はじめに
ChatGPTを議事録作成や要約に使うのではなく、人間と同じ会議の参加者として発言してもらえないか?
そう考えて、Windows 11上でChatGPTをZoomに参加させ、人間2名+AI1名の3者会議を試しました。
結果は成功!!
ChatGPTに直接話しかけて回答してもらうだけでなく、人間同士の会話を聞いたうえで、AIが自発的に発言することもできました。
ただし、うまく進めるには音声接続だけでは足りませんでした。最初にAIの役割と発言ルールを明確にし、人間2名が自己紹介することが大切でした。
この記事では、構成の考え方、試したこと、うまくいった工夫、残った課題を実験レポートとして紹介します。詳細な設定値を一つずつ説明するセットアップ手順書ではありません。
実際のZoom会議画面
図1:Zoomの参加者一覧に「ChatGPT(AI)」「参加者A(人間)」「参加者B(人間)」が表示されている。
ChatGPTは裏側の補助ツールではなく、Zoom上で独立した参加者として表示されています。AIの音声をほかの参加者が聞き、人間の音声をAIへ届ける構成にしました。
検証環境
| 項目 | 使用したもの |
|---|---|
| OS | Windows 11 |
| AI | ChatGPT 音声モード |
| ブラウザー | Google Chrome |
| オンライン会議 | Zoom |
| 仮想オーディオミキサー | Voicemeeter Banana |
| 録画 | OBS Studio |
| 音声入出力 | ヘッドセット、仮想オーディオデバイス |
専用の会議参加AIサービスを導入するのではなく、既存のアプリケーションを組み合わせました。
図2:ZoomとChatGPTをVoicemeeter Banana経由で双方向接続する概念図。図中のミキサーの表示は説明用イメージであり、実機の設定値を示すものではありません。
実現したい音声の流れは、シンプルに言えば次の2方向です。
- 人間 → AI: Zoomで聞こえる人間の音声をChatGPTのマイク入力に渡す
- AI → 人間: Chromeで再生されるChatGPTの返答をZoomのマイク入力に渡す
この橋渡しに使ったのが、Windows用の仮想オーディオミキサー Voicemeeter Banana です。アプリごとの音声入出力を振り分け、ヘッドセットでのモニターとOBSでの収録にも利用しました。
特に注意したいのは音声のループです。ChatGPTが発した声を再びChatGPT自身に入力してしまうと、意図しない再応答につながる可能性があります。どの音をどこへ送るかを整理する必要があります。
なお、上の図はあくまで構成の説明用です。Voicemeeterの具体的なバス割り当てや、Zoom・Chromeの入出力デバイス名は環境によって異なります。
実験1:AIを指名して話しかける
まず、人間がChatGPTに質問し、AIが音声で回答するパターンを試しました。
結果:成功。 Zoomのほかの参加者もChatGPTの回答を聞けました。通常の音声チャットを、複数人が共有できる会議に拡張した形です。
実験2:人間同士の会話にAIが自発的に参加する
次に、ChatGPTを毎回指名せず、人間同士の会話を聞いたうえで、必要な場面で自発的に発言できるか試しました。
結果:こちらも成功。 人間から直接質問されていない場面でも、ChatGPTが会話の流れに応じて発言できました。
ただし、何も指示せずに常に適切なタイミングで話せる、という意味ではありません。今回うまくいった背景には、次に説明する事前の役割設定と発言ルールがありました。
成功の鍵は「役割」「発言ルール」「自己紹介」
1. AIに会議内での役割を与える
最初にChatGPTへ、どのような立場で参加してほしいかを伝えました。
たとえば、**進行役(ファシリテーター)**なら議題の整理や進行支援、技術アドバイザーなら設計上の論点やリスクへの助言、といった具合です。
単に「会議に参加して」と伝えるより、AIが何を担当するかを明確にしたほうがうまく進みました。
2. 発言してよい場面を明確にする
特に効果があったのが、**「人間同士が話しているときは割り込まない」**という指示です。
ほかにも、指名されたら回答する、必要な場合は会話の切れ目で意見を述べる、無理に毎回発言しない、といったルールを与えました。
