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コラッツ予想の証明 - 未解決問題への挑戦(Qiita) で、
ある時点から、投稿記事を全体として更新できなくなったので、
一部の記事をこちらに掲載します。
【論文編 - 第 8 章(日本語草稿版)】
本稿は論文草稿である「コラッツ予想の証明 - 未解決問題への挑戦」の
「第 8 章 循環経路の排除」です。
必要に応じて、以下の本編または付録集を参照願います。
- コラッツ予想の証明 - 未解決問題への挑戦(Qiita)
- コラッツ予想の証明(§6)- 未解決問題への挑戦
- コラッツ予想の証明(§9)- 未解決問題への挑戦
- コラッツ予想の証明(付録)- 未解決問題への挑戦
$$
\def\bm{\boldsymbol}
\def\alphastar{\alpha_\star}
\def\betastar{\beta_\star}
\newcommand\N{\mathbb{N}}
\newcommand\Z{\mathbb{Z}}
\newcommand\Q{\mathbb{Q}}
\newcommand\R{\mathbb{R}}
\newcommand\C{\mathbb{C}}
\newcommand\I{\mathrm{i}}
\newcommand\for[1]{\quad\mathrm{for}\quad #1}
\newcommand\setOne[1]{\left\{#1\right\}}
$$
目次
第 8 章 循環経路の排除
8.1 循環経路の存在可能性
8.1.1 循環経路のトポロジー
8.1.2 閉路型循環経路の排除
8.2 特定循環経路の存在否定
8.2.1 循環経路の存在否定(分岐テーブル数=1)
8.2.2 循環経路の存在否定(分岐テーブル数=2)
8.2.3 循環経路の存在否定(分岐テーブル数=3)
8.2.4 循環経路存在否定の方向性(分岐テーブル数≧4)
8.2.5 外部リンク型循環経路の存在否定 (BTG 交差なし)
8.3 一般循環経路の存在否定
8.3.1 外部リンク型循環経路の存在否定
8.3.2 すべての循環経路の存在否定
第 8 章 循環経路の排除
コラッツ遷移において、自明なループ(1 -> 4 -> 2 -> 1)以外の
循環経路が存在しないことを示す。
ここでいう循環経路は、有限長の閉じたコラッツ遷移列を指す。
なお、循環経路を構成する分岐テーブルの代表値は $3$ の奇数倍でない。
何故ならば、分岐テーブルの代表値が $3$ の奇数倍である場合、
補題1.2.4 より、その分岐テーブルにはリンク対象点が存在しない。
よって、循環経路を構成できないからである。
8.1 循環経路の存在可能性
コラッツ遷移においては、循環経路として、自明なループが存在する。
定理1.2.6 より、自己参照型の分岐テーブルは、コラッツ遷移において、
自明なループ のみである。
一方、コラッツ遷移全体として、自明なループ以外の循環経路が
存在しないことは明らかではない。すなわち、
循環経路は存在する可能性がある。
8.1.1 循環経路のトポロジー
コラッツ遷移において存在する可能性のある循環経路のパターンを
外部リンクとの接続の観点から分類する。ここではコラッツ遷移を
分岐テーブルのレベルで捉える。
循環経路内のある分岐テーブルに対して、外部(その循環経路を
構成しない分岐テーブル)からのリンクが存在する場合、
そのリンクが接続する分岐テーブルを循環経路の入口点 という。
以下に、循環経路が存在する場合において、その構成要素を
分岐テーブル単位で捉えた場合に、それぞれの要素が
互いに相異なることを示す。
補題8.1.1 (循環経路を構成する代表値の相異性).
コラッツ遷移に循環経路が存在するならば、その循環経路を構成する
分岐テーブルの代表値は、始点・終点として一致する値を除き、
互いに相異なる。
証明.
コラッツ遷移に循環経路が存在するとする。
その循環経路上の任意の分岐テーブルの代表値を $V_0$ とし、
$V_0$ から循環経路に沿って遷移し、初めて $V_0$ に戻るまでの遷移回数を
$n$ とする。このとき、遷移順序は、
V_0 \to V_1 \to \cdots \to V_{n - 1} \to V_0.
と表される。
ここで、ある $0 \le i \lt j \le n - 1$ に対して、
V_i = V_j.
が成立すると仮定する。
定理1.2.5 より、各分岐テーブルのリンク先は一意に定まる。
したがって、同一の代表値を持つ $V_i$ と $V_j$ から始まるその後の遷移は
一致する。
$V_j$ からは $n - j$ 回の遷移によって $V_0$ に到達するので、
$V_i$ からも同じ $n - j$ 回の遷移によって $V_0$ に到達する。よって、
V_{i + n - j} = V_0.
が成り立つ。
ここで、$0 \le i \lt j \le n - 1$ より、
0 \lt i + n - j \lt n.
である。よって、$V_0$ から $n$ 回未満の正の遷移回数で再び $V_0$ に
到達し、$n$ を $V_0$ に初めて戻るまでの遷移回数と定めたことに反する。
したがって、
V_i \ne V_j
\qquad
(0 \le i \lt j \le n - 1).
が成り立つ。すなわち、循環経路を構成する分岐テーブルの代表値は、
始点・終点として一致する値を除き、互いに相異なる。
したがって、命題は成り立つ。
$\square$
循環経路が存在する場合の基本的な環境定義は以下である。すなわち、
循環経路が存在する状況の一般的な前提を補題8.1.1の結果を受けて、
以下に規定する。
【循環経路 $C$ の存在条件】
$\exists n \in \mathbb{Z}_{\gt 0}$ が存在し、分岐テーブルの代表値 $V_0, V_1, \cdots, V_{n-1}$ は、
互いに相異なる。($V_i \ne V_j\ (i \ne j)$、ただし、$n \gt 1$ の場合)
このとき、遷移順序を $V_0 \to V_1 \to \cdots \to V_{n-1} \to V_0$ とし、
この閉路を循環経路 $C$ と呼ぶ。以降、集合として、
C := \{V_0, V_1, \cdots, V_{n-1}\}
と書く。
なお、上記の【循環経路 $C$ の存在条件】は、すべての循環経路に
適用される条件である。
以降、本節では、分岐テーブルをその代表値で同一視する。
代表値 $X, Y$ に対し、
X \to Y.
は、「代表値 $X$ を持つ分岐テーブルが、代表値 $Y$ を持つ
分岐テーブルへリンクする」ことを表す。
(A) 閉路型循環経路
循環経路 $C$ の外部に属する分岐テーブルから、
$C$ を構成するいずれの分岐テーブルにも
リンクが存在しない循環経路を、閉路型循環経路という。すなわち、
\neg\left(
\exists B \notin C,\
\exists V_i \in C,\
B \to V_i
\right).
