はじめに
SIGNATEで開催された「第4回金融データ活用チャレンジ」に参加しました。結果はAIスクリーニング17位/385名。上位10名が最終選考に進める仕組みだったので、残念ながら1次審査で終わってしまいました。
なかなか面白い挑戦ができたので、やったことと気づきを共有してみます。
コンペの概要
仮想の建設・工事関連企業10社に対して、財務データと有価証券報告書をもとに経営課題を抽出し、成長戦略の提案書を作るというものです。提出物は提案書10ファイル(各社.docx)+プロンプトログ+検証プロセスレポート。
評価基準は「過去分析と未来提案の論理的接続」「地域特性」「業界特性(販路・商流)」「GX/DX対応」「2024年問題・人材不足対応」の5軸で、1次選考はAIによる定量スコアリングです。
あえて「チャットだけ」で挑んだ理由
普段はPythonでゴリゴリとコードを書くタイプで、データ分析もスクレイピングもスクリプトで自動化するのが自分のいつものやり方です。ただ、今回はあえてコードを書かず、LLMとのチャットだけで全工程を完結させることにしました。
なぜかというと、このコンペは「生成AIの民主化」という趣旨もあるからです。Pythonが書ける人だけが成果を出せるのでは、民主化にならないと思いました。
「チャットだけでどこまでの順位が出せるのか」に挑戦してみました。
結果的に、外部データの収集・整理、提案書の生成・フォーマット制御、レビュー、品質チェックまで、すべてチャットベースで完結できました。
処理フロー全体像
提案書の作成は、大きく5つのステップで進めました。
① 財務分析
まずfinancial_data.csvの定量データと有価証券報告書の定性データから、企業の現状を分析します。3期分の財務諸表から収益性・安全性・効率性の推移を読み取って、課題を特定。ここはLLMに財務データをそのまま渡して分析させています。
② 外部データの収集
ここが差別化ポイントだと考えていました。提供データだけだと「画一的な提案」になりがちなので、有価証券報告書の内容を読み取ったうえで、その企業の提案に必要そうな外部データを自分で集めにいきました。
集めたデータは4カテゴリに分け、企業ごとにCSVファイルとして整理しました。
- 地域データ: 本社所在地の人口動態(現在人口・将来推計人口・年齢別構成)、有効求人倍率・求人求職者数、公共工事設計労務単価(都道府県別×職種別)、公共施設等更新費用(長寿命化後の年平均・過去の維持修繕費実績との差額)、県管理橋梁の老朽化率推移、新設住宅着工戸数、自治体の普通建設事業費
- 財務ベンチマーク: 建設業・従業員51人以上の粗利率、営業利益率、DSO、CCC等建設業・同規模の資本金階級でのDSO、DPO、CCC、
- 業界データ: 建設投資見通し(政府/民間/土木内訳)、主要建設資材価格(H形鋼、異形棒鋼、セメント、生コンクリート等の推移)、建設業就業者の年齢構成、ICT活用率、低炭素型コンクリートのCO2削減効果、社会資本の老朽化率(道路橋・トンネル)
- 制度・政策データ: 時間外労働上限規制の詳細(災害復旧の特例含む)、単品スライド条項のしきい値、新築省エネ基準適合義務化、i-Construction 2.0の省人化・生産性目標、BIM/CIMガイドライン、担い手3法(品確法等)
このほか、提案の具体性を高めるために実在企業のDX/GX事例もLLMのWeb検索で調査しました。「他社ではこうやっている」と示すための裏付けです。
外部データはすべてオープンデータに限定(コンペルール)。出典・ライセンス情報もレポートに記載しました。
③ 提案書作成(モデル比較)
収集した情報をもとにLLMで提案書を生成させます。ここでモデル比較もやってみました。
Claude、GPTを比較した結果、Claudeが綺麗な提案書を出してくれました。 見やすい文章の書き方、専門用語の使い方でClaudeが一歩抜けている印象です。
GPT
Claude
④ レビュー
生成した提案書を、その会社の役員・部長を想定したペルソナでレビューさせるというステップを入れました。
有価証券報告書には役員構成や組織体制の情報が載っています。これを使って「この会社の経営企画部長だったらどう反応するか」「財務担当取締役ならどこを突っ込むか」をLLMにシミュレーションさせました。
