1.はじめに
量子コンピュータ Advent Calendar 2022 11日目の記事です。
昨年度のアドベントカレンダーでは、コミュニティ活動における初年度の取組みとして以下の記事でエントリーしました。
今年度は、2年目のコミュニティ活動として同テーマ(量子人材育成)の研究を継続し、最終的に 「最優秀賞」という形で一定の評価をいただくことができました。そこで今回も、研究内容や成果物についてご紹介したいと思います。
成果物は量子人材育成のための教材となっておりますので、量子コンピュータに興味を持っているエンジニアの方などにご活用いただければ幸いです。
2.コミュニティ活動(研究会)について
2-1.コミュニティ概要
活動したコミュニティは、IBM社が運営する「IBM Community Japan」です。
このコミュニティにはいくつかのプログラムがあり、そのひとつが「ナレッジモール研究」となっています。
このプログラムは、基本的に誰でも参加することができます。(要アカウント登録)
2022年度のナレッジモール研究には、51のワーキンググループ(WG) があり、4つの分野 にわかれています。
- A:社会課題
- B:技術探求
- C:情報システム
- D:ビジネス変革
当WGは「B:技術探求」分野における「量子コンピューターの活用研究 -機械学習・量子化学計算・組み合わせ最適化への適用-」というテーマでの活動でした。量子コンピュータのテーマには3つのWGがあり、私はそのうちひとつ(2022-B-10c)でWGリーダーとして活動をしていました。今回ご紹介している資料はその成果物となります。
活動期間は 2022年1月~9月 の9か月間、メンバーは8名+アドバイザー1名の計9名でした。メンバーは毎年入れ替えになるため、量子人材育成の昨年度成果物は私が引き継ぎ、2年目の活動に持ち込んだ形となりました。
2-2.活動結果
研究成果は「Go UNiTE 2022」というオンラインイベント(メタバース会場、2022年11月~12月)で、コミュニティ内にて公開されました。加えて、11月に「ナレッジモールアワード 2022」が開催され、多く方々による事前審査を経て、受賞WGが発表されました。
発表の結果、当WGは技術探求分野で「最優秀賞」をいただくことができました。量子人材育成のテーマでの受賞は、昨年度に続き2年連続となりました。すべてはグループメンバー全員が、一丸となって積極的に活動を行った結果だと思います。
ちなみに成果物は、他のWGを含めコミュニティに参加すれば誰でも自由に参照することが出来ますが、より多くの方に役立てていただきたいという思いから、今回コミュニティ外でも公開することになりました。
※ 公開にあたってはコミュニティへの事前申請を行い、了承をいただいております。
3.研究内容
3-1.メインテーマ
当研究活動におけるメインテーマは「量子人材育成」であり、育成のための「教材」を作ることが主たる活動でした。このテーマに至る背景や成果物の全体像については、昨年度のエントリーで既に記載しているため、こちらの記事を参照いただければと思います。「3-1.テーマ」から、をご覧ください。
3-2.サブテーマ(研究活動コース)
今回は、量子人材育成というメインテーマを踏まえつつ、6つの取組みコースを設定し、活動しました。
コース1「輪読会」は、他のWGとの合同企画であり、メンバーの学習を目的とした取組みのため成果物には含めていません。コース2・3は「基礎レベル」、コース4~6は「応用レベル」の取組みとなります。
3-3.コンセプト
当年度の取組みでは、応用レベルの3コースに共通するコンセプトとして「生命×量子コンピューター」を設定しました。複数のコースがそれぞれ独立していても問題はありませんが、ひとつの活動として「まとまり」のある方が良いため、このような設定をしました。結果的に、取組みの目的が明確になるため、設定して良かったと思います。
このコンセプトを踏まえ、発表時のタイトルは「生命と量子コンピューター ―量子人材育成、基礎から応用へ―」としました。応用レベルの選定や、このコンセプトに至った背景は成果物の「提案コンセプト説明」に記載していますので、詳しくはそちらをご覧ください。
4.成果物:量子人材育成のための教材
ここから、昨年度から引き続き作成を行ってきた当WGの「成果物」をご紹介します。
4-1.公開資料
成果物は、Githubで公開しています。
成果物の全体像は以下のとおりです。(ボリュームタップリです!)
4-2.成果物の概要
成果物は、昨年度分に当年度分を加えたことで 全300ページ以上の資料(スライド) となりました。実装コードも新たに追加され、さらに充実した内容となっています。
是非一度ご覧ください。
4-3.コース別紹介
当記事では活動全体についてご紹介してきましたが、一部のコースについてはコース別の記事を作成しております。
各コースの主担当の方に記事を作成いただきましたので、あわせてご覧ください。
5.おわりに
量子コンピューターは、2011年にD-Wave社が「世界初の商用量子コンピュータ」として発表したアニーリング方式を皮切りに、ゲート方式やループ型光量子コンピューターの開発など、さらなる開発が続いています。一方で、実用性に関してはまだまだ十分とは言えず、開発に携わる量子人材もまた不足しているというのが現状です。
当研究活動は基礎レベルの教材にはじまり、少し変化をつけた応用レベルの教材へと展開していきました。「生命」というコンセプトでの取組みは少々チャレンジングな内容であり、メンバーのほとんどが初学者という状態からスタートしたにもかかわらず、わずか9カ月の活動でこれだけの成果物を作成できたのは、メンバー全員の努力の結果であり、とても満足度の高い有意義な活動であったと感じます。
「一人ではできないことができる」のがコミュニティ活動です。当記事をご覧いただいている皆さまにもお勧めしたいと思います。少しの興味さえあれば誰でもご参加できますので、2023年度のコミュニティ活動「ナレッジモール研究」にエントリーされてみてはいかがでしょうか!
★IBM Community Japan にて、2023年度のナレッジモール研究メンバー募集中!(2023年1月13日まで)★
以上