はじめに
今回はスクラムチームのチームビルディングの一環として「マニュアル・オブ・ユー」を実施したので、その内容を紹介します。
※ 「マニュアル・オブ・ユー」は Gemini への問いかけをきっかけに提案されたワークショップです。
※ マニュアル・オブ・ミー を個人ではなくチームメンバ同士で共有する形にアレンジしたものと理解しています。
※ 類似したワークショップに ドラッカー風エクササイズ がありますが、こちらはより個人に焦点をあてたものです。
目的
ワークショップは、ゴールデン・サークル的に
要約 | 内容 | 補足 | |
---|---|---|---|
why | 目的, 存在意義, 理由 | プロダクトの機能改善や品質確保のためにチームの開発力向上が求められる | チームが高パフォーマンスを発揮できる状態であることが望ましい |
how | 具体的にどう進めるのか, 手段 | メンバ間の相互理解と期待値すり合わせを行う | 得意、苦手、志向性等々 |
「why」「how」を上記としたとき、「what」としてマニュアル・オブ・ユーを実施することで、チームメンバの相互理解を深めることを目的としました。
マニュアル・オブ・ユーとは
チームメンバーが自分自身の「取り扱い説明書」を作成し、共有するワークショップです。
概要
各メンバーが以下の項目について考え、書き出し、チームに共有します。
- 得意なこと / 貢献できること
- どんなスキルや知識、経験があるか
- 苦手なこと / 助けが必要なこと
- どんなときに困るか
どんなサポートがあれば助かるか
- どんなときに困るか
- 働き方
- 集中できる環境
- コミュニケーションスタイル ( チャット形式が良いか、口頭でのやり取りが良いか )
- フィードバックの受け方
- 仕事の進め方など
- 仕事に対するポリシー / 価値観
- 大事にしていること
- モチベーションがあがる要因
- ストレスを感じる要因など
進め方
各メンバーが事前に ( またはワークショップ冒頭で ) 自分のマニュアルを作成します。
- 順番に自分のマニュアルをチームに共有し、他のメンバーは質問したり共感した点について会話します
- 全体でディスカッションし、相互理解を深めます
なぜこのワークショップなのか?
自己開示の促進が目的です。
各メンバーが自ら情報を整理し開示することで、深い自己理解と他者理解につなげます。
- 具体的な行動変容
- 相手の得意・苦手やポリシーを知ることで「このタスクは Aさん に頼もう」「Bさん にはこのようにフィースバックしよう」といった具体的な協業の改善に繋がります
- 安全な場の構築
- 個人の特性を尊重し、心理的安全性を高めます
ワークショップで用いたボード
成果と反省点
成果
チーム発足から約3ヶ月経過したタイミングでの実施でした。
すでに一定の関係性は形成されていましたが、改めて以下の成果が得られました。
スキル面
- それぞれのスキルセットがわかったことで相互補助できるポイントが把握できた
- また今後各自が進めていきたいキャリアパスや得たいスキルが把握できた
コミュニケーション面
- チームで行っているスクラムイベントやその他ミーティングにおける改善点が出てきた
- 個人的に懸念していたミーティングの進め方がチームでは特に問題とは考えられていなかった( ※ )
※注
デイリースクラムやスプリントプランニング、レトロスペクティブといったスクラムイベント以外に、突発的なミーティングが結構な頻度で発生しており、それによるコンテキストスイッチの切替え負荷が高いのではないかと懸念していたのですが、チーム内ではそれほど問題視しておらず必要なものと捉えてくれていた。
反省点
ワークショップではタイムテーブル管理が難しい点が課題となりました。
最後の「確認 & クロージング」を多めに確保していたものの、各メンバーの内容が豊富だったため急ぎ足で進める場面もありました。
これは嬉しい悲鳴ではありますが、「重点的に会話する内容を事前に絞る」など、進め方に工夫の余地があったと感じています。
まとめにかえて
- 自己分析によって「自分の取り扱い説明書」を作り、それをチームに共有する。
- またチームはその説明を受けて「どう向き合うか」を考える。
こうしたプロセスを通じて、相互理解を深められる良いワークショップだと感じました。
チームは時にメンバの増減が発生します。
その際に実施することで、新旧メンバ双方の理解を深めると同時に、既存メンバが自分を振り返るきっかけにもなると思います。
また今回のワークショップを通じて、次のような学びがありました。
実施の効果
- チームメンバー同士の得意・苦手が可視化され、協力しやすくなった
- ミーティングの進め方やコミュニケーションの改善点が自然に見えてきた
実施のコツ
- 項目が多いので「重点的に話すポイント」をあらかじめ絞っておくとよい
- チームが立ち上がって数ヶ月経過した頃や、新メンバーが加わったタイミングに特に有効
こうした工夫を意識すると、より効果的に「マニュアル・オブ・ユー」を活用できると感じました。
補足
「スクラムチーム」と書きましたが、正直エンジニアチームならどこでも応用できると思います。
新しいメンバーが入ったときや、なんとなくコミュニケーションがぎこちないときに 1〜2 時間でできる手軽なワークショップです。
使ったボードのフォーマットは誰でも再現できるので、興味ある方はぜひ試してみてください。