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ルベーグ積分入門 2 位相とボレル代数

Last updated at Posted at 2019-10-10

ルベーグ積分入門 1 面積を定義するための土台、可測空間のつづき
ルベーグ積分入門 1の最後ででつぎの"任意に与えられた集合族から大きすぎないσ代数を作る"という概念を定義した。大きすぎないものをとるというのは、極端なσ代数は$2^X$は明らかに与えられた集合族を含むσ代数だからであると私は理解している。

つづき 生成されたσ代数

定義 集合族で生成されたσ代数
$\varepsilon$をXの集合族に対して
$\sigma[\varepsilon]:= \bigcap B$(すべての$\varepsilon$を含むσ代数について交わりを取る)
$\varepsilon$で生成されたσ代数という。

これについて次の命題が成り立つことを確認したい。

命題
1. $\varepsilon$は$\sigma$代数ならば、$\sigma[\varepsilon]=\varepsilon$
2. $\sigma[\sigma[\varepsilon]]=\sigma[\varepsilon]$
3. $\varepsilon_1 \subset \varepsilon_2 \Rightarrow \sigma[\varepsilon_1]\subset \sigma[\varepsilon_2]$

1は、生成されたσ代数は$\varepsilon$を含む最小のσ代数を作ることなのだから、それ自身になるのはある意味当たり前であろう。
2は1からそうなることがわかるだろう。3は、はじめに$\varepsilon_2$で生成されるσ代数をとると$\varepsilon_1\subset\varepsilon_2 \subset \sigma[\varepsilon_2]$という関係が成り立っているだろう。そこで、$\varepsilon_1$から$\sigma$代数を生成させると、それは$\sigma[\varepsilon_2]$に等しいかそれに含まれるだろう。

位相について

次にすすむのに、位相について少し知らなければならない。
数学の概念に位相構造というものがある。これは、’点と点が近いとは何か’という幾何学的遠近感を集合論的に捉えたものということができると思う。位相構造というのは、σ代数と同じように、ある集合にある条件をみたす集合族を定義することで与えられる。この集合族である位相構造からσ代数を生成することを考えたいのである。
さて、唐突だが、位相の定義を述べる。

定義 位相
集合Xの部分集合族$\mathcal{O}$が位相であるとは、次の3つの条件(位相の公理)が成り立つときをいう。このような$\mathcal{O}$が与えられたとき、(X,$\mathcal{O}$)を位相空間とよぶ。
1. $\emptyset \in \mathcal{O}$,$X\in \mathcal{O}$
2. $U_1,U_2 \in \mathcal{O}$ならば、$U_1 \cap U_2 \in \mathcal{O}$
3. 任意の$\mathcal{O}$の部分集合$\{U_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$に対して、その和はまた$\mathcal{O}$に属する。

注 $\mathcal{O}$に属する集合を開集合とよぶ。$\mathcal{O}$を開集合族と呼んだりする。位相空間の元を点と呼ぶ。位相を定めるとは、同じ開集合に属する点どうしは近いと定めるというイメージである。

極端な例 密着位相
集合Xに対して、$\mathcal{O}:= \{\emptyset,X\}$は位相を定める。これを密着位相という。
極端な例 離散位相
集合Xに対して、べき集合$\mathcal{O}:= 2^X$は位相である。これを離散位相という。

例 2次元ユークリッド空間$\mathbb{E}^2$は位相空間である。
2次元ユークリッド空間$\mathbb{E}^2$とは、2つの実数の組みに$\mathbb{R}^2$に距離を定めた空間である。すなわち、2点の距離を$d(x,y):=\sqrt{(x_1-y_1)^2+(x_2-y_2)^2}$と定義する。この距離はつぎの性質を満たす。

  1. d(x,y)は0以上であり、0のとき、xとyは等しい。
  2. 対称である。$d(x,y)=d(y,x)$
  3. 三角不等式を満たす。任意の3点x、y、zに対して、$d(x,z)\leq d(x,y)+d(y,z)$

距離空間には”自然に”位相構造が定まる。
すなわち、$U$が$\mathbb{E}^2$の''開集合''であるとは、任意の点$x\in U$に対して、ある半径$\delta$の開円盤$B_\delta(x):=\{y\in \mathbb{E}^2 | d(y,x)< \delta\}$が存在して$B_\delta(x)\subset U$となることであると定義する。このような$\mathbb{E}^2$の''開集合''を全体$\mathcal{O}_{\mathbb{E}^2}$は位相である。これを確かめて位相の勉強をひとまず終える。

