はじめに
株式会社パレットリンクの@kkkkk-takeuchiです。
この記事では、私が新卒社員チームのリーダーとして、社内業務システムの開発に取り組んだ際に学んだことを記します。
私は設計を一人で進め、メンバーには並行して試作品を作ってもらいました。設計後に試作品が設計資料と違っていたり、その後も資料と異なる成果物をもらったりした際は、「設計と違うので直してほしい」と伝えました。しかし、その場では、違いが生まれた理由を聞いたり、資料を見直したりするところまで進められませんでした。その結果、手戻りを重ねるたびに、チーム内の信頼や雰囲気にも影響が出ているように感じました。
試作品を作る前に、何を確かめるか決める
当時の私は、試作品なら後から変更しても問題ないと考えていました。試作品ってそういうものだと。しかし、たとえ試しであっても、試作品は作品です。メンバーが時間をかけて考え、形にしたものです。
そのことを忘れていた私が、当然のようにメンバーに修正を依頼した結果、些細な反発をたくさんもらいました。試作品への愛着があったのか、作り直す負担が大きかったのか、採用されると思っていたのか今ではもうわかりません。
しかし、設計思想や意図からもずれていた試作品に対して、何を言われようと刷新することには変わらないと考えていた私は、相手の考えを十分に聞けていませんでした。
今後なんらかの試作を頼むときは、何を確かめるために作るのか、どこまでが仮の案なのかを最初に共有したいです。設計が決まったら、試作品から生かす部分と変更する部分を確認する。試作で分かったことも、次の判断に使えるようにします。
また余談ですが、自分で作ったものを高く評価しやすい傾向は「IKEA効果」として研究されています1。これだけでメンバーの気持ちを説明できるとは思いませんが、様々な可能性を考えるきっかけになりました。
設計との差分を見つけたら、理由を聞いて判断する
設計資料と異なる成果物に修正を求めたこと自体は、間違いだったとは思いません。設計はチームで作るものの基準になります。ただ、資料との違いを指摘し、対応を指示するだけでは、なぜその違いが生まれたかまでは分かりません。
資料を見落としたのか、表現を違う意味に受け取ったのか。なんらかの先入観が判断に影響したのか、実装の中で設計の問題に気づいたのか。当時の原因は確かめきれていません。今後は資料の該当箇所と成果物を一緒に見ながら、相手がどう考えたかを聞きたいです。そのうえで、実装を直すか、設計を見直すかを判断します。
資料を確認し、疑問があれば相談してほしいという思いは当時も今もありますが、当時の私は「設計資料をちゃんと読めば分かるはずだ」という傲慢な考えを持っていました。そんな傲慢を通すためには、文句のつけようがないほど完璧な設計資料を用意する必要があります。まあそんなことは逆立ちしたって無理なので、私の考え方が間違っていたわけです。少なくとも、書いた資料にも曖昧なところがなかったか、決定事項として伝わっていたかを確かめる必要はありました。相手の試作品への愛着を考えるなら、私も自分の設計への愛着の影響を加味し、設計を当然の答えとして絶対的に扱っていなかったか、同じように振り返るべきだったと思います。
相手の受け止め方も、改善の判断材料にする
当時の私は、設計との整合性や作業効率などの論理を重視し、相手が変更をどう受け止めているかなどの気持ちを十分に確かめていませんでした。人と仕事をする以上、相手の感情や納得の程度も、次の行動を決めるための情報になります。その情報がなければ、手戻りの背景や対応の効果を捉えきれず、PDCAサイクルを回すうえでも判断材料が不足すると学びました。
自己決定理論に基づく振り返り
私は大学で、運動やレクリエーションにおける人の意欲を支える関わり方を学んだので、せっかくなので結び付けて振り返ってみます。
自己決定理論の自律性・有能感・関係性という三つの基本的な心理欲求2は、今回の対応を振り返る手がかりになります。
| 要素と意味 | 今回の経験とのつながり | 次に試したい対応 |
|---|---|---|
| 自律性:自分の意思で納得して取り組める感覚 | 相手の意図や変更の理由を聞かずに、修正指示のみを渡してしまった。 | 修正の目的と必要な条件を説明し、進め方や代案を一緒に相談する |
| 有能感:自分の力が役立ち、課題に取り組める感覚 | 試作に費やした時間と工夫が、どう次に生かせるかを考え、伝える必要があった | 役立った工夫や知見を具体的に伝えた上で、修正範囲を一緒に相談する |
| 関係性:相手から尊重され、つながっている感覚 | 手戻りが重なる中で、信頼やチームの雰囲気にも影響が出ているように感じた | 作った意図や修正の負担を聞き、相手の意見を受けて自分の設計も見直す |
この表は、当時のメンバーの心理を断定したものではなく、次に確かめたいことを整理したものです。振り返ってわかったのは、話し合いや相談などの、公平な双方向コミュニケーションが人と仕事をする上で効果的であることです。
弊社が人とのつながりやコミュニケーションを大切にしている理由がよくわかりました。
おわりに
今回の経験から、設計資料を作るだけでなく、自分のその判断が相手にどう理解され、相手の成果物にどう反映されたか、なぜそうなったのかを確かめることが大切だと学びました。それに加えそもそも、人と仕事をする上でつながりやコミュニケーションをおろそかにすべきではないという大きな学びも得られました。次の開発では、試作の目的を共有し、違いが出たら理由を聞き、互いに相談し、決めたことを資料に残す。これらの工程をおろそかにしないようにしたいです。
実際の業務フローに必須ではなく、場合によっては逆に効率が落ちてしまうかもしれないその手間が、手戻りを減らし、チーム全員が心地よく作業するための土台になると思います。
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Norton, M. I., Mochon, D., & Ariely, D. (2012). The IKEA effect: When labor leads to love. Journal of Consumer Psychology, 22(3), 453–460. ↩
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Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being. American Psychologist, 55(1), 68–78. ↩
