この記事は NTTテクノクロス Advent Calendar 2023 シリーズ2の24日目です。
こんにちは。NTTテクノクロスで、プリンシパルエバンジェリストとして活動している神原(@korodroid)です。当社では、高度専門人材向けのキャリアパスが準備されており、私はエバンジェリスト領域でキャリアを積んでいます。
本記事のテーマの英語に関連して、直近の活動をご紹介します。今年は、国内での講演活動(モバイル・ウェアラブル技術、キャリア教育、エンジニアキャリア形成、英語学習など)に加え、海外では、自身として初めて米国でカンファレンス講演2件の機会に恵まれました(Droidcon SF 2023ではWear OSのアプリ開発手法について、DevFest KC 2023ではFlutterアプリのグローバル対応手法について)。
2012年に自身初めての海外講演以降、10年以上、定期的に海外講演を継続しているのですが 自身の専門技術分野の中心、かつ、英語ネイティブである、米国での講演はいつか達成したかったマイルストン でした。引き続き、国内、海外ともチャレンジを継続していきます。カンファレンスやコミュニティイベントなどでの講演(国内/海外とも)ご依頼等ございましたら、お気軽にご連絡いただけますと幸いです。
それでは、本題に入ります。私は会社の中で2つのコミュニティを主催しています。1つ目は 有識者ミートアップ という、特定の技術分野毎に技術交流することを目的とした活動です。2つ目は TX English Hours という、英語の中でスピーキングに特化したものです。
今回は、後者に絞って、 英語コミュニティを主催して得た3つの気づき をご紹介します。会社では、 「TX English Hours」という英語をみんなで気軽に話すためのコミュニティ を立ち上げ、オーガナイザーとして運営しています。2023年9月に3年目を迎えた活動です。まずは、本コミュニティをなぜ設立したのか?運営体制、そして、概要をご紹介します。
TX English Hoursについて
設立のきっかけ・運営体制
「TX English Hours」は、 コロナ禍の2020年9月に会社で立ち上げた英語コミュニティ です。当時は海外渡航の機会が極端に減っている一方で、社会全体としてはオンラインを介したグローバル化の潮流がこれまで以上に加速し、英語のニーズはますます高まっていると感じていた時期でもありました。会社の仲間たちからも同様の声を耳にしていました。
個人としてオンライン英会話に取り組んでいたものの、自身および周囲のニーズを拾うべく、会社の活動としても 英語を話す機会創出を何とかできないか? と考えるようになりました。 昔の自分は、会社の文化や社風はそこにあるもの/予め与えられたもの という考え方を持っていました。しかし、今は、会社の文化は一人一人が作り出せるものと考えています。
ということで、発起人&オーガナイザーとして、本コミュニティを立ち上げました(ちなみに、 TXは社名のテクノクロスに由来します)。 1人では運営の稼働面で厳しい状況になると予想されたため、社内の協力を仰ぐことにしました。 まず、当社で人材開発を担当する部門に相談したところ、快く賛同してくれ事務局として一緒に入ってもらえることになりました。さらに、勉強会を実際に企画・実行するにあたり、運営ボランティアを募集することにしました。イベントサイトの準備など、自主的に立候補してくれた皆様に協力いただいています。また、当時の社長をはじめ幹部からも応援メッセージをいただくなど後押しいただけました。ということで、色んな方たちの協力と応援があって成り立つ活動になりました。関わっていただいている全ての皆様に感謝しています。こういった経験を通じて、会社の文化醸成に関しても自分のモットーは、 「ないものは作る💪」 になりました。
活動概要
英語には4技能(Reading/Listening/Writing/Speaking)があります。 ReadingやListeningに関しては独学で個人でも成長し易い一方で、SpeakingやWritingに関しては、みんなで実際に話したり・書いたりする経験が成長を大きく加速させる という実感を自分は持っています。英語学習全般に関しては、以前書いた別の記事で触れています。あわせて読んでいただければと思います。