$\mathcal{O}_{\mathbb{E}^2}$が位相であることの証明
条件1は簡単に確かめられる。空集合が開集合かどうかは、もともと入っているの考えてくれてもいい。$\mathbb{E}^2$が開集合かどうかは、その任意の点xを取ったとき、例えば半径1の円盤は$B_1(x)\subset \mathbb{E}^2 $なので開集合である定義を満たす。
次に条件2が成り立つかを確かめよう。すなわち、2つの開集合$U_1$と$U_2$のまじわり$U_1\cap U_2$から任意に点xをとる。(まじわり$U_1\cap U_2=\emptyset$の場合は大丈夫)$U_1$と$U_2$が開集合であることから、それぞれ$B_{\delta_1}(x)$、$B_{\delta_2}(x)$が存在する。$B_{\delta_1}(x)$、$B_{\delta_2}(x)$で半径の小さい方が$B_{\delta_1}(x)$としたら、$B_{\delta_1}(x)\subset B_{\delta_2}(x)$なので、$B_{\delta_1}(x)\subset B_{\delta_2}(x) \subset U_2$となり、$B_{\delta_1}\subset U_1 \cap U_2$なので開集合であることがわかる。
条件3を確かめよう。$\bigcup U_\lambda$から点xをとる。和集合の定義から、何かxが属する$U_\lambda$がある。そこで$U_\lambda$が開集合ということから、$B_\delta(x)$が存在するが、$B_\delta(x) \subset U_\lambda \subset \bigcup U_\lambda$という関係があるから確かめられる。

ボレル代数 ボレル集合

定義 ボレル代数 ボレル集合
$(X,\mathcal{O})$を位相空間とする。$\sigma[\mathcal{O}]$をボレル代数といい、$\mathcal{B}(X)$と書く。$E\in \mathcal{B}(X)$をボレル集合と呼ぶ。

例 
$\mathbb{R}$に距離をd(x,y)=|x-y|と定めると、上の例でやったのと同じように自然に位相か定まる。
このとき、$\mathcal{F}:=\{(\alpha, \beta]| -\infty<\alpha<\beta<\infty\}$とすると、$\sigma[\mathcal{F}]=\mathcal{B}(\mathbb{R})$である。
証明
$(\alpha,\beta]= (\alpha , \beta+1) \setminus (\beta, \beta+1) = (\alpha , \beta+1) \cap (\beta, \beta+1)^c\in \mathcal{B}(\mathbb{R})$なので$\mathcal{F} \subset\mathcal{B}(\mathbb{R}) $である。なぜならば、補集合は可測集合であり、交わりも可測集合になるからである。そこで上で示した命題を$\mathcal{F} \subset\mathcal{B}(\mathbb{R}) $に対して使えば、$\sigma[\mathcal{F}]\subset \mathcal{B}(\mathbb{R})$である。
逆の包含関係を示そう。
まず、任意に開集合$U$を考える。任意にその中の点xを取ったとき、十分xに使い点$a_x,b_x$をとれば、$x \in(a_x,b_x) \subset U$とできる。そこで、次のような有理数$\alpha_x,\beta_x$をとる$a_x<\alpha_x<\beta_x<b_x$。
$U=\bigcup_{x\in U} (\alpha_x,\beta_x]$となる。ここで、$\bigcup_{x\in U} (\alpha_x,\beta_x]= \bigcup_{x\in U\cap \mathbb{Q}} (\alpha_x,\beta_x]$である。なぜなら、$(\alpha_x,\beta_x]$のよりも細かい間隔で有理数は実数の中に並んでいるから。そこで、次の事実を使う。

有理数の元の’’個数’’は自然数の元の’’個数’’とおなじ

つまり$\bigcup_{x\in U\cap \mathbb{Q}} (\alpha_x,\beta_x]$でたかだか自然数個の集合の和を取っていることに等しいということである。よって$\bigcup_{x\in U\cap \mathbb{Q}} (\alpha_x,\beta_x]\in \sigma[\mathcal{F}]$となって、$\mathcal{O}\subset \sigma[\mathcal{F}]$ であることがわかった。

最後に上の命題をつかって、$\sigma[\mathcal{F}]\supset\mathcal{B}(\mathbb{R})$
以上で証明された。

命題
$\varepsilon:=\{(\alpha,\infty)|\alpha \in \mathbb{R}\}$とおくと、$\sigma[\varepsilon]=\mathcal{B}(\mathbb{R})$

証明
明らかに$\varepsilon\subset \mathcal{B}(\mathbb{R})$である。
よって上の命題から、$\sigma[\varepsilon]\subset \mathcal{B}(\mathbb{R})$
一方、$(\alpha,\beta]= (\alpha, \infty)\setminus (\beta,\infty) \in \sigma[\varepsilon]$なので、上の例の集合族$\mathcal{F}$は$\sigma[\varepsilon]$の部分集合である。そこで例で示した事実から$\mathcal{B}(\mathbb{R})=\sigma[\mathcal{F}]\subset \sigma[\varepsilon]$
証明おわり

つづく

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