が成り立つ循環経路である。
(B) 外部リンク型循環経路
循環経路 $C$ の外部に属する分岐テーブルから、
$C$ を構成する少なくとも一つの分岐テーブルへ
リンクが存在する循環経路を、外部リンク型循環経路という。すなわち、
\exists B \notin C, \
\exists V_i \in C,\qquad B \to V_i.
が成り立つ循環経路である。
このとき、外部からのリンクが接続する $V_i$ が入口点である。
以下では、外部リンク型循環経路 $C$ が存在し、その入口点の
一つを $V_0$ として遷移順序を定めた状況を規定する。
(ⅰ) 入口点 $V_0$ にリンクする分岐テーブルグループ
定理1.4.8 より、入口点 $V_0$ にリンクする分岐テーブル全体は、
一つの分岐テーブルグループ $\text{#}B_0$ を構成する。
$\text{#}B_0$ は代表値集合として、
\text{#}B_0 := \{B_0, B_1, B_2, \cdots\}
を含み、記号 $\text{#}B_0 \to V_0$ は$\text{#}B_0$ に属する任意の分岐テーブルの
代表値 $B_i$ が $V_0$ にリンクすることを表す。
なお、「$\text{#}B_0 \to V_0$」は、定義1.4.1 の注記に対応する
「$\text{#}B_0 \to \text{@}V_0$」の略記である。
(ⅱ) 外部リンクの定義(分岐テーブルの代表値レベル)
$\text{#}B_0$ に属する代表値 $B_k$ が、
B_k \notin C,\qquad B_k \to V_0.
を満たすとき、リンク $B_k \to V_0$ を、
循環経路 $C$ への外部リンクと呼ぶ。
したがって、$\text{#}B_0$ を用いた外部リンク型循環経路の条件は、
\text{#}B_0 \setminus C \ne \varnothing.
である。
上記の条件に対応する状態には、以下の2つの場合があり得る。
- $\text{#}B_0 \cap C = \varnothing$ : $\text{#}B_0$ と $C$ は交差しない。
- $\text{#}B_0 \cap C \neq \varnothing$ : $\text{#}B_0$ と $C$ は交差する。
【注記($\text{#}B_0$ と循環経路 $C$ との交差)】
もし、
V_j \in \text{#}B_0 \cap C.
であるならば、$\text{#}B_0 \to V_0$ より、
V_j \to V_0.
が成り立つ。
一方、$j \lt n - 1$ ならば、循環経路の遷移順序より、
V_j \to V_{j + 1}.
であり、循環経路を構成する代表値は互いに相異なるから、
$V_{j + 1} \ne V_0$ である。これは、定理1.2.5による
$V_j$ のリンク先の一意性に反する。
したがって、$V_j \in \text{#}B_0 \cap C$ となり得るのは、
j = n - 1.
の場合だけである。よって、
\text{#}B_0 \cap C \subseteq \{V_{n - 1}\}.
が成り立ち、可能性は、
\text{#}B_0 \cap C = \varnothing.
または、
\text{#}B_0 \cap C = \{V_{n - 1}\}.
のいずれかである。
後者の場合、$V_{n - 1} \to V_0$ は循環経路の内部リンク、
すなわち末尾リンクである。一方、
B_k \in \text{#}B_0 \setminus C.
を満たす $B_k \to V_0$ は、循環経路 $C$ への
外部リンクである。
したがって、$\text{#}B_0 \cap C \ne \varnothing$ であることは、
外部リンク型循環経路であることと矛盾しない。
以下に、循環経路の存在可能性パターンを示す。

[図8.1.1]循環経路の存在可能性パターン
8.1.2 閉路型循環経路の排除
「8.1.1 循環経路のトポロジー」で分類した閉路型循環経路が
実際のコラッツ遷移には存在しないことを以下に示す。
補題8.1.2 (閉路型循環経路は存在しない). 〇
入口点を持たない循環経路は存在しない。
証明.
分岐テーブルグループ #a は、含まれる分岐テーブルの代表値が、
$\{a,\ 4a+1,\ 16a+5,\ \dots\}$ のように、隣接する順序関係が
$(4a + 1)$ 関係で連鎖する無限個の分岐テーブルからなる。
また、分岐テーブルグループに属するすべての代表値は、
定理1.4.6 より、同一の分岐テーブルにリンクする。
背理法で証明する。
分岐テーブルのレベルで、「コラッツ遷移に閉路型循環経路が存在する」
と仮定する。
その循環経路に属し、着目する任意の分岐テーブルを $\text{@}a$ とし、
循環経路内で $\text{@}a$ にリンクする分岐テーブルを $\text{@}b$ とする($\text{@}b \to \text{@}a$)。
$\text{@}b$ は、ある分岐テーブルグループ $\text{#}x$ に属する。このとき、
定理1.4.6 より $\text{#}x$ に属する全ての分岐テーブルは同じ遷移先に
リンクするので、
\exists \text{@}c \in \text{#}x, (\text{@}c \ne \text{@}b)∧(\text{@}c \to \text{@}a)
が成り立つ。
ここで、循環経路を構成する分岐テーブルの集合を $C$ とおくと、$\text{@}c \notin C$ である。実際、もし $\text{@}c \in C$ なら、循環経路を構成する代表値は
『8.1.1 循環経路のトポロジー』の【循環経路 $C$ の存在条件】で遷移順序 $V_0 \to \cdots \to V_{n-1} \to V_0$ を固定しているから、$\text{@}a$ にリンクする循環経路内の直前要素は一意である一方、$\text{@}c = \text{@}b$ となり、$\text{@}c \ne \text{@}b$ に反する。
よって、$\text{@}c \notin C$ が従う。
$\text{@}a$ には循環経路上の $\text{@}b$ 以外からも外部リンクが存在し、
$\text{@}a$ は「他からの入口点を持たない閉路型循環経路の構成要素」ではない。
これは「入口点のない閉路型循環経路が存在する」とした仮定に反する。
よって、矛盾である。
ゆえに、入口点を持たない閉路型循環経路は存在しない。
したがって、命題は成り立つ。
$\square$
ここでは、「8.1.1 循環経路のトポロジー」で分類した閉路型循環経路が
実際のコラッツ遷移には存在しないことを補題8.1.2 で示した。
よって、以降では、外部リンク型循環経路 のみを議論の対象とする。
8.2 特定循環経路の存在否定
「8.1.1 循環経路のトポロジー」での分類における外部リンク型循環経路を
対象に、循環経路を構成する要素が少ない場合に関して、特定要素数の
存在を排除する。
ここでは、分岐テーブル数($= 1,\ 2,\ 3$)の場合に着目して、
それらの循環経路の存在を否定する。
8.2.1 循環経路の存在否定(分岐テーブル数=1)
分岐テーブル数 = $1$ の場合の循環経路の存在は、定理1.2.6 より、
自己参照ループ($1 \to 4 \to 2 \to 1$)しか存在しないことが判明している。
ここでは、循環経路に含まれる分岐テーブルの要素数に着目して、
その方針での系統的に一貫した証明の一部として、同一結果が得られる
別証明を示す。
定理8.2.1 (循環経路の排除(分岐テーブル数=1)).
