📘 SQL Server 2025 徹底解説:AI時代のデータベースをやさしく理解する
はじめに:2025年、SQL Serverが大きく変わりました
Microsoft SQL Server は、世界中の企業で使われている代表的なデータベースシステムです。
2025年版は、これまでの「表形式のデータを扱うシステム」という枠を超え、
AI・クラウド・リアルタイム処理を前提にした“次世代データ基盤” へと進化しました。
本記事では、
- エンジニアでない方(営業・経営・教育・分析担当など)
- SQLを少し触ったことはあるけど、技術用語が多くてついていけない方
に向けて、
専門用語をできるだけ避けながら、やさしく・丁寧に・でも正確に
SQL Server 2025の新機能を解説します。
🎯 SQL Server 2025 がめざす方向
これまでのSQL Serverは、
「データを保存し、検索し、集計するツール」
でした。
でも、世の中のデータはもう「単なる数字や文字」だけではありません。
- Webサイトの文章
- 画像・動画
- AIが生成したテキスト
- センサーのログやSNSの投稿
これらの“意味のある情報”を扱うために、SQL Serverは新しい時代に合わせて生まれ変わったのです。
🧠 1. ベクトル検索:意味で探せるデータベース
ベクトルってなに?
「ベクトル(Vector)」とは、数学的には「方向と大きさを持つもの」。
AIの世界では、「言葉や画像を“数字の並び”で表したもの」を指します。
たとえばAIはこう考えています:
| 言葉 | ベクトル(イメージ) |
|---|---|
| りんご | [0.12, 0.45, -0.31, ...] |
| みかん | [0.10, 0.44, -0.30, ...] |
| パソコン | [-0.5, 0.12, 0.9, ...] |
この数字の並びを使うと、「りんご」と「みかん」は“近い”けど、「パソコン」は遠い、というように
“意味の距離”を測ることができるのです。
SQL Serverで何ができるの?
SQL Server 2025 では、この「ベクトル」を直接データベースに保存できるようになりました。
CREATE TABLE Items (
id INT PRIMARY KEY,
name NVARCHAR(100),
description NVARCHAR(MAX),
embedding VECTOR(1536) -- AIが作ったベクトルを格納
);
さらに、新しい関数 VECTOR_DISTANCE() を使うと、
「意味が近い順に並べる」ことができます。
SELECT TOP 5 name
FROM Items
ORDER BY VECTOR_DISTANCE('cosine', embedding, @query_vector);
これにより、「似た商品」「意味が近いFAQ」「関連する記事」などをAI的に探せるようになったのです。
身近な例でいうと…
| 従来の検索 | 2025のベクトル検索 |
|---|---|
| “カレー”と書かれたデータだけ見つかる | “スパイス料理”や“インド料理”も見つかる |
| “売上レポート”しか探せない | “収益分析”でもヒットする |
つまり、人間の「感覚」に近い検索ができるようになった、ということです。
技術的には難しいが、使い方は簡単
従来はこうした“意味検索”をするために、
AI専用の「ベクトルデータベース」(例:Pinecone、Milvusなど)を使う必要がありました。
でもSQL Server 2025なら、その機能が最初から入っています。
つまり:
- データ移動が不要
- 既存のSQL構文が使える
- セキュリティや権限管理も一体化
というメリットがあるのです。
📦 2. JSON機能が格段に便利に
JSONってなんだろう?
JSON(ジェイソン)は、アプリやWebでよく使われるデータの書式です。
{
"名前": "田中太郎",
"部署": "営業",
"年齢": 29
}
これまではSQLで扱うのが少し面倒でした。
でも2025年からは、JSONをそのままSQLで扱えるように改善されています。
主な新機能
| 機能名 | 内容 | できること |
|---|---|---|
JSON_EXISTS() |
JSON内に項目があるか調べる | 「年齢」というキーがあるか確認 |
ISJSON()(改良版) |
データが正しいJSONかチェック | JSONの書き間違いを防ぐ |
| JSONインデックス | JSONの特定の値を高速検索 | 「部署=営業」を一瞬で見つける |
たとえばこう使います
CREATE TABLE Staff (
id INT PRIMARY KEY,
profile JSON
);
SELECT id
FROM Staff
WHERE JSON_EXISTS(profile, '$.部署');
もう「JSONを文字列として処理する」必要はありません。
SQLが直接理解してくれるようになったんです。
💬 3. SQL文がやさしくなった
プログラミングっぽい書き方を覚えなくても、
シンプルな表現で条件や比較が書けるようになりました。
| 構文 | 意味 | わかりやすい例 |
|---|---|---|
REGEXP_LIKE(text, pattern) |
正規表現検索 | メールアドレス形式を探す |
🔄 4. データ変更の“リアルタイム通知”
これまでのSQL Serverでは、
「データが更新されたことを他のシステムに伝える」ためには
夜中に動く“バッチ処理”や“同期ツール”が必要でした。
SQL Server 2025 では新しく
Change Event Streaming(変更イベント通知)
という仕組みが導入されています。
これはどんなことができるの?
- 新しい注文が入ったら即座に通知
- 在庫数が減ったら自動でダッシュボード更新
- ユーザー登録があれば別のシステムに転送
つまり、**「データが動いた瞬間にアクション」**が起こせるようになりました。
これまでの「1日1回の更新」ではなく、「リアルタイムな世界」になったんです。
🧰 5. 管理ツールも進化:AIがSQLを書いてくれる
管理ツール「SSMS(SQL Server Management Studio)」の最新版では、
GitHub Copilot と連携してAIがクエリ作成を支援してくれます。
「商品別の売上を出して」と書くと → SQL文を提案してくれる。
SQL初心者でも、自然言語で指示すればクエリが完成。
これにより、非エンジニアでもデータ分析に参加できる時代が始まっています。
💪 6. Standard版でも性能アップ
以前は「高性能な機能は高いEnterprise版限定」でしたが、
2025ではStandard版も大幅強化。
- CPU使用数が 24 → 48コア に
- メモリ上限が拡大
- 並列処理などの上位機能が利用可能に
中小企業や教育現場でも、十分な性能が出せるようになっています。
🔐 7. セキュリティと信頼性の強化
安全にAIやクラウドを使うための改良も進んでいます。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| Always Encrypted(改良版) | 暗号化したまま計算可能に |
| TLS 1.3対応 | 通信を最新規格で暗号化 |
| データマスキング | 個人情報を自動で伏せ字化 |
これにより、セキュアなAI時代のデータ運用が可能になりました。
🪦 廃止された古い機能(でも安心)
| 廃止対象 | 理由 |
|---|---|
| SQL Profiler | 新しい監視ツール「XEvent」に完全移行 |
| Database Mirroring | Always On に一本化 |
| Web Edition | Azure SQL に統合 |
| DQS / MDS | Power Platform 側へ機能移行 |
古い機能は整理され、より安全で使いやすい設計になりました。
🌐 まとめ:SQL Server 2025 は「考えるデータベース」
- AIが意味を理解して検索できる(ベクトル検索)
- 柔軟なデータ構造に対応(JSON強化)
- 変化をリアルタイムで伝えられる(イベントストリーム)
- 非エンジニアでも使いやすくなった(AI支援ツール)
つまりSQL Server 2025は、
「データを“保存する場所”から、“意味を理解して活用する場所”へ」
と進化したのです。
📚 参考リンク
- Microsoft Learn: What’s new in SQL Server 2025
- Publickey: AI時代のSQL Server 2025
- Bob Ward: SQL Server 2025 GA 発表 (LinkedIn)
- TechCommunity JSON Index Preview