はじめに
静岡市でフリーランスのWebエンジニア(主にRailsとNuxt)をしているkazuomatzです。
AIのめざましい発達の中で、音楽もAIで一瞬できる時代がやってきました。
特に、Suno AIはすごい、プロンプトを数行入力するだけで、曲の構成からメロディ、歌唱まで自動生成してくれます。
クオリティも非常に高く、初めて聴いたときは正直驚きました。ロスレス品質で出力できるので音質もいい。普通のオーディオやちょっと高価なイヤホンで聴いても普通に楽しめます。
ものの数分でそれなりの歌詞を含んだ楽曲ができてしまうので、今、ネットでは、生成AIで制作された音楽があふれかえっています。
ただ、それらの音楽すべてが「創造」されたものであるかと言うと微妙です。
とにかく、何となくプロンプト入れてAIが生成した音楽は、"それらしい結果"であって、作り手の意志や世界観までは含まれていません。
この記事は、僕がSunoとChatGPTを使って、音楽を創造していった結果、エンジニア・バンド 「The Comile Errors」 ができてしまったお話をまとめています。
ちなみに僕は学生時代、軽音サークルでバンド活動(ギター担当)をしていましたが、今は指が動かず、昔ほどは弾けません。DTMも少しかじってた時期もあります。
ただ邦楽に限ってですが、昔から今に至るまで幅色く音楽を聴いているので、ある程度の音楽の知識はありますし、ライブにも出かけます。
きっかけ
Sunoがv5になって、とにかく凄いぞという話を聞きつけて、最初はエンジニアあるあるネタで一曲適当に作ってみました。
確かによくできている。楽器もそれらしく鳴ってるし、ボーカルも一部日本語がおかしいところがあるものの素人のカラオケレベル以上です。
そして、できた曲を聴いているうちに、エンジニア現場体験したことをテーマに楽曲制作をするというモチベーションが高まってきました。
制作フロー
役割としてはこんな感じ。一般的に楽曲は、詩より先に曲を作る「曲先」ですが、このワークフローでは「詩先」になります。
| 工程 | 担当 |
|---|---|
| 企画・レビュー・エンジニアリング | 人間(僕) |
| 企画補佐、作詞 | ChatGPT |
| 作曲、歌唱 | Suno |
つまり、AIが二人のメンバーとして存在し、僕はいわばプロデューサーです。
ChatGPTと企画会議(壁打ち)を行い、テーマ選定、コンセプト、曲調などを決め、詩を作ります。ChatGPTが提案してきた詩のドラフトを遂行し、自分で書き直したり、ここの表現を「もう少し○○○して」といった指示を出してブラッシュアップしていきます。
曲調については、企画段階でロックなのか、ジャズっぽくとか、楽器の編成も決めていくので、Sunoに与えるプロンプトもある程度決まります。
あとは、できた詩とプロンプトをSunoに与えると曲ができあがります。
人格ができてきた?
Sunoには「ペルソナ」という機能があり、一度作成した曲からボーカルやスタイルなどの特徴を保存することができます。これを繰り返すことで、「いつものあいつらが歌ってくれる」状態を作ることができるわけです。
一方でChatGPTの方も、何度も壁打ちした結果、僕が表現したいことを学習し、自分の好みにあった企画やフレーズを作ってくれるようになってきました。
これらの相乗効果もあり、次第に世界観が統一されてきて、「エンジニア・バンド」としての人格ができてきました。
The Comile Errors の誕生
僕はこのバンドを「The Compile Errors」と名付けました。安直ですが。
ところが事件が起きました。楽曲をYouTubeで配信するにあたり、バナーやメタ情報を入力する際に間違って「The Comile Erros」とタイポしてしまいました。
そこで修正してもよかったのですが、このまま行くことにしました😄 「ザ・コミイルエラーズ」
そして、このことを逆手にしてできた曲が「Missing P」という曲です(最初、シャウトから始まるのでくれぐれも音量注意)。
Pが抜けたことを自虐的に笑いつつ、それでも失敗を乗り越えて前に進むエンジニアたちの姿が表現されました。もうニヤニヤするしかない。
The Comile Errors!!
綴りなんて気にすんな!
走らせりゃ動くのさ
人生はトライ&キャッチThe Comile Errors!!
赤いログも輝きだ
バグだらけでもコンパイル中
心のreturnは always trueThe Comile Errors!!
Syntaxよりも情熱を
どんな警告が出ても
pushして前に進めThe Comile Errors!!
人生は止まらないループ
Exitなんてしなくていい
このバグがあるから歌えるんだ
ここまでの成果は、「完璧じゃなくても動けばいい。止まらずに進めること、それが成功だ」 という哲学を持った「エンジニア・バンド」が誕生したことです。
1stアルバム「Buid Succeeded - with Warnings」
楽曲制作を進めていくと、彼らは自ずとバグがあっても笑い飛ばして前へ進もうぜと歌ってくるようになりました。それはやがてエンジニア達への応援歌に聞こえてきました。
深夜の障害対応、終わらないテスト、クライアントからのクレーム、ビルドエラー ... エンジニアの現場で起こるさまざまな辛いことを笑い飛ばして、前に進む世界観が形成されました。
そして、この成果を形として残しておきたいと思い、これらの楽曲を全13曲のアルバムとしてまとめました。
バグをエンタメだと笑い飛ばす彼ら
その中でもスカっぽい曲を作りたいなと思って作った曲が「Rari-Ska-Lation Error」。
Rari-Ska-Lation Error!
踊れ! サーバーダウン中でも
Rari-Ska-Lation Error!
泣くな! メンテナンスの夜に
ログが赤くても笑えば青
Skank it up! till the deploy dawns!
