ソフトウェアテスト・QAの小ネタ Advent Calendar 15日目の記事です!
3行まとめ
- JSTQB ALTM のシラバス を読んでみたら(当然ですが)勉強になった
- 「一人前のQA」を目指す人や、育成したい人のガイドとして役立ちそうと感じた
- 全部読むのは大変なので、1.1〜1.3 章ぐらいを読むとよいのではないか
TM(テストマネジメント)スキル需要の高まり
気づいたら入社して10年をとうに超え(…)、後輩や新しいメンバーが増えてきました。
メンバーの経歴やスキルセットは多様化し、ソフトウェアテストの世界も変化し続けています。
- 小規模チーム
- 短納期
- インクリメンタル / アジャイル寄りのプロセス
のプロジェクト(プロダクト)が増えた結果、テストチームも1〜数名で編成されるようになり、以前よりも「テストマネジメントできる人」がたくさん必要になっていると感じます。
「教えて」と言われても難しい
ただ、自分も含め今テストマネジメントしているのは
- 「最初はテスト実施担当として入り、経験を積んできた」
- 「周囲の人や色々な本で学びつつ試行錯誤して身につけた」
という人がほとんどで、個別具体のケースでどうするかはパッと答えられるのですが
“どうすれば体系的・効率的にその力を身につけられるか” という問いにはうまく答えられていませんでした。
(テスト初心者には「とりあえずJSTQB の FL は基礎知識として勉強するとよい」というのはあったのですが、その先が明確ではありませんでした)
「テストメンバーとして求められるもの」と「"テストマネジメントもできる人"として求められるもの」は違いそう、というのは分かっていたのですが、「何ができればよいのか」「どうすれば習得できるのか」は曖昧でした。
ALTM、いいかも…?
そんなとき、偶然 JSTQB Conference in 2025 Autumn インフォメーションセッション に参加し、Version3.0 になった ALTM(Advanced Level テストマネジメント)シラバス の説明を聞く機会がありました。
正直なところ 「ALTM = テストマネジメントを極めたい人向けの資格」 というイメージだったのですが、話を聞いていて
これ、育成に使えるのでは…?
と思いました。(というかむしろそのために作られてたのに誤解していたというのが実際のところな気がする…)
そこでConference終了後、社内の有志メンバーで勉強会を企画し、実際にシラバスを読んでみることにしました。
育成視点で「ここが使えそう」と感じた部分
正直に言うと、ALTMのシラバスを 全部読む のは大変です!(でした!)
新人QAさんの場合はもっと大変なのでは…と思うので、「早く一人前のQAになりたい!」という時は
- JSTQB FL
- JSTQB ALTM の 1.1〜1.3(イントロ除けば20ページ未満の量)
くらいまでを読むといいんじゃないかな?と思います。
1.1 テストプロセス
テストメンバーだと深く関わりにくい
- テスト計画
- テストモニタリング
- テスト完了
といった領域を学べるのでよいかなと思いました。
「必要そうなテストを気づいた順に設計〜実施する」ではなくて、「テスト全体を見通して、状況を見ながらバランスを取ったり、やり残しがないように完了までもっていく」みたいなことがやりやすくなるはず。
1.2 テストのコンテキスト
テストマネージャーはとにかく判断することが多い!
- 何をどれくらいテストする?
- どんな情報が必要?それはどこにある?
- 誰にいつ何を報連相すればいい?
- いつテストする?誰がやる?
- テスト実施と調査と起票、どれが優先?
- etc.
シラバスは流石に上記のような細かい判断の方法は教えてくれないのですが、
ざっくり「何を考えればいいか」「何を考慮すればいいか」が書いてあって、
「自分が見えている範囲の情報で判断」「自分の感覚で判断」ではなくて「判断に必要な情報はxxだから集めにいこう」「プロジェクトやステークホルダーのコンテキストを根拠に判断」がやりやすくなるかなと思います。
「テストはコンテキスト次第」という原則もありましたね。コンテキスト大事。
1.3 リスクベースドテスト
テストは有効なリスク軽減活動である、というのはFLにもALTMにも書かれています。
しかしテストチームのリソースは有限なので「何かのリスクを減らす」と「他のリスクはスルーせざるを得ない」のようなトレードオフが発生することもあります。
(例えば切り戻せないインシデント発生で緊急リリースしたい!1時間でどこを見る?とか…「予算がないからテストは最小限にして!」とか…)
- 何がリスクなのか?
- どのリスクを優先すべきか?
- どう対処するのか?
様々な判断をする中でリスクベースの考え方は必須なので、ALTMでより深く学ぶのは役立つと思います。
まとめ
ALTM は「テストガチ勢向け資格」という印象だったのですが、
実際に読んでみると間口が広く、スキルアップのための地図として有用そうに感じました。
(もっと学びたい人はエキスパートレベルのシラバスを参照、といった箇所もあり、ベテランの方のスキルマップとしても使えるかも)
「シラバス読んだ」と「実務でできる」のギャップを埋める必要はもちろんありますが、頭の中で整理しやすくなったり、人に相談しやすくなる と思います。
まだ社内で育成プログラムとして実際に使ってみるのはできていない(前段知識としてFL勉強会は開催中)のですが、来年検討していきたいです。
「一人で動けるQAになりたい or 育てたい」という方は ALTM シラバスの拾い読み、いかがでしょうか。