0. はじめに
仕事で安定化電源を使うことが時々あるのですが、どうやって100Vから別の電圧を生成するの?
とか、色々と原理が気になったところがありました。
そこで今回は、中古の24V電源を購入し、メーカーの仕様書のブロック図を見て、
おおまかな内部構造を理解していきたいと思います。
万が一故障した時に、自分で原因を突き止められるようにしたいと思います。
1. 購入した24V電源
オムロンのS8JX-N03024C。
https://www.monotaro.com/p/3545/9051/?srsltid=AfmBOooC32Abu756dvegTNaA_Mv5bXHMEJ6_SLMzS0EG3xbh01wNsMvI
既に廃品済みなので、中古で買ったら安く済みそうだったので買いました。
送料含めて3500円ぐらいでした。
2.まずは筐体を取り外す
回路の外側にある筐体と絶縁シートを取り外すと、基板が見えてきます。
基板の全体像が見えてきたところで、入力側から出力側へ順へ見ていって
各々のパーツの役割を理解していきましょう。
3.回路を順番に見ていく
3.1 ヒューズ
+(L)側の端子に対し、プリント基板を通じて3.15Aの電流ヒューズがつながっています。
仕様書によれば、入力電圧は1[A]までですが、ヒューズは3.15[A]まで耐えられます。
回路屋ではないため、ヒューズの選定要領は分からないのですが、余裕を見てこうなっているんだと思います。
3.2 突入電流制限回路
セラミックバリスタという部品が入っています。
この緑色のものです。
部品の仕様書を見ると、5000[A]/2回分のサージ電流に耐えられると書いてあり、
主に、電源投入時の瞬間的な電流に耐えうる設計(スイッチオンサージ)を想定している
ものと思われます。
基板のパターンを見た感じ、ヒューズの次のところに繋がっているように見えたのでそういうことなのかなと思います。
3.3 入力側ノイズフィルタ
先ほどの写真の黒色の物体がそれです。
フィルムコンデンサ(フィルムキャパシタ)と呼ばれる分類のものになります。
一般的にフィルムコンデンサは温度特性に優れるなどの理由で、このような箇所に使われることが多いです。
電圧は310Vでも耐えられるようになっており、うっかり大きな電圧を入力した場合でも耐えられる仕組みに
なっていることが分かります。
3.4 整流回路・平滑回路
上の写真の巻線を通じて反対側に取りついているのが整流回路。
単相交流用のブリッジダイオードを使っているようです。
また、プラス側とマイナス側の間には容量180μFの大きなコンデンサが挟まっており
平滑回路として機能しているものと思われます。
(このコンデンサに限らずですが)電解コンデンサは寿命が限られているので、
電源機器のよくある故障の原因となるようです。
何アンペアに整流されるのかとか、そこまで追ってみたいところですが、今回は時間がありませんでした。
ブロック図を更に追って回路と照らし合わせてみていきます。
3.5 パワーインダクタ
部品の詳細が分からなかったのですが
要するに、入力:一次側、出力:二次側、となるようにトランスとして機能していると思われます。
3.6 パワーインダクタ二次側の整流平滑回路
V+側の端子に繋がるところには、ファストリカバリーダイオード。
写真中央の、筐体にねじ止めされてるものです。
その後、V+とV-の間に平滑用とみられるコンデンサが繋がっていました。
こちらはノイズ対策用のコンデンサとは異なり、電解コンデンサです。
パワーインダクタから出てきた出力側のモノを低ノイズで平滑化することが目的でしょう。
3.7 出力側ノイズフィルタ
こちらもフィルムコンデンサを使っています。
コンデンサが使用可能な電圧は入力側と同等程度で、容量こそ読み取れませんでしたが
恐らく出力側と大差ないものと思います。
つまりはこれらのプロセスを経て初めて、出力側から電圧が出てくるようになるということです。
ただ内部的にトランスを使って変換しているわけではありません。
安定した電源供給を行うためには、安定した電圧、電流を出力できるように、回路上で整える必要があるからです。
4. ドライブ制御回路
ブロック図を見るに、一次側の電圧をN型トランジスタ(MOSFET)のドレインゲート間に流し、制御回路から電流値を判断し、問題があればドレインソース間を導通させて1次側で回路が閉じるようにしているように見えますが…
実際のところはどうなっているのか、可能な限り目視で追っていきます。
4.1 N-MOSFET
筐体に固定されていました。
裏側のプリント基板を見ると、3本の端子のうち1本が、1次側のトランスに基板のパターンが直接つながっており、
そこまでは確認できました。
残りの2本の端子がドライブ制御回路及び過電流検出に接続されているとみられますが、当該部分の回路のパターンが複雑で
こちらは目視で流れを追うことは難しかったです。
4.2 過電流・過電圧検出
ブロック図の通りに、過電流・過電圧検出をしているとみられるICが1つ、
その先にフォトカプラが2つぶら下がっていました。
フォトカプラの先は(中身はよくわかりませんでしたが)ドライブ制御回路と思わしき部分に
確かにつながっていました。
先ほどのN-MOSFETが、トランスの一次側での過電流検出を行っているのに対し
こちらは二次側に対しての検出を行っています。
ICの出力をそのまま使わず、フォトカプラで電気信号に変換して一次側にフィードバックを行う目的は、
おそらく一次側と二次側の回路を絶縁するためと思われます。
世の中のトランスは基本的に一次側と二次側が絶縁される前提で作られていますので、
フィードバック制御を行う回路をつけたいとしても、そこは絶縁しなければならないものと思います。
5.まとめ
回路系の実験をやった事のある人や、FA関係のシステムに触ったことのある人なら
誰しも一度が安定化電源を使ったことがあるかと思います。
安定化電源は小さなものも多く、このように安く購入できる一方で、
回路を眺めてみると様々なギミックが詰まっているものです。
うっかり大きな電圧、電流を流してしまわないよう
何重もの安全対策がされており、そのために様々なパーツが表面実装されている点は
特筆すべき点と思います。
普段当たり前のように使っている電源機器が、様々な安全対策の末に機能していることは
よく知っておいた方がいいかもしれません。
以上となります。