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#0250(2025/10/01)Grounding DINOの実用概要

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Grounding DINOの実用概要

Grounding DINOとは、テキスト条件で画像中の対象を検出・定位するオープンボキャブラリ検出器である。

できること(ざっくり)

  • 文章やフレーズ(例: red car, bolt, dent on door)で指定した対象のゼロショット検出ボックス出力
  • 単語だけでなく句レベルに反応(例: cup with handle、person wearing helmet)。
  • 複数語句を同時に与えて一括検出(カンマ区切りなどで表現)。
  • Referring Expression(指示表現)に対応するため、文脈つきの対象を指せる(leftmost person in blue shirt など)。
  • SAM等のセグメンテーション系と組み合わせ、検出→即マスク化のパイプラインを構築可能。
  • 学習済み重みのままでも新しいクラスに一般化しやすい。

入力と出力

  • 入力: 画像1枚(RGB)、テキストプロンプト(1個〜複数)。テキストは英語が最も安定。日本語は英訳して渡すか、多言語対応モデルを選ぶと扱いやすい。

  • 前処理の前提: 長辺を所定サイズへリサイズ、標準化。テキストはトークナイズされ、最大トークン長の制約を受ける。

  • 出力:

    • 検出ボックス群 N×4(多くはxyxyのピクセル座標、あるいは正規化座標)、
    • それぞれの信頼度スコア
    • 一致したフレーズ(または語句ごとのスコア)。
  • 閾値設定: しきい値は用途で調整。false positiveを抑えたい場合は高め、見逃しを避けたい探索段階は低めに。

  • 後処理: NMS(重複抑制)やtop-k選択を併用。テキストごとにスコア分布が異なるため、語句別に閾値を最適化すると安定する。

基盤技術(中身の見取り図)

  • 画像エンコーダ: Vision Transformer/Swinなどのバックボーンで多段特徴を抽出。

  • テキストエンコーダ: Transformer系でフレーズを分散表現化。

  • マルチモーダル融合: 画像特徴とテキストトークンをクロスアテンションで結合。テキストから導かれた言語ガイド付きクエリを用いて、検出クエリの初期化や選別を行う。

  • 検出ヘッド: Transformerデコーダでオブジェクトクエリを更新し、ボックス回帰テキストとの整合スコアを推定。

  • 学習信号:

    • ボックス学習: L1/GIoU等の損失で回帰。
    • 文言整合: 領域とフレーズのコントラスト学習マッチング損失で整合性を学習。
  • 学習データの性質: 一般物体検出+文言アノテーション(領域とテキストの対応)。ノイズ混入や表現ゆらぎを含む大規模データで堅牢性を獲得。

使いどころ(プロダクト視点)

  • UI検索の拡張: 画像コレクションからテキストで必要な対象だけを抽出。
  • 製造・インフラ: 部品種別の探索(bolt, harness, gasketなど)、作業者の安全装備確認(helmet, gloves)、異常部位の粗い位置特定(dent, oil leak)。
  • ロボティクス前段: テキストで対象を指示→ボックスから把持候補へ。
  • ビジョン×LLM連携: LLMが生成する語彙をGrounding DINOに渡し、段階的に対象を絞り込む。

強みと限界

強み

  • 語彙に縛られないオープンボキャブラリ。新クラスでも初期性能が出やすい。
  • フレーズ対応力が高く、関係性(色、属性、位置)をある程度取り込める。
  • セマンティックセグメンテーション系と直列接続しやすい。

限界・注意

  • 曖昧語や長文の条件は不安定。短く具体的な名詞句が安定(red small hex bolt程度)。
  • 小物体・遠距離はスケール依存で検出漏れが出やすい。高解像度入力やマルチスケールで緩和。
  • 多言語はモデル依存。日本語直入力は誤検出が増えることがあるため、英訳や語彙の正規化を推奨。
  • 語句ごとにスコア分布が異なるため、一律閾値は最適でない。語彙別の閾値やCalibratedスコアリングを。

同系統モデルとの比較

モデル 主目的 学習信号の中核 融合方式 テキスト条件の自由度 強み 注意点
Grounding DINO テキスト条件付き検出/フレーズグラウンディング ボックス損失+領域-文言コントラスト クロスアテンション+言語ガイド付きクエリ 高い(自由な句) ゼロショット精度と指示表現への耐性 計算コストがやや高い
GLIP オープン語彙検出 検出と文言整合の統合学習 画像-テキスト共同表現 高い クラス拡張に強い 長文や微妙な関係表現は揺れやすい
OWL-ViT オープン語彙検出 画像・テキストの二重エンコーディング 類似度ベース(領域×テキスト) 高い 実装が比較的シンプル 領域精度や速さは構成依存
Detic 検出語彙拡張 画像レベルラベルの活用 既存検出器+分類ヘッド拡張 既存パイプラインに統合しやすい 真の句レベル対応は弱め

※ いずれも実装と学習スケールで挙動が変わるため、上表は傾向の比較。

実装上のヒント(手順なしの設計要点)

  • プロンプト設計: 短い名詞句を基本に、属性語は2〜3語に制限。同義語(wrench vs spanner)を併記すると召喚率が上がる。
  • スコア校正: 語句別に閾値tを持つ。開発時に小規模検証セットでtを自動探索(ROC/PR最適化)。
  • テキスト埋め込みのキャッシュ: 同じ語句を繰り返すときは埋め込みを再利用し、レイテンシを削減。
  • 高解像度入力: 小物体対策に有効。ただしVRAM消費が増えるため、スライディングウィンドウやタイル推論を検討。
  • 多言語対策: LLMで英訳→単語正規化→短縮という前処理を挟むと安定。

評価とモニタリング

  • 既存指標: mAPはクラス定義に依存するため、オープン語彙では語句一致+IoUで測るカスタム指標を運用。
  • オンライン監視: 語句別の検出率、誤検出率、未検出率をダッシュボード化。語彙のドリフトを検知したらプロンプトや閾値を再調整。

まとめ

  • Grounding DINOはテキストで指示→検出が強い汎用器。
  • 画像・テキストのクロスアテンションコントラスト学習で句レベルの整合を学ぶ。
  • 入出力はシンプル(画像+語句→ボックス+スコア)。プロンプト設計と閾値設計が品質のカギ。
  • セグメンテーションやLLMと組むと、検索・検査・操作に広く展開できる。
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