はじめに
私はADHDの診断を受けており、ASDについても診断基準ギリギリのラインで特性を持ち合わせています。
診断自体は最近受けたものですが、こうした特性は昔からあり、様々な対策を考えてきました。
これらの対策は比較的仕組み化されており、人為的ミスを防ぐような設計になっているため、日頃コードを書く中で培った考え方と親和性が高く、エンジニアの方にも取り入れやすいのではないかと思います。
実際友人に話したところ好評だったため、記事としてまとめることにしました。
なお、本記事はADHDやASDの特性を持つ方を否定する意図や、こうすべきと押し付ける意図は一切ありません。
あくまで個人の工夫として参考にしていただければ幸いです。
ものをなくす・探す問題への対策
所有物を極端に減らす
外出先での紛失は完全には防げていませんが、家でものをなくすことについては「所有物を極端に減らす」ことで対策しています。
具体的には以下のような状態を維持しています。
- 本:Kindleなどデジタル版のみ所有
- 家具:机とベッドと棚程度
- 嗜好品など:無し
部屋の中をぱっと見て全部把握できる程度の量しか持たないようにしているため、なくしたとしても視界に入る範囲に必ずあります。
探す範囲が限定されるため、見つけ出すのも割と簡単です。
定位置管理の徹底
持ち物は必ず同じ場所に配置するルールを徹底しています。
ジャケットのポケット配置の例:
- 右ポケット:ハンカチ
- 左ポケット:社員証
- 胸ポケット:リップ
家の中の物にも大抵定位置を用意しており、使ったら必ずそこに戻します。
カバンの中身も定位置化
荷物が多くなるのを許容して、カバンに常に様々なものを入れっぱなしにし、それぞれの配置も固定しています。
- 晴れの日でも傘を持ち歩く
- 旅行の予定がなくてもApple Watchの充電器を持ち歩く
このように「必要になるかもしれない」ものは常に持ち歩くことで、探す手間や忘れるリスクを減らしています。
片付けができない問題への対策
こちらも所有物を極端に減らすことで対処しています。
片付けができていない状態でも、そもそも物が少なければ散らかる上限値が低くなります。
できるだけ買わない、同じ役割の物は一種類しか持たない、というルールを守ることで、片付けの負担自体を減らしています。
忘れ物をする問題への対策
重要なアイテムは冗長化することで「忘れても問題ない」状態を作ります。
例えば充電器やケーブル、コネクタ類の場合は、以下のように複数箇所に配置しておくことで、1つ忘れても他でカバーできる仕組みにしています。
- カバンに入れっぱなしのもの
- 家のデスクに常設
- 会社に常設
費用については考えないものとして割り切っており、必要経費と捉えています。
充電器を3つ買うコストより、忘れたときの損失(時間・ストレス・機会損失)の方が大きいためです。
ワーキングメモリが少ない問題への対策
日常の選択肢を減らし、決定に脳のリソースを使わないようにします。
- 服:シーズンごとに同じ種類のものを5着だけ購入して着回す(シーズンが変わったらリサイクルに出すため、常にクローゼットには10着程度しか入っていない)
- 食事:社食では基本的にA定食を選ぶ
予め決めた行動パターンを繰り返すことで、意思決定のコストを削減し、本当に集中すべきことに認知リソースを割けるようにしています。
デジタルツールは使わない
リマインダーやタスク管理アプリなどのデジタルツールは便利だとは思うのですが、私の場合は上手くいきませんでした。
昔「すべての行動をリマインダーに登録する」という方法を試しましたが、結局「リマインダーに登録すること自体を忘れる」という本末転倒な結果に終わりました。
デジタルツールに頼るより、仕組み自体をシンプルにして「やらなくても問題ない状態」を作る方が、筆者には合っていました。
複数のことを同時にするのが苦手な問題への対策
人生の各時期における目的を1つに絞ります。
- 大学時代:「今は勉強する時期」
- 社会人初期:「今は地味なことも含めて下地を作る仕事をする時期」
このように時期ごとに明確な目的を1つだけ設定することで、マルチタスクを避け、集中力を維持しやすくしています。
おわりに
これらの対策は、特性を「直す」のではなく、特性を前提とした上で「仕組みで回避する」というアプローチです。
エンジニアリングにおける冗長化や人為的ミスを防ぐ設計の考え方と通じるところがあり、プログラミング的思考と相性が良いと感じています。
同じような特性を持つ方や、日常生活の効率化に興味がある方の参考になれば幸いです。