Rari-Ska-Lation Error!
笑え! バグもエンタメだ
Rari-Ska-Lation Error!
叫べ! “誰のせいでもないよな!”
とにかく陽気な曲になりました。バグもエンタメだと踊って前に進むエンジニアたち。どんな辛い場面でも陽気に行こうぜと言われると元気が出ます。
Rali-Ska-Lationという言葉には意味はないですが何となく語感がよいので採用しました。
最後の納品の瞬間をアカペラで熱唱する
エンジニアとして必ずやってくる納品の瞬間。その瞬間をアカペラで歌い上げる「Delivered Night(納品の夜に)」。彼らはコーラスワークも素晴らしい😄
Delivered Tonight
きみの commitも
ぼくの sigh(ためいき)も
全部この buildの中で光るDelivered Tonight
バグも涙も越えてきた
もう誰も知らなくていい
僕たちはやり遂げた
最終レビューのコメントに
ありがとうの文字がひとつ
それだけで 胸がいっぱいで
声が出なかった
エンジニアであれば、この瞬間に共感できますよね。泣けます。
そして最後にこの曲は、
Buid Successed...
というフレーズで終わります。そう、ここでアルバムタイトル「Buid Succeeded - with Warnings」です。1stアルバムがBuildされました。ただし、彼の世界観は「完璧でなくても動けばいい、前に進む」です。なので、"with Warnings"。
ここは手前味噌でも僕のプロデュース能力が発揮されたところですね。
このアルバムの全曲のリストをあげておきます。
| No | タイトル | 聴きどころ |
|---|---|---|
| 1 | Missing P | The Comile Errorsのテーマソング |
| 2 | Code Is My Language (Patched) | プログラム言語戦争をテーマに |
| 3 | After the Deploy Rain | デプロイ後の悲しみをせつせつと |
| 4 | Analog to the Moon | 月面着陸の時代のエンジニアに |
| 5 | Code Freeze Friday Night | 休日前にコードがフリーズ |
| 6 | Rari-Ska-Lation Error | 陽気なスカナンバー |
| 7 | Heart Response 500 | HTTPステイタスコードを恋に例えて |
| 8 | Push to Production (Remastered) | 本番反映を歌ったハードロック |
| 9 | Garbage Collector Blues | GCと恋 |
| 10 | エゴサーチブルー | 炎上しても乗り越えよう |
| 11 | Wake up, Server! 〜 Incident 3AM | 深夜の障害対応 |
| 12 | 終わらないエンジニアのブルース(Build 2.0) | 終わらないプロジェクト... |
| 13 | Delivered Tonight(納品の夜に) | 涙の納品をアカペラで |
どうでしょう? タイトルを見て聴いてみたかったら、以下のYouTubeの再生リストから全曲聴けます。ぜひ、開発のBGMとして聴いていただけたらうれしいです(最近の仕事のBGMはほとんどコレです)。
*Sunoで作成した曲の著作権の扱いなどが微妙ですので、現時点では楽曲での収益化はしていません。
まとめ
SunoやChatGPTを使って音楽を作ってみて感じたのは、AIを「作曲ツール」としてではなく、「共作者」として扱うことの面白さです。
最初はネタのつもりで作り始めた一曲が、やがてAIとの壁打ちの積み重ねによって"人格"を持つようになり、気づけば「エンジニアバンド」という形で世界観ができあがっていました。
生成AIの出力は、単なる「結果」で終わらせることもできますが、そこに意図を加え、繰り返し対話しながら設計していくと、AIは「開発パートナー」になり得るという実感を得ました。
音楽を作るという行為も、結局はプログラムやプロダクトを開発することと似ています。
要件を考え、仕様を決め、結果を検証し、改善を重ねる。
そのプロセスの中で、自分の感情や価値観をどこまで反映できるかが創造の本質だと思います。
The Comile Errorsは、そんな「警告つきの成功」から生まれたバンドのような気がします。
完璧でなくてもいい、止まらずに進めばいい。エラーを笑って、今日もどこかでデプロイしている —— そんなエンジニアたちの姿を、AIが音楽で描いてくれました。
そして、それを形にできたのは、僕が現役のエンジニアだからこそだと思います。毎日コードを書き、レビューし、ビルドを通して、たまに失敗して。その現場感が、歌詞や世界観の一つひとつにリアルさを与えてくれました。
もし「エラー」や「デプロイ」を単なる比喩で使っていたら、ここまで等身大の物語にはならなかったでしょう。
実際にその“ログの向こう側”にいるからこそ、AIに伝えたいニュアンスがわかる。
だからこそ、ChatGPTやSunoとのやりとりの中で、人間の温度を残したAI作品を作ることができたのだと思います。
AIの進化によって、僕たちエンジニアの仕事は大きく変わりつつあります。
コードの自動生成、テストの補助、設計レビュー、ドキュメント生成——これまで「人の手」で行ってきた作業が、AIによって短時間でできるようになりました。
しかし、AIがどれだけ高精度になっても、「考える」ことまでは委ねるべきではないと感じています。AIはあくまで拡張装置であり、思考や創造の相棒であって、代行者ではありません。
今回の「The Comile Errors」もそうでした。AIが曲を作ったわけではなく、AIと一緒に作った。
プロンプトを調整し、世界観を定義し、出てきた結果をレビューして磨いていく。
この「壁打ちの往復」こそが、エンジニアとしての腕の見せ所だと思います。
AIをツールとして使うだけでなく、対話のパートナーとして扱うこと。
それが、これからのエンジニアに求められる新しいスキルだと感じています。
そして、完璧じゃなくても動けばいい、エラーを笑って、前に進もう。それが、AI時代を生きるエンジニアのブルースだと思います。