はじめに
Node-RED Con 2025 Globalのまとめ記事です。
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1. Welcome & Opening Keynote - Node-RED: Where are we and where are we going? by Nick O'Leary
要約
Node-RED Conference 2025の開会宣言と、共同創設者であるNick O'Leary氏による基調講演です。イベントの冒頭では、世界中から集まった多様な参加者に向けて、Q&Aやロビー機能といったオンライン会議の進行手順が説明されました。続く講演では、Node-REDが誕生から13年を経て、毎週数万件のインストールを記録する巨大なエコシステムへと成長した現状が示されています。ユーザー調査から得られたUIの刷新やデバッグ機能の改善、ダークモードの導入といった具体的な課題を共有しました。今後の展望として、開発体験の向上を目指すNode-RED 5.0へのロードマップが提示され、コミュニティ主導による継続的な進化の重要性が強調されています。
2. From Workpiece to Cloud - An End-to-End IIoT Use Case with Node-RED by Felix Reck
要約
Felix Reck氏がNode-REDとFlowFuseを活用し、単一の計測プロジェクトを全社規模のIoTプラットフォームへと進化させた事例を解説しています。当初は外部委託による特定の用途に限定されたシステムでしたが、自社開発に切り替えたことで、100台以上の機械を接続する柔軟な環境を構築しました。システムはエッジ、IT、クラウドの3層構造で設計されており、現場のデバイスがERPシステムと連携しながらリアルタイムでデータを収集します。収集された情報はMQTTを介して統合され、クラウド上のダッシュボードで稼働状況や品質の統計分析を可視化しています。Node-REDによる段階的な開発が、製造現場のデジタル変革と運用の効率化を支える強力な基盤となったことが示されています。
3. From Game to Industrial Automation: Building Factorio Agents with Node-RED by Zepu Li
要約
シンガポール国立大学のZepu Li氏が、工場建設ゲーム『Factorio』を産業オートメーションのシミュレーターとして活用するプロジェクトについて解説したものです。彼はオープンソースのツールであるNode-REDを使用し、ゲーム内のリアルタイムデータをGeminiやDeepSeekといった大規模言語モデルと連携させることで、AIエージェントによる自動意思決定ループを構築しました。このシステムは、ゲームの状態を分析して最適なアクションを生成し、MQTT経由でゲームにフィードバックを送ることで、自律的な工場運営を可能にします。この試みの究極の目的は、ゲームで培ったエンジニアリング手法を現実世界の製造現場や産業用AIの発展に転用することにあります。Li氏はさらに、産業向けAIのベンチマークツールやNode-RED用の開発支援拡張機能についても紹介しています。
4. Extending Node-RED to Finance by Christian Lagerkvist
要約
元銀行員のChristian Lagerkvist氏が開発した、Node-REDを金融分野に応用するプラットフォーム「fluidly」を紹介しています。このシステムは、複雑な金融業務を視覚的なノードとして表現し、プログラミングの知識がないビジネス担当者でもドラッグ&ドロップで高度な自動化フローを構築できるように設計されています。具体的には、複数の銀行口座の統合管理や、請求書データに基づく資金繰り予測、さらには余剰資金の自動スイープといった実用的な機能を備えています。従来の技術的なダッシュボードとは異なり、分析から実行までを一元化し、ノーコードで金融業務を効率化する「金融オペレーティングシステム」としての役割を担っています。また、ヨーロッパの銀行規制(PSD2)を活用した外部連携や、中小企業から大企業まで対応可能な拡張性についても言及されています。
5. Victron Energy and Node-RED by Dirk-Jan Faber
要約
オランダのVictron Energy社が自社の電力制御ハードウェア「GXデバイス」に、オープンソースの自動化ツールであるNode-REDを統合した事例を解説しています。同社は、独自のVenus OS上でNode-REDを動作させることで、ユーザーが複雑なプログラミングなしに電力システムの監視や制御をカスタマイズできる環境を提供しています。さらに、仮想デバイス機能を活用することで、公式にサポートされていない外部機器もシステムの管理下に統合し、クラウド上で一括管理することが可能になります。また、開発コミュニティへの貢献やトレーニングプログラムの展開を通じて、エンジニアや設置業者の技術支援にも注力していることが示されています。このように、ハードウェアとソフトウェアの融合により、オフグリッドや船舶、住宅市場におけるエネルギー管理の柔軟性を大幅に高めています。
6. Grow your own Smart Home (try to keep the WAF factor) by Øivind Heggland
要約
