Raspberry Piと専用のカメラモジュールを使用し、ONVIF対応の監視カメラを作成するシリーズ記事です。
本記事はリンク情報システム株式会社の有志が作成しています。
カメラから動画や静止画を取得できるようになったので、監視カメラとして機器間の接続性を高めるために、業界標準のI/Fに合わせるために、ONVIFのプロトコルをサポートしてみたいと思います。
#カメラの遠隔操作 (ONVIF)
###はじめに
ONVIFについて、wikiでは以下のように説明されてます。
ONVIF(オーエヌブイアイエフ、Open Network Video Interface Forum)は、アクシス、ボッシュ、ソニーが立ち上げたネットワークカメラ製品のインターフェースの規格標準化フォーラムである。
ネットワークカメラの機能をWebサービスとして公開するのが特徴。クライアントはカメラからWSDLを取得してそのカメラが持つ機能の利用方法を動的に入手する。
カメラの動的な発見、カメラ情報の設定および取得、カメラの光学制御およびPTZ (Pan, Tilt, Zoom) 制御、イベントハンドリング、Video Analytics, ストリーミング、セキュリティといったネットワークカメラの利用に必要な一通りのインターフェイスを定義している。
参考元:ONVIF - Wikipedia
簡単にまとめると、端末アプリから自動でカメラを検出。動画の再生やカメラ向きを切り替える事ができる。という事だと思います。
###ONVIFでの通信方法
ONVIFは、以下のプロトコルを駆使して通信を行います。
機能 | プロトコル |
---|---|
カメラ制御 | SOAP |
動画 | RTSP や HTTP ※今回はRTSPを対象に作成 |
静止画 | HTTP |
動画のRTSPや静止画のHTTPは、これまでに述べてきた事ですので、今回は、カメラ制御のSOAPの部分に関して実装を進めて行きます。
###gsoapを使用した ONVIF I/F
soap通信を実現するために、linux上で使用できるオープンソースのライブラリとしては、gSoapが存在しています。
gSoapを使用することで、ONVIFのサイトで公開されている WSDL ファイルより、プログラムのスケルトンを生成することができます。
ONVIFクライアントから、RaspberryPi上の監視カメラアプリに対して命令が実行されると、gSoapで生成したスケルトンの処理が実行されます。
その為、このスケルトンに処理を実装していくことで、ONVIFクライアントの要求に応える事ができます。
まずは、以下のコマンドを実行して、WSDLよりスケルトンのヘッダファイル(onvif.h)を生成します
wsdl2h -c -o onvif.h http://www.onvif.org/onvif/ver10/device/wsdl/devicemgmt.wsdl http://www.onvif.org/onvif/ver10/media/wsdl/media.wsdl https://www.onvif.org/ver10/events/wsdl/event.wsdl https://www.onvif.org/ver10/recording.wsdl https://www.onvif.org/ver20/ptz/wsdl/ptz.wsdl
次に、ONVIFでは認証にWSSEを使用するため、生成された onvif.h にWSSE機能を追加するために、importの記述を追加します。
#import "xop.h" // xop = <http://www.w3.org/2004/08/xop/include>
#import "wsa5.h" // wsa5 = <http://www.w3.org/2005/08/addressing>
#import "wsse.h" // WSSEを追加
最後に以下のコマンドを実行して、スケルトンのソースを出力します。
soapcpp2 -I/usr/local/share/gsoap onvif.h
ここまでの手順で、以下のソースファイルが作成されます。
・soapC.c
・soapClient.c
・soapClientLib.c
・soapServer.c
・soapServerLib.c
・soapH.h
・soapStub.h
これらのソースは、ONVIFクライアントと接続・通信を行い、処理を要求されるまでのスケルトンになっています。
(※soapClient.c と soapClientLib.c はクライアント用のソースなので、使用しません。)
###処理の実装
次に、実装すべき関数は、以下のようにsoapStub.hに宣言されています。
/******************************************************************************\
* *
* Server-Side Operations *
* *
\******************************************************************************/
/** Web service operation 'SOAP_ENV__Fault' (returns SOAP_OK or error code) */
SOAP_FMAC5 int SOAP_FMAC6 SOAP_ENV__Fault(struct soap*, char *faultcode, char *faultstring, char *faultactor, struct SOAP_ENV__Detail *detail, struct SOAP_ENV__Code *SOAP_ENV__Code, struct SOAP_ENV__Reason *SOAP_ENV__Reason, char *SOAP_ENV__Node, char *SOAP_ENV__Role, struct SOAP_ENV__Detail *SOAP_ENV__Detail);
/** Web service operation '__tds__GetServices' (returns SOAP_OK or error code) */
SOAP_FMAC5 int SOAP_FMAC6 __tds__GetServices(struct soap*, struct _tds__GetServices *tds__GetServices, struct _tds__GetServicesResponse *tds__GetServicesResponse);
/** Web service operation '__tds__GetServiceCapabilities' (returns SOAP_OK or error code) */
SOAP_FMAC5 int SOAP_FMAC6 __tds__GetServiceCapabilities(struct soap*, struct _tds__GetServiceCapabilities *tds__GetServiceCapabilities, struct _tds__GetServiceCapabilitiesResponse *tds__GetServiceCapabilitiesResponse);
/** Web service operation '__tds__GetDeviceInformation' (returns SOAP_OK or error code) */
SOAP_FMAC5 int SOAP_FMAC6 __tds__GetDeviceInformation(struct soap*, struct _tds__GetDeviceInformation *tds__GetDeviceInformation, struct _tds__GetDeviceInformationResponse *tds__GetDeviceInformationResponse);
:
例えば、カメラの情報を取得するというI/F (devicemgmt.wsdl で定義されていた、GetDeviceInformation) を実装した場合、以下のようになります。
/** Web service operation '__tds__GetDeviceInformation' (returns SOAP_OK or error code) */
SOAP_FMAC5 int SOAP_FMAC6 __tds__GetDeviceInformation(struct soap* soap, struct _tds__GetDeviceInformation *tds__GetDeviceInformation, struct _tds__GetDeviceInformationResponse *tds__GetDeviceInformationResponse)
{
// 実際は、設定ファイルやROM等から情報を取得して通知する。
tds__GetDeviceInformationResponse->Manufacturer = soap_strdup(soap, "製造者名");
tds__GetDeviceInformationResponse->Model = soap_strdup(soap, "モデル名");
tds__GetDeviceInformationResponse->FirmwareVersion = soap_strdup(soap, "バージョン番号");
tds__GetDeviceInformationResponse->SerialNumber = soap_strdup(soap, "シリアル番号");
tds__GetDeviceInformationResponse->HardwareId = soap_strdup(soap, "ハードウェアID");
return 0;
}
実装すべき関数は沢山あるのですが、gSoapを使用することで、SOAP通信などの難しい部分の処理は、すべて自動で作成されるので、肝心の監視カメラの制御に専念するる事ができます。
###対応アプリとの通信
このようにONVIF対応として監視カメラを実装すれば、今回自作するWindows用の監視カメラ映像再生用アプリからのみではなく、一般に公開されているONVIF対応アプリから、カメラの映像が再生できるようになります。
例えば、GooglePlayにあるBiyee SciTech, Inc.の "ONVIF IP Camera Monitor (Onvifer)" で試したら、接続できる事が確認できました。
※2020/12/30追記 現状、iPhoneアプリでは動作確認がとれていません。ONVIF対応アプリと謳っている数点のiPhoneアプリで確認してみましたが、何れも映像の再生(通信)が出来ていません。
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