(配布された有価証券報告書の役員一覧の例)

チェックの観点は戦略の妥当性だけでなく、「その投資の資金調達方法は?」「ヒト・モノ・カネのリソースは現実的に確保できるの?」といった実行可能性にも踏み込みました。
個人的に、このステップが今回いちばん価値があったと思っています。
たとえばある企業の提案書で「不動産事業は不採算なので撤退すべき」と書いたところ、不動産事業部長ペルソナのレビューで猛反対されました。
提案書の内容は正しさも重要ですが「受け取った人がどう思うか、どう反論してくるか」というシミュレーションも重要な要素だと思いました
プロンプト例(クリックで展開)
この提案書の改善をするために提案書を受け取った企業の人間の評価を予測したいと思います。
作業手順
①有価証券報告書を読み取り、この企業の部署は何があるかを推測してください(人事部・総務部・営業部など)
②社長に加えて各部門の部長でこの提案に対して議論をしてください。良い意見も悪い意見も出してください。
③各部門の人間は自部門の責任範囲を最大限意識しますが、批判ばかりではなく建設的な意見も出せる優秀な人間です。地元の出身者ばかりで地元のことを愛しています。
④議論で出た内容を取りまとめ提案書の改善案を提示してください。
出力はチャットでしてください。
(回答)
有価証券報告書とJSON情報から部署構成を推測し、経営陣による議論をシミュレーションします。
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## ① 推定される部署構成
有価証券報告書の記載から以下の部署を推定します。
**経営層**
- 代表取締役社長:坂本 龍之介(全社統括)
- 専務取締役:高橋 健一(建設事業本部長)
- 常務取締役:中岡 慎太郎(管理本部長)
- 取締役:山本 浩二(不動産事業本部長)
**建設事業本部**(105名)
- 土木部(公共工事中心)
- 建築部(公共施設・民間建築)
- 技術開発部(Mirai-Remote、Eco-Kochi Concrete等の研究開発)
- 工事管理部(原価管理・品質管理・安全管理)
**不動産事業本部**(50名)
- 開発部(分譲マンション・戸建の企画開発)
- 販売部(売買・仲介)
- 賃貸管理部(保有物件の管理運営)
**管理本部**(全社共通26名)
- 総務人事部(採用・労務・D&I推進)
- 経理財務部(経理・資金調達・IR)
- DX推進室(2023年9月設置、全社デジタル戦略)
**その他事業**(10名)
- 資材販売部門
- ITシステム開発部門
- 太陽光発電事業
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## ② 経営会議シミュレーション
**場所:本社6階会議室 参加者:社長+各本部長・部長級7名**
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### 坂本社長(議長)
「先日、金融機関から提案書をいただいた。当社の中計『Next Stage 2027』と方向性は近いが、現場を知っとる我々から見てどうか、忌憚のない意見を聞きたい。高橋専務から順に頼む。」
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### 高橋専務(建設事業本部長)
**評価する点:**
「全体の構成はしっかりしちょる。うちの粗利率が22.9%から19.0%に落ちた分析も、資材高騰と労務費上昇という原因分析も正しい。歩掛管理の高度化という提案も、まさにうちが手を打たんといかん部分や。ICT施工の展開を全土木工事の80%にするという目標も、方向としては正しい。」
**懸念点:**
「ただし、**現場を分かっとらん部分がある**。まず、歩掛予実乖離率10%以内という目標は、公共工事の設計変更が頻繁に起こる高知の現場では相当厳しい。うちの土木は中山間地や河川の工事が多くて、地質条件の変動で歩掛が大きく振れる。机上の標準歩掛だけでは対応できん工種がある。」
「それから、**案件ゲート制度**は危ない。高知県の公共工事市場は狭い。採算基準未満だからと撤退したら、発注者との信頼関係が壊れる。県の土木部や市の担当者とは長年の付き合いで、不採算でも引き受けることで次の大型案件に繋がるという商習慣がある。この辺りの**地域の商慣行**を踏まえた提案にしてほしい。」
