この記事は【ローカル生成AI(主にLLM)向け: はじめてのPC自作】シリーズの第1回です。
シリーズ構成(予定)
- 第1回: PCスペック選定(本記事)
- 第2回: PC自作手順(予定)
- 第3回: 性能検証(予定)
想定読者
- ローカルLLM開発やMLモデル開発向けに自作PCに興味がある
- PC自作は全くの未経験でどこから手を付ければ良いかわからない
シリーズの記載範囲
第1回(今回)
- PC自作にいたった経緯
- PCスペックの決め方
次回以降(予定)
- PC自作の主なステップ
- PC自作の各ステップの詳細
- 自作PC未経験者がつまづきそうなポイント
- 自作PCで生成AIを動かしてみて性能を検証
はじめに
前々から自作PCってギークっぽくてなんかカッコいいなぁ、カスタマイズの自由度があって良さそうだなぁ、いつか時間ができたらチャレンジしてみようと思いながらも、時間が無いことを言い訳に後回しし続けていました。ですが夏休みに時間が出来たので、以下のきっかけからついに重い腰を上げることになりました。
- 最近参加した画像認識系のコンペでGPU環境が無いために歯がゆい思いをしたこと
- LLMなどの生成AIをローカル環境で動かしてみたかったこと
それぞれのきっかけについて少し補足します。
まず1について。過去に参加した画像系コンペで、開発環境についての制約条件が特にありませんでした。要するに各自で好きに開発環境を用意して使って良いですよということですね。画像系のコンペだと必然的にTransormerやCNN等、ニューラルネットワークベースのモデルが選択肢になりますが、1回の学習にそれなりの時間がかかります。良い計算機環境を持っている人ほど短時間で色々なアプローチを試せるので、当然有利にコンペを進められます。私は当時通常のノートPC環境しか無かったので、重めのモデルを試すことすら出来ず歯がゆい思いをしました。計算機環境の差でコンペの順位に差がつくのは悔しいし、今後はこれを言い訳にしたくないな、という思いがありました。
次に2について。背景として、色々な業界でLLM/生成AI活用の道を模索している状況の中、セキュリティや可用性の観点から、自社(あるいは自分)のローカル環境でLLMを実装/運用するローカルLLMが注目されています。さらにMeta社のオープンモデルのOllamaや、OpenAI社のオープンウェイトのgpt-oss-120btとgpt-oss-20bのリリース等、色々なオープンモデルのリリースと、LLMの軽量化やMoE(mixture-op-experts)技術が発展してきています。これによって、一個人でもゲーミングPCぐらいのスペックでローカルLLMを開発できる素地が出来つつあると思います。実際にこちらのサイト等、個人利用でもローカルLLMを構築しようという話題をよく見かけるようになりました。
主な用途
主に以下の用途を想定します。どちら甲乙つけがたいのですが、2のスペック要求の方が厳しく、必然的に2を優先したスペック選定になるだろうと予想していました。
- 深層学習モデル(CNNベースやTransformerベース)の学習・推論
- 軽量なローカルLLMモデルの学習・推論
なぜ自作PCか
1, 2いずれの用途でも、Google Colabの有料枠を利用する、AWSやGCPのクラウドサーバを立ててその上で開発する等、いくつか代替案があるかと思います。そんな中、なぜ自作PCという結論にいたったのか、その理由について書きます。
まずGoogle Colab有料枠は安価ですが、実行環境がColab Notebook(Jupyter Notebook)に制約される点から、用途にそぐわないと考えました。前処理はNotebookではなくPythonスクリプトで自動化したい、またはシェルスクリプトで自動化したい等となると、Colab Notebook(Jupyter Notebook)しか使えないというのは色々と不都合がありそうでした。
次にAWSやGCPのクラウドサーバを立てる案は、長時間稼働且つ長期運用を想定した場合、コスト的には自作PCに軍配が上がると思いました(用途や使用頻度が読めないので、きちんと試算したわけではなく、あくまで主観です)。
