78
28

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

MinIO、知らないうちに終了していた

78
Last updated at Posted at 2026-02-25

はじめに

MinIO は Amazon S3 互換の API を備えたオブジェクトストレージです。
docker-compose.yml に数行書くだけで S3 互換のストレージが立ち上がるため、ローカル開発環境の S3 モックとして広く使われてきました。DockerHub での累計ダウンロード数は 10億回以上 です。

その MinIO の OSS 版が、2025年10月に Docker イメージの配布を停止し、2026年2月には GitHub リポジトリがアーカイブされました。公式の保守は完全に終了しています。

日本語での情報がまだ少なかったため、英語圏の情報も含めて何が起きたのかを時系列で整理し、代替手段の候補を紹介します。

MinIO とは

MinIO は、Amazon S3 互換の API を備えたオープンソースのオブジェクトストレージです。

主な特徴は以下のとおりです。

  • S3 互換の API を提供するため、AWS SDK をそのまま使える
  • Docker イメージ 1つで起動でき、セットアップが簡単
  • Web ベースの管理コンソール(GUI)が付属
  • AGPL v3 ライセンスで公開

特に開発環境での利用が多く、「本番は AWS S3、ローカルは MinIO」という構成は広く採用されていました。docker-compose.yml に数行書くだけで S3 互換のストレージが手に入る手軽さが、人気の理由でした。

何が起きたのか — 時系列まとめ

MinIO OSS 版の終了は、突然の出来事ではありません。2021年から段階的に進行していました。

時期 出来事
2021年5月 ライセンスを Apache 2.0 から AGPL v3 に変更
2022〜2023年 Nutanix、Weka との間でライセンス違反を巡る対立が表面化
2025年5月 管理コンソール(WebUI)をソースコードから削除
2025年10月15日 セキュリティ修正リリース(RELEASE.2025-10-15...)を公開
2025年10月16日 CVE(脆弱性)情報が公開されるも、公式の修正済み Docker イメージは配布せず
2025年10月下旬 DockerHub・Quay.io での公式イメージ配布を停止。「ソースのみの配布に移行した」と案内
2025年12月3日 リポジトリを「メンテナンスモード」に移行
2026年2月12日 README に「no longer maintained」を明記
2026年2月13日 リポジトリをアーカイブ(メンテナンス完全終了)

2025年5月、管理コンソールがソースから削除されました。これは「便利な機能は有料版で」という方向性を示すものでした。

決定的だったのは 2025年10月中旬〜下旬です。セキュリティ修正リリースとCVE公開の直後に、Docker イメージの配布停止へ移行しました。

何が問題なのか

Docker イメージの配布停止自体は、OSS プロジェクトの判断として理解できる面もあります。しかし、その 進め方 に多くの批判が集まりました。

事前告知がなかった

配布停止の告知は事後でした。セキュリティ修正リリースのタイミングで突然行われ、ユーザーが準備する猶予はありませんでした。

脆弱性対応の導線が途切れた

CVE は公表されましたが、公式の修正済み Docker イメージは配布されませんでした。既存ユーザーは脆弱なバージョンを使い続けるか、自分でソースからビルドするかの二択を迫られました。

自動更新が破壊された

Watchtower 等による Docker イメージの自動更新を運用に組み込んでいたユーザーにとって、イメージの配布停止は運用フローの破壊を意味しました。

「自分でビルドしろ」という対応

GitHub Issue での問い合わせに対し、MinIO のメンテナーは以下のように回答しています。

This project is a source only distribution now, if you want to build containers you need to build them yourselves.

(このプロジェクトはソースのみの配布に移行しました。コンテナが必要な場合は自分でビルドしてください。)

10億回以上ダウンロードされた Docker イメージを利用していたユーザーに対して、この回答は十分とは言えませんでした。

ローカル開発環境への影響は?