分岐テーブルは、自身のリンク対象点にリンクできない。
ただし、ルートテーブルは対象外とする。
証明.
ルートテーブルを除く分岐テーブル @a が自身のリンク対象点
a(2^i) にリンクしていると仮定する。
ただし、a は3の奇数倍でない奇数、i > 0 は自然数とする。
なお、a を3の奇数倍でない奇数としているのは、
代表値が3の奇数倍の場合、リンク対象点が存在しないことによる。
上記の仮定より、明らかに a = 1, 3 の場合は除外できるので、
以降では、奇数である自然数 a ≧ 5 の場合を考察の対象とする。
この場合、仮定より、以下が成り立つ。
3a + 1 = a(2^i) ・・・(1)
(i = 1)の場合:
式(1)に i = 1 を代入すると、
3a + 1 = 2a
a + 1 = 0
a ≧ 5 なので、これは矛盾である。
(i = 2)の場合:
式(1)に i = 2 を代入すると、
3a + 1 = 4a
a = 1
a ≧ 5 なので、これは矛盾である。
(i > 2)の場合:
式(1)に i = 3, 4, ... を代入すると、
case i = 3: 3a + 1 = 8a, 5a = 1
case i = 4: 3a + 1 = 16a, 13a = 1
case i = 5: 3a + 1 = 32a, 29a = 1
...
a ≧ 5 なので、上記のすべての場合で矛盾となる。
以上の結果より、すべての i に対して、矛盾となる。
したがって、命題は成り立つ。
$\square$
8.2.2 循環経路の存在否定(分岐テーブル数=2)
分岐テーブル数 = $2$ の場合の循環経路が存在しないことを
定理として以下に示す。
定理8.2.2 (循環経路の排除(分岐テーブル数=2)). 〇
2つの分岐テーブル間では、循環参照は発生しない。
ただし、ルートテーブルは対象外とする。
証明.
代表値が異なる2つの分岐テーブル間において、@a → @b であるとき、
@b → @a のリンクが確立できないことを示す。
ただし、b は、3の奇数倍ではない。
このとき、 以下が成り立つ。
・$a \ne b$
・$a \gt 2 \in \mathbb{N}_{odd}$
・$b \gt 3 \in \mathbb{N}_{odd}$
@a → @bのリンク関係式は、以下である。
$\exists n \in \mathbb{N}, 3a + 1 = b(2^n)$ ・・・(1)
ここで、@b→ @a のリンクが存在すると仮定すると、
$\exists m \in \mathbb{N}, 3b + 1 = a(2^m)$ ・・・(2)
式(2)に、式(1)を代入すると、以下となる。
3(3b + 1) = (b(2^n) - 1)(2^m)
b(2^(n + m) - 9) = 2^m + 3 ・・・(3)
式(3)において、右辺>0なので、b > 0 を考慮すると、
2^(n + m) > 9
上記を満たす (n + m) の条件は以下である。
(n + m) > 3
これより、n = m = 1 の場合、式(3)が成立しない。
ここで、代表値 b は奇数なので、k ∈ $\mathbb{N}$, b = 2k + 1 とおいて、
式(3)に代入すると以下となる。
(2k + 1)(2^(n + m) - 9) = 2^m + 3
上式を k について整理すると、以下となる。
k(2^(n + m) - 9) = 2^(m - 1)(1 - 2^n) + 6 ・・・(4)
最初に、m = 1 の場合、仮定が成立しないことを以下に示す。
式(4) に m = 1 を代入すると、
k(2^(n + 1) - 9) = 7 - 2^n
右辺は奇数であり、また、(2^(n + 1) - 9) は奇数である。
よって、上式が成立するためには、 k が奇数である必要がある。
ここで、$\forall j \in \mathbb{Z} \ge 0$, k = 2j + 1 とおく。
(2j + 1)(2^(n + 1) - 9) = 7 - 2^n
上式を j について整理すると、以下となる。
j(2^(n + 1) - 9) = 8 - 3 * 2^(n - 1) ・・・(5)
式(3) より、任意の n, m > 0 に対して、(2^(n + m) - 9) > 0
なので、$j \ge 0$ と合わせて、式(5) の左辺≧0である。よって、
式(5) の右辺≧0 なので、8 ≧ 3 * 2^(n - 1) である必要がある。
この条件を満たすには、3 > 2^(n - 1) でなければならない。
よって、2 ≧ 2^(n - 1)である必要がある。これを満たす n の候補は、
n = 1, 2 である。しかし、n = m = 1 の場合、式(3) が
成立しないので、n = 1 を除外する。
式(5) に、n = 2 を代入すると、
j(2^(2 + 1) - 9) = 8 - 3 * 2
j(2^3 - 9) = 2
j = -2
これは j ≧ 0 に反する。
よって、m = 1 の場合、仮定が成立しない。
また、式(1) および 式(2) は、(a, n) と (b, m) の置換に関する
対称性より、m に対する考察結果は同様に n に対しても適用できる。
よって、n = 1 の場合も仮定が成立しない。
以降では、m > 1, n > 1 の場合を考える。
式(4) の左辺>0であるので、以下の不等式が
成立する必要がある。
2^(m - 1)(1 - 2^n) + 6 > 0
6 > 2^(m - 1)(2^n - 1) ・・・(6)
式(6) を満たす右辺の値は、1, 2, 3, 4, 5 である。
一方、m > 1 である必要があるので、実際には偶数のみが
対象となり、式の右辺の値の候補は 2, 4 に絞られる。
m = 2 の場合:
2^(m - 1) = 2 であり、(2^n - 1) < 3 を満たす n は
n = 1 のみであり、これは n > 1 の条件に反する。
m = 4 の場合:
2^(m - 1) = 8 であり、これは式(6) を満たさない。
よって、すべての m > 1 に対して、式(6) が成立しない。
したがって、式(3)が成立しないので、式(2)も成立しない。
以上より、すべての場合で、仮定が成立しない。
よって、すべての m > 1 に対して、式(6) が成立しない。
したがって、式(3) が成立しないので、式(2) も成立しない。
以上の結果より、2つの分岐テーブル間の場合、起点となる
分岐テーブルに対して、終点となっている分岐テーブルが
リンクする状態は発生しない。
すなわち、2つの分岐テーブル間のリンクに関して、
循環経路は存在しない。
以上の結果より、命題は成り立つ。
$\square$
8.2.3 循環経路の存在否定(分岐テーブル数=3)
分岐テーブル数 = $3$ の場合の循環経路が存在しないことを
定理として以下に示す。
定理8.2.3 (循環経路の排除(分岐テーブル数=3)). 〇
3つの分岐テーブル間では、循環参照は発生しない。
ただし、ルートテーブルは対象外とする。
証明.
