この記事は NTTテクノクロス Advent Calendar 2025 シリーズ1の24日目です。
こんにちは。NTTテクノクロスで、アプリや生成AIなど技術エバンジェリストとして活動している神原(@korodroid)です。
これら技術に関して、技術支援や技術者育成、サービス開発などに携わっています。本記事に関係する講演活動を幾つかご紹介します。今年は、国内での講演活動(アプリ/生成AI関連、キャリア教育、エンジニアキャリア形成、英語学習など)に加え、国際カンファレンスとしては、DevTalk Romania/Flutter Ninjas/Agentcon Helsinki/Flutter Allianceでセッション講演させていただく機会に恵まれました。
先日、技術カンファレンス「DevFest Singapore 2025」で生成AIを活用したアプリ開発ワークショップ(タイトル: "Getting Started with Mobile Development Using Generative AI - An 80-Minute Hands-On Session" )を実施してきました。現地コミュニティと連携し、作り上げたワークショップの技術解説に加え、英語での進行の工夫や、参加者の反応から得た気づきなど、海外技術イベントならではの知見をエバンジェリストの視点から共有します。
ワークショップを通じた気づき
1. なぜ「生成AI×アプリ開発」なのか
シンガポールは世界でも主要なテックハブの1つであり、新しい技術への感度が非常に高い地域です。生成AIに関して、今年渡航した海外の国々でもヒアリングを行うと、単なる「チャットボット」の枠を超え、 「既存のアプリやサービスにどう組み込み、UXを向上させるか/エージェントなど新しい技術を駆使して業務をいかに効率化するか」 など、日本と同じく、実践/応用のフェーズに急速に転換してきている印象を受けました。
一方で、現地でエンジニアと語っているときに議論の1つになるのが、新しいプログラミング言語やフレームワークの技術修得と、 「どの生成AIを、どのように活用すべきか」 についての関係です。
昨今のトレンドは、複雑なタスクを自律的にこなす「エージェント型」に注目が集まっています。しかし、初学者が生成AIをアプリに統合する際の「仕組み」や「挙動」を深く理解するには、処理がブラックボックス化しやすいエージェント型よりも、入力と出力のプロセスが明確な「チャット型」の方が適している側面があります。
個人的には、これら2つの関係性は別のカテゴリーでの例えですが、 「機械学習」と「深層学習」の対比に近い(あくまでイメージ的なものです) と感じています。深層学習は強力ですが中身がブラックボックスになりがちなのに対し、機械学習はロジックが追いやすく基礎理解に適している、という点に通じるものがあるためです。
そこで今回は、エージェント技術などの最新トレンドや理論については「講義パート」でしっかりと解説しつつ、実践パートでは 「あえてチャット型の生成AIをベースとしたアプリ開発」 を選択しました。
実は、このテーマ選定にはもう一つ、カンファレンス全体の構成を意識した背景があります。当日は3セッションが同時進行する方式で、他のスピーカーが「エージェント型」にフォーカスしたワークショップを実施予定という情報を事前に得ていました。
そのため、コンテンツの重複を避けて参加者に多様な選択肢を提供するためにも、本セッションでは基礎と応用を確実に押さえる構成とし、座学だけでなく実際に手を動かしてもらうことで、確実な技術習得を目指すべく、このテーマ選定に至りました。
2. 技術構成とハンズオンの設計
ワークショップを行うときに自分が大切にしているのは、参加いただいた人にとって、講義を通じて得られる「新たな情報を通じた気づき」と、ハンズオンとして実際に手を動かすことで得られる「達成感を通じた実践的なスキル」です。今回は以下のような技術スタックと設計を採用しました。
技術スタック
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フロントエンド: Flutter
- 日常的に触れ合う機会が多いスマホ(Android/iOS)で動作するクロスプラットフォーム対応のフレームワークで、実際の現場でも幅広く使われていることから選択しました。
