CDN・WAF選定の検討メモ - Fastly vs Akamai vs CloudFlare どれを選ぶ?
はじめに
Webサービスを運営していると、必ずと言っていいほど「CDN・WAFを導入したい」という話が出てきます。でも、いざ選定しようとすると「FastlyとAkamai、CloudFlareどれがいいの?」と悩んでしまうことが多いです。
この記事では、公式ドキュメントに基づいて各サービスの特徴と選定のポイントをまとめましたので、参考になればと思います。
※本記事の内容は、実際の運用環境での検証を推奨します。
登場する主要CDN・WAFサービス
CDN(Content Delivery Network)
- Fastly: エッジコンピューティングに特化したCDN、リアルタイム処理が得意
- Akamai: 老舗のCDNプロバイダー、エンタープライズ向けの高機能
- CloudFlare: 開発者フレンドリーなCDN、無料プランも充実
WAF(Web Application Firewall)
- Fastly: Signal Sciences買収によるWAF機能
- Akamai: Kona Site Defender(WAF機能)
- CloudFlare: 統合されたWAF機能
選定の基本方針
1. まず要件を整理しよう
パフォーマンス要件
- レスポンス時間の目標値
- 同時接続数の想定
- 地理的な配信範囲
- キャッシュ戦略
セキュリティ要件
- WAFの必要性
- DDoS対策のレベル
- SSL/TLS証明書の管理
- mTLS(相互TLS認証)の要件
- 暗号方式の要件(TLS 1.2/1.3対応)
- コンプライアンス要件(PCI DSS、SOC 2等)
運用要件
- チームの技術レベル
- 予算の制約
- サポートの必要性
- 監視・ログ機能の要件
2. 選定フローチャート
各サービスの詳細比較
Fastly
特徴
- エッジコンピューティング: VCL(Varnish Configuration Language)でカスタマイズ可能
- リアルタイム処理: 動的コンテンツの処理が得意
- 高パフォーマンス: 低レイテンシーを重視した設計
- 開発者向け: APIファーストの設計
メリット
- カスタマイズ性が高い
- リアルタイム処理が得意
- 詳細な分析データ
- エッジでの処理が柔軟
デメリット
- 学習コストが高い
- 設定が複雑
- サポートが限定的
- コストが高い
セキュリティ機能
- SSL/TLS: TLS 1.2/1.3対応、独自証明書管理
- WAF: Signal Sciences買収によるWAF機能
- DDoS対策: レイヤー3/4/7 DDoS対策
- mTLS: 相互TLS認証対応
価格について
価格は通信量や要件によって大きく異なるため、具体的な要件を整理して各サービス提供側に確認することを推奨します。
選定のポイント
- 向いているケース: リアルタイム処理が必要、カスタマイズ性を重視、技術力があるチーム
- 向いていないケース: シンプルな静的配信のみ、予算が限定的、技術力が不足
コンプライアンス対応
- PCI DSS: Level 1 Service Provider認定
- SOC 2: Type II認証取得
- ISO 27001: 情報セキュリティマネジメントシステム認証
Akamai
特徴
- エンタープライズ特化: 大企業向けの高機能
- 高信頼性: 99.99%の可用性保証
- 包括的なセキュリティ: WAF、DDoS対策、ボット対策
- グローバル展開: 世界最大級のCDNネットワーク
メリット
- 高い信頼性と可用性
- 包括的なセキュリティ機能
- エンタープライズサポート
- コンプライアンス対応
デメリット
- コストが高い
- 設定が複雑
- 小規模サービスには過剰
- レスポンスが遅い(営業・サポート)
価格について
価格は通信量や要件によって大きく異なるため、具体的な要件を整理して各サービス提供側に確認することを推奨します。
セキュリティ機能
- SSL/TLS: TLS 1.2/1.3対応、独自証明書管理
- WAF: Kona Site DefenderによるWAF機能
- DDoS対策: ProlexicによるDDoS対策
- mTLS: 相互TLS認証対応
コンプライアンス対応
- PCI DSS: Level 1 Service Provider認定
- SOC 2: Type II認証取得
- ISO 27001: 情報セキュリティマネジメントシステム認証
- HIPAA: 医療情報の保護要件対応
選定のポイント
- 向いているケース: エンタープライズ要件、高可用性が必要、コンプライアンス要件
- 向いていないケース: 小規模サービス、予算が限定的、シンプルな要件
