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AI時代に求められるデータプラットフォーム "ClickHouse"

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Last updated at Posted at 2026-05-28

はじめに

AIを使ったサービスのレスポンスが遅い場合、原因はAIモデル側ではなく データベース側 にあることも多々あります。

AIエージェントが本格稼働し始めたいま、データベースに求められる要件は根本から変わりつつあります。本記事では、AIがデータ基盤に何をもたらしているのか、従来のDBがなぜその要件を満たせないのかを整理し、それを突破するClickHouseのアーキテクチャとソリューションを紹介します。

AIがデータベースの何を変えるのか

変化は大きく3つの領域で起きています。

1. アプリのエージェント化 → クエリが"爆発"する

従来のアプリケーションは、人間が設計したロジックで決まったクエリを逐次的に発行していました。1日あたり数十件、アクセスパターンも予測可能でした。

AIエージェントが主役になると、エージェントは1つのタスクをこなすために必要なデータを自律的に横断収集します。1ワークフローあたり数十〜数百のクエリが動的に並列生成されるのが当たり前になります。

2. 分析インターフェースの会話化 → 1質問 = 数十クエリ

「先月の売上上位10商品を教えて」という自然言語の問い合わせをAIが受け取ると、内部では複数のデータセットを探索しながらSQLを並列生成・実行します。ユーザーからは1リクエストに見えても、DBには数十のクエリが届きます。

Text-to-SQLの普及により、1ユーザーのインタラクションが生成するクエリ数は従来の数十倍規模になります。

3. オブザーバビリティのAI駆動化 → 完全なログが必要

従来のSREがダッシュボードを見ながら人間が原因を調査していたのに対し、AI SRE はAIが能動的にログを掘り、異常検知・情報収集・要約を自動で行います。

この際、コスト削減のためにサンプリングされたログやダウンサンプリングされたメトリクスはAIにとってほとんど機能しません。「3日前のデプロイと今日のエラーを相関させる」処理には、完全な粒度のデータが長期保持されている必要があります。

従来のDBが追いつけない理由

3つのシフトに共通するデータプラットフォームへの要求は以下に集約されます。

  • 高い同時実行性(多数のクエリが並列で来る)
  • リアルタイムのクエリ性能(ミリ秒で返す)
  • 大規模データをフルフィデリティで保持(サンプリングしない)

既存のDBカテゴリは、それぞれ異なる理由でこれらの要件を満たせません。

カテゴリ 代表例 強み AI時代の限界
リレーショナルDB MySQL / PostgreSQL など トランザクション・汎用開発 データ量が増えるとクエリ性能が急落
データウェアハウス BigQuery / Snowflake / Databricks など 大規模バッチ分析・定期レポート 準リアルタイムが前提、高同時アクセスは不得意
NoSQL MongoDB / DynamoDB など 高速なKey-Valueアクセス 複雑な集計クエリが不得意、用途が限定的

スピード・スケール・コストの3つを同時に満たすDBがこれまで存在しなかった——それがAI時代に露呈した、データ基盤の空白地帯です。

ClickHouseとは何か

ClickHouseは、カラム型(列指向)のOLAP(オンライン分析処理)データベース です。もともとWebサイトのクリックストリームをリアルタイムで収集・分析するために設計されたOSSプロダクトで、2021年にClickHouse, Inc.として法人化。現在はAWS / Google Cloud / Azureでマネージドサービス(ClickHouse Cloud)を提供しており、東京リージョンでも利用できます。

わずか4年で 4,000社以上 に採用されており、急激に市場で伸びているデータベースの一つです。

なぜClickHouseは速いのか

速さの源泉は「データを読まないこと」という設計哲学にあります。

カラム型ストレージ — 必要な列だけ読む

一般的なRDBは行単位でデータを保存するため、「売上金額だけ集計したい」クエリでも関係ない列(名前・住所・備考など)まで読み込みます。ClickHouseは 列単位 で保存するため、クエリに必要な列だけを読み込みます。I/Oが劇的に削減されるとともに、カラム単位でデータを保持するため圧縮率も数十倍になります。