英語のスキルアップの機会創出の場を設計する際、 漠然と英語全般を勉強する場 にするとフォーカスが広すぎて効果が出づらいということもこれまでの経験上、予想ができました。そこで、冒頭で説明したとおり、 話すことにあえて特化した場 としています。具体的には、 英語のLT(ライトニングトーク)会をオンラインで、2-3ヶ月に1回のペース で実施しています。
実際に運営してみての気づき
英語を話すことに特化した場 というコンセプトで始めた活動ですが、実際にやってみると、多くの気づきがありました。今回は、その中から特に共有したい、3つの気づきをご紹介します。
3つの気づき
その1: 英語を話すことへの抵抗感の克服方法
英語を話そう とした時に、こんなことを感じたことはないでしょうか?少なくとも、過去の自分はそうでした。英語のスピーキングが苦手だった、過去の自分を振り返ると、こんなことを考えていました。
- 理由をうまく説明できないけど、とにかく恥ずかしい
- 間違えるのが不安でたまらない
- 話そうとすると頭が真っ白になる
- 緊張して言葉が出てこない
- ...(他にも色々と)
そこで、英語スピーキングの場の内容を検討するにあたり、英語スピーキング力を向上させたい人にとって 「これら英語への抵抗感を乗り越え、間違えても大丈夫だと思える心理的安全性の高い場とはどんなものだろうか?」 を最優先に考えました。
その結果、 コミュニティを立ち上げ、やり方を工夫した英語LT会 を開催することにしました。
具体的には、LT会(通常1回あたり1-2時間程度のイベント(時間は発表者数に応じて増減)としています)を企画し、発表者は社内から自由公募制(英語でLTしたい人は誰でもWelcome)で募っています。さらに 3つの工夫 を行いました。
- 1.発表時間
- 2.発表内容
- 3.LT会の構成
1つ目の発表時間についてです。時間が長いと、 緊張度や準備の負担が増し、発表者として手を上げづらい という考えからです。そこで1トーク=3分とあえて短く設定しました。ただ、運営を続けていると 3分でも長いのでもっと短い枠があったら挑戦したい という声も耳にするようになりました。そこで、現在は、 LT枠は3分or1分を各自が選択してエントリーできる仕組み に変えました。
2つ目の発表内容についてです。内容は、公序良俗に反しないものなら何でもWelcomeとしています。 ただ、何でもOKとだけ書いてLT募集すると、逆に何を発表してよいのか困る という意見も耳にしました。そこで、 内容の具体例や、過去のLT会のイベントレポートを公開 して、こんなことを発表すればいいのかな?の雰囲気を予めつかんでもらえるようにしました。例えば、自己紹介、行ってみたい国、最近興味を持っていることなどを例示したことで、発表者の皆さんが関連テーマ、もしくは、各自で好きなネタを考えて、お話してくださっています。自分も皆さんからの発表やLT会での対話を通じて、たくさんの刺激をいただきました。
3つ目のLT会の構成についてです。発表に関しては、以下の2部構成としています。
- 「オープンの部」:発表者に加え、発表なしで聞くだけの人も参加できる部
- 「クローズドの部」:発表者だけが参加できる部
このように、 部(参加者)を意図的に2つに分けています。 前者の「オープンの部」は、一般的なLT会でよくある方式だと思います。
ただ、英語を話すこと自体に抵抗感を感じる状況においては、発表者にとって、前者の方が心理的障壁が大きいと感じるケースがありそうです。そこで、 英語を人前で話すのは心理的に恥ずかしいと考えていた過去の自分を振り返って、ここにいる人は全員英語LTの発表者(後者の部) という場も作ることにしました。あえてこうすることで、 より気軽な気持ちで安心して英語を話してほしい という思いが根底にあります。 このルールは発表者だけでなく運営にも適用し、運営も基本的に発表する としています。自分がLT会の司会を毎回やっているのですが、自分もネタを捻り出して基本的に毎回LTをやるようにしています。
実際にLTを募集すると、時期によってばらつきはあるものの、 後者の「クローズドの部」での発表を希望いただく人も一定数いらっしゃいます。そのため、↑で想定したニーズを拾えているようです 。
また、発表者以外にも英語を少しでも話すきっかけにしていただけたらという思いから、「オープンの部」では、それぞれのLT後に、 参加者が「英語(もしくは日本語などで)」で質問する時間 を設けています。この時間で発表者や参加者との間で会話を通じて、 「英語は何か特別なものではなく、コミュニケーションのための手段」 ということを改めて認識するようになりました。