あとは純粋に自作PCに興味があって、とにかくやってみたいという気持ちが強かったです(ぶっちゃけ他の理由はこじつけかも。笑)
なお、自作PC以外にもハイスペックなゲーミングPC等の既製品を購入する案やBTOでスペック指定して政策は外注する案もありましたが、いずれもコスパや改造自由度の観点から自作PCに軍配が上がると考え、自作PCという結論にいたりました。実際にBTOでいくつか見積を出してみましたが、自作PCが圧倒的に安価でした。
PC自作の流れ
PC自作のおおまかな流れは下記の通りです。
第1回: PCスペック選定(本記事)
- PC自作の基礎知識を押さえる
- おおまかなスペックを決める
- パーツ構成案を検討する
第2回: PC自作手順(次回:予定)
- PCパーツショップで相談する
- PCを自作する
以下、第1回の1~3の手順について詳細を記述します。
1.PC自作の基礎知識を抑える
CPU、メモリ、SSD等のPC構成要素とそれぞれのおおまかな役割はある程度把握していたいましたが、組み立ての流れやパーツ選びでの注意点等は全く知らなったので、まずはこのあたりの基礎知識をある程度おさえておこうと、以下の書籍を軽く読みました。
-
日経ソフトウェア2025年7月号
ちょうど特集でタイムリーな話題を取り上げていたので、ローカル生成AI向け自作PCのスペックやコスト感がどれぐらいかを把握するために購入しました。しかし「AI時代のパソコン自作」と銘打つほどの内容ではなく、決め打ちのおすすめ構成の紹介が中心で、あえて買う程では無かったです。【特集】
- ローカル生成AI入門
- AI時代のパソコン自作
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PC自作の鉄則!2025
1と同じく日経BP発刊ですが、主要PCパーツの役割・仕組み・選び方や、パーツ選びにおける注意点(マザーボードとCPUの相性問題、CPUやGPUの熱対策問題等)、組立手順や注意点、PC自作を始める上でおさえておきたいポイントは網羅されていました。これ一冊読んでおけばある程度基本を押さえられます。自作PCはあくまでDIYで決まった手順は無いですが、組立中の取説的な位置付けの安心材料にはなると思います。
2. おおまかなスペックを決める
基本方針
スペック検討の前提条件として、以下の基本方針を初めに決めました。
- まずは予算内におさまる且つ軽量のLLMが動く条件で組んでみる
- 今後、必要に応じてグラボやメモリを増強できる構成にする(特にPCケースやマザーボードが重要)
- はじめてのPC自作なので、リスク回避のために中古パーツは避ける
皆さんもはじめてPC自作にチャレンジする際は選択肢が多すぎて悩むと思いますが、ある程度判断軸のベースとなる基本方針を決めておくと、具体的なスペックが検討しやすいと思います。
おおまかなスペック
- 予算は50万円前後
- メモリは64GB程度
- VRAM容量は最低16GB、できれば48GB
- グラボはCUDAを使うためにNVIDIA一択
- ストレージはSSDで2TB以上
- グラボが複数差せる、メモリはマザーボードに
- OSはWindows、Linuxのデュアルブート
スペック選定の根拠について少し補足します。LLMやDeepLearningを動かす用途ならメモリ容量は重要じゃないのですが、DeepLearningでは無いMLモデルを組むことを考えて、メモリは多めに積むことにしました。
必要なVRAM容量は、まだ具体的な用途が決まっていないしグラボがクソ高いのですごく悩みました。下記の参考サイト1によると、「利用したいモデルのパラメーター数など次第ではありますが、ある程度使えるレベルを目指すならどんなに最低でも16GB(8B-F16のモデルならかろうじて動く)、出来れば48GB(そこそこ性能が出る70B-Q4を動かす場合)、実用的なら最低160GB(このレベルはAIサーバー用の専用GPUが必要)以上は必要」とのこと。一般ユーザー向けのグラボのスペック一覧を確認すると、単体のVRAM容量は最大でも32GBで価格が40万円~60万円ぐらいと恐ろしく高い。。。参考サイト2を見ると70Bのモデルは量子化されたものでもギリギリVRAM容量48GBで動かせそうで、8Bのモデルなら16GBでも動かせそう。一般ユーザーが手を出せる範囲で100B(1兆パラメータ)を超える大規模なモデルを動かすのはどのみち無理そうなので、グラボ1枚挿しだと16GB、2枚挿しでも48GBが関の山だろうということで、VRAM容量の幅を16GB~48GBに決めました。
