Linux は 1 ドルで POSIX の認証を得られる機会を Andrew Josey (POSIX の議長)から与えられており、Linux を POSIX に準拠すべく Josey は Linux が POSIX 規定と動作が異なる箇所のリストを作成していたりしましたが、Linux (正確には LSB) 側の興味を得られずに 2005 年にそのプロジェクトは終了したとのことです。(ソース [1] [2])
Linux の人々が OpenGroup に完全に準拠するつもりはないと答えた後に書かれた Josey の POSIX と Linux の C 言語インターフェースやシェルとユーティリティ等の非互換レポートはこちらです。(2005 年当時の話なので今はなにか変わってるかもしれませんが)
Conflicts between ISO/IEC 9945 (POSIX) and the Linux Standard Base
てっきり認証に費用がかかるからかと思ってたんですが費用の問題はなかったんですね。別件で色々調べていたらたまたま見つけて面白かったのでついでに記事にしてみました。有名な話なんでしょうか?Linux は POSIX に準拠してないと言われますが、この話は検索しても日本語で書いてるページが見つからなかったです。
なお POSIX の認証 「POSIX™ Certification Register」です。これは UNIX 認証である「UNIX® Certified Products」とは別物です。POSIX の認証があっても UNIX は名乗れません。UNIX 03 または UNIX V7 の認証であれば POSIX と内容が含まれるはずなので POSIX 準拠(POSIX 認証とは言っていない)になるとは思います。(参考 Greg's Wiki: POSIX)
ちなみに GNU の POSIX(正確には GNU 以外の標準規格)に対する考えは「こちら」にかかれており「他の組織による標準は命令ではなく提案とみなす。考慮はするが従うことはない。」と明確に述べられています。GNU はユーザーの利便性の方を重視しており、POSIX で決まっていたとしても厳密に従うことはないとのことです。もちろん厳密に従うことはないってだけで、基本的には Linux はだいたい POSIX に準拠してるはずです。念の為。
★ あわせて読みたい
What is POSIX? Richard Stallman explains
「POSIX とは何? リチャード・ストールマンの説明」
リチャード・ストールマンへのインタビューです。POSIX の仕様のナンセンスな部分とか、GNU から POSIX に採用された仕様の話とか、いろいろおもしろい話が書いてあります (誰か翻訳してくれないかなぁ)。「Richard Stallman: The Coder 」にも同じような話が書かれていますが、現時点では証明書の有効期限切れで警告がでるので一応アクセスは自己責任ということで。
リチャード・ストールマンは説明するまでもないとは思いますが GNU プロジェクトの創始者です。1980 年代には最終的に POSIX と呼ばれることになる標準規格を作成していた IEEE 委員会に参加(Think GNU 第 11 回には「オブザーバーとしてコメントしていた」と書いてあるので重要な立場ではなさそう)していたそうで、POSIX という名前の命名者でもあります。
IEEE は標準規格の名前を IEEEIX にしようとしていたらしいのですが、POSIX と名前をつけた理由には、IEEEIX の発音は恐怖の叫び声のようだ → 誰もそんな名前で呼ばないだろう → みんな Unix と呼ぶんじゃないか? → GNU のライバル、Unix という名前で呼ばれるのは嫌だ(※ GNU は GNU is Not UNIX の略)と書いてあって笑いました。POSIX を Unix と呼ばせたくなかったんですね。POSIX 標準化委員会は Unix を作った AT&T とは別組織なので不思議なことではありませんが、Unix の標準規格と言えるようなものでありながら Unix と呼ばれないための名前がつけられていたというのも面白い話です。
あと細かいことに気づいたんですが、POSIX は「Portable Operating System Interface」の略として知られていますが、リチャード・ストールマンによると(誰かが書いた)「Portable Operating System」に IEEEIX
と同じ接尾辞の IX
をつけたとありますね。X
の意味は何?とよく言われますが、元々は(UNIX とか Xenix とかの)IX
だったのか。