はじめに
またAIの話題か…もう飽きたって…と思っている、そこのあなた。
すごく分かります。僕もそうでした。
2025年の9月から10月にかけて、X(旧Twitter)のタイムラインがにわかにザワついていました。なんでも「Google AI Studioの"build"って機能がスゴイらしい」とAI驚き屋の方々が次々にポストしていた印象です。
※"build"自体は2025年5月くらいからあったようには思えます。
「また何か言うとんな」と斜に構えつつも、心のどこかで気になっていた僕。しかし、日々の業務に追われ、なかなか触る機会がありませんでした。
そんな僕が、ついに重い腰を上げたのには、ある切実な悩みがあったからです。
「買い物の後、レシート見ながら計算するの、マジで面倒くさい」
は?何のこっちゃ?とお思いでしょう。
説明します。
僕は、同棲している彼女と週末にスーパーで日用品をまとめて買うのですが、支払いはどちらかが一旦立て替えます。そして帰宅後、家計簿をつけるために「これは私」「これは君の」「これは共有だね」とレシートを見ながら計算する作業…。
この地味に面倒くさい作業をどうにかしたい。
そうだ、自動化しよう!でも、わざわざツール作るのもめんどくさいなー。。。
てか、これってBuild機能試すチャンスなのでは??
そう思い立った僕は、Google AI Studioの"build"機能を使い、この課題を解決するアプリを作ることにしました。
今回の自分ルール(縛り)
今回の目的は、あくまで「面倒な作業を楽にすること」「Build機能の性能を試すこと」であり、「プログラミングをすること」ではありません。そこで、以下のルールを設けました。
- 自分は一切コードを書かない
- AIが生成したコードの中身も絶対に見ない
そう、私はAIに指示を出すだけ。
コードが一切書けない人になりきった状態で、どこまでのものが作れるか試してみようと思いました。
成果物
能書きはいいから、できたものを見せろよ!という声が聞こえてきそうなので、先にお見せします。
※撮影の都合上PCで操作しておりますが通常時はスマホから利用してます。あと、容量の都合上、画質が悪くスミマセン。。。
▼ 買い物分担計算アプリ
すごくないですか?
他の作業と並行しながら、実質2時間くらいで、中々に使えるレベルのものができてしまいました。正直、ちょっと引きました。
ちなみに、このアプリ作ったのはgemini3.0 proが出る前でした。。。
どうやって作ったか?
ここからは、このアプリをどうやって作ったのかを簡単にご紹介します。Google AI Studio "build"機能の詳しい使用方法は、丁寧に解説してくれてる先人の方がおられるので、コチラを参考にされると良いかと思います。
1. Google AI Studioにアクセスしてプロンプトを入力
Google AI Studioを開き、「Build with Gemini」という機能を使います。

使い方はシンプルで、「どんなアプリを作りたいか」を日本語で入力するだけ。
今回は、以下のような、少し雑な指示(プロンプト)を入力しました。
# あなたが作るべきアプリ
買い物のレシート情報から、誰が何にいくら使ったかを計算し、最終的に誰が誰にいくら支払うべきかを計算するアプリ
# アプリの機能
- ユーザーがレシートのテキストを貼り付けるための大きな入力欄があること。
- 各品物が誰のものか(例えば、「Aさん」「Bさん」「共通」)を選択できるようにすること。
- 「計算する」ボタンを押すと、以下の結果を出力すること。
- Aさんの合計支出額
- Bさんの合計支出額
- 共通の品物の合計支出額と、それを折半した場合の一人当たりの負担額
- 最終的に、AさんとBさんのどちらが、どちらに、いくら支払うべきか
ポイントは、「何をして欲しいか」「どんな機能が必要か」を箇条書きで分かりやすく伝えることです。これだけで、AIがアプリの仕様を理解してくれます。
2. AIがアプリを生成するのを待つ
プロンプトを入力してボタンを押すと、AIがアプリの設計と実装を始めます。数十秒待っていると、画面右側にプレビューが表示されます。
最初にできたものは、入力欄とボタンがあるだけのシンプルなものでした。しかし、ちゃんとレシートっぽいテキストを入れると、それなりに計算結果を返してくれます。
「マジか…もう動いてる…」と、この時点でかなり驚きました。
3. 対話形式で修正・改善を依頼する
もちろん、最初から完璧なものができるわけではありません。
ここからがAI Studioのすごいところ。まるで人間に指示するように、チャット形式で修正をお願いできます。
ここも以下のような、かなり雑な指示(プロンプト)を入力しました。
以下の内容を修正して
# 修正内容
- 金額の内訳表示して
- 割り勘の場合、比率を設定できるようにして(50:50,60:40など)
- 計算履歴を管理できるようにして
- 計算履歴は一定の期日で勝手に削除されるようにして。(デフォルトは、30日。)
- 履歴保管日程は設定から自由に編集できるようにして。
こんな感じで、曖昧な指示を繰り返していくうちに、アプリがどんどん使いやすく、高機能になっていくのです。この間、私は一行もコードを書いていません。ただ、日本語でお願いしているだけです。(しかも、専門用語は使わず、かなり雑な指示)
このトライ&エラーを繰り返すこと約2時間。満足のいくアプリが完成しました。
感じたこと
今回の体験を通じて、いくつかの大きな可能性を感じました。
1. 「自分のための小さなアプリ」を誰もが作れる時代が来た
プログラミングは、アイデアを形にするための強力なツールです。しかし、当然ですが習得には、それなりの時間がかかります。
「この面倒な作業、自動化できたらな…」と思っても、多くの非エンジニアにとってはハードルが高いものでした。
しかし、もう違います。
自然言語でAIに指示するだけで、自分の小さな課題を解決するツールを、誰でも作れる時代が来たのです。これは、まさに「No Code / Low Code」の究極形かもしれません。
※当然、製品化などを考慮した場合、まだまだプログラミングの知識は必要不可欠です。
2. PoC(概念実証)のあり方が変わるかもしれない
新しいサービスや機能を開発する際、まずはPoC(Proof of Concept:概念実証)として、最小限のプロトタイプを作ることがあります。
これからの時代、PoCは非エンジニアが作るのが当たり前になるかもしれません。
企画者やデザイナーが、AI Studioのようなツールを使って自分たちで動くプロトタイプを設計し、「こんな感じのアプリを作りたいんです」とエンジニアに依頼する。エンジニアは、そのプロトタイプを元に、セキュリティやパフォーマンス、拡張性を考慮した本格的な開発に集中する。
そんな、より効率的でスピーディな開発フローが実現できるのではないでしょうか。エンジニアは雑務から解放され、より本質的な課題解決に時間を使えるようになります。最高の世界線だと思いませんか?
まとめ
- 噂のGoogle AI Studioは、本当にヤバかった。
- コードを1行も書かずに、2時間で実用的なアプリを開発できた。
- これからは、誰もが「自分のためのアプリ」を作る時代になるかもしれない。
- PoC開発のフローが変わり、エンジニアはより高度な仕事に集中できるようになるかも。
「ちょっとしたことで生活を便利にしたい」と考えているすべての非エンジニアの方々、そして、新しい開発の可能性を模索しているエンジニアの方々も、ぜひ一度Google AI Studioを触ってみてください。
きっと、未来の開発スタイルの一端を垣間見ることができるはずです。