Node-REDを活用した自作のスマートホーム構築に関する講演内容をまとめたものです。発表者のオイヴィン・ヘグランド氏は、スマートロックの導入をきっかけに、照明やゴミ出し通知、さらには犬のための来客通知など、生活を効率化する自動化の事例を紹介しています。彼は、複数のデバイスを統合する際の論理的な制御において、Node-REDが柔軟で強力なツールであることを強調しました。また、家族が快適に過ごすための「妻の許容係数(WAF)」の重要性や、システムの不具合による失敗談についても触れています。最終的に、初心者は小規模なプロジェクトから開始し、Zigbeeなどの信頼性の高いプロトコルを組み合わせることで、理想的な環境を育てることを推奨しています。
7. Orchestrating the physical world with Node-RED, MCP, and AI by ZJ van de Weg
要約
製造現場におけるNode-RED、LLM(大規模言語モデル)、そしてMCP(モデルコンテキストプロトコル)の統合による革新について解説しています。FlowFuse社のCEOであるZJ van de Weg氏は、従来のIT技術と物理的な製造装置の間の溝を埋める手段として、これらの技術の組み合わせを提案しています。MCPはデータやツールをAIに繋ぐアダプターとして機能し、専門知識が乏しい領域でも自然言語で機械の状態を把握したり操作したりすることを可能にします。ただし、AIの不確実性を考慮し、物理的なリスクを伴う現場では人間を介在させる(Human-in-the-loop)運用の重要性が強調されています。最終的に、このアプローチは複雑なコードを書くことなく、現場のエンジニアが業務の効率化を直感的に実現できる未来を目指しています。
8. Scaling Node Red in Semiconductor Manufacturing Facilities by the Intel team
要約
インテル社のエンジニアチームは、半導体製造工場における複雑なITとOTの統合を効率化するため、オープンソースツールのNode-REDを活用した自動化戦略を推進しています。従来はベンダーごとにデータが断片化され、開発リソースの確保も困難でしたが、Node-REDをユニバーサルなデータ翻訳機として導入することで、情報の標準化とリアルタイムな収集を低コストで実現しました。このシステムは、振動監視や漏水検知といった予測保全から、SCADAへの設定値反映といったビジネスプロセスの自動化まで、幅広い用途に適用されています。現在はエッジコンピューティングへの移行により、データ処理を現場に近づけ、さらなる低遅延化とロボティクス連携の強化を目指しています。また、エンタープライズ規模での展開に伴い、サイバーセキュリティやバージョン管理の厳格化といった課題にも積極的に取り組んでいます。
9. CNC Machine UI w/ 'LookNC' Machine Vision Automated Toolpaths by Josh Dudley
要約
Josh Dudley氏によるNode-Redを活用した精密ツールのコーディング自動化システムに関するプレゼンテーションです。このプロジェクトは、OpenCVによるマシンビジョンを利用して、微細なツールの形状をリアルタイムで認識し、最適な動作経路(Gコード)を自動生成する技術を紹介しています。ハードウェアには、標準的なCNC制御とRaspberry Pi、そして操作性を高めるための専用コントローラーが組み合わされています。当初は手動作業の補助として開発されましたが、後にロボットアームとの連携により完全自動化を実現しました。現在は、さらなる進化としてAIを用いた欠陥検出や形状認識の統合が計画されています。Node-Redのダッシュボード機能により、複雑な視覚情報と機械制御を直感的なUIにまとめている点が特徴です。
10. Node-RED is the Solution: The Integration Glue Powering the City of Morro Bay’s Utilities Department
要約
カリフォルニア州モロベイ市のユーティリティ部門において、Node-REDがどのように複雑なインフラ管理を支える「統合の接着剤」として機能しているかを解説しています。技術スペシャリストのグラント・チェス氏が、下水処理施設や水道システムにおけるAPI連携やデータサイロの解消、さらにMQTTを活用したリアルタイム監視の実例を紹介しています。具体的には、掘削通知の自動化やモバイル端末による点検報告のPDF化、さらにはSMSを用いたリモートでのアラーム通知やデータ照会システムが構築されています。また、Opto22などの産業用ハードウェアとNode-REDを組み合わせることで、従来は数日を要したコンプライアンス報告書の作成を数分に短縮するなど、運用の劇的な効率化を実現しています。全体として、限られた人員で都市インフラを高度に自動化し、維持管理するためのローコード開発の強力な活用事例が示されています。
11. Panel Discussion: The Future of Node-RED in Industrial Automation
要約
Node-REDの産業オートメーションにおける将来性を議論したパネルディスカッションです。開発者や技術責任者たちが集まり、国際的な小売チェーンやテーマパークでの活用、さらには製造現場での効率化といった具体的な導入事例を共有しています。議論の中では、AI(大規模言語モデル)を活用した開発支援の可能性や、システムのスケールアップにおける課題についても触れられています。パネリストたちは、Node-REDの最大の利点である軽量さと柔軟性を維持しつつ、いかに企業の標準ツールとして普及させるかを考察しています。最終的に、このソースはコミュニティの成長と、オープンソースが製造現場にもたらす高い投資対効果を強調する内容となっています。