TechSeeker2026「身体拡張デバイス」開発記:チーム開発で学んだ、ほんとのこと
- 導入「失敗できる場へ」
TechSeekerってご存知ですか?簡単に言うと、エンジニアに類する人たちが最新テクノロジーを学んで、実際にデバイスを作って、デモして、未来を探求するハッカソン型のコミュニティイベントです。去年も参加していて、チーム開発の経験が積める貴重な場だと思ってるんですよね。
2026年のテーマは「身体を拡張するデバイス」。私たちのチーム(チームハイテク、5名)は「SenseReact」という、かざして感じ、かざして動かすデバイスを作ることになりました。
で、ここからが本編。
期間は1ヶ月半。6月13日から7月26日まで。
そしてそこで私に与えられた役割が、3DCADで装着部分をモデリングすること。グローブ型の、腕に装着する部分ですね。
ここで問題が一つ。私は独学でCADを使ってきた。
誰も教えてくれていない。参考書も見た。けど、自分ひとりでやる分には問題ない。でも、チーム開発では?人のアイディアを形にするって、こんなに難しいのか。 その現実に直面することになります。 - 問題発生「アイアンマン vs 腕時計」
プロジェクトが始まって、リーダー(以下、Aさんとしときます)から要望をもらいました。
「アイアンマンの腕のような感じで」
はい。
......アイアンマンの腕。
私の頭に浮かぶイメージは、腕全体をガッツリ覆う大型のアーマー。CGで見たことあります。あれですよ。でかい。ゴツい。スーツの一部。
でも正直、私は思ってました。
「いや、腕時計くらいのサイズで良くない?手首付近に収まるサイズなら...」
要望とイメージが、すでに大きくズレていた。気づかないまま、私はモデリングを始めます。
数日後。チームメンバーに見せました。
「え、これ違う」
やられました。一撃KO。 - 試行錯誤「1ヶ月半の修正ループ」
ここからが地獄です。
Aさんからの修正指示は毎回、「もっとこういう構想で作りたいんだけど」という説明とともに、紙に図を描いてくれます。建設的です。丁寧です。でもね。
私の心は焦ってました。
なぜなら——
「Aさんがやったら、5分で終わりそう...」
そういう雰囲気を感じ取ってた。リーダーが描く図は明確で、要望は的確で、実装イメージが完全に頭の中にある。一方、私は独学CAD。修正指示をもらう度に「あ、こういう考え方があるんだ」と学んでるレベル。
チームメンバーを見てください。
回路設計をやってるやつ
プログラミングでAIを繋いでるやつ
はんだ付けで実装を進めてるやつ
みんなバリバリやってます。一方、私は何度も修正指示をもらってる。
「自分にはモデリングしかできそうなこと、ないんじゃないか...」
不安でした。焦ってました。
そんな中、ある日のこと。 - 決定的なズレ「楕円の輪っかのエピソード」
手首を固定するための、楕円の輪っかをモデリングしました。
小さな部品。すぐ完成する部品。
完成したから、よし、3Dプリンターにデータを送信しよう。その間に他の部分もモデリングしちゃおう。効率的だ。二兎を追え。
そこでAさんに止められました。
「いや、ちょっと待ってください。複数パターン作って、一気に印刷したほうがいいですよ。装着感の検証も必要だし。効率考えると」
ああ。
良かれと思ってやろうとしても、うまくいかないのが人生ですね。
その時、正直、落ち込みました。
でもね。その瞬間、はっきりと気づいたんです。Aさんと私は同じ「効率」という言葉を使ってるのに、見てる景色が全然違うことに。
私:「このパターンを早く印刷して、次に進もう」
Aさん:「複数パターン用意して、装着感を検証してから本番印刷」
同じ「効率」なのに、視点が違う。チーム開発ってこういうことか。 - 学び「独学の武器が通用しない痛さと、チーム開発の本質」
1ヶ月半という時間の中で、私が学んだことは何か。
それは、独学とチーム開発では「アプローチの順序」が根本的に逆であるということです。
今まで私がひとりでやってきた独学スタイルは、とりあえず手を動かす**「操作 → 結果 → 理解」のサイクルでした。まずは作ってみて、出力された結果を見てから「なるほど、こういうことか」と理解する。やってみてから考える、このスタイルで私はスキルを身につけてきました。
しかし、チーム開発ではこの「やってみて理解する」が通用しませんでした。
他のメンバーの頭の中にある構想を形にするためには、まず相手の意図を完全にすり合わせる「理解 → 操作 → 結果」**のサイクルを踏む必要があったんです。
自分の頼みとしていた独学の武器が、チーム開発においては「手戻りを増やすだけのズレ」を生んでしまう。これに気づいた時は、正直かなり痛い教訓でした。
でも、だからこそ学べたことがあります。
チーム開発では、技術以上に「人と人の認識をすり合わせること」が大事なんだということ。
言うは易し。行うは難し。
「アイアンマンのような」という一言でさえ、人によってイメージが違う。修正指示も、相手の考えも、すぐには理解できない。何度も何度も、ズレを直していく。その反復の連続。
TechSeekerは、失敗できる場でした。不完全でいい。焦ってもいい。修正指示をもらっても、それが「学びの瞬間」だと思えば、恥ずかしさも少しは薄れる(たぶん)。
去年も参加して、今年も参加して思うこと。
チーム開発の本質は、技術を磨くことじゃなくて、人と一緒に何かを作り上げることの中にあるんだ。
今、7月24日。発表は7月26日。残り2日です。
明日も学校に集まって、最終調整をします。1ヶ月半の修正ループ、焦り、不安、気づき。それをぜんぶ活かす時が来ました。
あと2日。頑張ります。