代表値が異なる複数の分岐テーブル @a, @b, @c を
以下に定義し、考察する。
ただし、@a, @b, @c は、ルートテーブル以外とする。
定義条件を以下に示す。
・a ≠ b, b ≠ c, c ≠ a
・$a, b, c \in \mathbb{N}_{odd} \gt 3$
・b, c は3の奇数倍ではない。
上記において、「b, c は3の奇数倍ではない。」としている理由は、
代表値が3の奇数倍の場合、リンク対象点が存在しないことによる。
また、$a > 3$ としている理由は、$a = 3$ ならば、$a$ が3の奇数倍
なので、リンク対象点が存在しない。
よって、循環参照の対象外であることによる。
2つの分岐テーブル間の場合、定理8.2.2 より循環参照は
発生しない。よって、3つの分岐テーブル間の場合で、循環参照が
発生する可能性があるのは、@c → @a の場合のみである。
@a → @b のリンク関係式は、以下である。
\exists n \in \mathbb{N}, 3a + 1 = b(2^n). \tag{1}
また、@b → @c のリンク関係式は、以下である。
\exists m \in \mathbb{N}, 3b + 1 = c(2^m). \tag{2}
ここで、@c → @a のリンクが存在すると仮定すると、
以下が成り立つ必要がある。
i \in \mathbb{N}, 3c + 1 = a(2^i). \tag{3}
最初に、式(3) で、$i = 1$ の場合を考える。
式(3) に $i = 1$ を代入すると、
3c + 1 = 2a.
である。よって、以下となる。
\displaystyle c = \frac{2a - 1}{3}. \tag{4}
$c \in \mathbb{Z}$ であるためには $3 \mid (2a − 1)$ が必要であり、
$2a − 1 \equiv 0 \pmod 3 \Leftrightarrow 2a \equiv 1 \pmod 3 \Leftrightarrow a \equiv 2 \pmod 3$ が従う。
($\because 2^{−1} \equiv 2 \pmod 3$ :$2$ に対する合同算術における逆元の存在)。
次に式(1) より、
\displaystyle b = \frac{3a + 1}{2^n}. \tag{5}
であるから、式(4), (5) を式(2) に代入して、
\displaystyle 3\left(\frac{3a + 1}{2^n}\right) + 1 = \left(\frac{2a - 1}{3}\right)2^m
を得る。両辺に 3{2^n} を掛けて分母を払うと、
9(3a + 1) + 3(2^n) = (2a − 1)2^{n + m}.
である。これを整理して、
a(2^{n+m+1} − 27) = 2^n(2^m + 3) + 9. \tag{6}
を得る。
式(6) の右辺は正であるから左辺も正であり、よって、
$(2^{n+m+1} − 27) \gt 0$ である必要がある。
ここで、$2^4 = 16 < 27 < 32 = 2^5$ より、
$2^{n+m+1} \gt 27$ は $(n + m + 1) \ge 5$ を意味するから、
n + m \ge 4. \tag{7}
が従う。
さらに、仮定より $a \gt 3$ かつ $a$ は奇数であるから $a \ge 5$ である。
よって、式(6) の左辺に $a \ge 5$ を適用すると、
a(2^{n+m+1} − 27) \ge 5(2^{n+m+1} − 27)
が成り立つ。従って式(6) から、
5(2^{n+m+1} − 27) \le 2^n(2^m + 3) + 9. \tag{8}
を得る。ここで、$m \ge 1$ より、$2^n \le 2^{n+m−1}$ であるから、
2^n(2^m + 3) \le 2^{n+m} + 3(2^{n+m−1})
となる。右辺に注目して整理すると、
2^{n+m} + 3(2^{n+m−1}) = 2^{n+m}(1 + 3 \cdot 2^{−1}) = \frac{5}{2}2^{n+m}
である。従って、式(8) より、
5(2^{n+m+1} − 27) \le \frac{5}{2}2^{n+m} + 9. \tag{9}
を得る。
次に、式(9) から $n + m \le 4$ を導く。
$N := n + m, N \in Z {\ge 2}$ とおくと、式(9) は、
5(2^{N+1} − 27) \le \frac{5}{2}2^{N} + 9.
である。左辺を展開して、
5(2^{N+1}) − 135 \le \frac{5}{2}2^{N} + 9.
である。ここで $5(2^{N+1}) = 10({2^N})$ であるから、
10(2^{N}) − 135 \le \frac{5}{2}2^{N} + 9.
上式を整理すると、
\begin{align}
(10 − \frac{5}{2})2^{N} &\le 144 \\
(20 − 5)2^{N} &\le 288 \\
15(2^{N}) &\le 288 \\
\end{align}
を得る。288/15 = 19.2 であり、$2^N$ は整数なので、
2^N \le 19. \tag{10}
を得る。$2^4 \lt 19 \lt 2^5$ なので、$N \le 4$ である。
よって、$n + m \le 4$ が従う。この結果と式(7) を合わせて、
n + m = 4. \tag{11}
が確定する。
式(11) を式(6) に代入すると、$2^{n+m+1} − 27 = 2^{5} − 27 = 5$ であるから、
5a = 2^n(2^m + 3) + 9. \tag{12}
となる。ここで $n, m \ge 1$ かつ $n + m = 4$ であるから、
$m = 4 − n$ と書ける。条件 $m \ge 1$ より、
4 - n \ge 1 \Leftrightarrow n \le 3.
であり、また、$n \ge 1$ なので、$n$ の候補は $n \in \{1,2,3\}$ に限られる。
したがって、それぞれの場合に対応する $m$ を求めると、
あり得るケースは以下の3通りである。
(n, m) = (1,3), (2,2), (3,1).
