はじめに
論文や仕様などの文章の推敲・校正のノウハウを整理しておく。
本ノウハウは個人的な経験則から整理した。
参考文献[3]で、「多様な読み方で多様な推敲を行うことが良い方法である」と述べられている。
今回は、次の3つの読み方を示す。
- 形態素解析の活用
- 書き換えの活用
- 音読の活用
前提
- MS Wordで文章を書いている
- MS Wordの校正機能などで表記ゆれなどはチェックしている
提案する読み方
形態素解析の活用
形態素解析は「KH Coder」(「茶筌」)を利用し実行している。
「KH Coder」は、以下のサイトで公開されているフリーソフトウェアである。
https://khcoder.net/
※ここでは、「KH Coder」による形態素解析の手順についてのノウハウは省略する。
※以下の記事に形態素解析結果を活用したリーディング技法のやり方を示した。
https://qiita.com/kazuo_reve/items/6b7205ffb4ce6ad230ba
複合語と未知語のチェック
- 複合語と未知語と判断された単語に、誤記がないかをチェックする。
- 複合語と未知語と判断された単語は、参考文献で定義されている用語かをチェックする。
- 複合語と未知語と判断された単語は、チェック対象の文章内で用語定義されているかをチェックする。独自定義しているにも関わらず説明がない用語がないかをチェックする。
危ない複合語(「○○的」「○○性」)のチェック
- 複合語として「○○的」「○○性」といった単語が抽出された場合、その単語または単語が使われている文章があいまいである可能性がある。使用する単語またはその単語が使われている文章を見直す。
形容詞・副詞のチェック
- 「KH Coder」で以下の品詞として判定された単語について、その単語または単語が使われている文章があいまいである可能性がある。使用する単語またはその単語が使われている文章を見直す。例えば、「“多い”っていっているけど、ほんと?証拠ある?」という自問自答をして、文章を見直すか根拠となる参考文献を探す。
- 形容詞
- 形容動詞
- ナイ形容
- 副詞
- 副詞可能
同義語のチェック
- 名詞とサ変名詞と複合語と未知語に分類された単語に、同義語がないかをチェックする。
書き換えの活用
文章の書き換えをすることで、書き換え元の文章の改善点に気づくことがある。
スライドへの書き換え
MS PowerPoint等の発表資料(スライド)に書き換える。スライドのシートは、大きさの制限があるため、「文章を要約する」「文章を短くする(無駄を省く)」といったアクションに繋がる。「文章を要約する」「文章を短くする(無駄を省く)」といったアクションをしようとすると、元文章の改善点に気づくことがある。
自ら以下のような制約を設けたうえで、スライドを作成するとよい(デンソー足立久美さんからのアドバイス)。
- シート数の上限を決める(シート構成をあらかじめ設計する)
- フォントサイズを決める
- 箇条書きの項目は3つ以内にする
- 1文は2行以内にする
英文への書き換え
日本語の自然言語の文章を、英語の文章に書き換える。英訳しやすいように、元文章を短く・単純にすることに繋がることがある。
図表への書き換え
大切な説明は、図表へ書き換える。図表へ書き換え、レビューすることで、抜けている説明や冗長な説明に気づくことが多い。
音読の活用
参考文献[3]で、「声に出して読む」ことの効果が示されている。
MS Wordには「読み上げ」機能がある。この機能を使うと、自分で文章を読まなくても、音読によるチェックが可能である。
「読み上げ」機能の使い方は、参考文献[6]に示されている。
参考文献
[1] 柏原一雄,長井亘,谷口侑太,「要求仕様の誤解釈を検出する Domain Word Modeling の提案」,ソフトウェア品質管理研究会 第35年度(2019年度)分科会成果報告,2019,https://juse.or.jp/sqip/workshop/report/attachs/2019/5_knt_ronbun.pdf
[2] 結城浩,「数学文章作法 基礎編」,ちくま学芸文庫,2015,https://bookmeter.com/books/6574310
[3] 結城浩,「数学文章作法 推敲編」,ちくま学芸文庫,2015,https://bookmeter.com/books/8653540
[4] 阿部圭一,「情報伝達型の日本語文章に現れるあいまい表現の類型化とその改善例」,情報処理学会 デジタルプラクティス 5(1) 70-79, 2014
[5] 河野哲也,猪塚修,藤森麻紀子,本間周二,茂中義典,「キーワードベースドレビュー-ドキュメントのあいまいさや不備に着目したレビュー手法-」,ソフトウェアテストシンポジウム東京2010,2010,http://www.jasst.jp/archives/jasst10e/pdf/C2-3.pdf
[6] がむ,「Word読み上げ機能使ってますか? 文書のチェックにおすすめ」,2018,https://mos.tokyo/2018/07/18/yomiage/
[7] @kaizen_nagoya,「日本語(10)日本語の文章の推敲と校正」,https://qiita.com/kaizen_nagoya/items/3a5b00081a724c31cff9
[8] @kaizen_nagoya,「英語で考えると厳密になる件」,https://qiita.com/kaizen_nagoya/items/c2b157ad2616ea0978ff
[9] @youwht,「パワポエンジニアの憂鬱を軽減する誤字/表記揺れ検出ツールを作った物語」,https://qiita.com/youwht/items/062c41c88829fcf25107
[10] @kenichiro_ayaki,「特許技術者の憂鬱を軽減する誤字/表記揺れ検出ツールのWord版」,https://qiita.com/kenichiro_ayaki/items/db8a6818fcc9e3b69845
[11] https://qiita.com/kaizen_nagoya/items/bb788e2f4f0fec07af6e#_reference-c6e73d31eade1d2d9b82
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