はじめに
検索エンジンの世界に激震が走っています。Googleが導入した生成AI機能により、私たちが長年慣れ親しんできた「検索してリンクをクリックする」という行動そのものが変わりつつあります。
この記事では、Googleの最新機能であるAI Modeと AI Overviews (AIO) の基礎知識から、WordStreamの衝撃的な統計データ、そしてクリック率(CTR)への影響と企業の対策について解説します。
1. Googleの「AI Mode」と「AI Overviews」とは?
まず、この2つの用語の違いと定義を整理しましょう。
AI Overviews (AIO) とは
かつてSGE (Search Generative Experience) と呼ばれていた機能の正式版です。ユーザーの検索クエリに対し、AIが複数の情報源を統合して生成した 「回答の要約」を検索結果の最上部(トップ)に表示する機能です。
• 特徴: ユーザーはリンクをクリックして各サイトを回らなくても、検索結果画面(SERP)上で答えを得ることができます。
• 現状: すでに多くの検索クエリ(特に情報収集型)で導入されています。
AI Mode とは
AI Overviewsをさらに進化させた、より対話的で複雑な推論を伴う検索体験を指します。 Googleのドキュメントによると、「AI Mode」は、さらなる探索、推論、または複雑な比較が必要なクエリに対して役立つ機能とされています。単なる要約ではなく、ユーザーのエージェント(代理人)として動くような将来的な検索体験を含みます。
2. 【WordStream発】AI Overviewsに関する衝撃的な統計データ
米国のオンライン広告大手WordStreamが2025年に公開したデータから、特にSEO担当者が知っておくべき数字をピックアップしました。
これらのデータは、現在のGoogleがどのようなクエリでAIを優先しているかを明確に示しています。
① AIOの表示頻度は55%に達している
Google検索の **約55%**でAI Overviewsが表示されています。もはや「一部のテスト機能」ではなく、検索の標準になりつつあります。
② AIが表示されるのは「情報収集(Know)」クエリが99%
AI Overviewsが表示されるキーワードの ほぼ100%が「情報収集型(Informational Intent)」 です。逆に、「購入(Transactional)」や「商用(Commercial)」のクエリで表示される確率はわずか10%程度です。
③ クエリが長いほどAIが表示されやすい
検索キーワードが長ければ長いほど、AIOが表示される可能性が高まります。 具体的には、8単語以上のクエリは、短いクエリに比べてAI Overviewsが表示される確率が7倍になります。
④ 権威性がすべて?
AIO内で引用(メンション)されるドメインの約30%は、Google上の上位50ドメインが占めています。つまり、AIは権威性の高い大手サイトを好む傾向があります。
3. AIOはクリック率(CTR)を殺すのか?
SEO担当者にとって最大の懸念は「検索結果に答えが出たら、誰もサイトに来なくなるのでは?」という点です。データはその懸念を裏付けています。
CTRの大幅な低下
WordStreamのデータによると、AI Overviewsが表示されると、オーガニック検索(通常の検索結果)のクリック率は約35%低下します。
• 1位でもクリックされない: ある調査では、AIO導入後、検索順位1位のCTRが**約3.9%**まで低下したというデータもあります。かつて1位のCTRが40%近かったことを考えると、壊滅的な数字です。
• ゼロクリック検索の増加: 検索ユーザーの58%が、検索結果画面だけで満足し、どこもクリックせずに離脱しています。
一方で「質の高い流入」も
Googleは、AIOを経由してサイトに訪れるユーザーは、サイト滞在時間が長く、関心が高い傾向にあると主張しています。数は減るものの、本当に情報を求めているユーザーだけが流入するようになる可能性があります。
4. 企業・マーケターが次にとるべきアクション
クリック率が下がる中で、企業はどう戦うべきでしょうか?「順位を上げる」だけのSEOは通用しなくなっています。
① 「E-E-A-T」で信頼性を担保する
AIは信頼できる情報源を優先して引用します。Googleの評価基準である E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性) を満たすコンテンツ作りが必須です。
• 一次情報: 自社独自のデータや見解を入れる。
• 専門家の監修: 誰が書いたかを明確にする。
② 構造化データ(Schema Markup)の実装
AIがあなたのサイトの内容を正確に理解できるよう、構造化データ(FAQPage, Article, HowToなど)でマークアップを行います。これにより、AIが回答を生成する際に、あなたのコンテンツを「情報のパーツ」として引用しやすくなります。
③ 「指名検索」を増やす(ブランド構築)
AIが一般的な回答を返してしまう時代、ユーザーにクリックさせる唯一の動機は「このブランド(人)の意見が聞きたい」と思わせることです。 SNSや動画、メルマガなどを通じてブランド認知を高め、「〇〇会社 評判」「〇〇さん 解説」のような指名検索を増やすことが、ゼロクリック時代の防波堤になります。
④ ロングテールキーワード(会話型クエリ)への対策
前述の通り、AIは「長いクエリ」で表示されやすい傾向があります。 「おすすめのプログラミング言語」といったビッグワードだけでなく、「初心者が独学でPythonを学ぶための具体的なステップは?」のような、具体的で会話的な問いに答えるコンテンツを作成しましょう。
まとめ
GoogleのAI ModeとAI Overviewsは、検索体験を「探す」から「答えを得る」へとシフトさせました。
• CTRの低下は避けられない現実です。
• しかし、AIの回答の中に「引用」されることが新たなSEOのゴールになります。
今後は、AIに「信頼できるソース」として認識されるための技術的な対策(構造化データ)と、人間に「選ばれる」ためのブランド構築の両輪が求められます。
参考リンク・出典
• WordStream: 34 AI Overviews Stats & Facts
• Semrush AI Overviews Study: What 2025 SEO Data Tells Us About Google’s Search Shift