この記事は、私のような英語に自信がない人に向けて書いています。
- 私はAWSの新試験 AI Business Strategist(AIB-C01) を初めて英語で受けて、合格しました。
- 日本語で受けるFoundationalレベルの試験では30分以上余りますが、今回の残り時間は1分でした。
- 英語で受ける場合にやるべきことは、ESL +30分の申請、問題文の要件だけを読むこと、意味を取りにくい単語を先に覚えることの3つです。
はじめに
こんにちは、2026 Japan AWS Top Engineerの松田です。
先日、私はAWSの新しい認定試験 AWS Certified AI Business Strategist(AIB-C01) に合格しました。
今回は、この試験を英語で受けました。私が英語でIT資格試験を受けたのは、今回が初めてです。AIB-C01は日本語でも受験できるので、完全に自分から縛りプレイを選んだ形になります。
英語受験した理由は2つあります。
1つ目は、私が世界水準のエンジニアになり、日本の技術力向上に寄与したいと考えているからです(おこがましいですが)。
2つ目は、今年AWS re:Inventに参加するからです。ラスベガスに行く前に、技術的な話を英語で読んで理解する経験を積んでおきたいと考えました。
試験結果は720点で合格でした。合格ラインは700点なので、余裕はありませんでした。日本語で受けていれば、もっと余裕を持って合格できたと思います。
この記事では、英語に自信がない人が英語で受けるときの壁と、受ける前に何を準備すべきかを、私の受験経験をもとに書いていきます。
そもそもAIB-C01はどんな試験か
試験の詳細は、受験開始前に書いた次の記事にまとめています。
AIB-C01は、AWSが初めて出したビジネス職向けの認定です。EC2やVPCといったAWSサービスの技術的な話は出題されません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験時間 | 130分 |
| 合格ライン | 700 / 1000 |
| ドメイン | ①AIの基礎とリテラシー 24% / ②AI戦略とビジネス価値 28% / ③AIガバナンスと責任あるAI 24% / ④組織の準備・変革 24% |
| 受験言語 | 日本語・英語 |
| 特典 | 2027年2月15日までの合格で Early Adopterバッジ |
この試験では、「RAGとは何か」のような技術知識よりも、経営判断が問われます。たとえば、「この会社はRAGとファインチューニングのどちらに投資すべきか」「PoCが成功した後、どのように全社へ展開するか」といった判断です。
勉強はインプット2日と問題演習1日
| 日 | やったこと |
|---|---|
| 1日目 | 試験範囲の確認(試験ガイドを全部読む) |
| 2日目 | 範囲の中身を確認(公式資料を読む+重要概念の英語での表現を覚える) |
| 3日目(受験日前日) | 自作の学習サイト AWS認定 合格ナビゲーター で問題を解く |
AIB-C01の勉強で特に重要な公式資料は、次の2つです。
- AWS Cloud Adoption Framework for Artificial Intelligence, Machine Learning, and Generative AI(AWS CAF for AI)
- AWS Well-Architected Framework - Responsible AI Lens
私はこの2つを全文は読んでいません。分量が多いので、AIに要約させて読みました。
この勉強期間は、誰にでも当てはまるものではありません。私には次の前提がありました。
- 私はAWS認定をすべて持っていました(いわゆる全冠1)。
- 私はAIF-C01(AI Practitioner)とAIP-C01を取得済みで、ドメイン1の「AIの基礎」をほぼ理解していました。
- 私は業務で生成AI案件に関わっていて、経営層への説明についても多少の経験がありました。
試験当日:残り時間はまさかの1分
試験の内容は、それほど難しくありませんでした。「この状況なら、まずステークホルダーの合意を取る」「ここではガバナンスの仕組みを先に作る」のように、考え方が分かっていれば選べる問題が多かったです。
苦労したのは時間です。
私は日本語でFoundationalレベルの試験を受けると、いつも 30分以上 時間が余ります。フラグを立てた問題を見直す時間も十分にあります。
ですが今回は、最後の問題を解き終わった時点で 残り時間が1分 でした(厳密には45秒くらい?)。私は1問も見直せず、フラグを立てた問題もそのまま提出しました。
時間が足りなかったのは、単に私の英語力が低いからです。英語に自信がない人は、日本語で受けるときと同じペースでは解けないことを意識しておくとよいと思います。
英語で受ける場合にやるべき3つのこと
1. ESL +30分を申請する
まずはこれです。AWSには、英語が母語でない人の試験時間を30分延長できる特別措置(ESL +30)があります。なおこの措置は、英語で受験するとき以外にも利用できます。日本語で受験する場合も30分延長をしておきましょう。
私はこれまでと違うアカウントで試験申し込みをしたため、この措置を申請し忘れてしまいました。残り時間が1分だったので、30分の延長があれば余裕をもって見直しまでできたと思います。
ESL申請の手順や条件は変わることがあるので、最新の情報を公式ページで確認してください。
2. 問題文の要件だけを読む