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生成AI: Gemini
- 今回の内容であれば、条件を満たす生成AIは他にも複数あるのですが、DevFestというGoogle技術に関するイベントの特性上、GoogleのGeminiを選択しました(他の登壇の機会でも、イベント趣旨やスポンサー企業様を意識しつつ選択するようになりました)。後述の開発環境から直接利用できるというのも選択背景にあります。
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開発環境(&バックエンド): DartPad
- Webブラウザ上で「Flutter(Dart)アプリ」を実装し、動作確認まで可能という非常に便利な環境(利用可能なパッケージが限定されているなど幾つか制約はあります)です。環境構築が不要ということもあり、利用させていただきました。現在は、Geminiをこの環境の中から直接触ることもできるようになっています。
ワークショップ題材選定における工夫:「Wowモーメント(驚き)」を生み出す
ワークショップを実施するときにいつも悩むのが演習のレベルをどう調整するかです。テーマが仮に同じでも難易度をものすごく上げることも逆に下げることも可能です。そこで、セッションの紹介で、こんな内容という情報を事前に伝えることで、参加いただく方の思いとのミスマッチをできるだけ防ぎつつ、それでも、さまざまな経験やレベルが異なる方が参加されることを想定して、できるだけ多くの方に、参加してよかった!と感じていただける時間にしたいと考えました。
今回のワークショップでは、以下を組み合わせることで、各自の経験や興味に合わせて、取り組んでもらえるようにしました。
「基本的な演習(全員が一緒に取り組む)+レベル毎の追加演習(参加者が好きなものを選んでもらう)」
基本的な演習のお題目
「アナログ時計」のアプリを一緒に作ってもらいました。世界共通のもので、実際に動きを確認できることから今回はこれを選択しました。
レベル毎の追加演習のお題目
レベル感や興味に合わせて選んでもらえるよう、「アナログ時計の進化版(基本編の続き)」、「計算機アプリ」、「ToDoアプリ」、もしくは、自分の好きなものを課題として準備し、取り組んでいただきました。
実際に、当日は想定通り、参加者がそれぞれ自身の思う題材を選択し、アプリ開発に取り組まれていました。
生成AI活用の現場に近い体験を再現する工夫:「Ahaモーメント(気づき)」を作る
実際の開発の現場では、当然ながら、生成AIを使えば、トラブルが全く発生せずに進められている訳ではなく、無数の失敗を通じて勘所を掴んでいるのが実態 だと思います。このワークショップでも、 あえて意図的にうまくいかないプロンプトを試してもらったり して、「なぜ失敗するのか?」「では、どう乗り越えるのか?」を各自で考えてもらえるよう意識しました。
上記は、生成AIに意図的に曖昧な指示(「時計を緑色にして」)を出してもらったときに、起こりうる結果の例です。このように幾つか意図的なトラップを設けました。
3. 海外向けワークショップの事前準備
このワークショップは、英語での開催でした。自分は英語に関して、得意という訳ではなく、英会話のレッスンのときに、細かな指摘を毎回のようにもらうなど、まだまだ修行中の身です。英語力がまだまだな自分が、どのように今回のワークショップを準備し、進行したかをご紹介します。
まずは「事前準備」についてです。 それなりの人数が参加される可能性のあるワークショップを自分1人でカバーしきれないことは明らか でした。開催に向けて、イベントのオーガナイザーと準備を進める過程で、ありがたいことに、 現地コミュニティ(GDG Singapore)のボランティアが当日サポートできる という申し出をいただきました。ただ、コンテンツ(資料)の準備は、ぎりぎりまでかかりそうという見通しでした。
そこで、 コンテンツの準備の流れを変更 しました。いつもは、基本的に、以下の順番に資料を作成しています。
- 「タイトル」と「目次(アジェンダ)」
- 「スライド本編」を前から順番に
今回は80分のワークショップで、「講義」と「演習」のパートがあります。「演習」は、ボランティアの皆さんに予め目を通しておいていただきたいパートです。そこで、今回は、以下の順番で準備を進めました。
- 「タイトル」と「目次(アジェンダ)」
