ] 未着手
- [x] 完了
- [~] 進行中
- [!] ブロック中
## タスク一覧
### 準備
- [ ] 〇〇ファイルを確認する
- [ ] 〇〇をDLする
### メイン作業
- [ ] 〇〇を実行する
- [ ] 〇〇を確認する
### 確認・仕上げ
- [ ] アウトプットをレビューする
- [ ] 承認・提出する
## 現在のコンテキスト(再開用メモ)
<!-- 中断した場合、次に読む人(未来の自分)向けに状況を書く -->
「現在のコンテキスト」欄が命綱
Claude Codeのコンテキストはリセットされます。作業を中断するたびに、今どこまで進んでいるかをこの欄に書いておきましょう。
再開時はこれだけでOKです:
PLAN.md / SPEC.md / TODO.mdを読んで、続きからお願いします。
Step 4:実作業 ─ Claudeと並走する
TODO.mdのタスクを上から順番にClaudeと一緒に進めます。
複数タスクを並列で回す
ターミナルを複数開いて、別々のタスクを同時進行するのがおすすめです。
[ターミナル1] 稼働報告を処理中...
[ターミナル2] プレゼン資料を生成中...
[ターミナル3] メールの返信文を作成中...
Claudeが作業している間に、別のウィンドウで承認作業をする。このリアクティブな働き方が、マルチタスクとの相性抜群です。
全部丸投げしない
「全部やって」で渡すと、人間が思ってもいないことを生成し始めます。
「ここまで自分でやった。あとはここだけお願い」 という使い方が品質を保つコツです。
Step 5:KNOWLEDGE.md ─ 学びを資産にする
作業が終わったら、必ずKNOWLEDGE.mdを書きます。面倒でも5分だけ使って書くのがルールです。
テンプレート
# KNOWLEDGE.md
## 手順サマリー
(次回はこう動けばいい、という流れを箇条書きで)
1. 〇〇する
2. 〇〇する
3. 〇〇を確認して完了
## ハマりポイント
- **問題**:〇〇でエラーが出た
**原因**:〇〇だった
**解決策**:〇〇する
## 使ったコマンド・スクリプト
# 〇〇するときのコマンド
command --option value
## 次回への改善案
- 〇〇を自動化できそう
- 〇〇の手順をスクリプト化したい
## 更新履歴
- 2025-06-01:初回作成
- 2025-07-01:〇〇の手順を追記
KNOWLEDGE.mdの効果は「2回目以降」に出る
| 回数 | 状態 |
|---|---|
| 1回目 | 試行錯誤しながら。普通の速度 |
| 2回目 | KNOWLEDGE.mdがあるので準備ゼロで即スタート |
| 3回目以降 | ハマりポイントを全部知っているので爆速 |
KNOWLEDGE.mdは「未来の自分への手紙」です。1ヶ月後の自分が読んで、すぐ動けるレベルで書きましょう。
どんなタスクにも使える:活用例
このフレームワークはコーディング以外のあらゆる業務に使えます。
月次の定型業務
PLAN.mdに書くこと
- 今月の経費の件数と傾向
- 提出先のシステムの制約
- 過去にミスしたポイント
Claudeにやらせること
- CSVの解析・分類
- 入力フォーム用のMarkdown生成
- 前月との差分チェック
プレゼン資料作成
PLAN.mdに書くこと
- 「この会議で伝えたいこと」を音声で10分ダンプ
- 聴衆のレベル・関心
- 強調したいメッセージ
Claudeにやらせること
- スライド構成の壁打ち
- Marp形式のMarkdown生成
- PDF/PPTX出力
チームへの引き継ぎ
一度このリポジトリを整備すれば、引き継ぎミーティングは不要になります。
「このリポジトリをクローンして、Claude Codeに聞いて」
これだけで完結します。
いつ・どのドキュメントを使うか:早見表
| タイミング | アクション |
|---|---|
| 新しいタスク開始時 | PLAN.mdに音声入力 → ClaudeにSPEC.md作らせる |
| 作業開始前 | TODO.mdを確認・更新してから着手 |
| 作業中断・再開時 | TODO.mdの「現在のコンテキスト」を更新 |
| 作業完了後 | KNOWLEDGE.mdにハマりポイントを追記 |
| 翌月・次回 | KNOWLEDGE.md + PLAN.mdを渡して「前回と同じ要領で」 |
| チームへの引き継ぎ | リポジトリを共有して「Claude Codeに聞いて」 |
まとめ
プチ仕様駆動開発の本質は**「情報を先に渡す」**ことです。
- PLAN.md:頭の中を全部出す。音声入力で10分しゃべる
- SPEC.md:Claudeと認識を合わせる。曖昧さをゼロにする
- TODO.md:細かく分解。中断しても即再開できる状態を維持する
- KNOWLEDGE.md:やるたびに賢くなる。チームの資産になる
このフレームワークを一度体験すると、「なんでもとりあえず話しかける」使い方には戻れなくなります。
Claude Codeはコードを書くツールではありません。あらゆる仕事を一緒に進められる、優秀な同僚です。