AIB-C01はビジネス寄りの試験なので、問題文はシナリオ形式です。問題文の長さは、CLFほど短くはありませんが、SAPほど長くもありません。たとえば、次のような内容です。
- ある小売企業がある
- 経営陣はこういう懸念を持っている
- PoCの結果はこうだった
- 法務部門はこう言っている
- AI戦略担当として次に何をすべきか
日本語でAWS認定を受けるとき、私は問題文を一番初めから読んでいました。それでも時間が足りたので、問題文のどこが重要かをほとんど意識していませんでした。
英語の試験では、私の英語力で全文を丁寧に読むと時間が足りません。そこで私は、問題文のどこが問題を解くために必要な要件の情報で、どこを読み飛ばしてよいかを意識して読みました。
そして、最初に一番末尾の一文を読むようにしました。
最後の一文を読むと、この問題が何を問うているのか、その方向性が分かります。それを意識してから問題文を読むと、解答に必要なキーワードを見つけやすくなります。
私はこの読み方を英語での受験で身につけましたが、日本語の試験でも使える読み方だと思います。
3. 意味を取りにくい単語を先に覚える
英語の問題文を短時間で理解するには、単語の知識が重要です。
意味が分からない単語があると、全文を読んで前後の文から意味を推測する必要があります。推測には時間がかかりますし、意味を間違えると不正解につながります。
覚えておくべき単語は、2種類あります。
①シンプルに難しい単語
このタイプの単語は、見ればすぐに知らない単語だと分かります。
| 例 | 意味 |
|---|---|
| moat | 競合が簡単に真似できない優位性(参入障壁)。もとの意味は「堀」 |
| training-serving skew | 学習時と本番運用時のデータや性能の差 |
②簡単な単語の組み合わせなのに、意味が分からない表現
このタイプの表現は、各単語を知っているので、意味が分かっていないことに気づきにくいです。字面どおりに解釈すると、意味を間違えます。
| 英語 | 直訳 | 意味 |
|---|---|---|
| responsible by design | デザインによる責任? | 設計段階から安全性・透明性・法令遵守といった社会的責任を組み込む考え方 |
| graceful failure | 優雅な失敗? | 障害が起きても全体を止めず、影響を抑えて機能を縮小すること |
このような表現を事前に覚えておくと、試験でかなり有利になります。
AIBの主な試験範囲であるCAF for AI と Responsible AI Lens に出てくる用語の英日対照表を、記事末尾の付録にまとめました。よければご活用ください。
英語で受けてよかったこと
わりと苦労しましたが、私は英語で受けてよかったと思っています。要件だけを読む意識が身についたことに加えて、基本概念を英語のまま覚えられたからです。
たとえばAWS CAF for AIでは、AI導入の流れを4つのフェーズで表現しています。
| 英語 | 日本語訳 | 意味 |
|---|---|---|
| Envision | 構想 | AIで何を実現したいか、ビジネス価値を描く |
| Align | 調整 | ステークホルダーの合意を取り、組織の準備状況を確認する |
| Launch | 立ち上げ | パイロットを動かし、価値を検証する |
| Scale | 拡大 | 成功したものを全社に広げる |
特に Align は、「調整」よりも「(人や組織の)向きを揃える」のほうが意味に近いと感じました。「調整」という訳だけでは、この意味は伝わりにくいと思います。
日本語で受ける方も、これらの概念を英語の単語とセットで覚えることをおすすめします。試験中は英語の原文表示に切り替えられるので、訳に違和感があるときは原文を確認できます。
おわりに
英語に自信がない人に伝えたいことは、以下の通りです。
- 英語に自信がないと、問題の難しさよりも時間が課題になります
- 英語で受ける場合は、ESL +30分を必ず申請しましょう(自戒)
- 問題文を全て読まず、重要な要件だけを読みましょう
- 試験において重要な概念の英語表現は、事前に覚えてください
付録:CAF-AI / Responsible AI Lens 英日対照表
主な概念を、日本語と英語の対で並べます(太字が原文の英語表現です)。
本文で紹介した単語も含め、クリックで開閉できます。
CAF-AI
全体の枠組み
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 基盤ケイパビリティ | foundational capabilities |
| 視点 | perspectives(Business / People / Governance / Platform / Security / Operations) |
| AI クラウド変革のバリューチェーン | AI cloud transformation value chain |
| 変革ドメイン | transformation domains(Technology / Process / Organization / Product) |
| 4ステージ | Envision / Align / Launch / Scale |
| AI フライホイール | AI flywheel |
| 逆算して考える | working backwards |
| 防御的な堀(参入障壁) | moat |
| 自前主義 | Not Invented Here |
| 優雅な失敗 | graceful failure |
新規ケイパビリティ
- Generative AI