上記の組に対して、それぞれ式(12) の右辺を計算すると、
- $(1,3)\ : 2(8 + 3) + 9 = 31$
- $(2,2)\ : 4(4 + 3) + 9 = 37$
- $(3,1)\ : 8(2 + 3) + 9 = 49$
である。一方、左辺 $5a$ は $5$ の倍数であるが、上記の $31, 37, 49$ は
いずれも $5$ の倍数ではない(すなわち、$\not\equiv 0\pmod 5$)。
したがって、式(3) は $i = 1$ の場合、成立しない。
ゆえに、以降は $i \gt 1$ の場合のみを考察対象とする。
式(1) の両辺を $3$ 倍すると、以下となる。
3(3a + 1) = 3b(2^n)
式(2) の両辺を $2^n$ 倍すると、以下となる。
3b(2^n) + (2^n) = c(2^(n + m))
これらを比較すると、以下となる。
3(3a + 1) = c(2^(n + m)) - (2^n)
∴ 3(3a + 1) = (2^n)(c(2^(m)) - 1)
上式の両辺を3倍すると、以下となる。
9(3a + 1) = (2^n)(3c(2^(m)) - 3)
式(3) より、3c = a(2^i) - 1 を上式に代入すると、
9(3a + 1) = (2^n)((a(2^i) - 1)(2^(m)) - 3)
上式を a について整理すると、以下となる。
27a + 9 = (a(2^i) - 1)(2^(n + m)) - 3(2^n)
27a + 9 = a(2^i)(2^(n + m)) - (2^(n + m)) - 3(2^n)
a(2^(n + m + i)) - 27a = 2^(n + m) + 3(2^n) + 9
a(2^{n + m + i} - 27) = (2^n)(2^m + 3) + 9 \tag{13}
ここで、上式の右辺>0なので、a > 3 より、
(2^(n + m + i) - 27) > 0 である。
よって、(n + m + i) > 4 である必要がある。
これは、n = m = i = 1 の場合、式(3) が
成立しないことを意味する。
$a \gt 3$ は奇数なので、$\forall k \in \mathbb{N}, a = 2k + 1$ とおいて、
式(13) に代入すると、以下となる。
(2k + 1)(2^(n + m + i) - 27) = (2^n)(2^m + 3) + 9
2k(2^(n + m + i) - 27) = (2^n)(2^m + 3) + 9 - (2^(n + m + i) - 27)
2k(2^(n + m + i) - 27) = (2^n)((2^m)(1 - 2^i) + 3) + 36
k(2^{n + m + i} - 27) = 2^{n - 1}(2^m(1 - 2^i) + 3) + 18 \tag{14}
最初に、$n = 1$ の場合、仮定が成立しないことを以下に示す。
式(14) に $n = 1$ を代入すると、
k(2^{m + i + 1} - 27) = 2^m(1 - 2^i) + 21 \tag{15}
右辺は奇数であり、また、$2^{m + i + 1} - 27$ は奇数である。
上式より、$k \gt 0$ が奇数である必要がある。
ここで、$\forall j \in \mathbb{N}, k = 2j + 1$ とおく。
(2j + 1)(2^(m + i + 1) - 27) = (2^m)(1 - 2^i) + 21
2j(2^(m + i + 1) - 27) = (2^m)(1 - 2^i) + 21 - (2^(m + i + 1) - 27)
2j(2^(m + i + 1) - 27) = (2^m)(1 - 2^i - 2^(i + 1)) + 48
2j(2^(m + i + 1) - 27) = (2^m)(1 - 3(2^i)) + 48
j(2^{m + i + 1} - 27) = 2^{m - 1}(1 - 3(2^i)) + 24 \tag{16}
上式の左辺>0なので、(2^(m - 1))(1 - 3(2^i)) + 24 > 0
である必要がある。
\therefore 24 \gt 2^{m - 1}(3(2^i) - 1) \tag{17}
(n = 1, m = 1 の場合)
24 > 3(2^i) - 1
25/3 > 2^i
∴ 3 ≧ i
i > 1 である必要があるので、i の候補は、2, 3 となる。
式(16) に m = 1 を代入すると、
j(2^{i + 2} - 27) = 25 - 3(2^i) \tag{18}
(i = 2 の場合)
式(18) に i = 2 を代入すると、
j(2^4 - 27) = 25 - 3(2^2)
-11j = 13
上式の結果は、j > 0 である自然数が得られないので、
矛盾である。よって、i = 2 の場合、式(14) が成立しない。
(i = 3 の場合)
式(18) に i = 3 を代入すると、
j(2^(3 + 2) - 27) = 25 - 3(2^3)
5j = 1
上式を満たす j > 0 である自然数は存在しないので、
矛盾である。よって、i = 3 の場合、式(14) が成立しない。
したがって、(n = 1, m = 1)の場合、式(14) が成立しない。
(n = 1, m > 1 の場合)
式(16) において、$m \gt 1$ なので、$2^{m - 1}$ の最小値は
$m = 2$ の場合となり、以下である必要がある。
12 > 3(2^i) - 1
13/3 > 2^i
∴ 2 ≧ i
i > 1 である必要があるので、i の候補は $2$ のみとなる。
この場合、式(17) に、i = 2 を代入すると、以下となる。
24 > (2^(m - 1))(3(2^2) - 1)
24/11 > 2^(m - 1)
m > 1 の条件で、上式の関係を満たすのは、
m = 2 の場合のみである。
i = m = 2 を式(16) に代入すると、以下となる。
j(2^(2 + 2 + 1) - 27) = (2^(2 - 1))(1 - 3(2^2)) + 24
j(2^(5) - 27) = (2^1)(1 - 3(4)) + 24
j(32 - 27) = 2(1 - 12) + 24
5j = 2
上式を満たす j > 0 である自然数は存在しないので、
矛盾である。
したがって、(n = 1, m > 1 の場合)、式(14) が成立しない。
以上より、n = 1 の場合、仮定が成立しない。
次に、n > 1 の場合、仮定が成立しないことを以下に示す。
(n > 1 の場合)
(n > 1, m = 1 の場合)
式(14) に m = 1 を代入すると、
k(2^(n + 1 + i) - 27) = (2^(n - 1))(2(1 - 2^i) + 3) + 18
である。ここで n > 1 かつ i > 1 より、2^(n + 1 + i) - 27 > 0
