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数理モデルについてちょっと知ってみる

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数理モデルとは

数理モデルとは、世の中で起こる様々な現象を数式で表現しようとする試みです。例えば、交通渋滞や感染症の広がり、株価の変動など、複雑に見える現象でも、その背後にある法則性を数学的に記述できる場合があります。

数理モデルを作ることで、現象の本質を理解したり、将来の予測を行ったりすることが可能になります。

仮説を持てることが価値

数理モデルの真の価値は、単に現象を再現できることだけではありません。モデルを作る過程で「何が本質的な要因なのか」という仮説を持てることが重要です。

モデル化するには、現象のどの要素を取り入れ、どの要素を捨てるかを判断する必要があります。この取捨選択の過程そのものが、現象に対する深い洞察につながるのです。

具体的な数理モデルの例

実際にどのような数理モデルがあるのか、代表的な例を見ていきましょう。

最適速度モデル:交通渋滞の本質

交通渋滞を説明する「最適速度モデル」は、シンプルさの力を示す好例ですね。

このモデルでは、各車両は前の車との車間距離に応じて速度を調整するという単純なルールだけで表現されます。

v(t+1) = V(Δx(t))

ここで、vは車両の速度、Δxは前の車との車間距離、Vは車間距離から決まる最適速度関数です。

この極めてシンプルな式だけで、実際の高速道路で観測される自然渋滞の発生を再現できました。道路の勾配や天候、ドライバーの性格など、考慮できる要因は無数にありますが、それらを全て捨てても本質的な現象は説明できたのです。

SIRモデル:感染症の広がり

感染症の流行を表現するSIRモデルは、人口を3つの状態に分けて考えます。

  • S (Susceptible): 感染する可能性がある人
  • I (Infected): 感染している人
  • R (Recovered): 回復して免疫を持つ人

このモデルは以下の微分方程式で表されます。

dS/dt = -βSI
dI/dt = βSI - γI
dR/dt = γI

ここで、βは感染率、γは回復率を表します。わずか2つのパラメータで、感染のピーク時期や最終的な感染者数を予測できるのです。

ロトカ・ヴォルテラ方程式:捕食者と被食者の関係

生態系における捕食者と被食者の個体数変動を表すモデルです。

dx/dt = αx - βxy
dy/dt = -γy + δxy

ここで、xは被食者の個体数、yは捕食者の個体数です。このシンプルな式が、実際の生態系で観測される周期的な個体数変動を見事に再現します。

例えば、カナダのオオヤマネコとカンジキウサギの個体数変動データと、このモデルの予測が驚くほど一致することが知られています。

ランチェスターの法則:戦闘の数理

第一次世界大戦中に提唱された、戦闘における兵力の減少を表すモデルです。

第一法則(一騎討ち型):

dx/dt = -αy
dy/dt = -βx

第二法則(集中攻撃型):

dx/dt = -αy²
dy/dt = -βx²

このモデルは、兵力の差が戦闘結果に与える影響を定量的に示しました。特に第二法則では、兵力が2倍になれば戦闘力は4倍になるという非直感的な結果が導かれます。

現代では、マーケティング戦略における市場シェア競争の分析にも応用されています。

最適速度モデル

交通渋滞を説明する「最適速度モデル」は、この考え方の好例ですね。

ここで重要なのは、入れたい要素をいかに減らすことができたか、という点です。道路の勾配や天候、ドライバーの性格など、考慮できる要因は無数にありますが、それらを全て捨てても本質的な現象は説明できました。

理解と精度

数理モデルには「理解のためのモデル」と「予測精度のためのモデル」という2つの方向性があります。

理解することを目的とするなら、単純なモデルで十分です。多くの変数を盛り込む必要はありません。むしろシンプルであるほど、どの要因が本質的に効いているのかが明確になります。

一方、高精度な予測が必要な場合は、多くの変数や複雑な関係性を組み込む必要が出てきます。ただし、その代償として「なぜそうなるのか」という理解は難しくなる傾向があります。

目的に応じて、どちらのアプローチを取るかを選択することが大切です。

上記で紹介したモデルは、いずれも「理解のためのモデル」として優れています。少ないパラメータで現象の本質を捉えているため、「なぜその現象が起こるのか」が直感的に理解できるのです。

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