- ML Fluency
- Responsible use of AI
- AI Lifecycle Management and MLOps
技術・運用
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 基盤モデル | foundation model (FM) |
| 基盤モデルの運用 | FMOps(LLMOps とも) |
| データメッシュ | data mesh |
| データ製品 | data product |
| 人が判断に介在する/監督する | human-in-the-loop (HITL) / human-on-the-loop (HOTL) |
| 学習時と本番の性能差 | training-serving skew |
| データドリフト/コンセプトドリフト | data drift / concept drift |
| 障害時に安全側へ倒す | fail closed |
セキュリティ
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| セキュリティ視点の3要素 | input / model / output |
| プロンプトインジェクション | prompt injection |
| データポイズニング | data poisoning |
| モデル反転 | model inversion |
| ジェイルブレイク | jailbreak |
Responsible AI Lens
前提と原則
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 責任ある AI | responsible AI (RAI) |
| フォーカスエリア | focus areas |
| ベストプラクティス | best practices |
| 設計原則 | design principles |
| 狭く定義したユースケース | narrowly defined use case |
| 設計段階から責任を組み込む | responsible by design |
10の次元(responsible AI dimensions)
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 制御可能性 | controllability |
| プライバシー | privacy |
| セキュリティ | security |
| 安全性 | safety |
| 真実性 | veracity |
| 頑健性 | robustness |
| 公平性 | fairness |
| 説明可能性 | explainability |
| 透明性 | transparency |
| ガバナンス | governance |
ユースケースとリスク
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| ステークホルダー | downstream / upstream stakeholders |
| 本質的変動/交絡的変動 | intrinsic variation / confounding variation |
| 有益なイベント/有害なイベント | beneficial events / harmful events |
| 便益とリスク | benefits and risks |
| 発生可能性 | likelihood |
| 重大度 | severity |
| リスクレベル | risk level |
| リスクレジストリ | risk registry |
| 残存リスク | residual risk |
| ハルシネーション | hallucination |
| 根拠性 | groundedness |
評価とリリース
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| リリース基準 | release criteria |
| リリース判断 | release decision(go/no-go) |
| 評価スタック/AI システムスタック | AI evaluation stack / AI system stack |
| 3つの実装戦略 | baking / filtering / guiding |
| ガードレール | guardrails |
| 評価データセット | evaluation dataset |
| 統計的検出力分析 | statistical power analysis |
| 対応のある検定 | paired test |
| LLM を評価者にする手法 | LLM-as-a-judge |
| レッドチーミング | red teaming |
運用と文書化
| 日本語 | 英語 |
|---|---|
| 人による監督 | human oversight |
| 来歴 | provenance |
| 透かし | watermark |
| データセットレジストリ/システムレジストリ | dataset registry / system registry |
| データシート | datasheet(Datasheets for Datasets) |
| システムカード | system card |
| ドリフト検知 | drift detection |
| 廃止 | decommissioning |
-
その時点で受験可能なAWS認定をすべて保有している状態のこと。 ↩