その2: 英語学習のモチベーションの本質
英語コミュニティを運営していると、 皆さんが何のために英語を勉強されているか? が話題になることがあります。例えば、こんな内容があるでしょう。
- 洋画を字幕なしで理解する
- 英語の仕様書を読みながらコーディングする
- 海外旅行時に最低限必要な会話をする
- 海外出張時に現地で企業と交渉する
- 海外カンファレンスで講演する
あれは正解、これは誤りというのはなく、どれもその人にとっての大切な目標です。そして、もう1つ気づいたことがあります。 英語学習の優先度は人それぞれ ということです。周りには、自分と同じエンジニアもいれば、デザイナー、マネージャー、スタッフの皆さんなど、様々な職種の人がいます。ただ、1つだけ言えるのは、 自分の周りにいるのは、(自分を含め)英語は仕事を進めるためのあくまで道具であって、サブ要素として使っている皆さんということ です。英語そのものが仕事の中心にある状況ではなく、他に優先すべき専門分野があって、その上で英語に取り組まれています(自分もそのひとりです)。
そして、英語学習のモチベーションの熱量も人それぞれです。その人それぞれの優先度によるものなので、目指したい到達点に向けて、どんな内容をどれくらいの速度で取り組むのかも人それぞれだと考えています。それゆえ、英語学習に関しても他の人が強制するものではなく、そして、 「やり方や進捗など(良い意味で)他の人と自分を比べない」 ことが大切ではないかと自分は考えるようになりました。
例えば、 英語LT会を企画しても時には発表者が全く集まらず、開催を延期としたことも過去にあります。 最初は残念だと思ったこともあります。が、今は正直、全く気にしていません。 その時は皆さんが、より重要なこと、大切なことの優先順位が高かっただけ だと考えるようになりました。また、それぞれの皆さんが英語を話したいなと思った時に、 いつでも英語を安心して話せる場が残っている という状態を維持したいと考えています。その一方であれこれと頑張りすぎると運営が困難となり、この場を閉じることに成りかねない気もします。それゆえ、今から設立当時までを振り返ると 運営は良い意味で頑張り過ぎず、(この場を持つことに価値がある間は)細くても長くをコンセプトに運営していくのが長く続くコツ だと感じています。
その3: コミュニティ外から学んだ英会話の上達方法
英会話の上達方法 について、英語コミュニティ外から学んだ内容をご紹介します。これまで オンライン英会話の先生、海外カンファレンスで出会ったスピーカー仲間(のうち、特に英語ノンネイティブな皆さん)、海外で出会った色々な人たち(特に英語ノンティブな国で偶然仲良くなった現地の皆さん)、など、これまで人生通算100人以上に、英会話の上達方法を聞いてみました。 全員が口を揃えて言うのが、 「Speak, Speak and Speak」 です。 「間違えていいからとにかく話す話す話す」 それが上達への道だそうです。ただ、 「話して間違えたら恥ずかしいやん!!!」と例の負のループ が頭をよぎります。自分も英語学習継続中の身で、偉そうに語れることはないのですが、自身の過去を振り返ると、 「英語学習は長長長期戦」 だという実感を持っています。本当に長い道だからこそ、 愚直にやり続けるしか方法はなく、自分のモチベーションをいかに途切れさせないかが最も大切 だと考えるようになりました。そのためには、 自分にできる挑戦をたくさんして失敗しては改善してほんの少しだけ成長してという無限ループをいかに回し続けられるかが鍵 ではないかと今は考えています。
自分は講演のときにお話しさせていただくエピソードがあります。昔の自分は本当に英語ができませんでした。TOEIC LRも最初の関門と言われる600点ですら超えるのに非常に苦労したことを覚えています。特にスピーキングに関してはまるでと言っていいくらいできずで、本当に苦労しました。
そんな自分を変えたいけど、 「日本にいたらチャンスないやん!」と言い訳をするのが嫌で自分なりにできるトライ をあれこれ模索してきました。例えば、その機会を得るべく、駅のみどりの窓口の外に立ってみた時期もあります。すると、海外から来たと思われる人から目的地への行き方などを英語で聞かれたり、話すきっかけになりました。