であり、また k > 0 なので左辺 > 0 である。
従って右辺 > 0 が必要である。
i > 1 より、2(1 - 2^i) + 3 = 5 - 2^(i + 1) < 0 であるから、右辺は
18 - (2^(n - 1))(2^(i + 1) - 5)
と書ける。従って右辺 > 0 から
18 > (2^(n - 1))(2^(i + 1) - 5)
が必要である。
n > 1 より 2^(n - 1) ≥ 2 であるから、上式より
18 > 2(2^(i + 1) - 5)
2^(i + 1) < 14
を得る。よって i ≤ 2 である。ここで前提は i > 1 なので、
i = 2 に限られる。
i = 2 を上の不等式に代入すると、2^(i + 1) - 5 = 3 であるから
18 > 3(2^(n - 1))
すなわち 2^(n - 1) < 6 である。従って n ≤ 3 であり、
n は 2 または 3 に限られる。
しかし、i = 2, m = 1 の下で式(14) を用いると、
n = 2 のとき、右辺は (2^(1))(2(1 - 4) + 3) + 18 = 12 であり、
左辺は k(2^5 - 27) = 5k なので、5k = 12 は不可能である。
n = 3 のとき、右辺は (2^(2))(2(1 - 4) + 3) + 18 = 6 であり、
左辺は k(2^6 - 27) = 37k なので、37k = 6 は不可能である。
よって、(n > 1, m = 1 の場合)、式(14) は成立しない。
(n > 1, m > 1 の場合)
式(14) の左辺>0なので、以下の不等式が成立する必要がある。
(2^(n - 1))((2^m)(1 - 2^i) + 3) + 18 > 0
これを変形すると、
18 > (2^{n - 1})(2^m(2^i - 1) - 3) \tag{19}
ここで、n > 1 である必要があるので、
$2^{n - 1}$ の最小値は n = 2 のときの $2$ である。
したがって、式(19) が成立するためには、
少なくとも以下の条件を満たさなければならない。
$9 > (2^m)(2^i - 1) - 3$
$12 > 2^m(2^i - 1)$
一方、m > 1 であるから、$2^m$ の最小値は $4$ であり、
上式より、以下が導かれる。
$12/4 > (2^i - 1)$
$3 > 2^i - 1$
$4 > 2^i$
上式を満たす自然数 i の候補は 1 のみである。
しかし、本考察の前提条件は i > 1 であるから、これに矛盾する。
(※i = 1 のケースは前段の検証において既に排除されている。)
よって、n > 1, m > 1 のすべての場合において、
式(14) を満たす自然数解(k, n, m, i)は存在しない。
したがって、すべての n > 0 に対して、仮定が成立しない。
以上より、n, m, i に対するすべての組み合わせにおいて、
仮定が成り立たないことを検証した。
上記より、「@c → @a のリンクが存在する」とした仮定は
誤りである。したがって、@c → @a のリンクは存在しない。
以上の結果より、3つの分岐テーブル間の場合、
3つの分岐テーブルが順次リンクした状態において、起点となる
分岐テーブルに対して、終点となっている分岐テーブルが
リンクする状態は発生しない。
すなわち、3つの分岐テーブル間のリンクに関して、
循環経路は存在しない。
以上の結果より、命題は成り立つ。
$\square$
8.2.4 循環経路存在否定の方向性(分岐テーブル数≧4)
初等整数論の手法を駆使して証明を目指す場合の方向性の検討結果を
以下に示す。
前提条件として、直前までの検討結果として、分岐テーブルの要素数が
$n = 1,\ 2,\ 3$ の場合については、コラッツ遷移に循環経路が存在しない
ことが証明済みである。
(A) 循環経路のトポロジー的制約
循環経路内の分岐テーブルの要素数を順次増加させて、数学的帰納法に
準じた証明を実施すると仮定する。このとき、分岐テーブル間リンクとして
証明が必要な場合を、リンク関係のトポロジー的制約として限定する。
$n = 4$ の場合(存在しない例としての $7 \to 11 \to 17 \to 13$)を
図示すると、以下となる。

[図8.2.4a]循環経路の存在可能性の例(分岐テーブル数=4)
上図からわかるように、定理8.2.1 ~定理8.2.3 より、$n \le 3$ の場合の
循環経路は存在しないので、$n = 4$ の場合、存在する可能性があるのは、
末尾ノードから先頭ノードへのリンクのみである。(ex. $13 \to 7$)
先頭から末尾に至る中間ノードまたは末尾ノードを起点とする隣接的な
循環参照リンクは、$n \le 3$ の場合の循環経路が存在しないという
検証結果より全て排除される。
以上の考察より、数学的帰納法に準じた証明を継続する場合、残るのは、
末尾ノードから先頭ノードへ循環参照が発生する場合のみである。
これは、着目する先頭ノードを外部リンク型循環経路の入口点とする場合、
入口点の分岐テーブル $V_0$ にリンクする分岐テーブルグループを
#a とすれば、#a $\to V_0$ (i.e. @$a$, @$(4a + 1)$, $\cdots \to V_0$) である。
循環経路 $n \in \mathbb{Z}_{\ge 0}, V_0 \to V_1 \to \cdots \to V_n$ が循環経路の条件としての
$V_n \to V_0$ を満たす場合、定理1.4.6 より、末尾ノード $V_n$ は
#a に属する必要がある。
以下に、循環経路の排除のためのリンク関係の概観図を示す。

[図8.2.4b]循環経路を排除するための異常の明確化(分岐テーブル数=4)
上図は、異常状態($9 \to 7 \to 11 \to 17 \to 13 \to 7$)の例である。
本来は、$13 \to 7$ のリンクは成立しない。もし、循環経路内の
末尾ノード($V_n$)から入口点である先頭ノード($V_0$)への循環参照が
存在するならば、$V_n$ は、入口点へリンクしている分岐テーブルが所属する
分岐テーブルグループ(#a)に属する必要がある。
(B) コラッツ遷移一般方程式からの制約
循環経路の存在を排除する上でコラッツ遷移一般方程式からの
アプローチを考える。すなわち、循環経路の存在を仮定した場合における
制約をコラッツ遷移一般方程式に与えることを想定する。
コラッツ遷移一般方程式の導出、および順方向/逆方向展開における
補正量の関係については、第 3 章で既に示した。
特に、「3.3 順方向/逆方向展開における補正量の同一性」より、
$n \in \mathbb{Z}_{\gt 0}$ 回の有限な奇数コラッツ遷移
V_0 \longrightarrow V_1 \longrightarrow \cdots \longrightarrow V_n.
