だからなんだ?という話が続くが準備なので。目標は測度論に入門すること、ルベーグの優収束定理。
#集合論
Xを今考える全体集合
$x\in A$と書いて、xはAの要素であることを示すことにする
部分集合 $A\subset B$とは$x\in A$ならば$x \in B$のときを示し、AはBの部分集合という。
和集合 $A \cup B :=\{x|x \in A であるか、x \in B\}$
交わり $A \cap B :=\{x|x\in Aであり かつ x \in B \}$
補集合 $X\setminus A ( A^cとも書く) :=\{x| x \notin A\}$
集合族とは、集合の集合のこと
任意の集合族にたいして、和集合や交わりを定義できる。
集合Nの要素nによって添え字づけられた(ラベル付けされた)集合族$\{A_n\}_{n\in N}$に対して、
和集合を
$\bigcup_{n\in N}A_n:=\{x\in X | x\in A_n となるnが存在する。\}$
と定義する。
共通部分は、
$\bigcap_{n\in N}A_n:=\{x\in X | すべてのnに対して、x\in A_n となる\}$
詳しくは、集合論の本をみて
注1 集合の和、交わり、補集合をとる’操作’には次のようなドモルガンの法則という’公式’がある。
$X \setminus \bigcup_\lambda A_\lambda = \bigcap_\lambda A^c_\lambda$
$X \setminus \bigcap_\lambda A_\lambda = \bigcup_\lambda A^c_\lambda$
#可測空間
定義 代数 algebra
Xを集合とする。Xの部分集合からなる集合族$\mathcal{A}$は次を満たすとき、代数という。
- $\emptyset \in \mathcal{A}$
- $E \in \mathcal{A} \Rightarrow E^c \in \mathcal{A}$
- $E_1, E_2 \in \mathcal{A} \Rightarrow E_1 \cup E_2 \in \mathcal{A}$
注1 3から帰納的に有限個の和が$\mathcal{A}$に属することがわかる。
注2 以下のように$E_1, E_2 \in \mathcal{A} \Rightarrow E_1 \cap E_2 \in \mathcal{A}$を示すことができる。
$E_1, E_2 \in \mathcal{A} $と仮定すると、定義の2から$E^c_1, E^c_2 \in \mathcal{A}$なので、定義の3から$E^c_1\cup E^c_2 \in \mathcal{A}$である。そこで再び、定義の2を使えば、$(E^c_1\cup E^c_2)^c \in \mathcal{A}$がわかる。ここでドモルガンの法則から、$(E^c_1\cup E^c_2)^c = E_1 \cap E_2$なので示された。
定義 σ代数
Xの部分集合からなる集合族$\mathcal{B}$がσ代数であるとは
- $\emptyset \in \mathcal{B}$
- $E \in \mathcal{B} \Rightarrow E^c \in \mathcal{B}$
- $E_n \in \mathcal{B} \Rightarrow \bigcup_{n=1}^\infty E_n \in \mathcal{B}$
注 条件3の意味は自然数でラベル付けされた集合族の和を取ってもよい。つまり自然数個だけ和をとってもまた$\mathcal{B}$に属する集合であるという意味である。
(極端な)例1
集合Xに対して、$\mathcal{A}:=\{\emptyset, X\}$はXのσ代数である。なぜなら
(極端な)例2
集合Xにたいして、$\mathcal{A}:=2^X$はσ代数である。$2^X$はべき集合を表す(Xの部分集合すべてからなる集合)
つぎに簡単な命題を示す。
命題1.3
σ代数の定義における3は次と置き換えられる。(3と3’は同じ意味)
3'. $E_n \in \mathcal{B} \Rightarrow \bigcap_{n=1}^\infty E_n \in \mathcal{B}$
proof
3から3’を示すには、ドモルガンの法則から$\bigcap E_n = X \setminus (\bigcup E_n^c)$なので、定義の2、3を使えば、3’を導ける。
逆に、$\bigcup E_n = X \setminus \bigcap E_n^c$なので示せる。
定義 単調増加/単調減少列 極限
自然数で添え字つけられた集合族$\{E_n\}$が単調増加列とは$E_1 \subset E_2 \subset \cdots$となっている時をいう。単調減少列の定義も同様。
単調列の極限$E$を$E=\bigcup E_n$と定義する。減少列に対しては、$E=\bigcap E_n$
$E_n$が単調増加列で極限がEのとき$E_n \uparrow E$などと書く。
例
任意の自然数nに対して$E_n:=[1/n,1)$とすると、明らかに単調増加列である。極限は$\bigcup_{n\in N} E_n=(0,1)$である。なぜならば、0よりどんなに近い点xを取っても(例えば0.00001)、自然数nを十分大きくとれば(例えば、n=10000000000000)、$x\in E_n$とできるので、$(0,1) \subset \bigcup_{n\in N} E_n$がわかる。(和集合の定義に注意すればよい)逆に、$E_n \subset (0,1)$は明らか。よって$\bigcup_{n\in N} E_n=(0,1)$である。
例
$E_n:=(-n,n)$を定義すると、極限は実数全体$\mathbb{R}$
次に命題を示す。
命題
ある代数が$\mathcal{A}$が次のどれかを満たせば、σ代数である。
- $E_n \in \mathcal{A}, E_n \uparrow E \Rightarrow E \in \mathcal{A}$
- $E_n \in \mathcal{A}, E_n \downarrow E \Rightarrow E \in \mathcal{A}$
proof
$E_n \in \mathcal{A}$と仮定する。有限個の和は$\mathcal{A}$に入るので、$F_n:= E_1 \cup \cdots \cup E_n \in \mathcal{A}$そこで命題の仮定1を使えばよい。$F_n \uparrow\bigcup E_n \in \mathcal{A}$
2の方は命題1.3を使えば、$G_n:= E_1 \cap \cdots \cap E_N$を考えて、$G_n \downarrow \bigcap E_n \in \mathcal{A}$より示される。
定義 可測空間
集合とそのσ代数の組み$(X, \mathcal{B})$を可測空間という。σ代数の元$E$を可測集合と呼ぶ。
注 後に述べる測度は可測空間上で定義される。
次に
定義 集合族で生成されたσ代数
$\varepsilon$をXの集合族に対して
$\sigma[\varepsilon]:= \bigcap B$(すべての$\varepsilon$を含むσ代数について交わりを取る)
を$\varepsilon$で生成されたσ代数という。
注 $\sigma[\varepsilon]$は$\varepsilon$を含む最小のσ代数である(であることが示せる)。
つづく…
ルベーグ積分入門2