「あと、**BIM/CIMで35%人日削減**という先行事例を引用しちょるが、あれは大手ゼネコンの大規模現場の話やろう。うちのような中堅の、橋梁補修や河川護岸みたいな中小規模の現場でそのまま当てはまるかは疑問。現実的な削減率を示してほしい。」
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### 土木部長(建設事業本部)
**評価する点:**
「南海トラフ対策と橋梁老朽化(50年超37%→75%)を成長機会として捉えるのは賛成。うちは高知県内の橋梁の施工実績が多い。この強みをもっと前面に出してほしい。」
**懸念点:**
「**協力会社(下請)への言及がほぼゼロ**なのが一番の問題。うちの土木工事は、型枠、鉄筋、左官、交通誘導、全部地元の協力会社に出しちょる。歩掛管理を高度化するなら、協力会社との連携が不可欠やけど、その具体策がない。高知の型わく工は29,000円/日、鉄筋工28,500円/日で、単価を出してくれちょるのはええけど、**そもそも人がおらん**という問題の方が深刻。単価だけの話やない。」
「外国人材の記載も薄い。特定技能の受入れ体制の話はあるけど、**高知で外国人材を受け入れる現実的な難しさ**――住居の確保、日本語教育の場がない、そもそも大都市に流れてしまう――への対処がない。」
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### 山本取締役(不動産事業本部長)
**評価する点:**
「販売用不動産が1,500百万円から2,600百万円に膨張しちょるという指摘は正しい。在庫回転の改善が急務というのもその通り。うちの営業CFを圧迫しちょる最大の原因はここやき。」
**強い異論:**
「ただ、この提案書は**不動産事業を問題児扱いしすぎ**ちょる。在庫が増えたのは、ミライ・レジデンスはりまやの開発用地取得とか、高知市中心部の優良案件を仕込んだ結果。分譲マンション販売は前期比+11.8%で好調に推移しちょるし、賃貸の稼働率も高い。**不動産事業こそが今後の収益の柱**になる可能性があるのに、その成長シナリオが全く描かれてない。」
「高知市の空き家率20.3%を提案書で触れちょるけど、**そこからの事業機会**が全く展開されてない。空き家のリノベーション事業、古民家再生、移住者向け住宅――これは不動産事業の大きなチャンスやのに。人口が減っても世帯数の変動や移住促進策との連動で、やれることはある。」
「DIO 20日短縮という目標もあるけど、**不動産の在庫は建設の仕掛品とは性質が違う**。マンション開発は用地取得から竣工まで2〜3年かかる。短期的にDIOを圧縮しろと言われても、良い案件を逃すだけ。保有期間基準の策定は賛成やけど、**案件の質を見た上での判断基準**にしてほしい。」
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### 中岡常務(管理本部長)
**評価する点:**
「自己資本比率29.0%が同業平均の46〜48%を大幅に下回るという指摘は、銀行にも同じことを言われちょる。改善の必要性は認める。ERP刷新の提案も、うちの基幹システムが老朽化しちょるのは事実で、80百万円の投資は既に計画通り。方向性は正しい。」
**懸念点:**
「ただ、**自己資本比率35%を3年で達成**というのは、計算が合うか確認したい。現在の純資産2,457百万円、総資産8,485百万円で29.0%。3年後に35%にするには、借入を増やさずに利益を蓄積するか、資産を圧縮するかやけど、防災DXセンター550百万円とミライ・レジデンス320百万円の投資を借入で賄う計画がある。**投資と財務改善の両立が本当にできるのか**、もっと具体的な財務シミュレーションがほしい。」
「営業CF黒字化の+200百万円という目標も、**根拠の数字を追うと辻褄が合わん**部分がある。DSO 3日短縮で99百万円、DIO 20日短縮で658百万円の運転資金改善とあるけど、これは営業CFの改善額そのものではなく、バランスシート上の運転資金の話。**営業CFとB/Sの改善を混同**しちょるように見える。」