会議に必要なのは「発言できること」だけではありません。聞き役に回れることも重要だと感じました。
3. 人間2名が最初に自己紹介する
もう一つ、今回の実験で分かった工夫が会議開始時の自己紹介です。
人間の参加者2名が最初に自己紹介し、ChatGPTに参加者と会議の状況を伝えると、その後の会話がスムーズになりました。
ただし、これはAIが声紋などで2人を確実に識別できるようになったことを意味しません。参加者情報と会話の文脈を最初に共有することが役立った、という観察結果です。
参考:会議開始前に伝えるプロンプト例
以下は今回の知見をもとに整理した再現用サンプルです。実験時の指示を一字一句再現したものではありません。
あなたはこれからZoom会議にAI参加者として加わります。
今回の役割は【進行役/技術アドバイザー】です。
人間の参加者が会話している間は原則として割り込まず、まず話を聞いてください。
直接質問された場合は簡潔に回答してください。
自分の役割に関係する重要な指摘がある場合は、会話の切れ目を待って発言してください。
不必要に毎回発言したり、会話を独占したりしないでください。このあと人間の参加者2名が自己紹介します。参加者の名前と役割、今日の議題を把握したうえで会議に参加してください。
誰が発言したか確信がない場合は、推測で決めつけず確認してください。
役割の部分は、会議の目的に応じて変更します。
OBSでの録画
会議の様子はOBS Studioで録画しました。ChromeからのAI音声など、音声経路を分けて扱う構成にすることで、後から会話を振り返りやすくなります。
録画を見直せば、AIがどの場面で発言したか、発言が重なったかなども確認できます。実際の会議音声を公開する場合は、参加者の同意や個人情報の取り扱いに注意が必要です。
検証結果まとめ
| 検証項目 | 結果 |
|---|---|
| ChatGPTをZoom上の参加者として表示 | 成功 |
| 人間からの問いかけに音声で回答 | 成功 |
| AIが会話の流れに応じて自発的に発言 | 成功 |
| 役割・発言ルールを指定した会議参加 | うまく進行できた |
| 人間2名の自己紹介による状況共有 | その後の会話がスムーズになった |
| OBSによる会議録画 | 成功 |
| 声だけによる正確な話者識別 | 未検証 |
残った課題
誰が話したかを正確に識別できるか
複数人の声をまとめてChatGPTへ入力する場合、AIが発言者を正しく識別し続けられるとは限りません。自己紹介によって文脈は伝えられても、音声そのものの話者識別とは別の問題です。
同時発話への対応
人間2名が同時に話した場合、内容が混ざり、AIが正しく理解できない可能性があります。今後は話者分離や入力制御を検討したいところです。
自発的な発言のタイミング
今回は明確なルールを与えることでうまくいきましたが、どんな会議でも安定して割り込みを避けられるかは、さらに検証が必要です。
今後試したいこと
今後は、AIをファシリテーターとしてより積極的に議題進行へ参加させたり、技術アドバイザーとして設計レビューに参加させたりしたいと考えています。
その他、e-sportsなどのゲーム実況を人間が行い、アシスタントや解説をAIが行う、など、やりたいことは沢山あります。
また、話者識別の改善や、今はアイコンのみの表示しかできないので、AIの発話に合わせて口や表情が動くアバターの導入にも興味があります。
こちらは既に実証実験を開始していて、UnrealEngine5のMetaHumenでアバターを作成し、AIが発生した音声入力にリップシンクさせて、無機質な空間からより人間同士のやり取りに近い形になりつつあります。
まとめ
今回の実験では、Windows 11上でChatGPT音声モード、Zoom、Voicemeeter Banana、OBS Studioを組み合わせ、人間2名+AI1名の3者会議を実現できました。
特に面白かったのは、ChatGPTが指名されたときだけでなく、自発的にも発言、無言を貫くことができたことです。
そして、技術的な音声接続と同じくらい重要だったのが、AIに役割を与え、発言ルールを明確にし、会議の最初に人間が自己紹介することでした。
AIを「会議の記録係」として使うだけでなく、一緒に議論する仲間として迎える。そんな使い方の可能性を感じた実験でした。

