はじめに
量子コンピュータのアルゴリズムはたくさんありますが、今回は実用化が近いと言われているNISQのアルゴリズムについて理解を深めることにトライしたいと思います。
量子コンピュータのアルゴリズム
量子コンピュータのアルゴリズムは以下の3つに大別できる。今回はNISQで使えるNear-Termアルゴリズムを対象とする。
アルゴリズム分類 | 実行する量子コンピュータの方式/分類 |
---|---|
量子アニーリング | 量子アニーリング方式/量子アニーラ |
Near-Term | ゲート方式/NISQ |
Long-Term | ゲート方式/FTQC |
NISQ
Noisy Intermediate Scale Quantum Computer、ノイズのある中規模な量子コンピュータFTQC
Fault Tolerant Quantum Computation、エラー耐性量子コンピュータ
Near-Tremアルゴリズム
代表的なNear-Termアルゴリズムについて整理する。
NISQ上での動作を想定していることから、求められる解はいずれも近似解である。
VQE
概要
- Variable Quantum Eigensolver(変分量子固有値ソルバー)
- 物質科学と量子化学への応用が期待されているアルゴリズム。
- 物質の基底状態(安定した状態)を探索することで、その性質を明らかにすることができる。
前提知識
- 分子や物質の性質は電子の動きによって決まる。
- 電子の状態はさまざまあるが、中でも基底状態(安定した状態)の性質が我々の関心事である。
- 基底状態の電子の動きは、電子を支配する方程式である「シュレディンガー方程式」を解くことで求められる。
- 方程式の解を求める際の問題点は、電子の数が増えると問題が指数的に難しくなることである。
解へのアプローチ
- 方程式の解を求める方法として「変分法」がある。
- 変分法は古典コンピュータでも扱える計算である。
- 量子コンピュータを用いることで、変分法の解をより効率的に計算するアルゴリズムが「VQE」である。
参考
https://dojo.qulacs.org/ja/latest/notebooks/5.1_variational_quantum_eigensolver.html
https://qiita.com/KeiichiroHiga/items/c900d430dc33d4342b24
MDR社 湊氏によるVQEセミナー
VQEセミナー
VQEセミナー2
VQEセミナー3
VQEセミナー#2-1(理論編)
QAOA
概要
- Quantum Approximate Optimization Algo(量子近似最適化アルゴリズム)
- 量子ゲート方式で組合せ最適解問題を解く近似アルゴリズム。
- QAA(Quantum Adiabatic Algorithm、量子断熱計算)という考え方がベースになっている。
- 論文(MIT):https://arxiv.org/abs/1411.4028
参考
https://dojo.qulacs.org/ja/latest/notebooks/5.3_quantum_approximate_optimazation_algorithm.html
https://qiita.com/snhrhdt/items/ae55a94b25c06142528a
QCL
概要
- Quantum Circuit Learning、量子回路学習
- 量子コンピュータを機械学習に応用するためのアルゴリズム。
- QCLは、ディープラーニングで利用されるニューラルネットワークを量子回路に置き換えた機械学習手法。
メリット
- 重ね合わせにより、指数関数的に多数の基底関数を利用してモデルを構成できる。(モデルの表現力が向上する)
- 量子回路の満たすべき条件(ユニタリ性)により、自動的にオーバーフィッティング(過学習)を防げられる可能性がある。
参考
https://dojo.qulacs.org/ja/latest/notebooks/5.2_Quantum_Circuit_Learning.html
https://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~qischool2019/mitaraiCTO.pdf