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### 総務人事部長(管理本部)
**評価する点:**
「従業員数221名→191名の▲30名減少を課題として取り上げてくれたのはありがたい。うちの採用は本当に苦しい。新卒採用年間10名以上という目標は、ちょうどうちが目指しちょるところ。」
**懸念点:**
「ただ、**▲30名の内訳分析がない**。定年退職なのか、自己都合退職なのか、それとも事業縮小に伴う不補充なのかで対策が全然違う。うちの場合、実は定年退職が多く、世代交代の時期に当たっちょる。ここを誤解されると困る。」
「女性管理職比率4.8%→8.0%、男性育休取得率75%→100%という目標は中計にも載せちょるけど、**建設業の現場で女性管理職を増やす具体策**が全く書かれてない。高知県内の工業高校は女子学生がまだ少ないし、現場監督の仕事は泊まり込みもある。数字だけ書いても実現性が見えん。」
「**平均年間給与725万円**を『処遇面での競争力は一定程度確保されている』と書いちょるけど、高知県の建設業としてはかなり高い水準。**むしろこれは強みとしてもっとアピールすべき**。地方の建設会社でこの水準を出せるのは差別化要因になる。」
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### DX推進室長
**評価する点:**
「Mirai-RemoteやAI画像解析、BIM/CIMへの言及は正確。うちが取り組んでいることをよく理解してくれちょる。ERP刷新による一元管理の提案も、まさに今やろうとしちょること。」
**懸念点:**
「**ICT施工適用率80%という目標設定の根拠がない**。現状の適用率が何%かも書いてない。仮に今20%だとしたら、3年で80%は非現実的。まず現状値を把握した上で、段階的な目標を設定すべき。」
「それから、**DXの投資対効果(ROI)の記載が弱い**。ERP刷新80百万円に対して『手戻り防止効果年間20百万円』では、回収に4年かかる。実際にはもっと大きな効果が見込めるはずやけど、それを**定量的に示せてない**。たとえば、月次決算の5日短縮が経営判断の速度にどう効くか、原価管理のリアルタイム化で赤字工事の早期発見がいくらの損失回避になるか、そういう試算がほしい。」
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### 技術開発部長(建設事業本部)
**評価する点:**
「Eco-Kochi Concreteに触れてくれたのは嬉しい。まだ試験段階やけど、地元の産業廃棄物を活用するという高知ならではの技術。これをもっと前面に出してほしい。」
**懸念点:**
「**Eco-Kochi Concreteの実用化までのロードマップが甘い**。『二次製品から現場打ちへ段階的に拡大』とあるけど、現場打ちコンクリートに使うには強度試験、耐久性試験、JIS適合確認など、最低でも2〜3年の検証期間がいる。低炭素資材採用工事年間5件以上というKPIは、今の開発段階からすると過大。」
「**防災DXセンター(550百万円)への言及が薄すぎる**。これはうちの技術開発の中核拠点になる施設で、ドローンによる急傾斜地崩壊予測モニタリングシステムの開発や、AI解析の本格化はここを拠点にやる。この投資が**将来の受注競争力にどう繋がるか**のストーリーをもっと書いてほしい。高知は全国でも有数の中山間地域で、土砂災害リスクが極めて高い。この分野で先行することの意味は大きい。」
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### 坂本社長(まとめ)
「皆の意見を聞いて、方向性は合っちょるが**地に足がついてない部分**があるのが分かった。いくつか整理する。」
「第一に、**高知という地域をもっと深く理解した提案にしてほしい**。中山間地が多い、協力会社が限られる、外国人材が来にくい、市場が狭い。こういう制約条件の中でどうするかが知りたい。東京の大手コンサルが書くような一般論では響かん。」