- 「スライド本編(演習編)」→事務局に途中版として資料共有
- 「スライド本編(講義編)」→事務局に最終版として資料共有
↑の結果、 演習中に発生した軽微なトラブルシューティングや質問への対応は、ボランティアの皆さんが対応 してくださいました。例えば、ワークショップなど分量が多い場合は特に、全ての内容をを口頭で伝えるのは、お互いの負荷の観点で現実的ではないと思います。特に、今回のように、話す言語が異なる場合は、それにかかるコストが上がってしまうため、ドキュメントベースのコミュニケーションで適度に補うのが効果的だと再認識しました。
(コラム)英語で話す練習のコツ:完璧を目指さない勇気
英語には、これまで本当に苦労してきました。何度も失敗して、心が折れたことは数え切れません。かつての私は、ネイティブ並みの発音で流暢に英語を話せる人に憧れ、そんな「神レベル」を目指して必死に勉強していました。少しずつながら上達を実感するも、目標のレベルにはいつまで経っても届く気がしませんでした。しかし、ある時、大切なことに気づきました。
英語力は確かに大事。でも、英語は私にとってはあくまで手段。エバンジェリストとして本当に磨くべきは、経験を積み重ねながら技術力を高めることではないかと。
完璧な英語を目指すあまり、英語に固執して立ち止まってしまうのは、本末転倒でした。
「英語のスピーキングにおいて、最初に目指すとよいと考えていること」 は、こちらです。
- 早く話そうとしなくていい(発音が完璧でない状態で早く話すと、伝わらなさが加速度的に増してしまいます)
- ネイティブのような発音を目指さなくていい(発音の向上に固執し過ぎない)
それよりも大切なのは、自分の頭で考えたことを、知っている単語だけで、ゆっくりでいいので、大きな声で表現できるようになること だと思っています。
もし私がタイムマシーンに乗って過去に戻り、これから英語を学ぶなら、間違いなく、この状態を目指すと思います。
ただ、私自身の経験では、文法、特に語順を意識するだけで、伝わりやすさが大きく変わると実感しています。
その後で、発音の改善、話す速度の調整、ボキャブラリー(語彙力)の増強などは、少しずつ取り組んでいけば良いと考えています。
そして、先日、こんなことがありました。海外に住むある方から、「あなたのトークにすごく影響を受けて、自分も登壇することになりました」と連絡をもらいました。私が国際カンファレンスで登壇したときに、参加してくれていた方からでした。
私は、講演やワークショップにいつも頭を悩ませ、試行錯誤しながら取り組んでいるだけに、国や言語を越えて、誰かの背中をそっと押すきっかけになれたのかと思うと、本当に嬉しくて、胸が熱くなりました。
自分の母国語でない、苦手な外国語で情報発信するのは、とても勇気がいることだと思います(過去の私も実際にそうでした)。ただ、大切なのは、完璧な英語ではなく、伝えたい「中身」と「熱意」 だと確信しています。
だからこそ、まずは小さな一歩から始めてみてもいいと思います。例えば、
- すき間時間に、日常の行動を英語で独り言にしてみる
- 英語の勉強会やオンラインコミュニティに参加してみる
- 一言でもいいのでSNSで英語で発信してみる
- 自分の専門分野について短いブログを書いてみる
色々な方法があります。私も、まだまだ道半ばです。一緒に、自分に合った小さな一歩から始めてみませんか。
4. 海外向けワークショップの状況と現場のリアル
大変光栄なことに、当日は100名以上のエンジニアがワークショップに参加してくれ、会場は満席となりました。手を動かすという特性上、参加者の皆さんについてきてもらえるよう、演習全体を幾つかのステップに分け、そのステップごとに進捗状況と質問の有無を確認しました。
そのタイミングでは手は挙がらなくても、実際に会場を自分で歩きながら回ってみると、参加者から「ここがエラーで動かない、あれが表示されない」と言った質問がありました。海外ならではという話ではないですが、 聞き方の改善のアイディア(こう聞いたほうが答えやすかっただろうな) と 現場を実際に目で見て確認する重要性 を同時に得ることができました。
想定外のトラブルや質問への対応
「こんなこと聞かれるかな」と思ったものは、講義に含めておきました。会場からの質問で、印象に残ったものを2つご紹介します。
- Q.作りたいアプリのイメージ(画面)はあるが、どうコードにしたらよいのか?
