私の困りごと: 「IPアドレス」が検索にヒットしない問題
技術ドキュメントを読んでいるとき、私が最も頻繁に行う操作の一つが、ブラウザのページ内検索です。
例えば「セキュリティグループ IPアドレス」でGoogle検索し、ヒットしたページを開いたあと、ページ内検索で「IPアドレス」を探して関連の深い箇所を真っ先に読む、ということをします。
ここで困るのが、半角スペース(物理スペース)入りの IP アドレス で記載されているWebページが多く、スペース無しの IPアドレス で検索してもヒットしないことです。
例として、いくつかのクラウドサービス等のドキュメントを簡単に調べてみました。Chromeブラウザで閲覧し、ページ内検索で何件ヒットするかを確認しています。
| ソース / ドキュメント | URL | 「IPアドレス」 (スペースなし) |
「IP アドレス」 (スペースあり) |
|---|---|---|---|
|
AWS (VPC Security Groups) |
Link | 0 | 4 |
|
Microsoft Azure (Virtual Network) |
Link | 0 | 16 |
|
Google Cloud (Cloud Armor) |
Link | 0 | 63 |
|
MDN Web Docs (Domain Name) |
Link | 1 | 16 |
|
Wikipedia (Domain Name System) |
Link | 21 | 1 |
このように、主要なドキュメントの多くでスペース入りの表記が採用されています。
ブラウザのページ内検索でヒットしないのと同じ悲劇が、コードベースに対する grep でも起こります。
背景: なぜスペースが入るのか
自然とスペース入りで入力している人、多いですよね。この記事は ACCESS Advent Calendar 2025 の12/18の記事なのですが、昨日までの投稿16件を見ると、あけ派: 7記事、つめ派: 9記事でした。拮抗してますね。
確かに、若干詰まって見えるので、スペース文字を入れたくなる気持ちはわかります。
あと、コードフォーマッターのPrettier(v2までは)がデフォルトでスペースを入れる挙動なので、Markdownドキュメントなどが自動フォーマットによりスペース入りになってしまうということもあるようです。
救世主 text-autospace: normal の登場
詳しくは他の記事に譲りますが、CSSの text-autospace: normal を適用すれば、物理スペース文字がなくても、英数字と日本語の間に適切なスペースが自動挿入されるようになります。
| 設定 | 表示イメージ |
|---|---|
no-autospace(現状 / Before) |
![]() |
text-autospace: normal(適用後 / After) |
![]() |
※画像内のテキスト引用元: Wikipedia - Domain Name System
text-autospace は 先月(2025年11月)にFirefoxでも対応 され、Chrome、Edge、Safari、Firefoxと 主要なブラウザでサポート されるようになりました。
これさえあれば、物理スペース文字を使わなくても、見た目は同じように綺麗に表示され、検索やgrepでもヒットするようになります!
でも、デフォルトは normal じゃない
CSS仕様上の初期値は normal なのに、各ブラウザの実装はデフォルトで no-autospace になっているため、今はまだ、明示的に text-autospace: normal を指定する必要があります。
パフォーマンスの懸念から、実装上のデフォルトを normal にすることに慎重になっているようです。
提案: もう物理スペースはやめよう
デフォルトが no-autospace のままではありますが、主要なブラウザでの実装が完了している現状、もう物理スペースは使わない方向にシフトして良いのではないでしょうか。
-
Web制作者の方へ
自分が管理しているコンテンツではtext-autospace: normalを指定していきませんか。そうすれば、物理スペースを入れなくても見た目が崩れません。 -
開発環境の整備
Prettierやtextlintなどのフォーマッターでは、物理スペースを強制するルールは採用しないようにしませんか。そうすれば、各種ドキュメントから物理スペースが徐々に減っていきます。 -
文章を書くすべての方へ
手癖で物理スペースを入れるのをやめてみませんか。もう物理スペースが不要な時代はすぐそこです。 -
Webを見るすべての方へ
自分のブラウザのユーザースタイルシートでtext-autospace: normalを指定しておくのも良いでしょう。そうすれば、物理スペースなしで書かれた記事を読んだ時の「詰まった感じ」の違和感は解消されます。
余談①: 手癖は直せる
私は昔からUserのことを「ユーザ」、Browserのことを「ブラウザ」と、長音記号を省く(JIS規格準拠の)書き方をしてきました。しかし近年では「ユーザー」「ブラウザー」と書くのが一般的になりつつあります。
そこで数年前から矯正を開始したのですが、意外となんとかなるもので、今では自然と「ユーザー」と打てるようになりました。
「英数字の間にスペースを入れる」という手癖も、意識すればきっと直せるはずです。
余談②: 検索技術への期待
「検索にヒットしない」と書きましたが、最近の生成AIを介した検索ではスペースの有無に関わらず意図を汲んでくれるので、ストレスは減ってきています。
とはいえ、ドキュメントを読む際に行う「ページ内検索」は依然として多用してます。
Chromeブラウザでは、すでに「ひらがな」で検索しても「カタカナ」がヒットするような曖昧検索が実装されているようですが、これと同じように、ページ内検索においても「スペースの有無」を無視してヒットさせてくれてもいいのにな、とも感じてます。
余談③:日本語文章における欧文の混在について
これは今回の問題に限った話ではないのですが、日本語の文章を書く時は、極力欧文(アルファベット)を混ぜないでほしいと考えています。固有名詞・略語・専門用語などはよいのですが、一般語にまで使うと文章のメリハリがなくなってしまうからです。
例えば、実装上にそういうクラスが存在する場合に「Userクラス」と書くのは構いませんし、ソ連のことを「USSR」と表記するのも自然です。しかし、一般的な利用者のことを指すのに、わざわざ「userが」とは書かないでほしいのです。
まとめ
検索性を損なう「物理スペース」はもう卒業して、text-autospace: normal で見た目の美しさと検索性の両立を目指しましょう。