MergeTreeエンジン — 書き込みながら集計を最適化

Partsと呼ばれる小さいファイル単位で並列書き込みを行い、バックグラウンドで 事前ソート + 集計 を実施します。クエリ時のスキャン量が大幅に減るのはこの仕組みによるものです。不要なデータブロックをスキップするインデックスとの組み合わせで、読み取り量を最小化します。

マルチコア並列 + SIMD — CPUを限界まで活用する

クエリをCPUコア全体に分散し、SIMDベクトル化(1クロックで複数データを処理)とJITコンパイルを組み合わせます。共有オブジェクトストレージ(S3互換)上のデータに複数ノードが並列アクセスする構成により、ノード追加がリニアにスループットを向上させます。

ClickHouse Architecture

ClickHouseが目指す「Agentic Data Stack

ClickHouseは単体のデータベースとしての進化にとどまらず、AI時代に求められるデータ基盤全体を構成するプラットフォームへと拡張しています。冒頭で挙げた「アプリのエージェント化」「分析インターフェースの会話化」「オブザーバビリティのAI駆動化」という3つのシフトに対して、それぞれ対応するコンポーネントを自社で整備しているのが特徴です。
Agentic Data Stack

データの取り込み — ClickPipes

Kafka・Kinesis・S3・PostgreSQL・MySQLなど主要なデータソースからClickHouseへのリアルタイム取り込みをマネージドで提供します。ストリーミング・オブジェクトストレージ・CDC(変更データキャプチャ)の3方式に対応しており、UIから設定するだけで継続的なパイプラインが構築できます。

トランザクションと分析の統合 — Managed Postgres by ClickHouse

アプリケーションのトランザクションデータはPostgreSQL、分析はClickHouseという構成を、1つのマネージドサービスとして提供します。PostgreSQLとClickHouseはCDCでリアルタイム同期されており、アプリケーション側からは単一エンドポイントでOLTPとOLAPを透過的に利用できます。「Postgres + ClickHouse」という現代的なデータスタックをフルマネージドで実現する位置づけです。

自然言語でのデータ分析 — ClickHouse Agent

OSSのAIチャットUIであるLibreChatを買収し、ClickHouseとMCPで接続したエージェント型の分析インターフェースです。SQLを書かずに自然言語でClickHouse上のデータを問い合わせられるため、エンジニア以外のビジネスサイドも直接データを参照できます。グラフィカルな可視化やカスタムエージェントの作成にも対応しています。

AI対応のオブザーバビリティ — ClickStack

OpenTelemetryをベースとしたオブザーバビリティスタックで、OSSのモニタリングツールHyperDXを買収してマネージドサービスとして提供しています。ログ・メトリクス・トレースを一元管理しつつ、AIと連携した自動ログ解析機能を実装。セッションリプレイ機能も備えており、AI SREの実現を支援します。

LLMオブザーバビリティ — Langfuse

2026年2月に買収したLLMオブザーバビリティプラットフォームです。エージェントの実行トレース・LLMコストの可視化・プロンプト管理・LLM-as-a-Judgeによるレスポンス品質のスコアリングを提供します。AIエージェントを本番運用する際の品質管理と継続的な改善を担うレイヤーです。ClickHouse Cloud上で稼働しており、大規模なリアルタイムLLMオブザーバビリティを実現しています。

まとめ

AIエージェントの普及は、データベースへのアクセスパターンを根本から変えます。

観点 従来(人間主体) AI時代(エージェント主体)
クエリ数 数十件/日 数千〜数万件/日
アクセスパターン 計画的・逐次 動的・並列
要求レスポンス 数秒 ミリ秒
データ粒度 サンプリング可 フルフィデリティ必須

既存のRDBやDWHをそのままAIエージェントのバックエンドに使い続けることは、構造的なボトルネックを抱えたまま運用することを意味します。AI活用の要件が固まってきた段階でのデータ基盤の見直しが、サービス品質と開発スピードの両面に直結します。


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