ヒーローズ・リーグ 2025 の応募作品で使われていたデバイス素材から、気になったものをいくつか紹介していきます。
Roller485
メカナムホイール倒立振子 で使われていました。
Roller485 は、ブラシレスDCモータ (BLDCモータ) のユニットです。制御回路を内蔵しており、RS485または I2C通信でコントロールできます。
BLDCモータは高トルク・静音・長寿命などの利点がある一方で高度な電子制御が必要であり、電子工作の世界ではまだまだ難易度高めなのが現状です。Roller485は磁気エンコーダを含む制御回路と制御マイコンを内蔵しており、RS485または I2C通信で簡単にコントロールできます。そのために Arduino用ライブラリも提供されています。また、CAN通信に対応したRollerCANもラインナップされています。
メカナムホイール倒立振子 では倒立振子の駆動輪にRoller485が使われています。安価なDCモータとは違い、減速ギアを用いないダイレクトドライブです。厄介な非線形特性をもたらすギアの摩擦やバックラッシュが無いので、倒立振子の制御には理想的ですね。余計な苦労が少なそうに思います。いま倒立振子をやるならRoller485はとても良いんじゃないでしょうか。問題はお値段ですが…
GreenPAK
はしごくだりカリンバ で使われていました。
GreenPAK は、小規模なロジック回路やアナログ回路を実装できる超小型・低消費電力のプログラマブルデバイスです。専用のソフトで回路図を描いてデータをデバイスに書き込むと、その通りの回路が実現できます。FPGA ほど大規模ではない用途に適しており、アナログ機能も内蔵しているため、外付け部品を減らして回路を簡素化できます。
はしごくだりカリンバ で驚いたのは、GreenPAK 一個でここまで出来るのか!?というくらい機能を使い倒してる点です。残念ながら詳しい解説が無いのですが、おそらくモータを一定速度で回転させるために、ロータリーエンコーダを使ってPWMをフィードバック制御しているのだろうと思われます。マイコンを使わず、GreenPAK 一個とモータ駆動用のトランジスタ一個のみの回路のようです。あまりにマニアックすぎて決勝大会でもその凄みが伝わらなかったのは残念。(しょうじき、マイコン使ったほうが簡単な気はしますが…)
骨伝導スピーカー
猫魔法「ごろごろ」 で使われていました。
骨伝導スピーカーも、電気信号を機械的な振動に変換するという点ではふつうのスピーカーと同じです。ただし、ふつうのスピーカーが空気を振動させるために設計されているのに対し、骨伝導スピーカーは物体(骨)を振動させるために設計されています。ふつうのスピーカーは空間に向けて配置しますが、骨伝導スピーカーは物体に密着させます。密着させる物体はなにも頭蓋骨とは限りません。いろいろな応用ができそうです。たとえば楽器とか。アコギのような共鳴胴を持つ楽器に骨伝導スピーカーを取り付けるのは面白そうですね。
猫魔法「ごろごろ」 では、猫のゴロゴロ (音と振動) を再現するために骨伝導スピーカーを金属プレートに密着させています。ユニークな発想ですね。
STM32U5G9J-DK2 (+ TouchGFX)
STM Deck Mk-Ⅱ で使われていました。
STM32U5G9J-DK2 は、STM32U5G9 マイコン と 5インチ 800x480 タッチディスプレイ を搭載した開発ボードです。STM32U5G9マイコンは、Cortex-M33コアと、3MBものSRAM、4MBのFlashメモリ、NeoChromVG GPUを内蔵し、消費電力を抑えつつもリッチなGUIアプリを実行できるのがウリです。
TouchGFX は、STM32マイコン向けに高品位のGUIアプリを開発できる GUIフレームワークです。STM32CubeMX / CubeIDE の開発環境と連携できます。
ぼくは個人的なポリシーとして、組込み機器のUIはQVGA (320x240) までと考えていて、それよりリッチなUIが必要ならスマホアプリと通信させればいいだろ!と思ってます。ユーザーはスマホのリッチなGUIを見慣れてるのに対して、組込みマイコンでスマホアプリなみのGUIを開発するのは一般的に難しいからです。しかし、リッチなUIが必要な組込み機器というのも確実に存在して、この STM Deck Mk-Ⅱ はまさにそういうケースですね。
Seeed Studio XIAO
Seeed Studio XIAO シリーズは、親指サイズの超小型マイコンボードです。ESP32、RP2040、nRF52840などいろいろなマイコンを搭載したものがラインナップされており、用途に応じて選択できます。ArduinoやMicroPythonなどでお手軽に開発することができ、とにかく小さなモノに組み込むのにとても便利で強力なマイコンボードです。
M5StackやSPRESENSEなんかと比べるとあまり目立つデバイスではないですが、今回のヒーローズ・リーグの応募作品でも採用例がいくつかありました。ぼくも好みのデバイスで、パワポ用カンペスカウター では XIAO RP2040 と XIAO nRF52840 を使いました。XIAO nRF52840 は他より少々お値段が高いのですが、低消費電力が求められるBLEデバイス(キーボードやマウスなど) に適しており、そのような作例が目立ちました。
- ウェアラブル布キーボード "nüno type" (XIAO nRF52840)
- EMG/SW多機能マウス EMMC (XIAO nRF52840)
- ALL IN ONE BOTTLE (XIAO ESP32C3)
- パワポ用カンペスカウター (XIAO RP2040 / XIAO nRF52840)
DFPlayer
メロガチャ で使われていました。
DFPlayer は、マイクロSDカードスロットを備え、アンプも内蔵したコンパクトなMP3プレーヤーモジュールです。マイコンからUARTで制御できます。類似の製品としてM5Stack オーディオプレイヤーユニット や GROVE - MP3モジュール があります。ちなみに、VS1053bというMP3デコーダICもあって、こちらはMIDI音源にもなるようです。
現代の高性能なマイコンならMP3の再生処理をこなすことも可能ですが、DFPlayerのようなモジュールを使えば、非力なマイコンにも簡単にMP3の音声再生機能を持たせることができます。ここらへん、どう機能分割するかがシステム設計の肝といえます。
メロガチャ では、 Arduino Uno R4 WiFi でDFPlayerを制御されています。
導電性フィラメント
栗原式インパクトボタン で使われていました。
導電性の樹脂部品を3Dプリンタで造形できる材料です。静電気対策や電磁シールドのために使われることが多いのでしょうが、電子部品を作ることも可能です。スイッチ、電極、曲げセンサ(可変抵抗)、アンテナなどを作れるようです。ただし、金属に比べれば電気抵抗が大きいことには注意が必要です。
栗原式インパクトボタン では導電性フィラメントを使って特異な形状の押しボタンを造形されていました。ボタンの選定は、けっこう機構設計の制約になるものですが、自由な形状のボタンを作ることができれば機構設計の自由度もあがるんじゃないかなと思います。
また、導電性つながりで言うと、ウェアラブル布キーボード "nüno type" では導電糸が使われていました。刺繍ミシンで回路を布に刺繍するという発想に驚きました。
パイロン
ヤドカリ・パイロン、これはブームが来るぞ!(ホンマか?)