に対して、
2^{S_n}V_n = {3^n}V_0 + C_n. \tag{1}
が成立し、
C_n = \sum_{k = 0}^{n - 1}{3^k}2^{S_{n - 1 - k}} = U_n \gt 0.
である。
循環経路の存在条件として、
V_n = V_0.
を課すと、式(1) より、
V_0(2^{S_n} - 3^n) = C_n. \tag{2}
を得る。なお、$C_n \gt 0$ なので、$2^{S_n} - 3^n \gt 0$、すなわち、
2^{S_n} \gt 3^n.
である。
式(2) における $C_n$ を具体的に展開すると、
V_0(2^{S_n} - 3^n) = 3^{n - 1} + 3^{n - 2}2^{S_1} + \cdots + {3^1}2^{S_{n - 2}} + 2^{S_{n - 1}}.
上式において、$n = 1$ の場合は以下で、右辺の初項は必ず存在する。
V_0(2^{S_n} - 3^n) = 3^0 = 1.
また、$n \ge 2$ の場合、初項と最終項は必ず存在する。
初項以外は必ず偶数なので、右辺全体として奇数となることが保証される。
この状態は、左辺が奇数である点と整合している。
式(2) の両辺を $V_0$ で割ると、
\displaystyle 2^{S_n} - 3^n = \frac{C_n}{V_0}. \tag{3}
$C_n,\ V_0 \gt 0$ かつ上式の左辺は自然数なので、右辺も自然数である。
よって、$V_0$ は $C_n$ の約数であり、$C_n/V_0$ の商 $\exists q \in \mathbb{N}$ が存在し、
2^{S_n} - 3^n = q.
$n \gt 0$ に注意すると、上式の左辺は奇数なので $q$ は奇数である。
式を整理すると、以下となる。
2^{S_n} = 3^n + q. \tag{4}
式(4) が成立する $S_n,\ n$ が実際に存在するかどうかを考察することが、
循環経路が存在するかどうかを判定することに繋がる。
しかし、この方程式または、その変形版を解くことは一般には困難であり、
対処法としては、A.Baker の超越数論等を用いた高度な解法を用いる
計算機援用の演算処理を採用する手法が従来からは一般的となっている。
しかし、現時点では、それらの結果としての証明が、適用の総体として
理論的な妥当性を持っているにもかかわらず、その他の要因が存在して、
数学界で広く認められた状況とはなっていない。
本稿では、このような手法を採用しないことを選択する。すなわち、
「循環経路の存在排除に高度な理論や複雑な演算を必要としない」
手法を採用するものとする。
ただし、この方針は、超越数論を含む既存研究によって既に確立された
個別の定理や評価結果まで利用しないことを意味するものではない。
それらのうち、数学的に確立され、適用条件および結論が明確であり、
本稿の議論に直接利用できる既知の研究成果については、必要に応じて
利用する。
上記の検討により、少数の分岐テーブルからなる循環経路の
個別排除と、一般の循環経路が満たすべき構造的条件および
代数的必要条件が明らかとなった。
ただし、これらの結果だけでは、一般的な循環経路の存在排除は
完了していない。これらについては、後節において改めて示す。
8.2.5 外部リンク型循環経路の存在否定 (BTG 交差なし)
定理1.2.6 より、単一分岐テーブル内の自己参照ループが @1 のみと
確定している。ここでは、それ以外の場合として、任意かつ複数の
分岐テーブル間で構成される外部リンク型循環経路のうち、入口点
$V_0$ にリンクする分岐テーブルグループ $\text{#}B_0$ が、
\text{#}B_0 \to V_0, \quad \text{#}B_0 \cap C = \varnothing
を満たす場合に限定して、その存在可能性を排除する。
議論の対象は、自然数における奇数のみに着目したコラッツ遷移である。
なお、以下、本節で外部リンク型循環経路という場合は、上記の条件を
満たすものに限定する。
コラッツ遷移に外部リンク型循環経路が存在すると仮定し、
その場合における分岐テーブルおよび分岐テーブルグループに関する
リンク状況を考察する。
なお、循環経路を構成する分岐テーブルの代表値は、
必ず (6k + 1)/(6k + 5) 型である。すなわち、$3$ の奇数倍ではない。
何故ならば、もし、それらの代表値が $3$ の奇数倍ならば、
コラッツ遷移の途中で再度出現しないからである。
これは、補題1.2.4 より、分岐テーブルの代表値が $3$ の奇数倍ならば、
その分岐テーブルはリンク対象点を持たないことによる。
以降、外部リンク型循環経路において、外部からのリンクが連結している
位置に存在する分岐テーブルを循環経路の仮想的な始点として扱い、
それを $\forall a \in \mathbb{N}_{odd}, a \gt 1$ とする。
このとき、@a にリンクする分岐テーブルは、分岐テーブルグループを
形成する。これは、定理1.4.6 より、同一の分岐テーブルグループに属する
全ての分岐テーブルは同一遷移先の分岐テーブルへ遷移することによる。
また、定理1.2.5 より、$a$ からの逆方向リンクが存在し、
$a$ に到達する順方向のコラッツ遷移列が存在する。
このコラッツ遷移を遡り、その遷移列先頭を $3$ の奇数倍 $A$ とする。
すなわち、$A \sim a$ のコラッツ遷移が $a$ 以降のコラッツ遷移列の
直前に存在する。この場合における $a$ の直前の遷移値を $Z$ とする。
外部リンク型循環経路の状態を以下のように規定する。
- 外部リンク型循環経路の確定時刻を $t_\ast \gt 0$ とすると、
$0 \le t \le t_\ast$ に現れる奇数は全て相異なる。
これは「最初の重複時刻」の定義から直ちに従う性質である。
- $a$ から循環参照が発生する箇所までのコラッツ遷移回数を
$N_r \gt 0$ とする。
- $A$ から$a$ に到達するまでのコラッツ遷移回数を $N_p \gt 0$ とする。
以下に規定した外部リンク型循環経路の状態を示す。

[図8.2.5a]外部リンク型循環経路の状態例
$N_p \lt N_r$ ならば、外部リンク型循環経路は存在しない。
何故ならば、重複出現した $a$ に対する逆方向リンクを考えると、
初期値 $a$ まで到達するまでの途中に $3$ の奇数倍が出現することになる。
補題1.2.4 より、$3$ の奇数倍にリンクする奇数は存在しないので
矛盾である。
(追記 A) このとき、循環区間へ整合するための逆方向連鎖(A ~ a)の
経路は(初期値 a ~ 重複出現値 a)の経路より短い。よって、$N_r$ 区間で、
$a$ より前に現れる $3$ の奇数倍 $A$ を跨がざるを得ない。
ところが、$A$ へは如何なる奇数からもリンクできず、
外部リンク型循環経路の構成は不可能である。
したがって、外部リンク型循環経路の存在パターンにおいて、
$N_p \lt N_r$ の場合は排除された。すなわち、外部リンク型循環経路が
存在する可能性は、$N_p \ge N_r$ の場合に絞られた。
以降では $N_p \ge N_r$ の場合のみを考察する。
$N_p \ge N_r$ の場合、循環経路の仮想的な始点 $a$ にリンクする
分岐テーブルは、仮定より $a$ が $3$ の奇数倍ではないので、
分岐テーブルグループの要素として、無限に存在する。
(※下図では $Z, d$ 等が該当する。)
上記の外部リンク型循環経路の存在する場合の状況分析を踏まえた上で、
外部リンク型循環経路の存在可否に関して、以下の補題が成り立つ。
なお、特筆すべき点は、以下の補題の証明では、コラッツ遷移における
個別の遷移値を計算することなく、分岐テーブルグループと遷移対象への
リンク関係の性質としての単一性(定理1.4.8 参照)を用いて、
コラッツ遷移の構造的形態から循環経路の存在を排除していることである。
すなわち、循環経路の状態に関して、コラッツ遷移一般方程式から
導出される複雑な定式化の結果に対して、A.Baker による超越数論等の
高度な理論は必ずしも採用する必要はない。
補題8.2.5 (BTG 交差なしの外部リンク型循環経路は存在しない). 〇
コラッツ遷移において、入口点 $V_0$ にリンクする
分岐テーブルグループ $\text{#}B_0$ が、
\text{#}B_0 \to V_0, \quad \text{#}B_0 \cap C = \varnothing
を満たす外部リンク型循環経路 $C$ は存在しない。
ただし、自明なループを含むルートテーブルを除く。
証明.