MinIO をローカル開発の S3 モックとして使っている方が多いと思います。「自分には関係あるの?」という点を整理します。

今すぐ動かなくなるわけではありません。 ローカルにキャッシュ済みのイメージがあれば、当面はそのまま使えます。

ただし CVE(脆弱性)のリスクはゼロではありません。外部に公開しない分リスクは低くなりますが、開発端末内での認証情報の漏洩などを起点に影響を受ける可能性は残ります。

より現実的なリスクは Docker イメージの取得ができなくなること です。実際、Docker Hub では RELEASE.2025-10-15T17-29-55Z タグがすでに取得できません。latest も 2025年9月公開版で止まっています(2026年2月時点)。

つまり「将来 pull できなくなるかもしれない」ではなく、すでに一部のタグは取得できない状態 です。新しいメンバーの環境構築や CI の再構築時に docker compose up が失敗する可能性があります。

コミュニティの反応

GitHub Issue の炎上

Docker イメージが配布されないことを報告する Issue #21647 が立てられ、メンテナーの回答には 200件超のマイナス評価(👎) が付きました。

議論はコントロール不能となり、最終的に Issue はロックされています。

ユーザーからは以下のような声が上がりました。

  • 「10億回以上ダウンロードされているイメージを、事前告知なしで切り捨てるのか」
  • 「セキュリティ修正と同時に配布停止するのは、ほぼ悪意的なタイミングだ」
  • 「有料版への誘導としか思えない」
  • 「ownCloud が同じことをして Nextcloud にフォークされた歴史を繰り返すのか」

コミュニティフォークの立ち上がり

この状況を受けて、pgsty/minio というコミュニティフォークが立ち上がりました。

PostgreSQL ディストリビューション「Pigsty」の開発者が主導しており、以下の対応が行われています。

  • 削除された管理コンソールの復元
  • Docker イメージの配布再開(docker pull pgsty/minio
  • RPM / DEB パッケージの自動ビルドパイプライン構築
  • ドキュメントのミラー提供

AGPL v3 ライセンスの下でリリースされたコードは、フォークする権利が保証されています。皮肉なことに、MinIO 自身が選択したライセンスが、コミュニティによる存続を可能にしました。

代替手段の候補

MinIO からの移行先として、いくつかの選択肢があります。

選択肢 概要 適しているケース
pgsty/minio コミュニティフォーク。管理コンソール復元済み。docker pull pgsty/minio で利用可能 MinIO からの移行コストを最小限にしたい場合
LocalStack AWS サービス(S3 含む)のローカルエミュレータ。S3 以外にも SQS・Lambda 等に対応 将来的に S3 以外の AWS サービスもローカルで使いたい場合
Garage 軽量な S3 互換分散ストレージ シンプルな S3 互換ストレージが必要な場合
SeaweedFS 高スループット対応の分散ファイルシステム。S3 互換 API あり 大規模データや高パフォーマンスが求められる場合
自前ビルド MinIO のソースから Docker イメージをビルド 既存構成を変えたくないが、メンテナンスコストを許容できる場合

pgsty/minio を使う場合

既存の docker-compose.yml のイメージ名を差し替えるだけで移行できます。

docker-compose.yml
services:
  minio:
    # 変更前: image: minio/minio:RELEASE.2025-07-23T15-54-02Z
    image: pgsty/minio
    command: server /data --console-address ":9001"
    ports:
      - "9000:9000"
      - "9001:9001"

最小限の変更で済むため、直近の対応としては最も手軽です。

LocalStack を使う場合

S3 以外の AWS サービスもローカルで利用する予定がある場合は、LocalStack への移行が有力です。

docker-compose.yml
services:
  localstack:
    image: localstack/localstack:3.0
    ports:
      - "4566:4566"
    environment:
      - SERVICES=s3
      - PERSISTENCE=1
      - AWS_DEFAULT_REGION=ap-northeast-1

ただし、署名付き URL の生成時にコンテナ内とブラウザからのアクセス経路が異なる点には注意が必要です。S3 クライアントとPresigned URL 用クライアントでエンドポイントを分ける対応が必要になるケースがあります。

詳しい移行手順は、参考文献に掲載した Zenn の記事が参考になります。

最後に

DockerHub で10億回以上ダウンロードされた Docker イメージでも、事前告知なく配布停止されることがある。今回の件はそれを突きつけられた出来事でした。

自分のプロジェクトでも使用していたため、見直そうと思いました。

参考文献

株式会社シンシア

株式会社シンシアでは、実務未経験のエンジニアの方や学生エンジニアインターンを採用し一緒に働いています。
※ シンシアにおける働き方の様子はこちら

弊社には年間100人以上の実務未経験の方に応募いただき、技術面接を実施しております。
この記事が少しでも学びになったという方は、ぜひ wantedly のストーリーもご覧いただけるととても嬉しいです!

78
28
1

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
78
28

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?