新しい売買の形 物を買うAIとは？
生成AIを使用した新しい決済の仕組みであるInstant Checkout , AP2の仕組みについて調べたのでまとめようと思います。
Instant Checkout(OpenAI)
OpenAIが2025年9月29日に発表した「Instant Checkout」は、対話型AIであるChatGPTとの対話を通し、好みの商品を見つけ、その場で購入を可能とするための支援機能であり、米国のChatGPTユーザに向け提供を開始しました。
つまり、ECサイトに訪れて、好みを探して購入する従来の売買の仕組みではなく、AIとの会話の中でユーザが欲しい物の情報を提示し、AIがそれに対するおすすめを提示することで、その後の決済までシームレスにChatGPT内で行うことができるというものです。
ChatGPT内での即時購入ができるというわけですね。
この一連の流れである、ChatGPTの会話内での商品の提示→別サイト遷移なしに購入手続きを完了できる機能は、OpenAI社とStripeによって共同策定したAPC(Agentic Commerce Protocol)で実装されています。
ACPプロトコルの詳細
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強力– AI製品の何百万人ものユーザーとつながり、直接的な顧客関係を構築
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導入が簡単– 既存の商取引システムに簡単に接続できるため、最小限の労力で注文を受け付けることができます。
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柔軟性– 決済処理業者、プラットフォーム、購入タイプ、ビジネスタイプを問わず機能します。OpenAIとStripeが管理し、より多くの参加者を募集しています。
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安全– 支払い情報を保護し、コンプライアンスを維持し、注文を承認または拒否するために必要な信号を販売者に提供します。
最初の対応として Etsy や多くの Shopify マーチャントがサポート対象になっている。
APCが担う役割とは？
ACP は「エージェント（AI）⇄マーチャント⇄決済処理」をつなぐオープンな仕様。既存のコマース／決済インフラを活用できるように設計されており、マーチャント側は大きな改修をせず導入しやすい。
GitHub (参考)
ビジネス面
ユーザーは手数料なしで買えるケースが多いが、マーチャント(販売側)は取引成立時に手数料を支払うモデルが見られる（OpenAI の新たな収益チャネル）。導入メリットは「チャットという新しい購買導線の獲得」。
具体的なUI/UX
この上記の画像のように、まずユーザは具体的な要望をGPTに投げます。
そうするとChatGPTはACPに基づき、連携したECサイト内の条件にあった商品を画像付きで提案します。
最後にユーザが気に入った商品を選び、購入の意思決定をして購入完了になります。
どうでしょうか、へぇ～すごいと思いますよね。
私はこの技術・情報・記事をみて、このように考えます。
「従来 : 人間が検索して物を買う」
から
「今後 : 生成AIがおすすめ商品を提示して人間が購入する」
SEO(検索最適化)からAEO(AIアルゴリズムの最適化)へのパラダイムシフトではないでしょうか。
つまり、AIにおすすめされることが売上の向上になり、AIがどんな商品をおすすめするのか、そのアルゴリズムを理解して、AIに合わせたデータ設計、商品設計、説明設計が必要になると考えています。
| 従来のSEO時代 | AIコマース時代 |
|---|---|
| 検索ワードを最適化 | AIの意思決定ロジックを最適化 |
| コンテンツ重視 | データフィード・属性情報重視 |
| ユーザーが選択 | AIが選択し推薦 |
| CVR最適化 | 推薦確率最適化（AIに選ばれる確率） |
AP2(Google社提供 エージェント主導の決済標準)
2025年9月17日 AP2 は Google が中心になり多数の決済会社と共同で発表した エージェント主導の支払い（agent-led payments）を安全に実行するためのオープンプロトコル。AP2 は“誰が／どの条件で支払ったか”の承認・監査性を強く担保する設計（Mandates 等の概念）。現時点では業界支持を集める段階で、普及はこれから。
このAP2プロトコルはA2Aプロトコルおよび、MCPの拡張として使用することが可能です。
業界のルールや標準に準拠することで、ユーザー、加盟店、決済サービス提供者があらゆる決済手段で安心して取引を行える、決済に依存しないフレームワークを確立します。
A2Aプロトコルについて
MCPについて (NTT EAST)
AP2の特徴、仕組み
Mandates（マンデート）：ユーザーがエージェントに「こういう条件で購入して良い」という承認や契約（デジタル署名）を与える仕組み。
決済手段非依存：カードや銀行、ウォレット、暗号資産など多様な手段を想定。
トレーサビリティと責任の明確化：エージェントが誤発注・不正利用した場合の検証や差し止めができるようにログ／署名で担保。
Instant CheckoutとAP2の違いですが、AP2のほうが一歩攻めている構想を示しています。
Instant CheckoutはChatGPT内で、取引を進めていくのに対して、