海外出張などで、海外で話す機会にはたまに恵まれたものの、場数が全然足りていなかったこともあり、実践的な経験値を高めるべく、お金を貯めては1人フラフラと海外に何度も放浪したこともあります。自分はプライベートで、 セカイフォン/セカイフォンProという、Android/iOS向けリアルタイム翻訳アプリを作っています。例えば、相手が英語で話したら、日本語で聞こえてくるといった機能を持っています。本プロダクトの現地実証実験もかねて、現地の人と外国語でのコミュニケーションにトライしています。
現地に行くと、良いことだけでなく、時に難しい状況に遭遇することがあります。 乗り物やレストランでの高額請求があったり、、空港や施設で不当なチップを要求されたり、、自転車レンタルしようとしたらパスポート置いていかないと絶対に貸さないと言われたり、Uber(ライドシェアサービス)を呼んでないのに偽Uberドライバーが本物かのごとく勧誘してきたり、、、 今思えば全て笑い話ですが、折れない心で四苦八苦しながら乗り越えてきました。前向きに捉えると、 (身に危険が及ぶことは絶対に避けるべきですが)トラブルは成長の糧 になったと感じています。 日常会話だけでなく、理不尽な要求に対しては、相手が何語で話していようが自分の思いを自分の言葉でしっかりと伝え、コミュニケーションを試みることが大切 だと実感しています。
このように 下手なりに勇気を振り絞って場数を踏んできたことが英語上達につながった ように思います。
そして、英語のLT会に話を戻します。この会では、英語を話すきっかけのボーダーを下げたいと考え、先に紹介した2つの部の前に、雑談の部というものも設けることにしました。 いきなり英語で発表するのは緊張する という声を意見があったためです。この部では、 英語や海外などのトピックに関して、日本語で雑談 し、会のアイスブレイクの場としています。参加者からは英語で話す前に、緊張がほぐれリラックスして英語の部に入ることができたとコメントいただいています。
実際にLT会に参加してくれた人の中には、参加を重ねる度に次の順序でステップアップされた方もいらっしゃいました。
- 1.「オープンの部」の聴講者
- 2.「オープンの部」で聴講者として発表者に質問
- 3.「クローズドの部」の発表者
- 4.「オープンの部」の発表者
いきなり大きな一歩を踏み出そうとしても、難易度が高くなってしまい→結局挑戦できないとなるくらいなら、小さな目標から段階的に取り組むというのも、ありではないかと自分は考えています。
活動の反響
LT会をずっと続けていると、発表者や参加者からも、前向きな反応をいつももらっています。幹部からも応援していただけているため、こうした活動をスムーズに進められています。そのほかにも、応援や協力してくださる方が多く本当にありがたいかぎりです。
また、本コミュニティの派生の活動として、 英語話者向けのコミュニケーション機会として、採用部門やコミュニケーションチームなど当社の他部門と連携して、英語のスピーキングイベントを企画したこともあります。 言葉の壁を超えてコミュニケーションできることでの楽しさや得られる価値 を強く感じました。これからグローバル化は一層加速し、結果として、英語の利用機会はさらに増えていくのではないかと個人的には考えています。
これからもみんなで切磋琢磨しながら、英語力を磨いていけたらと考えています。
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先日まで開催されていた技術書典15では当社の仲間とFlutterの書籍を出しています。ぜひこちらもご覧ください。
ゼロから始めるFlutterアプリ開発入門 2023.11版
おわりに
今回は「会社で英語コミュニティを主催して得た3つの気づき」をご紹介しました。当社では、技術に関する様々な業務に加え、ソフト道場研修講師、技術ブログ、サステナビリティ活動(学生向けIT/キャリア教育)なども行なっています。よろしければ、リンク先もご参照ください。
最後に、様々な分野で多くのエンジニアが活躍しています。興味を持ってくださった方は、NTTテクノクロス Advent Calendar 2023から気になる記事も読んでいただけますとうれしいです。
明日はいよいよ最終日です。最後の記事(シリーズ1/シリーズ2)もお楽しみに!!