「第二に、**不動産事業を問題としてだけでなく、成長の柱として描いてほしい**。山本が言うように、空き家問題は裏を返せばうちにとってのビジネスチャンスや。高知市のコンパクトシティ構想との連動もある。」
「第三に、**数字の辻褄**をちゃんと合わせてほしい。中岡が指摘した営業CFの計算、財務シミュレーションの不整合は信頼性に関わる。金融機関からの提案で数字が合わんのは困る。」
「第四に、**防災DXセンターの位置づけ**をもっと戦略的に描いてほしい。550百万円の投資は、うちにとって社運を賭けた判断。ここから何が生まれるかのビジョンが弱い。」
「最後に、ええことも言うちょく。この提案書が**うちの財務の本質的な問題を正確に捉えちょる**のは間違いない。利益は出ちょるのに現金が回ってない、借入が膨らんでいる、自己資本比率が業界平均を大きく下回る――これは我々も直視せないかん現実や。その上で、**具体的にどう変わるかの道筋**をもっとクリアに示してもらえたら、我々も動きやすい。」
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## ③ 議論から導出される提案書の改善案
| # | 指摘事項 | 改善案 |
|---|---------|--------|
| 1 | **案件ゲート制度が地域商慣行に合わない** | 「撤退」ではなく「採算改善交渉の仕組み化」に修正。不採算案件の受注判断基準を設けつつ、発注者との関係維持を前提とした段階的な運用を記載 |
| 2 | **協力会社(サプライチェーン)への言及がない** | 協力会社との連携強化策を独立項目として追加。歩掛データ共有、合同安全教育、協力会社の人材確保支援(住居提供等)を具体化 |
| 3 | **不動産事業が問題児扱いのみ** | 不動産事業の成長シナリオを追加。空き家リノベ事業、移住者向け住宅、高知市コンパクトシティ構想との連動を記載。在庫管理と成長投資のバランスを示す |
| 4 | **営業CFとB/S改善額の混同** | 効果試算を修正。運転資金改善額と営業CFへの影響を分けて記載し、3年間の簡易キャッシュフロー予測表を追加 |
| 5 | **自己資本比率35%達成の財務シミュレーション不足** | 3年間のP/L・B/S・CF簡易予測を作成し、投資計画(950百万円)を織り込んだ上での35%達成パスを明示 |
| 6 | **BIM/CIM 35%削減の先行事例が大手前提** | 中堅建設会社の事例に差し替えるか、「大手事例では35%だが中規模現場では15〜20%程度と保守的に見積もる」と注記 |
| 7 | **ICT施工適用率の現状値がない** | 現状適用率を推定記載した上で、段階的目標(1年目40%→2年目60%→3年目80%)に修正 |
| 8 | **防災DXセンターの戦略的位置づけが弱い** | 防災DXセンターを「地域防災×DXの拠点」として独立項目化。ドローン監視、AI崩壊予測等の将来事業収益への貢献シナリオを追加 |
| 9 | **従業員減少▲30名の内訳分析がない** | 定年退職・自己都合退職の推定内訳を追加し、世代交代期の人材戦略として位置づけ直す |
| 10 | **平均給与725万円を強みとして活用していない** | 高知県建設業の平均給与との比較を追加し、採用競争力の強みとして位置づける |
| 11 | **外国人材受入れの地方特有の困難さへの対処がない** | 高知での受入れ実態(住居、教育機関、大都市への流出リスク)に触れた上で、協力会社との共同受入れスキーム等の現実的な対策を記載 |
| 12 | **Eco-Kochi Concreteの実用化ロードマップが過大** | KPIを「試験導入3件/年」程度に下方修正し、JIS適合・長期耐久性検証の期間を明示 |
| 13 | **ERP投資のROI記載が弱い** | ERP80百万円の投資対効果を多面的に試算(赤字工事早期発見による損失回避、月次決算短縮による意思決定速度向上等) |
| 14 | **時間外労働上限の数値不整合** | 5.1節の720時間とKPIの960時間を統一(建設業特別条項は年960時間が上限) |
| 15 | **誤字・表記揺れ** | 「国土強靡化」→「国土強靱化」、「分謂」→「分譲」、「営楪」→「営業」等を修正 |
