こんにちは、京セラコミュニケーションシステム 青木(@KCCS-YuyaAoki)です。
前のおはなしに引き続き気候変動問題についてです。今回は、「温室効果ガス(GHG)はどこからやってくるのか?」というテーマで書いていきたいと思います。
本記事は2023年8月ごろに作成しております。引用している文章などはこの時点での最新となります。
連載記事一覧(全6話)
IT視点でGXを語る 第01話 ~地球温暖化について本気出して考えてみた~
IT視点でGXを語る 第02話 ~温室効果ガス(GHG)の排出はどこから?~ ★本記事★
IT視点でGXを語る 第03話 ~GHG Protocolと自社のGHG排出量の算出~
IT視点でGXを語る 第04話 ~GHG Protocol Scope3とサプライチェーンを巻き込んだ取り組み~
IT視点でGXを語る 第05話 ~製品・サービスのGHG排出量「カーボンフットプリント」とは~
IT視点でGXを語る 第06話 ~さまざまな排出量削減の取り組み~
世界のCO2排出量を見てみよう
地球上では毎年、どの程度のCO2が排出されているのでしょうか。調べてみたところ、エネルギー起源CO2排出量(石炭や石油などの化石燃料を燃焼して作られたエネルギーを、産業や家庭が利用・消費することによって生じる二酸化炭素のこと)について環境省が公開している情報を見つけました。
出典)環境省「世界のエネルギー起源CO2排出量(2020年)」より
世界のエネルギー起源CO2排出量はなんと317億t!と言っても多いのか少ないのかよくわかりませんでしたので、人間の呼吸に置き換えてみました。
1人の人間が、1年間に呼吸で排出するCO2の量は、約320kg∼370kgといわれており(つまり約1日1kg)、2021年の世界人口が78億8,800万人とすると、年間約27億tものCO2を排出しているようです。人間の呼吸によるCO2排出量はエネルギー起源CO2排出量ではありませんが、その他の排出も含めると世界の総排出量は317億tよりもう少し多く、400億tを超えるそうです。
これを2050年までにゼロにしましょう、というのですからなかなか大変なことのように思います(下図SSP1-1.9参照)。
出典)IPCC第2作業部会第6次評価報告書(https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/)より
※SSP x-x.x ってなに?という方は前のおはなしへ
どのような所から温室効果ガス(GHG)が排出されているのか?
「エネルギー起源CO2排出量」という名前からわかるように、二酸化炭素は、おもに化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)を燃焼させると発生します。
たとえば自動車製造工程を例に考えてみますと、
- 高炉や転炉に鉄鉱石を入れて溶かして鋼鉄を作る。
- 鋼鉄を溶かして型に流す。
- 塗料を高温で車体に焼き付け・乾燥させる。
など、さまざまな工程で化石燃料を燃焼させて得たエネルギーを利用しています。また、自動車を運転する際にも化石燃料(ガソリン)から得たエネルギーを利用しています。他にも、製造ラインや私たちの生活に不可欠な電気などのエネルギーを作る為にも大量の化石燃料が使われています。
いきなりですが、ここでクイズです。
自動車の排気ガスを無くすためにEV車(電気自動車)を購入して利用したとき、それはエコと言えるでしょうか?
ここまで読んで頂いた方はお分かりだと思いますが、一概に「Yes」「No」と答えることはできません(イジワル問題ですみません...)。EV車運転時のCO2排出量を削減するためには、動力源である電気の発電方法を化石燃料に依存しない形、たとえば太陽光発電などに変えていく必要があります。もちろんEV車の製造プロセスも同様に、化石燃料に依存しない形にしたり影響を少なくするよう工程を見直したりする必要があります。それらをすべて徹底することができたときにはエコだと言い切れるのではないでしょうか。
ここで主要国の一次エネルギー(発電の為に使うエネルギーも含めたエネルギーの資源となるもの)構成比をみてみましょう。
出典)エネ百科「原子力・エネルギー図面集」より
ブラジルやフランスではエネルギー量あたりの化石燃料の使用が50%に留まっているのに対して日本では80%以上を化石燃料に頼っていることがわかります。私たちの課題は、これからどのようにして化石燃料(石油・天然ガス・石炭)の消費を削減し、非化石燃料(太陽光・風力・水力・地熱・原子力など)の比率を上げていくのかということです。太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの導入が国内外で一気に加速しているのにはこのような背景があるんですね。
燃焼して同じエネルギーを得るために排出される二酸化炭素排出量の比は「石炭:原油:天然ガス=10:7.5:5.5」のため、エネルギー源毎のCO2排出量内訳は上図とは異なります。
また電気・熱配分後のエネルギー起源のCO2排出量の国内の内訳(下図)をみてみると、1番が産業部門、その次にほぼ同率で運輸部門・業務その他部門(情報産業はここに含まれます)・家庭部門と続いており、どの業界においても排出量削減に向けた取り組みが必要であることがわかります。
出典)環境省「2020年度(令和2年度)温室効果ガス排出量(確報値)について」より
ICT分野のエネルギー問題
私たち情報産業においては、ICTの利活用が進むことによるデータ流通量(トラフィック)の増加により、データセンターの電力消費が増加傾向にあることがわかっています。データセンター内の各サーバー機器・ネットワーク機器・空調等の性能が現状のままでトラフィックの増加に比例して消費電力が増大すると仮定した場合、データセンターの電力消費量は10年間で15倍になるとの試算も出ており、これによる地球温暖化の加速が懸念されています。
(出典)国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センター「情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.2)」
この問題にどのように立ち向かっていくべきなのか?
ここまでのおはなしで、温室効果ガス(GHG)は人間活動のさまざまなプロセスにおいて発生しているのがイメージして頂けたのではないかと思います。では、私たちはこの問題に対してどこから手を付けていけば良いのでしょうか。
この問いに対しては、環境省および経済産業省がグリーン・バリューチェーンプラットフォームにて「知る」・「測る」・「減らす」のステップに分けた取り組み方法を紹介し、脱炭素経営に向けた活動を推奨しています。
───今回はここまでとなります。
第1回、第2回の連載ではグリーントランスフォーメーション(GX)やカーボンニュートラルへの取り組みの背景、温室効果ガス(GHG)排出の実情をお伝えしました。次回連載からは削減の目標設定に繋がる「測る」について、見ていきたいと思います。