AP2は、エージェントがなにか条件(この金額以下になったら〇〇の商品を購入してなど)を指定しておくと、AIが適切なタイミングで購入してくれるというものです。
つまり、ACP は 「エージェント経由の商取引（商品発見→チェックアウト）」 を実務的に繋ぐための仕様。AP2 は 「エージェントが支払いを行う際の認可・決済の信頼性を担保する層」 に重心がある。つまり ACP が“買わせる仕組み”を作り、AP2 が“支払いを安全に実行するルール”を提供する、という補完関係になりうるというわけです。
先端技術を取り扱う各企業でも、これらの技術の整備導入が行われるでしょう。
エコシステムからのサポート
- アクセンチュア：「Google Cloud のエージェント決済プロトコル（AP2）は、Agent2Agent プロトコルと Model Context Protocol を補完し、エージェント間の取引のための統合フレームワークを提供します。このようなイノベーションにより、クライアントの決済を刷新する多くのエージェントソリューションが実現可能になります。これは、今日のニーズだけでなく、進化する未来の商取引モデルにも対応します。」 -アクセンチュア Google ビジネス リード、スコット・アルフィエリ
- アメリカン・エキスプレス：「AIを活用した商取引の台頭により、信頼と説明責任はこれまで以上に重要になっています。アメリカン・エキスプレスは、顧客保護と次世代のデジタル決済への参加を可能にするプロトコルとして、AP2の構築に貢献できることを大変嬉しく思います。」 -ルーク・ゲブ、アメリカン・エキスプレス アメックス・デジタル・ラボ担当エグゼクティブバイスプレジデント
- Dell：「Dell Technologiesは、世界中の企業にとってエージェント型AIを実現することに尽力しています。エージェント型自動化の変革の可能性は、特に顧客対応型のeコマースプラットフォームにおいて、信頼性、セキュリティ、標準化にかかっています。Googleと共同でAgent Payments Protocol（AP2）をサポートすることで、AI主導のコマースが信頼性が高く、アクセスしやすく、誰もが信頼できる未来の基盤を築いていきます。」 – Dell Technologies CTOオフィス イノベーション＆エコシステム担当バイスプレジデント、サティッシュ・アイヤー
- Mastercard：「Mastercardは、責任ある継続的なイノベーションに取り組んでいます。Google、大手銀行、加盟店、AIプラットフォーム、そしてその他の業界リーダーと協力し、エージェント型コマースの未来を形作っていくことを大変嬉しく思います。これらの取り組みには、FIDOアライアンスなどの標準化団体との重要な連携が含まれており、このダイナミックな新しい状況において消費者の意図を捉え、保護するための検証可能な認証情報の開発に取り組んでいます。私たちは共に、決済エコシステムのセキュリティ確保において重要な役割を果たし、あらゆる取引において信頼と安全性が常に中核となるように努めています。」 - Mastercard 最高デジタル責任者、パブロ・フォーレス
- Salesforce ：「デジタルコマースの推進に関する豊富な専門知識を持つSalesforceは、企業がエージェント決済を大規模に活用できるよう支援し、真にスムーズなコマース体験を創出し、今日のエージェント型企業になるために不可欠な生産性の向上に貢献できることを嬉しく思います。」 – Salesforceのコマース＆リテールクラウド担当SVP兼GM、Nitin Mangtani
ビジネス側(マーケティングレイヤー 技術レイヤー)がやるべきこと
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商品データを構造化しておく（在庫・価格・SKU・返品ポリシー）→ エージェントが正確に提示できる
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決済・配送フローの自動化とAPI化 → ACP 対応は比較的「既存インフラを活かす」設計だが、API連携やWebhookなど準備が必要
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承認フロー（ユーザー同意）のUX設計 → Mandate 相当の承認（「この条件でOKか？」を明確に取る）を用意すること。AP2 的な要件を念頭に置くと安全
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利用開始は段階的に：まずは単品・米国市場でのパイロット → フィードバックを踏まえて多品目・国際展開
といっても、OpenAI社のInstant Checkoutは米国で提供されており、日本ではまだです。
さらに言えば、AP2に関しては決済プロバイダなどを含めて構想の段階です。
しかし、いち早くマーケットを獲得するには技術者だけでなく、マーケティング、経営層も常にアンテナを貼る必要があるといえます。
参考文献
OpenAI Instant Checkout
OpenAI Developers
ACP GitHub
Reuters ChatGPT決済チェックアウト
エージェントコマースプロトコル
AP2 Google
新しいエージェント支払いプロトコル (AP2) による AI コマースの強化
A2Aプロトコル