これらの改善を反映した提案書の修正版を作成しましょうか?優先度の高い項目から着手できます。
LLMは「正論っぽいこと」を書きますが、それを内部視点のシミュレーションで補正できた好例だったと思います。提案書を受け取る側のリアルな感覚が見えることで、机上の空論・反感を受けやすい提案をだいぶ減らせました。
⑤ チェックリストによる品質評価
10社分の提案書の品質を揃えるために、評価基準に対応したチェックリストを作成して、各提案書を自己採点しました。大会側から配布された「自己評価用プロンプト」も併用しています。
チェック項目は「過去分析と未来提案が因果関係で接続されているか」「地域特性が具体的な数値で裏付けられているか」「GX/DXの提案が業界トレンドを踏まえているか」など。
後ほどに記載しますがAIスクリーニング対策もここでチェックしています。
読んでもらうための工夫
提案書の中身をどれだけ練っても、そもそも読まれなければ意味がないです。AIスクリーニングがあるとはいえ、最終審査では人間の審査員が読みます。
また15,000字の文字だらけの提案書を実際の企業に持って行ったところで1ページも読みたくないだろうなと思い少しでも工夫できないかと考えました。
採点には無関係かつこれで少々工夫したところで大した効果はないと思いながらも進めてしまいました。
色使いによる視認性向上
提案書全体に控えめな色分けを入れました。たとえば課題の深刻度を色で表現したり、KPIの達成度をカラーコードで示したり。ただし過度な装飾はAIスクリーニングの邪魔になりそうなので、テキスト情報を損なわない範囲に留めています。
表紙のサブタイトルで「社長の興味・悩み」を突く
表紙のサブタイトルに、その企業の社長がいちばん気にしているであろう課題をダイレクトに書きました。たとえば「粗利率急落からの再建 ── 営業CF黒字化と自己資本比率回復への道筋」のようなイメージです。
プロンプト例(クリックで展開)
この提案書でこの企業の社長に提案をしに行こうと思います。
表紙をつけてサブタイトルをつけようと思います。
提案書のサブタイトルのアイデアを出してください。
社長が悩んでる内容を予想し、その社長がそのサブタイトルを見て読んでみたくなるようなサブタイトルをつけたいです。
10個はアイデアを出してください。
(回答)
山本社長の立場で考えると、この会社は**売上+53%の急成長を遂げたが、利益率急落・営業CF3期連続マイナス・自己資本比率14.6%**という「成長の歪み」に直面しています。攻めたいが守りも固めなければならない、という板挟みが最大の悩みでしょう。
以下10案です。
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**【成長と財務の両立】系**
1. **「売上53%成長の次へ ― 稼ぐ力と財務体質を同時に立て直す3年戦略」**
→ 急成長の実績を認めつつ、次の課題に踏み込む
2. **「攻めの投資200百万円、守りの利益蓄積200百万円 ― 成長と健全性を両立させる道筋」**
→ 投資と財務改善の具体的な数字で本気度を示す
3. **「+53%の成長を、+53%の強さに変える」**
→ シンプルで印象的、成長が強さに転換していない現状を暗示
**【収益構造の危機感】系**
4. **「粗利率▲5.8pt、営業CF3期連続マイナス ― いま手を打てば間に合う」**
→ 数字で危機感を突きつつ「間に合う」で希望を示す
5. **「売上は伸びた、しかし現金が残らない ― その構造を変える収益力改革」**
→ 社長が肌で感じているであろう資金繰りの苦しさに直接訴える
**【人と技術】系**
6. **「204名の力を最大化する ― DX・歩掛管理・働き方改革で一人当たり売上高を取り戻す」**
→ 急増した従業員の生産性問題に正面から向き合う
7. **「技術と人の融合、その先へ ― AZUMA Future Plan 2027を加速させる実行戦略」**
→ 社長自身が掲げた中計スローガンを引用し、その具体化を提案
**【地域・市場の転換期】系**
8. **「茨城の橋梁91%が老朽化する時代に、貴社だからこそできること」**
→ 維持更新市場の巨大さと、地域企業としての使命感に訴える
9. **「人口▲21.7%の茨城で勝ち残る ― 新設から維持更新へ、収益モデルの転換」**