- Q.作ったアプリを配布したいが、どうすればよいのか?
いずれもワークショップでは対象外としていた内容ですが、やりたいことは理解できたので、生成AIに画像を与えて雛形ソースを作ってもらう方法や、 別の開発環境でのアプリビルド方法を即興でお伝えしました。
これら体験を通じて、技術を「楽しむ」だけでなく、「実際のビジネスにどう組み込むか」 という視点を非常に強く感じました。
5. エバンジェリスト視点での気づきと今後の展望
今回のDevFest Singapore 2025での登壇を終えて、以下のような好意的なフィードバックをいただくことができました。
- 小さな困りごとからプロトタイプを作ってみる体験が楽しかった。
- 演習がとても分かりやすく、すぐに自分の使い方に応用できた。
- 実践的な内容で、今日からすぐに活用できそう。
現地で知り合った方と、いつものごとく、主にLinkedInなどで連絡先などを交換しました。国や人によって異なりますが、海外の同じ業界の方との交流にはLinkedInが最も使われている感覚があります(他には、X、WhatsAppなど)。中にはアカウントは持っていても、このアプリはほとんで使っていないというケースもあるので、こちらも複数のアカウントを持っておくと交流しやすくなると思います。今後、同様の機会があります方は参考にしていただけたらと思います。
さらに、自身として、改めて以下の3つのことを再認識しました。
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(1) コードは世界共通言語である
- 日本語と英語など話す言葉は違えど、コード(開発環境やアプリの画面など含め)があれば、コミュニケーションを容易にしてくれます。 外国語を話すこと自体が仮に苦手だとしても、伝えたい中身、そしても時にはジェスチャー交えて伝えたい気持ちさえあれば、何とかなる ものです。
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(2) 「手を動かす体験」自体が大切なコンテンツ
- 講演として技術を伝えることにももちろん価値があります。それと同時に、ハンズオンを通じて、「自分の手で動くものを作れた」という成功体験(時間)を作ることにも、別の意味があると学ぶことができました。自分も他のハンズオンに参加させていただいたときに、手を動かしながら学んだこと(うまくいったこともだめだったことも)は、よく覚えています。
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(3) アウトプットが次のインプット/活動機会を呼ぶ
- ワークショップ終了後、現地のエンジニアから「うちの会社ではこう使っている」という事例を逆に教えてもらったり、情報交換することができました。過去には、講演の参加者から別のカンファレンスへの登壇依頼をいただくことや、編集者との出会いが書籍の執筆につながったこともあります。 勉強会やセミナーへの参加(そして、登壇)は、新たな学びの機会であると同時に、個人的にはそれ以上に、新たなつながりのきっかけ になる感覚を持っています。
今後も、 業務を通じて得られる経験を社外にも発信しつつ、カンファレンス登壇などで得られる知見やつながりを社内に還元することで新たな機会を生み出していくなど、INPUTとOUTPUTの無限ループを回していきたい と考えています。
過去の関連記事
これまでの英語の苦労や挑戦は、過去2年の記事でも書いています。興味がございましたら、読んでみてください。
おわりに
NTTテクノクロスでは、技術に関する様々な業務に加え、ソフト道場研修講師、技術ブログ、サステナビリティ活動(学生向けIT/キャリア教育)なども行なっています。よろしければ、リンク先もご参照ください。
また、様々な分野で多くのエンジニアが活躍しています。興味を持ってくださった方は、NTTテクノクロス Advent Calendar 2025から気になる記事も読んでいただけますとうれしいです。
最後に、国内外問わず、カンファレンス、セミナー、コミュニティイベントなどで講演のご依頼等ございましたら、お気軽にご連絡いただけますと幸いです。
明日はいよいよ最終日です。最後の記事(シリーズ1/シリーズ2)もお楽しみに!!