背理法で証明する。
外部リンク型循環経路が存在すると仮定する。
「8.1.1 循環経路のトポロジー」における (B) の環境定義より、循環経路
C: V_0 \to V_1 \to \cdots \to V_{n−1} \to V_0
と、@$V_0$ にリンクする分岐テーブルグループ #$B_0$ が存在し、
\#B_0 \to V_0, \quad \#B_0 \cap C = \varnothing
が成り立つ。
一方、循環経路の末尾リンクより、$V_{n−1} \to V_0$ が成り立つ。
ここで定理1.4.8より、
V_{n−1} \to V_0 \Rightarrow V_{n−1} \in \#B_0
が従う。
しかし、$V_{n−1} \in C$ でもあるので、$V_{n−1} \in \#B_0 \cap C$ となり、
$\#B_0 \cap C = \varnothing$ に反するので矛盾である。
よって、上記の条件を満たす外部リンク型循環経路は存在しない。
したがって、命題は成り立つ。
$\square$
8.3 一般循環経路の存在否定
§8.1.1では、コラッツ遷移において存在する可能性がある循環経路を、
そのトポロジーに基づいて、次の2つの形態に分類した。
- 閉路型循環経路
- 外部リンク型循環経路
このうち、閉路型循環経路については、補題8.1.2 により、
既にその存在が排除されている。
一方、外部リンク型循環経路については、§8.2 において、
少数の分岐テーブルからなる場合、および入口点 $V_0$ にリンクする
分岐テーブルグループ $\text{#}B_0$ と循環経路 $C$ が交差しない場合について、
その存在を排除した。しかし、
\text{#}B_0 \cap C \ne \varnothing.
の場合を含む一般的な外部リンク型循環経路については、
これらの個別的な排除結果だけでは十分ではない。
そこで、§8.3.1 では、任意の循環経路に対して、
第 3 章の有限状態構造分類を適用する補題3.8.4を 用いて、
一般的な外部リンク型循環経路の存在を排除する。
次に、§8.3.2 では、§8.1.1 におけるトポロジー分類に基づき、
閉路型循環経路および外部リンク型循環経路の排除結果を統合し、
自明なループ以外のすべての循環経路が存在しないことを示す。
8.3.1 外部リンク型循環経路の存在否定
補題3.8.4 により、一般的な外部リンク型循環経路の存在を排除する。
補題8.3.1 (外部リンク型循環経路は存在しない).
コラッツ遷移において、自明なループ以外の外部リンク型循環経路は
存在しない。
証明.
背理法で証明する。
コラッツ遷移に、自明なループではない外部リンク型循環経路 $C$ が
存在すると仮定する。
外部リンク型循環経路 $C$ は、分岐テーブルの代表値を順次通過し、
最後に出発値へ戻る、自然数のみで構成された循環経路である。
したがって、循環経路 $C$ には、補題3.8.4を適用できる。
よって、循環経路 $C$ から誘導される有限状態構造は、
自明なループに由来するものに限られる。
また、循環経路 $C$ 自身が、その有限状態構造の
正整数周期 lift を与える。したがって、循環経路 $C$ も、
自明なループでなければならない。
これは、循環経路 $C$ が自明なループではないという仮定に反する。
よって、自明なループ以外の外部リンク型循環経路は存在しない。
なお、補題3.8.4 は、自然数のみで構成される任意の循環経路に
適用されるため、この結論は、
\text{#}B_0 \cap C = \varnothing.
の場合だけでなく、
\text{#}B_0 \cap C \ne \varnothing.
の場合にも成立する。
したがって、命題は成り立つ。
$\square$
8.3.2 すべての循環経路の存在否定
これまでの議論により、§8.1.1 で分類した2つの循環経路の形態である、
閉路型循環経路および外部リンク型循環経路は、
自明なループを除いて、いずれも排除された。
よって、以下の定理が成り立ち、非自明循環経路は存在しないことが
帰結する。
定理8.3.2 (循環経路は存在しない).
コラッツ遷移において、非自明循環経路は存在しない。
証明.
§8.1.1 より、コラッツ遷移において存在する可能性がある循環経路は、
以下の2つの形態に分類される。
- 閉路型循環経路
- 外部リンク型循環経路
補題8.1.2より、閉路型循環経路は存在しない。
また、補題8.3.1より、自明なループ以外の
外部リンク型循環経路は存在しない。
したがって、§8.1.1 で分類された2つの循環経路の形態のうち、
閉路型循環経路は排除され、外部リンク型循環経路も、
自明なループを除いて排除される。
よって、コラッツ遷移には自明なループ以外の循環経路は存在しない。
したがって、命題は成り立つ。
$\square$
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