→ 市場構造の変化を直視し、先手を打つ必要性を示す
**【統合・総合】系**
10. **「"稼いで返す"好循環をつくる ― 収益力改革・GX・DXの3本柱で描く成長シナリオ」**
→ 提案書の核心メッセージを凝縮、借入依存からの脱却を前向きに表現
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個人的には **案7** が最も刺さると思います。社長自身の言葉(中計スローガン)を活かしているため「自分の考えを理解してくれている」と感じてもらえますし、「加速させる実行戦略」で具体的な行動提案であることが伝わります。次点は **案5**(資金繰りの本音に触れる)か **案3**(短くインパクトがある)です。
サブタイトルの候補はLLMに複数案出させて、最終的には自分で選んでいます。
表紙に効果の画像を貼り付け
成長戦略の3本柱とその定量効果を視覚化した画像を表紙に配置しました。パッと見て「この提案書で何が得られるか」がわかるようにしたかったです。
画像はHTMLで作ってChrome headlessでPNGに変換する方法を使いました。この方法だとフォントの指定ができて内容が安定します。通常のAI画像生成だと日本語テキストの描画が安定しなくて、数値が間違っていたりフォントが崩れたりするので、制御可能なHTMLレンダリングのほうが確実でした。
AIスクリーニング対策
1次選考がAIによる定量評価なので、そこを意識した対策もいくつか入れています。
Lost in the Middle問題への対応
LLMには 「プロンプトの先頭と末尾の情報はよく拾うが、中間部分の情報を見落としやすい」 という傾向があります。
これは「Lost in the Middle」と呼ばれる現象です。入力テキストが長くなるほど、中間に配置された情報の検索精度が大きく下がるというものです。
15,000字の提案書をLLMが評価するなら、もしかしたらこの問題は起きるかもしれないと考えました。
そこで提案書の冒頭にエグゼクティブサマリー(全体の要約と主要な効果試算の数値)、末尾に総括(評価基準に対応した成果の再掲)を配置して、重要な情報が先頭と末尾の両方に出るようにしています。
キーワード・キーフレーズの必須化
評価基準で問われている概念(「GX」「DX」「歩掛管理」「2024年問題」「地域特性」「販路・商流」など)を、提案書内に必ず含めるようチェックリスト化しました。AIスクリーニングがキーワードマッチング的な処理を含んでいる可能性を考慮してのことです。
ただし、キーワードをただ散りばめるのではなく、文脈の中で自然に使われていることを重視しました。
振り返りと反省
中間評価時も17位くらいだったので順位的にはほとんど変わりなく終わってしまいました。
中間評価でTOP10にも入っておらず、このままではどれだけ良いものを作っても見てすらもらえないと焦りAIスクリーニング対策(予想)を打ちましたが結局届かず残念です。
本質的に良い提案書を作るという取り組みももっとできたと思います。
AIスクリーニング対策は良い提案書を作成するという本質からズレた取り組みになるためあまり良くない取り組みだと自己評価してます。正直葛藤もありましたので1次審査落ちでちょっとホッとしてる部分もあります笑
でもチャットだけでここまで来れるというのは1つの事例になったのではないでしょうか!?
まとめ
今回のコンペでいちばんの学びは、LLMの出力を「受け取る側の目線」で検証する仕組みの大切さです。内部レビューのシミュレーションは、個人的にすごくおもしろかったです。このまま実務で活かせるかは微妙ですが社内データに提案先の経営者の声や記録があればより実態に近いレビューができるのではないかと思いました。
それと、LLMの選定と使い分けも大事だなと改めて感じています。提案書の生成・フォーマット制御ではClaudeが安定していて、「AIと人間の協働」というコンペの趣旨にもいちばん合っていたように思います。
1次審査止まりではありましたが、得たアイデアや気づきも多く次回があればまた挑戦したいです。
最後に運営・関係者の皆様、共に競っていただいた参加者の方、時間を作ってくれた家族に感謝したいと思います。
ありがとうございました。