参考サイト
3. パーツ構成案を検討する
相性問題を含めた構成のしぼりこみは後回しにするとして、おおまかなスペックから、カテゴリ毎にパーツ候補を挙げてみました。予想通りではありましたが、圧倒的にGPUが高くコストの大半を占める結果に。それにしても1枚のGPUでVRAMが32GBになった時点でGPU40万円~60万円と、既に予算の目安50万円を超えそうという事実に驚愕。。。
| カテゴリ | 必要スペック | 候補製品名 | 価格 | 購入先 |
|---|---|---|---|---|
| GPU(グラボ) | 16GB~48GB | GeForce RTX 5090シリーズ(32GB) | 40~60万 | リンク |
| RTX 4090シリーズ(32GB) | 40万円 | リンク | ||
| RTX 5060 Tiシリーズ(16GB) | 20万円(10万円×2)ぐらい | リンク | ||
| マザーボード | GPUが複数させる(PCI Express×16端子が複数) | X670E GAMING PLUS WIFI(Ryzen) | 3万円 | リンク |
| 複数枚のM.2 NVMe SSDが複数させる(PCI Express端子が複数) | TUF GAMING Z790-PLUS WIFI(Intel) | 2.8万円 | リンク | |
| メモリが4枚以上させる(メモリスロットが4つ以上) | ||||
| Wi-Fi対応 | ||||
| PCケース | GPUを複数させるだけのスペースを確保できて、エアーフローが良さそうなもの | Antec Constellation C8 | 1.5万円 | リンク |
| NZXT H9 Flow | 2.5万円 | リンク | ||
| 電源ユニット | 1200W | ASUS pc電源ユニット 80 Plus Gold 1200W ATX TUF-GAMING-1200G フルモジュラー 国内正規代理店品 | 3.3万円 | リンク |
| LEADEX VII PLATINUM PRO 1200W | 3.5万円 | リンク | ||
| CPU | ハイエンドシリーズが望ましい | インテル® Core™Ultra 9-285K プロセッサ | 9.5万円 | リンク |
| AMD Ryzen 9 7950X | 8万円 | リンク | ||
| CPUクーラー | Arctic Liquid Freezer III Pro 360 A-RGB White ACFRE00188A | 2.2万円 | リンク | |
| Liquid Freezer III Pro 360 ACFRE00180A | 1.8万円 | リンク | ||
| MSI MAG Core Liquid 360R V2 | 1.4万円 | リンク | ||
| メモリ | 32GB×2 | Crucial CP2K32G56C46U5 (DDR5 PC5-44800 32GB 2枚組) | 2.5万円 | リンク |
| CP2K32G60C40U5W | 2.6万円 | リンク | ||
| ストレージ | SSD2GB | Acer Predator M.2 SSD 2TB GM6 NVMe2.0 2280 PCIe Gen4×4 | 1.7万円 | リンク |
| KingSpec XG7000 2TB SSD M.2 NVMe 2280 PCIe Gen 4.0 x 4 | 1.5万円 | リンク | ||
| OS | Window, Linux | DSP版(OEM版)Pro | 1.3万円 | リンク |
まとめ
本記事ではローカル生成AI向けのPC自作向けにPCスペック選定の手順について紹介しました。次回の記事ではPC自作の手順やつまづいたポイントについて紹介したいと思いますので乞うご期待!