CloudFlare
特徴
- 開発者フレンドリー: 簡単な設定で導入可能
- 無料プラン: 基本的な機能が無料で利用可能
- 統合プラットフォーム: CDN、WAF、DNS、DDoS対策が統合
- グローバル展開: 200以上の都市に展開
メリット
- 無料プランが充実
- 設定が簡単
- 統合された機能
- 開発者コミュニティが活発
デメリット
- カスタマイズ性が限定的
- エンタープライズ機能は有料
- サポートの質にばらつき
- 無料プランには制限あり
価格について
価格は通信量や要件によって大きく異なるため、具体的な要件を整理して各サービス提供側に確認することを推奨します。
セキュリティ機能
- SSL/TLS: TLS 1.2/1.3対応、自動証明書管理
- WAF: 統合されたWAF機能
- DDoS対策: レイヤー3/4/7 DDoS対策
- mTLS: 相互TLS認証対応(Enterpriseプラン)
コンプライアンス対応
- PCI DSS: Level 1 Service Provider認定
- SOC 2: Type II認証取得
- ISO 27001: 情報セキュリティマネジメントシステム認証
- GDPR: 欧州一般データ保護規則対応
選定のポイント
- 向いているケース: 小規模〜中規模、予算が限定的、簡単に導入したい
- 向いていないケース: 高度なカスタマイズが必要、エンタープライズ要件
要件確認のポイント
セキュリティ要件の確認
SSL/TLS証明書管理
- 独自証明書のアップロードが必要か
- 自動証明書管理(Let's Encrypt等)で十分か
- 証明書の更新頻度と管理方法
mTLS(相互TLS認証)
- クライアント証明書による認証が必要か
- 証明書の配布・管理方法
- 証明書の有効期限管理
暗号方式の要件
- TLS 1.2/1.3の対応状況
- 使用可能な暗号スイート
- Perfect Forward Secrecy(PFS)の対応
WAF機能の要件
- OWASP Top 10の対応状況
- カスタムルールの作成・管理
- レート制限・ボット対策の機能
コンプライアンス要件の確認
PCI DSS(決済カード業界データセキュリティ基準)
- Level 1 Service Provider認定の有無
- 決済データの取り扱い要件
- 監査レポートの提供
SOC 2(システムと組織統制)
- Type II認証の取得状況
- セキュリティ・可用性・機密性の統制
- 監査レポートの提供
ISO 27001(情報セキュリティマネジメントシステム)
- 認証取得状況
- 情報セキュリティポリシーの整備
- リスク管理プロセスの確立
GDPR(欧州一般データ保護規則)
- データ保護の要件
- データ処理の記録・監査
- データ主体の権利への対応
選定時のチェックリスト
技術要件
- レスポンス時間の目標値
- 同時接続数の想定
- 地理的な配信範囲
- カスタマイズ性の必要性
- リアルタイム処理の必要性
セキュリティ要件
- SSL/TLS証明書の管理方法
- mTLS(相互TLS認証)の必要性
- 暗号方式の要件(TLS 1.2/1.3)
- WAF機能の要件
- DDoS対策のレベル
- ボット対策の必要性
- レート制限の設定
- セキュリティ監査の要件
コンプライアンス要件
- PCI DSS要件
- SOC 2要件
- ISO 27001要件
- GDPR要件
- HIPAA要件(医療情報)
- 監査レポートの提供
- データ保護の要件
- プライバシー保護の要件
運用要件
- チームの技術レベル
- 予算の制約
- サポートの必要性
- SLA要件
- 契約期間の制約
ビジネス要件
- スケーラビリティ
- 可用性要件
- コスト効率
- 将来の拡張性
- ベンダーロックインの懸念
参考リンク:
導入時の注意点
1. 要件を整理せずに選定
- 問題: 機能過多でコストが膨らむ
- 対策: まず要件を明確にする
2. 技術レベルを考慮しない
- 問題: 設定が複雑で運用できない
- 対策: チームの技術レベルを正確に評価
3. コストだけを重視
- 問題: パフォーマンスやセキュリティが不十分
- 対策: 総合的な価値を評価
4. 将来の拡張性を考慮しない
- 問題: 後から移行が必要になる
- 対策: 長期的な視点で選定
参考リンク:
まとめ
選定のポイント
- 要件を明確にする: 技術、セキュリティ、運用、ビジネス要件
- チームの技術レベルを考慮: 設定・運用できるレベルか
- コストパフォーマンスを重視: 機能とコストのバランス
- 将来の拡張性を考慮: 長期的な視点で選定
推奨パターン
- 小規模・予算重視: CloudFlare
- 中規模・カスタマイズ重視: Fastly
- 大規模・エンタープライズ: Akamai