🧭 はじめに
AIの進化は、個人の生産性向上だけでなく、組織全体の知識活用にも革命をもたらしています。
Slack、Confluence、GitHub Issuesなどに散在する情報を、AIが横断的に検索・要約・提案できるようになったことで、ナレッジエンジニアリングという新たな領域が注目されています。
本記事では、社内知識をAIで再構築する技術とその実践について解説します。
📚 ナレッジの課題:属人化と情報の埋没
従来の開発現場では、以下のような課題がありました:
- ベテランエンジニアの頭の中にしかないノウハウ
- Slackに埋もれた議論や障害対応履歴
- Confluenceに蓄積されたが検索されない設計資料
これらは「資産」であるにもかかわらず、活用されない知識として埋もれてしまいます。
🔍 RAGによる社内GPT構築
社内知識をAIで活用するための代表的な技術が、**RAG(Retrieval-Augmented Generation)**です。
RAGの構成要素:
-
検索エンジン(Elasticsearch, Weaviateなど)
→ 社内ドキュメントをベクトル化して検索可能にする -
LLM(大規模言語モデル)
→ 検索結果をもとに自然言語で回答を生成 -
統合API
→ 社内GPTとしてSlackや社内ポータルに組み込む
例:Slackでの社内GPT活用
「2023年の障害対応でRedisの設定変更が必要だったケースについて教えて」
→ 社内GPTがConfluenceとSlackログを検索し、要約と関連リンクを提示
🧠 ナレッジグラフと意思決定支援
さらに高度なナレッジ活用として、ナレッジグラフとLLMの統合があります。
活用例:
- 設計レビュー時に、過去の類似設計とその評価を提示
- 技術選定時に、社内での採用実績と課題を自動提示
- 新人教育において、FAQを自動生成し、文脈に応じた回答を提供
これにより、意思決定の質とスピードが向上します。
🧪 ナレッジエンジニアの役割
AI時代のエンジニアには、以下のような新しい役割が求められます:
| 役割 | 説明 |
|---|---|
| ナレッジ構造化 | 社内情報を分類・タグ付けし、検索性を高める |
| プロンプト設計 | 社内GPTに対して適切な質問を設計する |
| 意思決定支援 | AIが提示する情報を評価し、判断に活かす |
採用候補者には、こうした情報活用力とAIリテラシーが求められます。
🧭 まとめ
ナレッジエンジニアリングは、単なる情報管理ではなく、組織の知性を最大化する技術です。
AIを活用して社内知識を再構築することで、開発効率、意思決定、教育のすべてが進化します。
次回は「プロダクト共進化」について、AIと共に育てる開発サイクルとMLOpsの実践を解説します。